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神戸ドキュメンタリー映画祭 座談会『バッハの肖像』『KAZUO OHNO』~映像と音のせめぎあい~

随分前になるのですが、書きかけのままアップしそこねていた報告をなんとか完成させました。10月27日、神戸映画資料館でのドキュメンタリー映画祭の一環で、『バッハの肖像 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009より』の上映があった。カンタータ、ヨハネ受難曲、マタイ受難曲と初めて聴く曲がほとんど。難解なタイトルにみえても、バッハはバッハで、私は、フーガの音階を聴くだけで、切なさとさみしさで、なんだか胸 . . . 本文を読む
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No1126『怒りの葡萄』~さりげない優しさ~

水曜日の晩、J・フォード監督の喜劇『ドノバン珊瑚礁』を観て元気を出そうと、上映時間ぎりぎりでなんとかプラネットに間に合った。チケットを買って中に入るとお客は、6、7人。座席に座って、うきうき待っていると受付のお姉さんが、「ただ今よりJ・フォード監督の『怒りの葡萄』を上映します」と告げた。あれ!?一瞬、目が点になった。でも、すぐ気がついた。そういえば、火曜が『ドノバン珊瑚礁』で水曜が『怒りの葡萄』だ . . . 本文を読む
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弾き語りの尽きない魅力~心踊り、胸にしみいるひととき~

やっぱり好きだなあと惚れ惚れした。先月初めて弾き語りを聴いたannさん。前回、彼女の奏でるピアノの音や歌声が、歌の礫(つぶて)だと思ったのは、間違ってないって思った。(前回の感想) annさんのピアノが鳴り響き、歌が始まるなり場内はannさんの世界に染まる。 annさんがかき鳴らすピアノの和音は、ひとつひとつが力強く、パワフルに迫ってくる。伸びのある、どこまでも届きそうな歌声とあわさり、魂のこ . . . 本文を読む
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No1125-2『かぐや姫の物語』~表情豊かな人物と、野山の美しさ~

子どもをもつ親が見たら、きっと我が子の小さい頃が思い返されてたまらなくなるだろう。かぐや姫がうまれたばかりの赤ん坊のときのシーン。ころころところげまわって、とっても可愛い。はいはいしている時もくるんくるんと、回ったり、伸びをしたり、床から落ちそうになって、ばあやが、すごい勢いで駆け寄る気持ちがよく伝わる。冒頭から、どのシーンも、まるで一枚の絵をみているような見事な構図。ロングショット(遠景)の時に . . . 本文を読む
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No1125-1『かぐや姫の物語』~ほんとうの“幸せ”って~

公開初日、レイトショーでふらりと行ってきた。泣けた。生きるって、汗だくになって、大声で思い切り笑って、涙にまみれて、泥んこになって、体当たりで生きることだって思った。青空を眺めて勇気をもらい、風の匂いを感じて、草木の青さに励まされ、お月さまの光に慰められ、太陽の光にあたたかみをもらう。そうして、生きていること、生きていられること、生きるって、そういうことなんだって映画を観ながら、身体じゅうで感じた . . . 本文を読む
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No1124-2『ペコロスの母に会いに行く』~ぼけたって母ちゃんは母ちゃんだ~

50歳過ぎのゆういちの母は、認知症でぼけてきている。平凡な、どこにでもいるおばあちゃん。でも、ゆういちにとっては、たった一人のかけがえのない母。その母がたどってきた人生の重み、苦労の多かった人生に、じんわりと胸が熱くなる。と同時に、今こうして生きていてくれること、生の尊さに打たれる。親子の強い絆に、自然、感謝の思いがわいてくる。メガホンをとったのは、自身も85歳を超える森崎東監督。 したたかで、 . . . 本文を読む
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No1124-1『ペコロスの母に会いに行く』~母の人生の重みがじんわり迫る~

振り向いた表情の哀しさに釘づけになる。つらい過去も全部ひっくるめて、その人自身の人生としてあたたかく描き出す。認知症の母みつえと、団塊世代のゆういちとのさりげない毎日を、ユーモアいっぱいに描く。介護施設に入ったみつえは、認知症で、息子の顔を忘れてしまう。施設を訪れた息子が、帽子をとって、はげた頭を見せると、息子だとわかる。ペコロスは小玉ねぎのこと。みつえは、認知症で、死んだ夫や幼なじみが会いに来る . . . 本文を読む
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No1123『ベニシアさんの四季の庭』~含蓄のある言葉に心ひかれ~

