pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

エリザベート2016(城田トートその1)@帝劇1階L列上手サイド

2016-06-30 21:50:54 | 観劇/コンサート

去年、松也さんがいたところに成河ルキーニ真田広之さんかと思った

 

今季お初のエリザベートに行って来ました今年は本当にチケットがとれなくてとれなくて参りましたが、執念で2回分もぎとりました。本日は城田トート閣下。エリザベートは蘭乃はな様。ルキーニは山崎育三郎くん。

やっぱりこの作品大好き。わくわくどきどきが止まりません何度でも中毒的に観たくなる。結婚式のシーン。華やかな舞台上でなく、反射的に客席後方から静かに進んでくるトート閣下の気配を追う自分。通路途中からライトに浮かび上がる閣下の美しいこと

演出はところどころ変わっていました。何よりびっくりしたのはトート閣下、城田くんの演技。エリザベートやルドルフ、市民活動家たちの不安な心にするりと滑り込むような、動き。あんなに大きな体なのに!

特に目の演技に注目してください。誘うような妖艶な視線、獲物を狙う鋭いまなざし、かっと見開いているのに何も見ていないような、この世のものとは思えないような目。。。。すごいです。

昨年の公演も素晴らしかったけれど、今回は演技のみならず歌もダンスもさらにパワーアップして、もう、どうしたらいいのってくらい、素敵の嵐でした 子ども店長の弟、ちびルドくん、可愛い皇太子でした。成長したルドルフ、古川くんと城田トートの「闇が広がる」美しい帝劇中に広がりましたよ、闇!そしてマイヤーリンク圧巻!ルドルフをかつぎあげた黒天使、あんなところに亡きがらを。。。って、もともとそこからなのか。

育三郎くんのルキーニもすごかったです。最近はドラマやバラエティーでもエキセントリックな演技に磨きがかかっていますが、今回のルキーニにはその経験の全てが生かされているようにも感じました。何せほとんど出ずっぱりの狂言回し役ですから。エリザベートの体操室で、ドクトルの脱ぎ捨てたマントをせっせと回収してたり、まめな無政府主義者。

特に今回、反逆罪で捕まったらいしい若者の母親が「息子は自由と叫んだだけお慈悲を」と泣きながら訴える母親の傍らに寄り添い、宮廷に鋭い目を向けるルキーニが印象的。こうした怒りの蓄積が彼をテロリズムに向かわせたのか。。という思いを持ちました。説得力ある演技。2幕最初の「キッチュ!」。帽子に仕掛けありです。

そしてそして、チケットゲットに集中しててすっかり忘れていた革命家シュテファンくん、広瀬さん続投だったんですね最初の軍服登場からかなり目をひきました1789ではフェルゼンだったから、今回エルマーでもよかったかも。悪夢でもルードウィヒもっと長く観ていたいです。また、ミルクの群舞の演出がかわっていました。古川くんは一番後ろで踊ってるの確認。ハス!もさらにかっこいいダンスに。鳥肌たちます。

ゾフィ皇太后の涼風さん、こわい。でも、実存のゾフィの写真は涼風さんのイメージかも。

蘭乃エリザベート。

意識しないで行ったのですが、今日が蘭乃さんの初日だったんですね

昨年、かなり大変なことになっていた歌。今日は登場の歌い出しからものすごく緊張しているのが遠目にもわかり、客席全体が学芸会でわが子を見守る父母状態・・・でも、皇帝陛下やお姑さんや黄泉の帝王が上手にサポートして、次第に安定してきました。だいぶ頑張って、前回のように大きく音をはずずところはなかったように思います。

カーテンコールの様子は既に動画がアップされているようですが、蘭乃さんが涙ぐみながらの挨拶がありました。昨年の公演では思うように声が出ず、恐怖に押しつぶされそうだったこと、それを支えてくれたのがカンパニーのみんなだったこと。

ご本人もかなり辛かったんでしょうね。両隣の方は涙ぐんで聞いていました。「がんばれ!」の声も。このご挨拶、いろいろと物議をかもさないといいなあと老婆心。

 

ロビーにBIG FISHのポスター。これ絶対おすすめ!

