脚本 青木豪
演出 いのうえひでのり
音楽 岩代太郎
出演 森田剛、成海璃子、秋山菜津子、渡辺いっけい、 千葉哲也、山内圭哉、木村了、須賀健太、宮地雅子、 麻実れい、若村麻由美、生瀬勝久 他
【あらすじ】
平安、近江国。源範頼(森田剛)は姿醜く、足が不自由で馬にさえ乗れない。幼名は鉈切り丸。範頼は木曾義仲を殺し、目の前で夫を斬られた義仲の妻・巴御前(成海璃子)の気丈さに、心奪われる。
時は経ち、所変わって鎌倉。範頼の兄・源頼朝(生瀬勝久)は、弟・源義経(須賀健太)と家臣・梶原景時(渡辺いっけい)、和田義盛(木村了)に壇ノ浦の戦いの様子を訊ねるが、義経は安徳天皇の母・建礼門院(麻美れい)の生き霊に取り憑かれている。義経の身を案じ範頼は義経の京都行きを提案するが、それは義経を案じたからではなかった。その頃京では逃げ延びた巴御前は、範頼の母・イト(秋山菜津子)と出会い、範頼出生の秘密を聞き仇討ちの策を練るのだった。そこへ、義経に謀反の濡れ衣を着せて討とうと範頼がやって来るが、密使が討たれたと知り、義経に寝返るふりをする。
天下を獲りたい。たとえ血まみれ地獄になろうとも、この世を言いなりにしたい。 すべてを手に入れるため、範頼=鉈切り丸は悪の限りを楽しむと決めた。望み通り天下を手中に治め、大江広元(山内圭哉)の記す歴史書「吾妻鏡」にその名を残すことができるのか......。それとも。。。(公式HPより)
今回は、いのうえひでのり演出ですが、劇団新感線の公演ではないんですね。シェイクスピアの「リチャード3世」を鎌倉時代に置き換えた作品。5年前のIZO以来の森田剛さん。この方、ますますシャープになった感じで孤独で狡猾でカミソリの刃のような源範頼、というよりリチャード3世でした。巴御前の成海璃子さんは21歳になったんですね~そして、あの3丁目の夕陽の須賀健太くんが義経とは!義経は神木隆之介くんとか滝沢くんとか、古くは志垣太郎さんとか、美しいタイプの役者さんが演じることが多いですが、須賀くんは社会の教科書に載っている義経の絵にちょっと似ていました。璃子ちゃんも須賀くんも頑張ってはいましたが、超ベテランの方々の中では、ちょっと硬い印象でした。
今回は女優陣が光っていました。健礼門院の麻実れいさん、北条政子の若村麻由美さん、範頼の生みの母、秋山奈津子さん。この3人は文句なしです。麻実さんは「生き霊」なのですが、この方が登場すると本当に舞台がしまる。どんな役でもなんて素敵に演じるのでしょうもう、うっとり若村さんは、こまつ座の舞台でもパワー全開で見直しましたが、今回はちょっとアレな頼朝をがっつり支える猛妻政子。この妻があっての頼朝という図がくっきり。そして、その頼朝を生瀬さんが怪演~いるいる、こういうおっさん!という、絶妙な「間」をお持ちでした。「いざ、鎌倉!」を、「いざ、キャバクラ!」って言いませんでしたか~聞き間違いかなあ・・・ そして弁慶千葉哲也さんのあふれる色気あの長い薙刀をくるくると振り回しての殺陣は素晴らしかったです。今回、渡辺いっけいさんと木村了さんの舞うような殺陣も目をひきました。いっけいさんはもともと劇団新感線の方だったんですよね。木村さんは今回結構おいしい役どころでしたが、とっても誠実に演じて好感が持てました。
実在の源範頼は温厚でおとなしい性格だったそうですが、この作品ではリチャード3世に置き換えられているくらいですから口先で他人を翻弄し、狡猾な手段でのしあがり、やがて転落するという激しいキャラ。なにせリチャード3世なので、生首と血みどろは覚悟していましたが、リチャード3世のオリジナルではアン王女にあたる妊娠中の巴御前の惨殺にはちょっと引きました。女性としてはあんまり観たくないシーンだったなあ・・・
森田剛さんは、この相当に体も心もバランスの悪い人物をバランスの悪い体勢のままものすごく熱演されていて、かなり大変だったと思います。劣等感を攻撃性に変えたかのような残忍さ、狡猾さ。。。そして何もかも否定され、絶望の中、血まみれで死んでいく範頼。なんの救いもなかったなあ。。。カーテンコールの森田さんも、もうへとへとというご様子でした。どんな感情移入もできない主人公。リチャード3世って、そういうお話なんですね。
そういえば、リチャード3世は岡本健一さんもやっていましたね。ジャニーズこういうのが好みなのかしら。。。
余談ですが、オーブのロビーから、東急東横店の解体の様子が見えました。こうやって壊していくんですねえ。。あそこが売り場だったんだなあ・・レストランのあったあたりかなあ。。と、しばし見つめてしまいました。