【演出】山田和也
【脚本】クリスティアン・シュトルペック
【歌詞】ヴォルフガング・ホファー
【音楽】モーリッツ・シュナイダー、マイケル・リード
【編曲】マイケル・リード
【企画】クリスティアン・シュトルペック
【原作】フリードリヒ・デュレンマットの戯曲
「老貴婦人の訪問」鳥影社刊
【出演】
山口祐一郎 涼風真世
春野寿美礼 今井清隆 石川禅 今拓哉 中山昇 他
【あらすじ】
億万長者の未亡人となったクレア(涼風真世)が財政破綻寸前の故郷、ギュレン市に戻ってきた。人々は、かつての恋人アルフレッド(山口祐一郎)がクレアに財政援助を頼んでくれることを期待していた。そして、クレアを迎える晩餐会。大々的な市への援助を約束したクレアだったが、多額の寄付金と引き換えにある条件を提示する。それは―「アルフレッドの死」。
クレアの目的は?
そして、家族や友人がアルフレッドに対して下した決断とは―
いや、この作品のキャストが発表になった時には正直びっくりでした。クリエから徒歩5分のあの劇場でエリザベートが上演されている時に、その舞台のプリンシパルだったOB,OGがそろってこちらの舞台に立つとは・・・新生エリザの大ブレイク、先輩の皆さんもモチベーション上がったでしょうね
さて、トニー賞では真っ白なドレスを纏った82歳のチタ・リヴェラさんの堂々たる演技が話題になったこの作品ですが、日本版の涼風さんも、細い体ながらものすごい迫力でした。あのまま帝劇へ行ってゾフィ皇太后もやれます!
お話しは正直あまり好みではありませんでした。かつて自分を痛めつけた恋人や街の人々をお金の力で復讐していくクレア。最初は寄付の条件に驚き、嫌悪をあらわにする人々が、次第にお金の力に魅かれて変化していくさまは、滑稽というより恐ろしい感じ。。。彼女の本当の目的はかつての恋人の死というより、町の人々への復讐にあったように思います。人の心を試し、あやつり、翻弄する。。。絶対許してくれないクレア怖すぎ。。。
狙われるアルフレッド、山口さんは珍しく普通の雑貨屋のおじさん。次期市長と言われていましたけれど、貫禄たっぷりで王侯貴族のような今井市長様(バルジャン思い出します!あ、あの時はマドレーヌ市長。)とは全然違います。ホント、フツーのワークシャツにエプロンのおじさん。
そんな人の良さそうなアルフレッドですが、若い日にクレアにとんでもない仕打ちをして彼女を捨て、お金目当てで雑貨屋の娘マチルドと結婚します。ここが、どーーーーも納得いかない。普通ったって、本当に普通の雑貨屋のお姉さんとお金目当てに結婚してラブラブの彼女捨てるかなあ・・・今の暮らしだってそう裕福な感じではなし。その辺が最後までひっかかっていました。
まあ、そんなことはあちこちありましたが、なにせ今井清隆、今拓哉、石川禅の3ジャベール@レミに加えて中山昇エルマー・バチャーニ@エリザベートが(今さんはエルマーも)4重唱ですから!こんな豪華なことはありません!アンサンブルにも俵くんやら谷口さんやら、エリザベート組の河合篤子さん、レミゼでは司教様だった港幸樹さん、武内耕さんや、さけもとさんだっているんですから。なんだかクリエの舞台がせまく感じて、この面子なら帝劇で十分やれるよね~などと思ってしまいました。とにかく楽曲は素晴らしいです
ただ。。。う~ん。。なんだなあ。。山口さんはやっぱり黄泉の帝王とか、吸血鬼の伯爵とか、オペラ座の地下に住んでる怪人とか、この世の人ではないお方、またはマントの似合う王侯貴族や大司教といったあたりを担当していただきたい感じです。この役はなあ・・最後の最後までなんだかなあ・・なのでした。クレアが彼を「私の黒豹」と呼び、裏切られて遠く離れてもなお彼の代りとしか思えないリアル黒豹を慈しむというほどの素敵さが。。。ご本人閣下の劇団四季時代を「黒豹のようだった」と誰かが言ってましたが、それは納得しつつ、さて今回のアルフレッドがそのようなカッコよさ、クールさを持っておられたかたというとちょっと首をひねってしまうのです。ポスターのお写真みたいな扮装にすればよかったのに
それにしても、お金目当てとはいえ結婚して2人も子どもをもうけ、「あなたのことは私が守る」とまで言ってくれる可愛い妻(春野さん本当に清楚で可愛い妻だった)に、「私の事を愛したことはなかったの?」と言わせるなんて最低。自分が捨てた恋人に「君だけを愛していた」とかいうの最低。ですよね~
若く、無邪気に愛し合っていたころのふたりと現在のふたり、4人が重なり合って歌う場面はとても美しく悲しかったですけれど