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No1124-2『ペコロスの母に会いに行く』~ぼけたって母ちゃんは母ちゃんだ~

50歳過ぎのゆういちの母は、認知症でぼけてきている。
平凡な、どこにでもいるおばあちゃん。
でも、ゆういちにとっては、たった一人のかけがえのない母。

その母がたどってきた人生の重み、苦労の多かった人生に、
じんわりと胸が熱くなる。
と同時に、
今こうして生きていてくれること、生の尊さに打たれる。
親子の強い絆に、自然、感謝の思いがわいてくる。

メガホンをとったのは、自身も85歳を超える森崎東監督。

したたかで、明るくて、おおらかな市井の人たちの生き様を
楽しく、力強く描くことにかけては、
右に出るものはいない、喜劇の巨匠。

舞台は故郷長崎。
ロケにこだわった撮影とあって、
坂道の多い長崎の街が、存分に生かされている。

冒頭、ペコロスことゆういちの駐車場の後ろには、
坂道があって、近所の女性が上がっていく。
坂道を上がったり、下がったり…いつも動きがある。

とにかく映画のテンポがいい。
たとえば、一つだけ例をあげると、

冒頭、みつえが一人で留守番しているところに
亡き夫の弟が、仏壇にお参りにやってくる。
玄関で、やってきた初老の男を見て、
みつえは、認知症で、はじめ誰だかわからない。
説明されて、やっと思い出す。
仏壇の前で、お線香をあげる義弟。
「チーン」、
急須からお茶を入れる音「チャポチャポ」
まんじゅうを美味しそうにほおおばる、みつえの顔。
「ああ、おいしい」ひとりごと。
陽だまりのような台所。

仏間の前を通ると、見知らぬ男がいて驚く。
義弟が来ていることをすっかり忘れているのだ。

義弟は義弟で、仏壇の前ですっかり眠り込んでいたようで、
線香の長さだけが、過ぎた時間を教えてくれる。

なんておもしろいんだろう。
わずか数ショットを、ポンポンとたたみかけるように描くだけで、
人物のおもしろさ、人間味が伝わる。
これぞ映画の醍醐味と思った。

脚本もみごとだ。
回想シーン。
結婚したばかりのみつえと夫(加瀬亮)が
新居らしき、古い長屋の一室に、荷物を抱えてやってくる。(時代は戦後すぐだろうか)
加瀬が、玄関の引き戸を開けようとするが、
たてつけが悪くて、開かない。
みつえが、私に任せてと、着物の腕をまくって、
両腕で力を入れて、ガラガラッと音をたてて開ける。
加瀬が、淡々とした調子で、力ありますね~と繰り返す。
いつも野良仕事やってますからと、みつえは明るく表情豊かに言う。
夫婦の、わずかな会話で、
2人の人物像、育ってきた環境も伝える。

ゆういちは、営業のサラリーマンだったが、
漫画描いたり、音楽活動したりで、仕事はさぼりがち。
ギター弾いて、なじみの店で歌っているのも楽しいシーン。

公開初日の先週土曜日、劇場に観に行ったら、
はげをめぐるシーンに、やたら反応して笑っているおっちゃんがいたり、
義弟とのシーンで、くすりと笑っている女の子がいたり、
いろんな反応がある。
そんなことも感じながら、ぜひ映画館で観てほしい作品。

紹介は以上です。

ほかにも、いろいろ書きたいことがありますが、
なかなか時間がありません。
気がつくと、いつも2時、3時。
睡眠時間がどんどん削られて、ますます顔はお化けになる。
仕事が休みでずっと書き続けることができたらいいなあと思う。
そんなわけないけどと思う木曜日の晩でした。

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