[原案・原作]フョードル・ドストエフスキー
[演出]フィリップ・ブリーン
[翻訳]木内宏昌
[美術・衣裳]マックス・ジョーンズ
[出演]三浦春馬 / 大島優子 / 南沢奈央 / 松田慎也 / 真那胡敬二 / 冨岡弘 / 塩田朋子 / 粟野史浩 / 瑞木健太郎 / 深見由真 / 奥田一平 / 山路和弘 / 立石涼子 / 勝村政信 / 麻実れい / 他
《あらすじ》
舞台は、帝政ロシアの首都、夏のサンクトペテルブルク。
頭脳明晰な貧乏青年ラスコリニコフ(三浦春馬)は自分が「特別な人間」として、 「人類が救われ、その行為が必要ならば、法を犯す権利がある」という独自の理論を持っていた。
そして強欲で狡猾な質屋の老婆を殺害し、奪った金で世の中のために善行をしようと企てている。 そんな中、酒場で出会った酔っぱらいの退職官吏、その後妻カテリーナ(麻実れい)ら貧乏な家族を見ると質入れで得たお金をすべて渡してしまうのであった。 ついに殺害を決行するが偶然居合わせた老婆の妹まで手にかけてしまい、罪の意識、幻覚、自白の衝動に苦しむことになる。 そうして意識を失い数日間も寝込んだ彼を親友ラズミーヒン(松田慎也)が見守り、 結婚のため上京してきた妹ドゥーニャ(南沢奈央)と母プリヘーリヤ(立石涼子)も心配をする。 一方、老婆殺人事件を追う国家捜査官ポルフィーリ(勝村政信)はラスコリニコフを疑い心理的に追い詰めていき、 さらに謎の男スヴィドリガイロフ(山路和弘)の登場に翻弄されていく。
そして退職官吏の娘・娼婦ソーニャ(大島優子)の家族のためへの自己犠牲の生き方に心をうたれた彼は...
12月にはロマンティック・ロシア展、先日は東京芸術劇場で「戦争と平和」原作のグレート・コメット、そして今日はドストエフスキー「罪と罰」ということでロシアづいてます
にわか予習した100分de名著によれば、「戦争と平和」と「罪と罰」は、同時期に雑誌に掲載されていたそうです。同じ時代の物語なんですね。
ロシアの物語は、とにかく耳慣れない長い名前が多かったり、同じ人物にいろいろな呼び方をするのでわかりづらいのですが、そこは予習のかいあって、なんの説明もなくいきなり入る場面にもなんとかついていくことができました。100分de名著おそるべし![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_en2.gif)
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頭脳明晰で美しい貧乏青年ラスコリニコフ、三浦春馬くん。見直しました!笑顔が可愛い少年じゃない、役者・三浦春馬ここにあり!な、ものすごい舞台でした。メイクはちょっとデスノートのLのよう。かなり体を絞って頬もげっそり。目だけが異様にぎらぎらとしているラスコリニコフ。あまりにも有名な老婆殺しですが、その事件から最後まで、どのようなことがあってもその罪は消えないということを象徴するように、彼の手はずっと血に染まったままです。
演出はフィリップ・ブリーン 氏。舞台いっぱいの大階段が、この物語の全ての世界を映し出します。一番下左にラスコリニコフの部屋があり、右下には娼婦ソーニャの父の退職官吏の家があり、中段には殺害現場となる質屋の老婆があるという感じ。いろんな場所で同時にいろいろなことが起こっているし、役者たちが息を合わせてラスコリニコフを追い詰めるようなすごい緊張感もあり、3時間20分、息もつかせぬ濃密なドラマでした。
三浦くんもすごいですが、彼を執拗に追い詰める勝村さんがまたすごい。特に2幕のラスコリニコフが国家捜査官ポルフィーリの部屋を訪れるシーンでは、もう、舞台中を自由自在に飛び回り、独壇場!ものすごい存在感で圧倒されました。ちょっとコロンボ警部も入ってました
大好きな麻実れいさんもすごいです!今まで見たこともないような下品でいつも叫んでいるようなエキセントリックな妻。もう、めちゃくちゃな状況の中で夫を失い、自分も見失ってやがて死んでいく様に言葉を失いました。そんな母からどうやってあんなに心の清い娘が・・・と思ってしまうほどの娼婦ソーニャ。家族のために身を売っていますが、神に心を捧げ、ラスコリニコフに無償の愛を捧げ、改心させていく大事な存在でした。
この物語もまた、キリスト教の教えが色濃く、ソーニャの父の葬儀の会食の場面は「最後の晩餐」のシーンと同じ配置、ラスコリニコフが自首する場面はゴルゴダの丘に向かうイエスを思わせました。パンを差し出すソーニャはマリアということか。
惨殺される老婆とその妹と、ラスコリニコフの母と妹が、立石涼子さんと南沢奈央さんがそれぞれ二役をしているもの興味深かったです。
しかし、どう考えても自分本位な殺人に、つい新幹線の殺傷事件や、障害者施設の大量殺人事件などを思いました。彼らは悔い改めることができるのでしょうか。
この作品、22日には出演者の体調不良で休演になりハラハラしましたが、観られて良かったっです。今日のソワレがその日の振替公演だったようですが、あのボリュームを一日二回やるのは過酷だなあと心配。でも、振替公演に来られない人もいるんだと思うと気の毒でなりません。インフルエンザかな。。。それを思うとこの時期の観劇は、見る方も演じる方もなかなかリスキーだなあと思ったのでした。大雪とかもあるしね![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/body_stretch.gif)