ヤスミン・アフマド監督が、7月25日に亡くなられた。
享年51歳。あまりに早すぎる。
2007年11月のアジアン映画祭で、
『ムクシン』を観て、家族を見つめる眼の細やかさ、深さ、
言葉少なく、詩情豊かで、音楽にあふれた世界、
すっかり大ファンになった。
『細い目』『ラブン』『グブラ』と
大阪Planet +1で特集上映が行われ毎日通った。
ブログにも書いた。
『グブラ』の悲しい運命を描く冷徹な眼 . . . 本文を読む
岡本喜八監督のデビュー作。('58)
玄関の呼び鈴がきっかけで、
妻の新珠三千代が「私にも心の呼び鈴があるのよ」と言い、
夫の上原謙との間に、愛を呼び覚ますきっかけになったり・・
呼び鈴の使い方もすてき。
上原の少しとぼけたふうの大学教授もいい。
期間を決めて「契約結婚」をしている妻、塩沢ときが
夫の三橋達也から契約延長したいという電話をもらう。
折しもうつぶせに横たわって
ローラー(算盤の玉の . . . 本文を読む
山中貞雄監督の無声映画『鼠小僧次郎吉 道中の巻』(33年)』の一場面、
1分程度のおもちゃフィルムが見つかり、復元されたそうだ。
大河内伝次郎が鼠小僧に扮し、残っていたのはチャンバラの場面だとか。
写真のバックの空と雲もきれい。
関西では9月12日に京都文化博物館で上映予定で、とっても楽しみだ。
岡本喜八監督の『大誘拐』の中にも
身代金が100億円なんて高すぎるのでは、という言葉に
おばあちゃん . . . 本文を読む
まず、東京池袋の文芸坐のちらしの画像を使わせていただいたのは
ひとえに「喜八魂」という言葉にひかれたからです。
映画魂といえば、もう一人忘れてならないのがマキノ雅弘監督。
明日から、NHKのBS放送で
『次郎長三国志シリーズ』9作品の上映が連日始まります。
未見の方はぜひぜひ観てくださいね。
私が特に大好きなのは、
『第六部 旅がらす次郎長一家』
『第八部 海道一の暴れん坊』ですが
第六部は、後 . . . 本文を読む
ピストル、ライフルでの喧嘩じゃ命が幾つあっても足りねえ、
それなら野球で片をつけようと
やくざの組同士が野球トーナメントを開く。
酒好きで、攻撃の回ごとに、ベンチ横で焼酎の入ったやかんを抱えて
ぐびぐび飲んで、酔っ払うピッチャーの田中邦衛が愉快。
菅原文太率いる「岡源組ダイナマイツ」チームの
円陣の掛け声は、「ダイナマイトー」、ドン、ドンと右足で2回、
地面を踏み鳴らす。
思わず真似したくなる . . . 本文を読む
本日、大阪九条のシネ・ヌーヴォで、喜八監督の特集本「kihachi フォービートのアルチザン」の編集を担当された佐々木淳さんのトークが行われました。
この本は既に絶版となっていますが、『大誘拐』までの監督の全作品を網羅し、各作品のキャスト・スタッフ、物語はもちろん当時の映画雑誌や新聞の批評、ロケ取材記事、監督発言、併映作品、興行成績、後年の監督発言まで掲載されています。
森卓也さんによる全作品に . . . 本文を読む
勢いがあるというのは凄いことだ。
映像に勢いがあって、一気に乗っていける。
監督いわく「いまの時代の生き方、平和だけど偽りの人生に反逆して、
タケダケしく生きようとした」
24歳、36歳、48歳の3人の男たち、三銃士。
といっても、3人とも全然かっこよくないところがいい。
36歳の男は、下半身パンツ一つで夜の街を駆け回ることになるのだ。
地下鉄駅通路で若者たちが集会を開く。
個人の自由な意見を . . . 本文を読む
怒涛のような1週間の終わり、明日も観るつもりだというのに、ふらふらと気がつけば九条のヌーヴォへ向かっていた。
はじめて岡本喜八という名前を覚えたのが本作。
