地元出身の有名建築家。
その世界に興味のある人なら絶対知っているはずだが、
そうでない人には今ひとつ知名度はないかもしれない(
安藤忠雄ほどの知名度はないという意味で)。
地元でさえ、いまだに知らない人のほうが多いくらい
だから、それもしょうがない。
地元にある彼の建物は一つ。
下諏訪(湖畔沿い)にある博物館だ。
正式名称は「諏訪湖博物館・赤彦記念館」。
なんだか長ったらしい名前だ。
何ゆえ赤彦がついてるか不思議に思うかもしれないが、
島木赤彦(アララギ派)も地元出身だからなのだ。
因みに、諏訪湖を詠んだ次の句が地元では有名。
「湖の氷はとけてなほさむし
三日月の影波にうつろふ」
で博物館なのだが、地元関連で「場の文脈」に沿った、
珍しい建物であると言える。
唐突に出現する公共施設、たとえばギリシャ神殿風と
かヨーロッパのどこそこ風、或いは、動物を模したと
かアニメから採った幼児的なものとは、一線を画して
いる。
つまり、トホホな建物ではないのだ。
実際は、コンクリートの打ちっぱなしという、モダンな
つくりなのだが、曲線主体のラインが、周りの風景と
不思議に調和している。
よくある、コンクリートの打ちっぱなしの厭味な主張
は感じない。
そんな建築家「伊東豊雄」だが、その名前を知ったの
はほんの十数年前の話だ。
つまり、この建物を作った時、初めて知ったのだ、こ
の私も。
当時、なんだか変わった建物が出来つつあり、完成し
た時には「なかなか良いなあ」と思ったことを覚えて
いる。
他の、公共施設「箱物」は、ご多分に漏れずセンスの
悪いものばっかりだったので、新鮮な印象を受けた。
そして、伊東豊雄という建築家でしかも地元出身だと
いうことを知り、地元出身でこんなセンスがある人も
いたんだと感心したものだ。
但し、他の人間もそうだったかというと、必ずしもそ
うではない。
「変な建物を作ってまた無駄遣いか」というのを実際
聞いたし、他の建物と全く同列に捉えられていたこと
は事実だった。
まあ、今でも状況はそう変わってないが。
結局、公共施設というものは、全員の同意を得ること
など不可能で、多数に支持を得たものは、それはそれ
でしょぼく、中途半端なものであるというのは、普遍
的な事実(と思う)。
この建物も、パブリックアートとしての価値は、充分
あると思うのだが、なかなかその点で支持を得るのは
難しい。