グルジアのイオセリアーニ監督の『落葉』を観た人はきっと、色でいうなら、幸せ色に染められるにちがいない。冒頭のドキュメンタリーのような畑でぶどうを摘み、そのぶどうをいっぱいカートに入れて運び、つぶして、ワインをつくっていく過程を淡々と映していくのだけれど、なんだか味わい深い。働く男たちのため、女たちがせっせと食卓に皿を並べ、準備をする。そこにももちろんワインのグラスが並ぶ。
ワイン工場が舞台で、そ . . . 本文を読む
「ライブに遊びに来てください」音楽の世界の人たちは、ライブのことをこんなふうに言う。聴きに行くのであって、遊びに行くわけではないから、なんだか少し違和感を感じていた。でも、昨日、十三のライブバーなるところに初めて足を踏み入れて、やっとわかった。音楽空間そのものを全部楽しんでほしいという意味なのだ。そこには、ギターあり、シンセサイザーあり、歌あり、司会の語りから、歌い手のトーク(MC)、客席からの掛 . . . 本文を読む
『We Bought a ZOO』が原題。タイトルに幸せとあったり、予告を観ても、いかにも感動を呼ぶストーリーのように思え、マット・デイモンファンとはいえ、あまり観たいと思わなかったのだが、監督が『エリザベスタウン』のキャメロン・クロウ、音楽がシガー・ロス(春の爆音映画祭で知ったばかり)と新聞の映画紹介で読んで、俄然興味がわき、雨の中、布施のラインシネマに駆けつけた。正直、何度もぽろぽろ涙が出た。 . . . 本文を読む
宮城県石巻市では、14校の小学校が被災し、186名の児童が死亡・行方不明となっている。門脇小学校もその一つ。海岸から800mのところに位置し、校舎は津波に襲われ、その一部は燃える車から延焼もし、今は、子どもたちは、別の学校の校舎で学んでいる。3月11日、津波が起きた時、子どもたちは学校のどこで何をしていて、地震をどう感じたのか、各教室の先生方は、どう振舞い、どんなことを考えていたのか。そして、地震 . . . 本文を読む
シネ・ヌーヴォでのロシア映画特集の1本。近畿上陸かと思われた台風も、東に進路がずれヌーヴォでは、予定どおりの上映を決めてくれたおかげで観ることができ、感謝。お薦めの1本。
1984年の作品で、フィルムの退色は激しいものの俳優、脚本、カメラといい、大好きな作品。原題の直訳は「生命も、涙も、愛も」。国立の老人ホームが舞台。映画は、どことも解説しないまま、ひとりの女性が、旅行鞄と、紐でしばった何冊もの . . . 本文を読む
やっと神戸KAVCのフィルム上映で観ることができた。人と人の距離が、なんと心地よいことか。主人公のマルセル夫婦、パン屋のおばさん、雑貨屋のおっちゃん、バーのマダムと、皆すてきなたたずまい。最初は、仕事を終えて帰ってくるマルセルを見かけると、あわてて店のシャッターを閉めた雑貨屋のおっちゃんが、いつのまにか、マルセルのところに、アフリカ難民の少年がいると知ってか、打って変わって、何も言わずに、売れ残り . . . 本文を読む
真っ暗な酒場。怒涛のような雨音と雷。気がつくと、店の入口に、凄みのある形相でイーストウッド演じるマニーが立っている。冒頭、牧場で、子どもたちと豚の世話をしながら泥まみれになっていた顔とはまるで別人。
そこにいるのは、人を殺すために入ってきた顔。その凄み、迫力に圧倒される。丸腰の店の主人に、いきなり発砲し、命を奪う。銃撃戦は一瞬で終わり、保安官役のジーン・ハックマンが地獄で待っていると言い残す。イ . . . 本文を読む
冒頭、中年の女性が村のはずれに出て、ずっと遠くまで延びた一本道に立ち、遠くを眺める。誰を待っているわけでもない。もう息子は帰って来ることはないのだから、という語りから始まる。映画のラストで、この一本道が再び登場した時、母の寂しさが、わがことのように感じられ、痛烈な悲しみを伴って、押し寄せてきた。見事な脚本、演出。
主人公の19歳の青年アリョーシャがすばらしい。明るく、素直で、優しくて、あちこちで . . . 本文を読む
大阪シネ・ヌーヴォで、ロシア・ソビエト映画特集が始まった。人づてにきいたところでは、最初の『道中の点検』から、結構な混雑ぶりで、やはり人気があるみたい。
私は夕方から参加。『処刑の丘』では、劣勢のパルチザンとドイツ軍の戦いから始まった映画がパルチザンの二人の兵士の食糧と弾薬探しの道中となる。二人の感じがちょっとよいかなと思って観ていたら、運悪く、捕らわれの身となり、そこからは、タイトルどおりの処 . . . 本文を読む
昨日の昼休み、同僚に日食眼鏡を貸してもらい、金星の太陽面通過を見るため、屋外に出た。日なたから眼鏡を透かして太陽を見た。あんまり小さくて、びっくりした。夕陽も朝日も今まで何度も見たが、もっと大きい気がして、眼鏡にうつった小さな小さな球体は輝きを奪われたせいもあって、どことなく心もとなく、小さくみえた。その緑色のまん丸の上をうっすらと雲が横切ってゆく。ゆっくりとした雲の動きが、幻想的で、うっとりする . . . 本文を読む
大好きな作品。小説家志望の青年ギルが、婚約者と訪れたパリで、ある晩突然、1920年代の作家、画家たちが集まるサロンに迷い込む。時計が12時を告げると、昔の型の車が坂道を上ってきて、というさりげないタイムスリップの仕方がすてきだ。フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ピカソと敬愛する文豪、画家たちが、目の前にいるという信じられない事態に直面して、ギルの戸惑い、喜び、驚き、興奮がダイレクトに伝わって、観 . . . 本文を読む
今年の「桃まつり」のテーマは、「すき」。今日やっと1本観に行けた。「弐」の3本。どれもおもしろかった。(※「桃まつり」:若手女性監督たちの短篇自主製作上映)色とりどりの小箱に女性監督たちが、それぞれ、自分の感性のままに、ときめき、切なさ、いろんな想いを詰め込んだ。開けてみないとわからない小箱。そんな、どきどき感がたまらない。どの小箱も、それぞれのきらめきで輝いていた。『最後のタンゴ』同棲していた年 . . . 本文を読む