 


猫と五つ目の季節/山田稔明

2016-06-27 22:29:09 | 私の本棚

とても失礼ながら、ミュージシャンとしての山田稔明さんは知りませんでした。ただ、書店でこの本の表紙を見たとたん、ぐっと引き寄せられるものが在り思わず手に取りました。

猫ブームのせいか、猫にまつわる小説やエッセイは山のようにでていますが、ただ泣かせるのを目的にしているようなものもあれば、この作者は本当に猫を飼った経験があるのかしら?と疑問に思う作品もありました。そういうのは読んでいて腹立たしくなります。

今まで一番おすすめだった猫テーマの作品は角田光代さんの「今日も一日きみをみてた」でしたが、この「猫と五つ目の季節」は勝るとも劣らない本だと思いました。

猫と暮らす人生と猫と暮らさない人生。

猫と暮らす人生を選んでいる者として、山田さんの優しい視線には、頷くことばかりでした。

猫エイズキャリアという重い十字架を背負った三毛猫のポチちゃん(♀)が十三年もの間、幸せに生き抜くことができたのも、作者の深い愛によるものなのに違いありません。絶対的な愛と信頼。あるがままを受け入れる心。そして別れまでのあれこれ。

老猫とともに、やがて来てしまう「その日」が、できるだけ遠くになるように必死で戦う姿。リアルにかかる金銭的負担、折れそうな心、    

 

そしてその日を迎えた深い喪失感。

 

もう、一気読みしながらも「この話終わらないで欲しい」と何度思ったことでしょう。猫が獣医さんに行くことのストレスを考えて自宅で点滴するエピソード、火葬場で愛猫の骨をひとつひとつ拾い、「骨までが可愛い」と、思える愛。淡々とした文章の行間に愛おしさがぎっしりと詰まっていました。

私の猫が我が家にやってきたときから、かわいくてかわいくて、まだ生まれて2~3か月だというのにこの子が死んでしまったら世界は灰色になってしまうと思いこんだものです。来月には11歳の誕生日を迎えようとしている今でさえ、その気持ちは変わりません。ずっと一緒にいてね、ちゃめ

 


芸術劇場「モンテクリスト伯」@NHK Eテレ「お願い! 編集長」

2016-06-26 21:17:23 | テレビ番組

原作:アレクサンドル・デュマ 演出・脚本:高瀬久男

【出演】内野聖陽,原康義,関輝雄,塩田朋子,石川武,清水明彦,大原康裕,吉野正弘,若松泰弘,鈴木弘秋,浅野雅博,林田一高,松井工

miniさんのブログの貴重な情報から、内野さんの文学座「モンテクリスト伯」2001年版の再放送を知りました。(感謝!)この作品は、私をこの世界に引きずり込ん。。。いえ、観劇の楽しさを教えてくださった大事な観劇の師匠から録画ビデオをいただいていましたが、ビデオ観られなくなってしまったので、めちゃくちゃうれしかったです!天王洲銀河劇場がまだアートスフィアという格調高い名称だった2004年、再演には行きました。2階だったけど

いかにも文学座らしいきっちりした舞台。中でも内野さんの若き日の清潔さ、まっすぐさ、罪に落とされた時の絶望、牢獄で神のような人物に出会えた喜び、復讐に燃える冷徹な姿、真実に触れた心の揺れ。。。等々、当時33歳(!)とは思えない落ち着きとオーラのものすごいこと15年後に徳川家康を演じるだけのことはあります。