「私たちは年をとりますが、庭にいるときの心はいつも変わりません。真の贈り物は『心の庭』にあるのです。それぞれの心の深いところに一瞬一瞬のなかに」 学生時代、運動音痴のくせに予備校で仲良くなった友達から運動部のよさを聞いて、体育会のバドミントン部に入った。 案の定、肝心のバドミントンは運動神経の悪さで、高校生みたいに、学業よりも熱心に練習しても、肩や腰が入らず、板を振ってるみたいで上手くなれなか . . . 本文を読む
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No1122『恋するリベラーチェ』~きらびやかな姿の後ろに隠したもの~

「なぜ君を愛するのか君が君だからではなく君といる時の自分が好きだから愛するのは君が変わったからだけじゃない君が僕を変えてくれたから僕の愚かさを見過ごしてくれるから僕の善良さを信じてくれるから なぜ君を愛するのか僕の不協和音に目をつぶってくれるから僕の中の音楽に耳を傾け高めてくれるから」 「不可能なゆめを見てさらなる高みを目指し力尽きても挑みつづけ届かぬ星に手を伸ばしこれが私の冒険の旅あの星を追 . . . 本文を読む
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No1119-2『天国の門』~今、駆け付けたい映画。30年前の評価を超えて~

 「空前の駄作・失敗作」とされたそうな。1980年公開当時の評価によれば…。「轟々たる非難のすえに息の根を止められた」とある。つくづく、ひどいなあと思う。キネマ旬報11月下旬号掲載の渡部幻さんによる「マイケル・チミノ本」書評には、「映画は『時代の子』であり『環境の子』でもあるが、ときにその『試練に耐える』作品が出てくる。『天国の門』はどうか?いま、あらためて真価と運命の問い . . . 本文を読む
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No1121『眠れる美女』~“生”につなぎとめる何か~

20回以上も入退院を繰り返し、「生きてても何にもいいことなんてない」と叫び、リストカットを繰り返す。教会で賽銭を盗もうとしたり、病院前で、出勤してくる医者に朝食代を恵んでくれと頼んで、懐から出された財布をひったくろうとしたり、追い詰められた存在の女、ロッサは麻薬中毒患者。生きててもどうしようもないと叫んで、リストカットをして、入院させられた病室の窓から衝動的に飛び降りようとする。若い医師パッリドが . . . 本文を読む
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「ラングから黒沢清へ」濱口竜介監督のお話②~運命~

ラングから、黒沢へと話は戻る。『蛇の道』では、すべてを把握し、黒幕のような存在だった哀川翔が続編となる『蜘蛛の瞳』では、殺された娘の復讐を果たして、生きる目的を失い、いろんなことに振り回される存在になる。『蛇の道』での復讐を遂げられるかという緊張した流れが『蜘蛛の瞳』では、明らかに停滞している…。旧友のダンカンと偶然再会するシーンを観ても、どこか“ゆるみ”、& . . . 本文を読む
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「ラングから黒沢清へ」濱口竜介監督のお話①~復讐~

連休の中日の日曜日、神戸映画資料館で「はたのこうぼうのアメリカ映画研究会#2」があり、「ラングから黒沢清へ」と題して濱口竜介監督のお話がありました。考えさせられるところの多い、興味深い発表でしたので少しご紹介したいと思います。まずは、お話の前に上映された、黒沢清監督の『蛇の道』(97年)について少し感想を。  冒頭、普通の住宅街の道路をまっすぐ進む車のフロントガラスからのショットに、なん . . . 本文を読む
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No1120『タバコ・ロード』~老夫婦が歩くうしろ姿にしみる情~

老夫婦が万策尽きて、家も土地も明け渡すことになり、救貧農場まで、手提げ荷物一つ抱えてとぼとぼと歩いていく。その姿をとらえたショットがどうしてこんなにも心をひきつけるのか。流れてくるのは、何度も映画の中で流れた讃美歌のメロディ。手前で落ち葉がほろほろと落ちていく、その落ち葉にピントがあい、遠景で、道の向こうにとらえられた老夫婦のうしろ姿。落下する落ち葉に、迫りくる抒情に、思わず目頭が熱くなる。一本道 . . . 本文を読む
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No1119『天国の門』~19世紀アメリカ西部の知られざる悲劇~

馬、馬、馬である。怒涛のように、何十頭もの馬が駆けていくひづめの音がいまだ頭の中で鳴り響いている。キネマ旬報の「映画検定公式テキストブック」の年表に「1981年マイケル・チミノ監督『天国の門』大コケ。」とある。映画を観たばかりの人間からすれば、こんな失礼な書き方しなくてもと思う。確かに、当時、予算も撮影期間も大幅に超過、製作費は当時のレート換算で約80億円!219分の当初のヴァージョンは批評家、観 . . . 本文を読む
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