この週末、両親が愛知から来て、京都で開催中の長谷川等伯展に行ってきた。
すごい人で、入るまで行列。中に入ってからも、すごい人。
しかし、みごたえはあった。
特に、出口近くにあった水墨画のみごとなこと。
ここが一番混雑していて、満員電車のようなときもあったのだが、
少し人が減った瞬間もあって、
人の合間に、まるで霧が晴れたように
絵の下のほうがみえたりして、ひそかに喜んだり。
人ごみの中、少し離れ . . . 本文を読む
公開されてだいぶ経つが、やっとシネマート心斎橋で観ることができた。
主人公あかりを演じる仲里依紗が絶品。
若手女優のうちでも、注目度、期待度とも、大です。
そもそもタイムリープする年を間違えてしまうという
おっちょこちょいな女の子。
失敗したり、驚いたりしたときの表情がすてきで、
屈託がなく、気取らず、飾らず自然体。
喜んだと思ったら、すぐ落ち込んだり、
十代の女の子のくるくる変わる表情が
しっ . . . 本文を読む
映画を見てお金を返せと思ったという知人の声と、最後は泣けるという声とを聞きつつ、アカデミー賞作品賞ノミネートだし、と思い観にいった。
前半は、うーん、これはなんなんだと、半ばしらっと観ていたのが
後半になって、まったく予期せぬ展開に、
なかば手を握り締めながら、
え!?え!?どうなっちゃうの?と
呆然と画面に見入ってしまった。
たくましくもみえない、優男、
自分のことしか考えてなくて、父エイリア . . . 本文を読む
「午前十時の映画祭」の逸品。
上流階級の男性と恋に落ちて、結婚したものの、
夫の友人からは無視され、疎外感と孤独感でいっぱいの若き妻。
外出時に自分の後をつけてくる男といつしか心通わせる。
この男、実は夫が妻の浮気を疑って雇った私立探偵。
いつも白いコートに白い帽子、
のっぽで、愛嬌があって、いつも笑顔で、ユーモアいっぱい。
鞄の中も、マカロンやヨーグルトやグレープフルーツや
食べ物でいっぱいで . . . 本文を読む
クリント・イーストウッドとジェフ・ブリッジス主演
アメリカ西部、モンタナを舞台に
ロードムービーのような、すてきな作品(1974年)
かつて機関砲で金庫を破壊し現金を奪ったことのある
サンダーボルト(イーストウッド)と
少し年下の、
自動車泥棒してしまった放浪者ライトフット(ブリッジス)が出会う。
ライトフット演じるブリッジスのさわやかな笑顔がいい。
一人狼のようなサンダーボルトと出会ったばか . . . 本文を読む
この映画を人に薦めるには、ちょっと勇気が要る。でも、薦めずにはいられない。
チェレの置かれた状況はあまりに残酷で悲しい。
でも、見終わって心に残るのは、チェレの強さと気高さと
天使のような、可愛い笑顔。
誰もチェレの心を踏みにじることはできない。
子どもの純粋さ、清らかさが、チェレのつぶらな瞳に宿る。
1930年代、ハンガリーは独裁政権。
国の政策で、孤児は労働力として養育費つきで養子に出され、 . . . 本文を読む
17年前、ミヒャエル・エンデの「モモ」の100万部突破記念ということで
読書感想文コンクールが行われた。
選考委員は、河合隼雄さんと井上ひさしさんと中村雄二郎さん。
尊敬する大好きな人ばかり。
文筆業にあこがれていた私は、はりきって応募した。
(公募に出したのは、あとにもさきにもこれ限りのような…)
最優秀賞の贈呈式とあわせ
選考委員の3人がパネリストのシンポジウムも行われるということで、
東京な . . . 本文を読む
暴力の連鎖だ。
家に暴力をふるう者がいることほどの悲劇はない。
家に帰れば、そいつがいて、暴力をふるう。
帰りたくない。でも、ほかに帰る場所もない。逃げ場がない。
父親が母親に暴力をふるう。
その姿を子どもがみる不幸。