2004年の再演では、モンテクリスト伯となってからの姿がめちゃくちゃ素敵でクラクラしました。。。やっぱり、いい役者ですね今回の録画は家宝にしたいと思います

2001年初演でも恩人の息子マクシミリアン君は城全能成くんでした。この方、もっと注目されてもいいいのに。最近は四季の舞台にもご出演のようですね。


シネマ歌舞伎「阿弖流為」@東劇

2016-06-25 23:51:38 | 映画/DVD

うさぎ姐さんに誘ってもらい、東劇へ、月イチ歌舞伎第一弾「阿弖流為」の初日に行って来ました

新橋演舞場の公演から、そろそろ一年経っちゃうんですね~ 時の経つのは早いこと。。。

2度目に観に行った時には阿弖流為vs田村麻呂の死闘場面で勘九郎さんの鬘がふっとんだんだった

撮影にはかなりな数のテレビカメラが設置されていたとかで、生舞台とはまたひと味違う趣でした。

どアップあり、オーバーラップあり、また両花道で向かい合う田村麻呂と阿弖流為のシーンなどは、生ではかなわない見せ方でした。

見せ方でこんなに違うんだなあと思ったのは、田村麻呂、阿弖流為、立烏帽子/鈴鹿蛮甲それぞれがそれぞれの見せ場できっちり主役になっているというところ。アップ効果はすごいです。

でも、あの場面は照明がきれいだったから、もっと引いて映してくれればいいのにと思う所もありました。それにしても、高麗屋、中村屋の若手すごい!それぞれに可愛い後継者ちゃんもいるし、(あ、成田屋も)歌舞伎の将来は明るいですね

2100円であんなにたっぷり観られるのはうれしいです!ほかのも観たくなっちゃったじゃないですかあ。。。だめだめ!

回は野田版 研辰の討たれ。。。とか。。



海よりもまだ深く@ユナイテッドシネマ

2016-06-21 19:48:40 | 映画/DVD

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和 
出演:阿部寛 真木よう子 小林聡美 リリー・フランキー 池松壮亮 吉澤太陽 / 橋爪功 樹木希林

あらすじ
主人公の篠田良多(阿部寛)は、かつて文学賞を受賞した作家ながら、今では興信所の調査員として生計を立てており、離婚した元妻・響子(真木よう子)には愛想を尽かされているダメ男。ある日、月に一度だけの息子・真悟(吉澤太陽)との面会日を楽しんでいた良多は、団地で暮らす母・淑子(樹木希林)の元を訪れる。その日の夜、団地は台風の直撃を受け、良多、真悟、そして真悟を迎えに来た響子は、淑子の家で一夜を共にすることになるのだが…。


なかなか行けなかったこの作品、近所のシネコンでは もうすぐ終了ということで、急いで行って来ました。

いや、観終ってすぐはそうでもなかったんですが、だんだんじわっとくる映画でした。

「なりたかった大人」

誰しも、希望を抱いて大人への階段を上がるけれど、本当になりたいものになれる大人がどれだけいるのでしょう。

この作品では、生活もままならないのに「作家」をあきらめきれない男、いつか分譲住宅に住みたいと思っていたけれどかなわなかった母、幸せな家庭を築きたかったけれどできなかった妻など、ものすごく不幸ともいえないけれど、いろいろなことをあきらめながら生きる大人たちが主役です。

夫に先立たれ、つましく賃貸の団地に住まう母。カルピスを凍らせてデザートに出したり、ベランダの結構どうでもいい植木にペットボトルで水をやる。押し入れの天袋には息子のこどもの頃の作文を大事にとってある。息子を深く愛し、そっと寄り添う。なにかあっても激昂せず、ささやかな楽しみを糧に、静かにひとり暮らしを楽しむ。

もう、希林さんがすごすぎ。かつて日本にはこのような母がたくさんいたよなあ、、と、誰もが感じたことでしょう。

大事に子どもを育て、きちんとした社会人になって欲しいと望む。適齢期には優しくて誠実な相手と結婚させ、60前後に可愛い孫を抱く。でも、誰もがそんな「普通」を叶えられるわけではないです。普通って本当に大変。

