書き出すと暴走する牛のように止まりませんが、これがほんとの今年の書き納め、
昨日の見納めです。
原題はただの『Shootist』。ドン・シーゲル監督、ジョン・ウェイン主演で、ウェインの遺作に当たる。
『赤い河』との2本立てを年末に上映するなんてプラネットの粋な心意気に乾杯。
映画の冒頭で、悪いやつらを相手に射撃の凄腕で果敢に活躍してきた主人公の姿が年代とともに数秒のカットで描かれ、そして、今1 . . . 本文を読む
1万頭もの牛を連れ、販路を求めてテキサスからミズーリへと
1千マイルもの砂漠を旅する。
ジョン・ウェインといえば、ジョン・フォード監督であり、
『静かなる男』が印象深かったのだが、
本作はハワード・ホークス監督による西部劇で、
いやあ、なんともすばらしかったです。
昨日、大阪のプラネット・プラス・ワンで、
今年見納めのうちの1本となった本作。
単純に牛を運ぶだけの話と思ったら大間違い。
何千頭 . . . 本文を読む
以前少しご紹介した作品ですが、
今年の大阪ヨーロッパ映画祭での新作上映のうちの
私のベスト1です。続いて『リトル・ソルジャー』『隣人』でしょうか。
とにかくキャメラがすばらしい。
あえて白黒にしているのですが、
古い木造屋敷を舞台にしており、
庭の林に降る陽光の美しさ、葉が透き通るように輝き、
ガラス越しにみる室内の風景も、うっとりするほどの美しさ。
この作品もまた、老女が、情のない息子や孫の . . . 本文を読む
続いてルーマニア の作品。
なんとも救いようのないお話。
海外で両替のお店が、やたら裏通りに並んでいるわけがわかった。
現金を扱うというのは、怖いことで、リクスを伴うのだ。
両替のレートがいいとしても、
それはリスクと裏腹の関係で、ひょっとしたらニセ札がまじっているかも。
これは、ニセ札どころか、新聞紙の紙切れを
紙幣の束にまぎれこませた、悪質な両替屋の話。
なけなしの全財産を道で両替屋にだま . . . 本文を読む
続いて、11月22日、2作品め。
エディプス・コンプレックスの語源となった壮絶な悲劇を生み出した
ギリシャの作品とあって、かなりセンセーショナルな物語。
近親相姦(父子)+同性愛という、とんでもない設定で、正直びっくりした。
同性愛の息子は、性転換しようとしており、外見は全くの女性。
(実際に、性転換の手術前の素人さんを起用したそうです)
長らく縁を絶っていた父親の前に、息子は、女性として現れ、 . . . 本文を読む
遅くなりましたが、大阪ヨーロッパ映画祭の報告をぼちぼちと。
11月22日、日曜日。『リトル・ソルジャー』(デンマーク)
女戦士と解説にあり、どんなアクション映画かと思いきや
父と娘の関係をメインにしたヒューマンドラマ。
イラクでの平和維持活動から帰還したばかりの
デンマーク軍元女性兵士のロッテ。
心身ともにどっぷり疲れた表情で登場。
父親は運送業のボス。
副業で、アフリカからの売春婦のあっせんも . . . 本文を読む
アイデアはおもしろいと思う。
北海道根室にある
コンクリートでうちっぱなしのトーチカ(直方体の小さな砲台)
墓場のようなそこにやってきた若い女と熟年の男。
それぞれに過去を抱えていて、
ほとんど会話もなく、風の音がずっと響いている。
おもしろいと思ったのは
女が、子どもの頃の家への帰り道について語る夢の話。
それから、男がこもるトーチカから子どもが出てきて、
車に乗って走り去る場面。
現実と幻想 . . . 本文を読む
10年以上の同棲相手カホと結婚を約束したばかりのトモヤ、
カホにずっと片思いの一途なケンイチロウ、
結婚してもうすぐ子どもも生まれる実直なタケシ、
3人の男とカホ、カホの友達のタカコ、
同窓生と思われる6人がレストランに集まり食事する。
最初の方のこの会話シーンで、
誰が誰を想い、誰がどう想っているのか、
視線や雰囲気で伝わってくる。
亀裂の予感・・
愛することって?
