pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

ロスト・イン・ヨンカーズ@PARCO劇場M列センター

2013-10-26 22:26:49 | 観劇/コンサート

作:ニール・サイモン
上演台本・演出:三谷幸喜
出演:中谷美紀 松岡昌宏 小林隆 浅利陽介 入江甚儀 長野里美 草笛光子

あらすじ:
1942年、第二次世界大戦中のニューヨーク州ヨンカーズを舞台に、厳格で人を寄せ付けず、そして決して笑わない母ミセス・カーニッツ。少しおつむが足りないながらも、ひとりの女性として幸せをつかみたいと願うヒロイン・ベラ。妻に先立たれ借金まみれになってしまい、愛する息子二人を母に預け、借金返済のために出稼ぎ中の長男エディ、地元のギャングから身を隠すために家に舞い戻ったベラの兄弟ルイ。「結婚」によって母の呪縛から解き放たれたが、幼少時代に母に植えつけられたトラウマのせいで、喋っているうちに過呼吸になってしまうガート。彼女に育てられた4人の兄弟たちが不器用なりに一生懸命生きる姿を、父エディの帰りを祖母ミセス・カーニッツのもとで待ち続ける二人の少年(ジェイとアーティ)の目を通して描かれる「家族の物語」です。(KAAT公式HP)


 

 実は先日、偶然電車の中で台本を読みこんでいる役者さんを見てしまいました。その台詞があまりに印象的だったので、きっと三谷さんの舞台だろうとは思いつつ、まさかこの作品にそのフレーズが出てくるとは予想していませんでした。(その方が降りた駅も渋谷ではなかったので・・・)だから、この舞台の前半部分の長台詞の中でその一節が出てきたときには、なんだか鳥肌が立ってしまいました。そんなことがあるから、舞台道楽やめられません

・・・てなことはおいといて、この舞台、とっても良かったです。ヨンカーズの頑固者のカーニッツおばあちゃんの家によんどころない事情で預けられた2人の兄弟。兄・ジェイことヤコブが浅利くん、弟・アーティーことアーサーが入江くん。15歳と13歳という設定。小柄な浅利くんはともかく入江くんはかなり大柄で、「え?」と思いましたが、しばらくすると気にならなくなりました。いるいる。ああいう兄弟役者は年齢も飛び越しちゃうんだなあと、つくづく思わされました。

母の病気で父がお金を使い果たし、その時の借金を返済するために息子たちは父方のおばあちゃんに預けられるわけですが、草笛さん演じるおばあちゃんがめちゃくちゃ偏屈で怖い。そして誰にも心を開かない。そんなおばあちゃんと暮らす叔母は発達遅滞でやたらハイテンションこの叔母を演じる中谷さんがとってもかわいい中谷さんといえばちょっと斜に構えた近寄り難い美女という印象でしたが、自分自身の問題、家族の問題を抱え、それでもひとりの女性として生きたい、結婚もしたい、子どもも持ちたいというささやかな願いを心に秘めているせつない女性を魅力的に演じていました。

おばあちゃんはドイツからのユダヤ系移民で、母として一番つらい経験から心を閉ざし、子どもたちに優しくできない。母親の柔らかい優しさを求める娘の心にも答えようとしない、というか、できない。「何があっても生き抜く」力だけを大事に生きてきた。スーパー偏屈だけれど、本当は息子や娘を大切に思っている。そんな複雑なおばあちゃんの心情を、草笛さんがとても説得力ある演技で表現していました。う~ん、どこかで・・・そうだ!ブレヒトの「肝っ玉おっかあとその子どもたち」だ!
30年戦争に荒れる中部ヨーロッパ。父親の違う3人の子ども達と共に幌車を押しながら、軍隊を相手に酒や生活必需品の商売をする肝っ玉母さん・アンナ。この舞台、アンナの老後みたいだなあ・・と、ちょっと思いました。貴婦人も、苦労を重ねた強い母も、自在に演じる草笛さん、素敵だなあと思います。

劇場でもらった束チラシの中に三谷演出「国民の映画」再演のお知らせ!(来年2/8~3/9PARCO劇場)ゲッペルス夫人は石田ゆり子さんから前回愛人役の吉田羊さん(純と愛の辣腕ホテルウーマン)へ、巨体ゲーリングは白井晃さんから渡辺徹さんへ、愛人役吉田羊さんは秋元才加さんに変更になってます。吉田羊さん最近注目してるので楽しみです!

初演の時、震災があったんだなあ・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕は忘れない ~瀬戸内 ハンセン病療養所の島~

2013-10-14 21:54:15 | テレビ番組

3連休の最終日は、いただいた栗をマロングラッセにしようと試みていましたが、3日間かかると聞いて挫折。栗のラム酒風味甘露煮となりました。これが結構美味しいんだな~と言っても、大なべいっぱい煮た栗のうち、こうして原型をとどめてるのはごく一部、あとはほとんどがブロークン・・・・マロングラッセや栗甘納豆ががお高いわけがよ~くわかりました。

この連休は興味深い番組がいくつかありました。特に12日深夜は是枝監督×姜尚中氏の対談、瀬戸内ハンセン病療養所の島のドキュメンタリー、井上ひさし先生の宮沢賢治をめぐる旅・・・・