でも、それでも前を向いて歩いて行くことが大事なんだよというメッセージがびんびん伝わってきました。

海よりも深く誰かを愛して夫婦になっても、みんながみんな幸せになるとは限らないと、しみじみ息子の別れた妻と語るおばあちゃんが悲しすぎました。ちゃんと「生活」という現実を見て進まなくちゃいけないと決断する妻と金銭感覚めちゃくちゃで貧しい老母のへそくりまで漁る夫。。やっぱり無理だろうなあ。。ヒットを打つよりもフォアボールが好き、将来は公務員になりたいというひとり息子が悲しい。

この、朝になったら離れ離れになる親子3人が台風の中、公園のタコ型滑り台の中で身を寄せて過ごす姿が切なかったです。

もう一回思いました。普通って、大変。


芸歴15周年記念落語会「三遊亭王楽五番勝負」 @東京芸術劇場シアターウエストG列センター

2016-06-20 23:28:48 | 落語・講談

いのっちからもお花が

王楽くんの襲名披露の時もそうでしたが、今回も錚々たるメンバーがゲストに顔をそろえています。5番勝負初日は文枝師匠、今日が志の輔師匠、明日は歌丸師匠、4日目が鶴瓶師匠に5日目は小朝師匠。今をときめく5トップという豪華さ

今日は3席とも50分越し。前座なしの幕開きは、王楽くんが苦手(1バンジージャンプ 2かみさん 3犬)を克服するという企画で、橋の上から本格バンジージャンプした映像でした。絶対やだ~

1席目は新作で、志の輔師匠に気遣ったのか、ペヤング好きな夫と韓流好きな妻の噺。う~ん。。。いまひとつ。

次に登場の志の輔師匠は、王楽くんからは今回どんな感じ。。というリクエストもなかったので。。といいつつも、圧巻の「抜け雀」。やっぱりうまい!正直、ものすごい差を感じていたのは私だけではなかったようです。すごいわやっぱり。あっという間に劇場が安宿屋になり、ついたてに雀が飛んじゃうんですから。この表現力にかなう噺家さんて、本当にいない気がしてしまいます。後を追う若手に「こうやってやるんだ!」と、見せているんだろうなあと思いました。

その心意気を受けてなのか、最後の王楽くんの「帯久」は、1席目よりぐんと良かったです。この噺は志の輔師匠の得意な噺でもあり、挑戦した気持ちが伝わってきました。老練な噺家がこうして若手に熱を伝えて鍛えていくんですね。


父の日ランチ2016

2016-06-19 23:16:17 | 私の好きなもの

今年の父の日は、初めて娘達のおごりランチふところ具合も考えたのか、父は近くの和食をリクエスト。それでも、「ここは出そうか?」などと、娘たちにはあくまでも甘い父ちゃんでした

ケーキはふたりのお手製です。なんか、感極まったか、「僕はうれしいよ。ふたりとも立派な社会人になって、こんな心遣いができるようになって」と父。

ふたりとも父の日のことは母が耳打ちするまですっぽり忘れてた。。。な~んて黙っててあげるね

ケーキ買うと高いから、安く手作りした。。。

な~んて黙っててあげるね

そして、この方は留守番でふてくされてねんねでした


第70回トニー賞授賞式!@wowwowプライム

2016-06-13 22:38:02 | テレビ番組

ざんざん降りの雨だ~月曜日だっつうのにやだなあ・・・と、ぼーっとしながらテレビを見ていると、「え?!プリンス

そうだった!今日はトニー賞の授賞式生中継だった!げげ!予約録画しわすれた!

バタバタしているうちに、画面にはNYの街を歌い踊る井上芳雄!もう、遅刻してもいいや!という感じで大急ぎで録画。もう、私のバカヤロー!!ボケ!

