ファーストシーン。
早口でわけのわからないことを
唱えている男の横顔。
激しい雨。
一気に観客を映像世界に引き入れる
見事な導入。
主人公は精神を病んだ男、デイビッド。
ピアニストとして将来を嘱望されながらも
過酷なピアノの練習で
彼の運命は一変した。
しかし、長い暗闇の時期を経て、
妻や仲間の力を得て
初めてリサイタルを開き、
無事、演奏を終える。
これは、実在のピアニスト、
デイヴィッド・ . . . 本文を読む
前作の大ヒットから4年。
期待の2作目。
しかし、期待に反して脚本の練りが甘い。
本作のブリジットは、放送局のレポーター。
いつものドジやギャグも楽しいけど、
少し大げさで、無理があり、
作為を感じた。
ヒュー・グラントの役どころも中途半端で
人間味に欠ける。
日常の微妙な感情の起伏を紡ぎ取るような
繊細さが足りない。
と、文句を書いたが、
ブリジットを演じる
レニーゼルヴィガーは、
前作に . . . 本文を読む
家出した少女由希を演じる谷村美月の
子どもなのに、ふっと大人のような表情を見せる、
危なっかしい存在感がすばらしい。
華奢で、不安定に見える体に、長い手足。
彼女の目は、
まるで、心の底まで読めるんじゃないか、と思うくらい、
力があって、魅力的。
ぽんぽんと突き放したように、
早口の大阪弁でしゃべる勢いに圧倒される。
親と一緒にカルト教団に入っていた少年、光一は、
教団の崩壊で、養護施設に入れら . . . 本文を読む
一人の陶芸家として、母として
たくましく強く生きる実在の女性、
神山清子を田中裕子が熱演。
何があっても、弱音を吐くくらいなら、
少しでも前に一歩踏み出そうとする生き様に、
圧倒された。
息子の若手陶芸家で、白血病となる浩一を演じる
窪塚俊介が、熱演。
病と、自分の運命と精一杯闘う姿には、
涙があふれる。
おばさんの骨髄を移植されたものの、
拒否反応の苦しさに、のたうちまわる彼の顔は
真っ赤で、 . . . 本文を読む
クライマックスで
耳が不自由で口の聞けないヤーバを演じる
香川照之の、演技がすばらしい。
身振り、手振りで、
必死に妻のヌアンに思いを伝えようとする姿からは、
妻を大切に思う彼の思いが
とめどなくあふれてきて、
まさに映画的瞬間。
香川くんは、中国映画「鬼が来た!」でも
見事な演技達者ぶりを披露したが、
本当に、表情がよく、目に力のある役者さんだ。
監督は、
「山の郵便配達」で
父と子の心のふ . . . 本文を読む
離婚して2年経つのに、まだふっきれずにいる、
ワインには詳しいけど、ちょっとさえない教師マイルス。
1週間後に結婚を控えた、二流俳優で尻軽のジャック。
まるで性格の違う二人の男の珍道中。
ワインが目的といいつつも、
実は、どこかで女性との出会いを期待している二人。
ユーモアあふれる掛け合いがいい。
とりわけ、ワイン畑や、ゴルフ場やらで、
あたふたと二人が駆けていく姿は
大笑いした。
そうして、 . . . 本文を読む
一風変わった映画の題名は、
パンフレットによると、
「東北に古くからある民謡の一節にある言葉」で
「“わかりきったことのたとえ”」を意味すると同時に
森崎監督いわく、
「誰もが自分の人生哲学を持って生きているということ」
とある。
登場人物が、皆、喜怒哀楽に富んでいて、
悪役も含め、生き生きしている。
見事な群像劇。
知的障害のある息子の勇(愛称:サム)が
思いきり明るくていい。
サムの父親 . . . 本文を読む
材木置き場で働く青年ノアが
ある夏、
避暑に来ている、
裕福な家庭の娘、アリーと恋に落ちる。
若い二人の熱い青春。
ノアが、アリーを自宅に送り、
玄関で待っているとき、
母親の声が聞こえてくる。
「あの子は、いい青年だけど、くずよ(trash)」
母に口答えする恋人の声も聞こえてくるが、
彼は、そのとき、どんなにつらかったろう。
悲しさを忍び、そっと去ろうとするノア。
ノアの優しさ、純粋さ、謙虚 . . . 本文を読む
舞台は、1968年の京都。
ラジオ放送局の生録音のスタジオで
「イムジン河」を歌う主人公を、
「北朝鮮の歌で、要注意歌謡曲だから」と、止めようとする上司に、
「ドアホ!どんな理由があろうと、
歌ったらあかん歌なんかあるわけないやろ!」と
ディレクター(大友康平)がつっかかる。
思わず目頭が熱くなった。
青春真っ只中の男子高校生たちの
パワーがスクリーンに炸裂する。
強面で、暴力ばかりふるうが、
. . . 本文を読む
舞台は、岩手県早池峰山の山麓の開拓地。
戦後、入植した人々も
冬の厳しい寒さに、次々と山を下り、
とうとう主人公のばあちゃんとじいちゃんの2人きりになった。
里まで10キロ。
昭和63年まで電気も通らなかった土地で
91歳のじいちゃんと、68歳のばあちゃんは
たくましく生きてきた。
本作は、
テレビ番組の撮影で、二人と出会った監督が
じいちゃんの亡くなった後の
ばあちゃんの映画を撮るために
同じ . . . 本文を読む
夜の交差点で、
目の前を高速で通り過ぎる車の光の洪水に
飲み込まれそうになる。
そんな感覚の映画。
スピーディな映像展開。
なかでも
クライマックスのカーチェイスの迫力は
半端じゃない。
目の前で一体、何が起こっているのか、
呆然としてしまった。
カメラワークの凄いこと。
いかつい体のマット・デイモンが、
肩で風を切って、
足早に街を横切っていく姿が
様になっている。
口数も少なく、思いは内に . . . 本文を読む