とんでもなくおもしろいと、20年以上前、特に映画ファンでもない普通の学生友だちが教えてくれた。いつか観ようと思いつつ、数年後に実家でビデオで借りて観て、ぶっとんだ。
駅からの帰り道、踊りたくて仕方なかった。
頭の中でメロディが踊れ、踊れとささ . . . 本文を読む
少年軍楽隊が最前線に送られる。
デキシージャズを演奏しながら、軽やかに行進する少年兵たち。
楽器は彼らの命だ。
敵地に乗り込む際も、楽器を手離さない。
彼らの演奏する音楽が、映画の要所要所で流れる。
そして、
敵からの爆撃を受けながらもなお続く。
音楽には彼らの魂が宿っていると思わずにはおれない。
「はもる」という言葉を解しない佐藤充演じる調理師あがりの兵隊に
尋ねられ、説明は難しいですねと答え . . . 本文を読む
今までテレビで放送されても、終戦を決議するための会議をずっと映しているだけで、大作だし、あまりおもしろい作品ではないという先入観があった。今日、初めて観て驚いた。喜八監督、ごめんなさい。
なんという緊迫感。
手に汗握り、結末がやってきた時には
解放感で感涙しそうなほど、息詰まるものがあった。
前半、ポツダム宣言を受諾し、降伏するかどうかを決める
閣僚会議が行われる。
そして、降伏が決まり、天皇 . . . 本文を読む
◎監督からのアドバイス
当時、既に役者としてテレビに出て活躍もしていた利重さん。つくりたい映画はあるものの、役者になりたいか監督になりたいか迷っていた。監督がアドバイスしてくれたのは、「撮影所システムも、数年後には崩れるかもしれない、役者として活躍して有名になっておけば、いつか自分で監督できる機会が回ってくるし、役者をやっておいた方がいい。」
「毎晩寝る前に1ページでいいから脚本を書きなさい、毎 . . . 本文を読む
『近頃なぜかチャールストン 』(1981)に主演、『ジャズ大名』 (1986)にも出演された利重剛さんが、8月1日、シネ・ヌーヴォの岡本喜八監督特集に来館され、トークが行われました。とってもおもしろかったので、長くなりますが、前後篇に分けてご紹介します。岡本監督の映画のおもしろさの一端でも伝われば、嬉しい限りです。
岡本監督は、なんといっても、敬愛するマキノ雅弘監督の「次郎長三国志シリーズ」で助監 . . . 本文を読む
人気がないのか梅田ブルグ7ではあと2週間で終映だとか。
ずっと紹介したくて、うずうずしていたのですが、
ここで応援エールを。
実は、私自身、3D映画というので、
子ども向きの夏休み映画と全く期待していなかった。
しかし、いざ映画が始まって、その迫力とテンポのよい展開に
夢中になった。
それもそのはず、ディズニー映画といっても
子会社のピクサーのジョン・ラセターが総指揮。
『ファインディング・ニ . . . 本文を読む
友人に言われてあらためて思ったのだが、
風車小屋のシーンが一番怖かったような気がする。
がったんごっとんと同じリズムで鳴り続ける風車の音。
夫との奉納試合で負けてもらうために、仲代達也に身を売った新珠三千代。
二人が向き合い、新珠の解かれた帯が、
小屋の中で回る輪にひっかかる。
輪といえば、
森卓也さんが、トークで、
『暗黒街の対決』で、
鶴田浩二のバーが銃撃され
店内の飾りの馬車の車輪がくるく . . . 本文を読む
出だしは黒澤明の『用心棒』。
片腕をくわえて登場する犬の代わりにやせこけた鶏。
5日間水しか飲んでない、ひもじい浪人とやくざの
食べ物をめぐるやりとりがおかしい。
ビデオで観た時より、スクリーンで観たほうが、
数段、冒頭の砂嵐がとてつもなく強いことに圧倒された。
とんでもない風だった。
侍になりたい農民あがりの浪人、高橋悦史と
侍が嫌になり、無宿者になった仲代達矢。
二人のかけあいが見事。
敵味 . . . 本文を読む