。。。で、帰宅してようやく録画再生。が、しかし、なにせ朝の8時から昼1時まで5時間の生中継なので、今夜全部観たら家庭崩壊しますので(すでに崩壊寸前

早見モードで良さそうなとこだけ見ました。

注目のミュージカル「ハミルトン」!いいですね米国ではお札になっている方ですが、恥ずかしながらよく知りません。アメリカの坂本竜馬みたいな人?と、宮本亜門さんだか八嶋智人さんだかが話していました。

その時代の衣装からわくわく。群集劇風のダンスやラップも心惹かれます。日本だったら誰がハミルトン?と想像するのも楽しい!

以前、この授賞式の司会をヒュー・ジャックマン氏がものすごく素敵に努めていましたが、今回の司会はジェームズ・コーデン氏。ころんとしたおじさまだし、聴いたことないな~。。と、コーデン氏のパフォーマンスをとばそうとしましたが。。。あれ?「ハミルトン」からはじまり、次から次へといろんなミュージカルのパロディにくるくると早変わり!レミゼもオペラ座の怪人もライオンキングにジーザスに、屋根の上のヴァイオリン弾きも!ウエストサイドストーリーから「トゥナイト」の後にはアニーのカツラをさっとかぶって「トゥマローお見事!結構太目なのに、ダンスもキレキレ!すごいエンターテイナーです

ミュージカル部門では、やはりハミルトンが11冠。演劇作品賞は「ザ・ヒューマン」でした。

「屋根の上のヴァイオリン弾き」が新演出になり、結婚式の場面のダンスがすごくスタイリッシュな感じになっていました。今度日本でやるときは誰がデヴュエをやるんだろう

今日はスピード鑑賞でしたが、18日(土)に3時間に編集された字幕付き放送があるそうなので、そちらで再度ゆっくり見たいと思います。最後のほうでジャージー・ボーイズ日本版の紹介があって、赤白両バージョンを率いたアッキーの晴れ姿をみられたのもとてもラッキーでした。アッキーと井上くんが並んでる姿は珍しいですが、これからは共演もありそうな発言があって、期待しちゃいました。

今日は、調子にのってこんなの買っちゃいました~生写真付き(おばちゃんでも嬉しい

   

 


妊娠カレンダー/小川洋子

2016-06-12 20:34:35 | 私の本棚

久しぶりに本棚の整理。ず~っと前に買ったまま長いこと積読状態だった小川洋子さんの「妊娠カレンダー」を一気読みしました。

この本は芥川賞受賞の表題作と、「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の三作を収録。

「妊娠カレンダー」は、超神経質な姉の妊娠から出産までを、妹の目線で追っていますが、このお姉ちゃまの神経質っぷりと、胎児への全然主観的じゃない感がなんだか不気味なほど。

ただ、つわりの時に変なものがやたら食べたくなったり出産日が近づくにつれ「痛いのかなあ。。」という恐怖が大きくなっていったのは同じかな。

姉の出産に寄り添う妹が、染色体異常を引き出すかもしれない果物のジャムを作っては姉に食べさせるという表現もちょっとシュールすぎで、この作品の良さがあまりわかりませんでした。

「ドミトリイ」というのは学生寮のこと。かつて自分のいた学生寮にいとこを紹介した女性が遭遇する、入居者失踪の謎。

管理人室の天井のしみが次第に大きくなり、ぽたりぽたりと粘りのある液体が。。。というのも怖い。。。入寮した従弟に一度も会えないというのも、異形の管理人さんも怖い。。。

妊娠カレンダーもこのドミトリイも、結末がはっきりと書かれていないところも想像が膨らんで背筋が寒くなりました。

一番良かったのは「夕暮れの給食室と雨のプール」。

どうも宗教の勧誘くさい身なりの良い父子と、結婚を間近に控える女性の話です。我が家にもそれっぽい勧誘の方がよくインターフォンを押しますが、たいがい「ご奉仕にまいりました」と仰います。お断わりしますけど。この作品では、「あなたは難儀に苦しんでいらっしゃいませんか?」と問いかけられます。気づけばこの父子は聖書もパンフレットも持っていません。最後まで宗教の勧誘ということは語られませんが、後日、女性はこの父子が学校の給食室を眺めている場面に出会い、思わず声をかけます。何故給食室をみているのか。。その問いに答える中で、父らしき男性は、自分が小学校の時に持ったプールと給食に関するトラウマについて語りだします。今は衛生管理が厳しくなっていますが、道路工事に使うようなシャベルでシチューをかき回しているとか、ゴム長靴を履いてポテトを潰してサラダを作っているといったショッキングな場面をみてしまったとか。。。トラウマになりますよね、そりゃあ。。。プールについても、泳げなかった彼の水への恐怖のはかり知れない大きさがずっと心の澱として残っていると。

「つまり、僕自身の問題なんです。誰でも一度は、集団の中に自分をうまく溶け込ませるための、ある種の通過儀礼を経験すると思うけど、僕はたまたまそれに手間どってしまった。(中略)そして、夕暮れの給食室を見ると必ず、あの頃の胸の痛みを思い出すのです。」

という言葉がずんと響きました。私にも、あったかもしれない。そういうこと。この父は、「ふとしたきっかけで乗り越えた」と発言していますが、結局親となった今でも、その「難儀」をず~っとひきずって生きているのだと思いました。

この後、父子は担当地区がかわることになり、女性と再び会うことはなかったようです。

自分自身の問題。乗り越えてないこと、まだまだあります。このトシになってもなお。


彩の国シェイクスピア・シリーズ第32弾「尺には尺を」@さいたま芸術劇場1階J列下手

2016-06-04 23:55:36 | シェイクスピア

 

作 W.シェイクスピア

翻訳 松岡和子
演出 蜷川幸雄 演出補 井上尊晶
出演 藤木直人/多部未華子/原康義/大石継太
    廣田高志/間宮啓行/妹尾正文/岡田正
    清家栄一/新川將人/手打隆盛/松田慎也
    立石涼子/石井愃一/辻萬長 ほか 

あらすじ
舞台はウィーン。この街を治める公爵のヴィンセンショー(辻萬長)が、領地での全権をアンジェロ(藤木直人)に委任し、国外に出かけた。実はヴィンセンショーは修道士の姿に変装し国内に留まり、権力が人をどう変えるのか、観察したいと思っていたのだ。ヴィンセンショーの統治下で法に寛容であったことに不満を持っていたアンジェロは、街を厳しく取り締まる。折悪く、クローディオという若い貴族が、結婚の約束をした恋人ジュリエットを妊娠させてしまう。厳格な法の運用を決めたアンジェロは、「結婚前に関係を持つことは法に反する」と、彼に死刑を宣告する。クローディオの友人ルーチオは、修道院にいるクローディオの妹イザベラ(多部未華子)を訪ね、アンジェロに会って兄の死刑の取り消しをするように頼む。兄思いのイザベラはアンジェロに面会し慈悲を求めるが、何とアンジェロはイザベラに恋をしてしまい…。(公式HP)


5月12日に亡くなった蜷川幸雄さん最後のシェイクスピアを、図らずも初めて蜷川シェイクスピア(2003年、藤原くん最初の鮮烈な「ハムレット」)を一緒に観た劇友うさぎさんと観てきました。

事務室前には記帳台と献花台。ガレリアには舞台写真。パンフレットの最初のページには追悼文。蜷川さんの死を、劇場全体が大きな悲しみを持ってかみしめているかのようでした。

記帳したり、写真パネルをながめたりしていたので客席にはいるのが5分前になってしまいました。いかん!忘れてた!舞台上には蜷川作品らしく、開演前の役者さんたちがバラバラと台詞の稽古や談笑中。

