カフェのT君のところでは、クリスマスに、一人芝居の
パフォーマンスを行ったらしい。
女の子一人と、音楽をプログレ好きの男の子が担当、
T君もベースで参加という、なんともどうなのか?の
ものだが、早速その時のヴィデオを見せてもらった。
それは、予想通りの、どう反応したら良いのかなとい
う類のものだった。
女の子一人が、ただ登場し、座って何をするのでもな
く、たまに何か呟くというもので、三十年前だったら
前衛パフォーマンスとして、ひょっとしたら認知され
たかも、というさんざ見飽きたものだった。
はっきり言ってトホホなものだ。
やってる女の子は、二十歳くらいなので、そういうも
のを知らないから本人としては斬新のつもりかもしれ
ない。
観客の殆どは、パフォーマンスなど興味もないし見た
こともないから、ただただ戸惑っているみたいだった。
お気の毒としか良いようがない。
パフォーマンスと言えば、嘗て、周りに仲の良かった
舞踏家が何人かいた。
自称であれ、本人が舞踏家と言えば舞踏家なのだから、
彼らは立派?な舞踏家だった。
それは、殆ど裸に白塗りのやつ、と言えば分かるあの
舞踏で、有名どころの土方巽ともう一人の笠井叡、そ
の流れを汲む舞踏ということだった。
舞踏と武道は共通するとか何とかいって、武道の相手
をさせられたり(真似事)、いろいろ楽しいことも多
かった。
自分の肉体が財産なので、間違いなく体は鍛えていて、
全員余計な脂肪はついていなかった。
肉体による表現。
だから、あまり衣装は身に付けなかった。
そして、お金も身に付けてなかった。
つまり、全員貧乏だったのだ。
但しこれは、意図したものではない。
そんな彼らの舞台でかける音楽は、「ピンクフロイド」
などのプログレが多かった。
振り返ってみれば、こちらの音楽的趣味にかなりの影
響力を持っていたのが彼らだったということだ、今思
うと。
「キャメル」なんてのもそうだったし、言わずもがな
の「キングクリムゾン」も。
渋谷にあった、プログレ専門の喫茶店にもわざわざ行っ
たくらいだから、当時の興味の度合いも分かると言う
ものだろう。
一般の常識から外れた人たちだから、こちらも面白かっ
たし体質的に合ったのは間違いない。
今でもあの頃はかなり懐かしい。
その中の一人は、たまに会うこともあるが、やはり相
変わらず世の中とは良い具合に折り合いはついてない。
しょうがないね、こればっかりは。
そういう人種に生まれついてしまったのだから。