主人公サンフンは、取立て屋。
激しく殴り倒しては債権を回収していく。
子分にも容赦はない。
でも、サンフンの過去や事情が知れるにつれ、
彼の暴力の中に、深い痛みがあることがわか . . . 本文を読む
笠智衆、田中絹代、杉村春子、東野英治郎、上原謙まで
当時の名役者たちが登場する。
1944年、軍の要請でつくられた戦意高揚映画。
時代は明治初めまでさかのぼり、
10年か、20年くらいずつ、ときの経過をすっとばしながら、
要は、日本軍が引き起こした大東亜戦争について、
明治以来のお国づくり(藩に奉公から国へ)を受け、
日清、日露戦争の帰結として、当然のものとして、
正当化しようというもの。
長 . . . 本文を読む
久しぶりに田中絹代生誕百年特集上映で成瀬巳喜男監督の映画を観た。
『おかあさん』('52)は本当にすてきだ。
娘役の香川京子が明るく読む作文が聞こえてきて
くるくる働く田中絹代の姿・・と
登場人物が生き生きと動き出す・・
香川京子が本当にすてきで
はじけるような笑顔も、すねた顔も、
とってもかわいらしい。
クリーニング屋の自転車に乗る香川と
近所で仲良しのパン屋の息子の岡田英次とが
やっぱりパ . . . 本文を読む
新年度を迎え、街にはフレッシャーズがあふれ、
桜が咲きほこっている。そのわりに少し肌寒い毎日。
配置換えで仕事が忙しくなりそうな気配におののきながらも、
なんとか映画道をとぼとぼとたどるように進んでいきたいというのが
新年度の目標。
当手帖も1週間に1回以上の更新を目標に
ちまちまと書いていきたいと思いますので
どうぞ思い出したように、
ぱらぱらとめくっていただけると(めくれませんが)幸いです。
. . . 本文を読む
『抵抗』は、脱走(脱獄)ものとはいえ、
囚人である主人公と看守とのやりとりではなく、
主人公の内面に焦点を当てている。
囚人仲間と情報交換しながら
いかに綿密に準備をしていくか。
主人公が無表情であればあるほど、
それを観ている私たちの心の中は、ざわざわと揺れ動く。
無表情ということでいえば、
『海の沈黙』も同様。
くっきりとした目鼻立ちのドイツ人将校や、
彫刻のように美しい姪の
ほとんど無表 . . . 本文を読む
レイトショーのトークを聴くため大阪プラネットへ。
万田監督はひょうひょうとした語り口で、富岡さんとのざっくばらんなトーク。
高校時代から、家にあった8ミリカメラをつかって
映像をとったりしていたという万田監督。
大学時代は、
こんな絵をとりたい、という絵が先行して
後から物語を考えたりしていたそうです。
お金もないし、学校や身近なところで撮っていたけれど、
それを学校っぽくみせない、学校でないよ . . . 本文を読む
充実した一日だった。あわただしくもあったけれど。
神戸映画資料館で、
尊敬する映画評論家山根貞男さんの連続講座で「活劇の行方」として
今回は沢島忠監督。
監督が長編デビューした'58年頃は、
東映時代劇も新しい方向へ変わっていく、その節目。
沢島監督自身、タイトルが入る前に
主人公の一心太助が観客に向かって挨拶するシーンをいれたり、
斬新なアイデアを時代劇に取り入れていったが、
中村錦之助という . . . 本文を読む
フランスのブレッソン監督というと、音楽をほとんど使わず、感情表現も抑え、少し私にはとっつきにくい印象があったのだけれど、最近『バルタザールどこへ行く』の映画講座を聞きに行ったりして、ちょっとだけ身近になったような。それでも『罪の天使たち』は少し眠くなってしまった。
しかし、本作はおもしろかった!!
冒頭、青年の白く美しい手がアップでうつる。(56年白黒映画)
車の後部座席に乗っている青年。
隣に . . . 本文を読む