重厚な貴族の衣装が本当に素敵同じ時代設定の舞台でも、この衣装の素晴らしさはなかなか他では味わえないです。

ポスターなどのビジュアルでは、藤木さんと多部ちゃんが主役っぽいし、多部ちゃんが最初と最後に印象的な演技をする美味しい役どころなのですが、私はやっぱり辻さんの公爵の抜群の安定感が印象的でした。こまつ座舞台での「誠実な日本人」というキャラクターの印象が強い辻さんですが、2004年「リア王の悲劇」(この時のリアは石橋蓮司さん)でケント伯を演じられたこともありました。こうした西洋の貴族もぴたりとはまる素晴らしい俳優ですね。辻さんの声を聴くだけで安心できる感じがします。

ストーリーそのものは女性の持参金の額を引き上げようと結婚を先延ばしにするとか、ひとめぼれした相手と他の女性を間違えて抱いたのに、後で言われるまで気がつかないとかツッコみどころ満載ではありますが、とにかく蜷川組ベテランのみなさん、ネクストシアターの若手、みんな蜷川さんの不在を感じさせないしっかりした演技と抜群のテンションでこの作品を作り上げていました。原さん、大石さん、廣田さん、間宮さんに清家さんに妹尾さん、岡田さんも新川さんも。ネクストの松田さんや鈴木彰紀くん鈴木くんは娼婦から役人まで幅広く、ほとんど出ずっぱり。内田君も目立つ役。(やっぱり上半身脱がされてた・・)

最後にイザベラが青々とした空に自由と希望を象徴するように真っ白な鳩を放ちます。

カーテンコール2度目には、役者さんの背後に蜷川さんの葬儀に使われたあの遺影。役者さんたちはみな、いつも蜷川さんが座っていたセンター後方席の方をまっすぐに見つめ、礼をしていました。涙をぬぐっている姿も。どの役者さんの胸にも、蜷川さんの厳しくまっすぐな指導が沁みているんだろうなあと、なんだか私もこみあげてしまいました。蜷川さん、本当にいなくなっちゃったんですね。シアターコクーンでも、このさい芸でも、ロビーで気さくに談笑しているお姿をよくお見かけししたものです。

あと何作か残す彩の国シェイクスピア・シリーズ。どのような形で継続するのかな。日本の演劇界は、本当に大きな人をなくしたんだなあと実感するひとときでした。蜷川さんのおかげでシェイクピアの面白さを知りました。ありがとうございました。やすらかにお休みください。 合掌

 

結構どうでもいい話ですけど、劇場に向かう埼京線に乗っていたら、車内モニターに山形新幹線運行状況「カモシカ衝突」英語表記でAntelope collisionとありました。別になんてことないけど・・・動物の種類までいるのかなあ

Crow collisionとかCapibara collisionとかもあるのかしら。ちなみに人身事故はPassenger injuryなんだそうです。このところ人身事故が多いけれど、この表記を見たら外国人は日本の列車ってそんなに負傷者が多いのか、危険なのかってびっくりするかも。。。と、ふと思いました。

 


今年もレボリューション

2016-06-03 23:18:22 | 

子どもの頃飼っていた愛犬がフィラリアで苦しんだことがありました。猫はあんまり関係ないかとずっと思ってましたが、最近は猫も注意が必要と言われてきているとかで、かかりつけの獣医さんから「そろそろ・・」とDMが届きました。

ちゃめは完全室内猫だし、最近は年取って脱走もしなくなったのですが、網戸ごしに会いに来るトラ猫ちゃんと接触しないわけでもないし、蚊もこわい。・・・と、いうことで、結局今年もレボリューションをすることにしました。

ノミ成虫、ノミ卵、ノミ幼虫、フィラリア、耳ヒセンダニ、回虫。。。虫の季節に0.75mlピペット1本を月に1回、映画1本分弱のお値段が高いのか安いのかですが、病気になってしまうことを考えれば、まあいいか。