その中でも、特に心に響いたのはETV特集「僕は忘れない ~瀬戸内 ハンセン病療養所の島~ 」でした。

今年は3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の年です。友人が行くという話を聞いていたので、この芸術祭に参加している大島というハンセン病療養所の島って、どんなところなのかなくらいの興味でみていました。

「僕は忘れない~」というタイトルと松田洋治さんのナレーションとともに、船から降りた青年、吉田くんは、タイトルから伝わってくるような熱いオーラは感じない、本当にいまどきの18歳らしいふわっとした、男の子でした。

でも、彼はお母さんの仕事の関係で子どもの頃からこの島に住み、小学生の時からこの島の案内をボランティアで行っている人でした。

子どもの頃にはただひたすら、ハンセン病療養所の入所者に聞いたことをつたない言葉で一生懸命に伝えていた彼ですが、大学生となり、再びこの役目を引き受けようというとき、当時の教師に「ずっと気になっていることがあった」と言われます。それは、彼が島を訪れた人たちにハンセン病療養所の話をする際、「患者の人たちから聞いて、~ということがわかりました。」というような言い方をしている。それは違うと。ハンセン病患者たちが受けた過酷な体験を、体験したことのない若者が語り継ぐ難しさ。それまで飄々としていた吉田くんが、先生の言葉に極まって涙をぬぐいました。溢れる涙。そして、彼なりに島で起こった様々な事実や入所者たちの今の思いを再び取材し、島を訪れる人たちに一生懸命に伝えようとします。本当に、一生懸命に。流暢でもなければドラマティックな語り口でもない、本当に本当の一生懸命。彼のガイドを聞く人たちも、その話にうたれていることが伝わってきました。

特に感動したのは、前回の瀬戸内国際芸術祭をきっかけに浜から引き揚げられた石の解剖台についての場面でした。その解剖台は、ずっとあった。吉田くんが小さかったころから、ずっと浜にあった。それが何なのか、どういうことがこの石の台の上で行われたのか入所者の人たちはみんな知っていたけれど、自分たちはそれが何かを知ろうとしていなかったという苦悶のようなものが感じられたことです。吉田くんの先生が、「大きくなった君が、今、またここにきて大島案内をするということが成長の証しだよ」とおっしゃっていましたが、本当にそう思いました。そして、吉田くんにつらい昔の話をする老人たちの温かいこと。自分の孫に話しかけるように丁寧に丁寧に話をする姿に想像を絶する体験を重ねて生きてきた人々の強さを感じます。

 

自らの骨壺を島の土で焼き上げ、「あと10数年で入所者は誰もいなくなる。この納骨堂が無縁仏にならないように、国はちゃんと考えてほしい。」という入所者の方の言葉がずしんと響きました。私もいつかこの島に行ってみたいなと思います。

再放送があるので、たくさんの人に見てほしいなと思います。

NHK【ETV特集】 再放送:2013年10/19(土)午前0時45分(金曜深夜) http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2013/1012.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ムサシ ロンドン・NYバージョン@彩の国さいたま芸術劇場1階K列下手

2013-10-06 21:39:54 | 観劇/コンサート

作:井上ひさし  演出:蜷川幸雄
出演:藤原竜也 溝端淳平 鈴木杏 六平直政 吉田剛太郎 白石加代子 大石継太ほか


2009年2010年と再演を重ねたこの作品。今回の小次郎は溝端淳平。初演・小栗旬、再演・勝地涼と、ここはやはりシャープな若手を持ってきますね~その昔、あの山崎務さんも小次郎だったな~

テーマは一貫して「生きろ。」憎しみの連鎖を断ち切れというメッセージももちろんですが、今回は「生きろ。何があっても生きろ。」という強い叫びを感じました。震災前、震災後では訴える強さや方向が変化したということなのか、私がそう感じるだけなのか。

そして、「三種の神器を手にしたものが正義をかざして弱者を追い詰める」「ただ一人の極悪人を諸悪の根源として・・・」というような台詞に某国を想像させる部分もありました。

一緒に行ったうさぎさんとも、「いい感じで(前回みたところを)忘れてるよね~」と話しましたが、この数年のいろんな出来事がオーバーラップするような場面や台詞もあり、やっぱり観劇ってその時の自分の状態や世の中の状況で見え方、見方が変わるんだな~と思います。3月には韓国公演に先駆け、コクーンで上演されるそうですが、その時にはまた違った見方をするのかな。てか、また行く気ですか私・・・

新・小次郎の溝端くんは意外にも(失礼!)硬派で生真面目な小次郎。初演で小栗君が着ていた桃太郎みたいな衣装ではなく、なかなか渋い衣装。腰をしっかり落とした構えや殺陣も決まっていて、なかなかステキこのそうそうたるメンバーの中でよく頑張っていました。

藤原君はもちろん、剛太郎さんも白石さんも、もう自由自在でどこからも文句の付けどころなし。鈴木杏ちゃん然り。うさぎさんは、杏ちゃんが男だったら小次郎やらせてあげたいよね~と。私も同感

ムサシ、海外でも評判なのはわかるけど、これだけ再演くりかえしてないで藤原くんのハムレットまた観たい~当然レアティーズは井上くんで、フォーティンブラスは小栗くんで。あ、内野さんの「ペリクリーズ」も!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする