ゴダールに感心した二人の話題は、いつしかフランス映
画に対するイメージについてになった。
「それにしても相変わらず、フランス映画というとス
テレオタイプの見方をしますよね」(Y)
「退屈、暗い、難解か」(私)
「そうそう」(Y)
「代表はトリュフォー=退屈、ブレッソン=暗い、ゴダ
ール=難解でいいんじゃないか、まあトリュフォーは
ロメールでも可だけど」(私)
「確かに、この三人だけ見ればそう言われてもしょう
がないところはありますよね」(Y)
「でもそこに面白さがあるんだけどね」(私)
「問題は、娯楽性ですね」(Y)
「実際、今のフランス映画なんて結構ハリウッドより
になってるんだけどね」(私)
「フランス映画の原型イメージの正統的な後継者は、
レオス.カラックスくらいじゃないですか」(Y)
「それゆえに、映画が作れないと」(私)
リュック.ベッソンなんて完全にハリウッド化し
てるし、他のジャン.ジュネやパトリス.ルコン
トなんかは、お洒落な感じの、適度に軽い映画を
作ってるしで、従来のネガティヴイメージのフラ
ンス映画というものは、実際はそれ程多くは無い。
「そう言えば、今度、暗い退屈難解の代表映画フィリ
ップ.ガルレ観にいってきますよ」(Y)
「えっ、本当。でもガルレ駄目なんだよなあ」(私)
「どうしてですか?」(Y)
「眠くなるんだよね、あのリズムが」(私)
「それが良いんじゃないですか」(Y)
「あと駄目なのが、ベルイマン、タルコフスキー」(私)
「全部、僕の好きな監督じゃないですか」(Y)
「分かるだろう、共通のリズム」(私)
「そういう意味では一貫性があるといえばある、と言
えなくも無いですか」(Y)
「そんな回りくどい言い方しなくて、体質に合わない
で良いんだよ」(私)
「じゃあ、体質の違いということで」(Y)
「それより、今、ストローブ=ユイレ特集やってるの
知ってる?」(私)
「どこで、ですか」(Y)
「アテネフランセ、今度観に行こうと思ってるんだけ
ど」(私)
「あっ、いいですね」(Y)
「ところで、観たことあるの?」(私)
「実は、無いんですよまだ」(Y)
「どういうのか訊こうと思ったのに」(私)
前から興味があり一度は観たいと思っていたのだ
が、なんせ上映するところが超局所的なのでその
機会がなかったのだ。
しかし、今回どうやらその希望が叶えられそうな
のだ。
「じゃあ、方やガルレ、方やストローブ=ユイレでお
楽しみってことだね」(私)
「はい、両者ハッピーでめでたしめでたしと」(Y)