愛していてもほかの異性と恋 . . . 本文を読む
30日まで開催のシネ・ヌーヴォでの山中貞雄監督特集。
『丹下左膳余話 百万両の壷』は、もう何度観たことだろう。何回観てもすばらしいと思う。省略の話術の見事さ。壷を売りに行った子どもを引止めに、左膳が一目散に走っていくのを映しておいて、行列に並んでいる子どもを連れて帰るところなんぞは、ロングショットで短くはしょる。まさに省略の美学。
セリフのやりとりもテンポよく、リズミカルで、思わずまねして言ってみ . . . 本文を読む
1938年に、出征した中国で戦病死した山中貞雄監督の追悼映画として企画された作品。池田屋騒動を、向かいの宿屋の家族にスポットを当てて描く。脚本は鳴滝組の面々の共同執筆で梶原金八。監督は山中の愛弟子、萩原遼。
池田屋が商売繁盛しているのとは対照的に
傾きかけた宿屋・大原屋では、
山田五十鈴演じる姉娘が芸子に出ており、
兄の中村翫右衛門は、洗濯屋を営む。
山田五十鈴が、宿屋の長逗留の客の絵描きの武 . . . 本文を読む
雷蔵さんの声が聞きたくなって、ふらりとガーデンシネマへ。
本作で演じているのは代々医者の家系に生まれた若先生。
若尾文子演じる妻と
高峰秀子演じる母の確執の狭間で、
全身麻酔薬を生み出すのに懸命な医者を演じる。
二人の大女優の熱演の影に隠れそうになりながらも、
人生を医術に捧げる真摯さで、
さりげなく妻を慈しみ、
髪もぼさぼさ、無精ひげも、と
いつものきりりとした雷蔵さんとは、見た目は違っても
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かなり前に観て、辰巳柳太郎演じる、タアヤンこと他吉に会いたくて、
南田洋子特集上映を観にシネ・ヌーヴォに出かけた。
織田作之助原作、川島雄三監督。1956年。
たあやんは、昔と変わってなかった、って
変わるわけないのだが、人力車で
「人間、身体を責めて働かなアカン」が口癖で、
娘と孫娘を男手一つで育て上げるという
まるで『無法松の一生』の阪妻。
長屋の人間模様がいい。
たあやんとともに年を重ねて . . . 本文を読む
オーキッドと彼女の両親、家政婦さんと、
いつもの家族のほかに
聖職者の仲むつまじい若夫婦と
その妻の友達の娼婦が2人登場する。
この3人の友情が、とてもいい感じだ。
ひとりの娼婦は、一人息子を育てながら、懸命に働き、
もうひとりは、故郷での何かにお金を工面するため、
顔を傷つけるようなひどい客でも、払いがいいからと、まじめに働く。
目標の額のお金がたまり、
やっと故郷に帰って娼婦という仕事から抜 . . . 本文を読む
今年生誕100年を迎える山中貞雄監督。
28歳の若さで戦争で亡くなり、その早すぎる死は痛ましいばかり。
監督作品だけでなく、脚本を手がけた作品を含めた特集上映が、
大阪の九条のシネ・ヌーヴォで始まった。
初日の19日は、監督の姪御の原田道子さんが来場、トークショーも開かれた。
今回の目玉の一つは、(と勝手に私が思っているのですが)
山中監督が学生時代に国語辞典の四隅に書いたパラパラ漫画の上映。
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12歳の少年ムクシンと10歳の少女オーキッド。
オーキッドにほのかな恋心を抱く少年と
まだ友情しか感じない少女のすれちがい。
切ない物語だ。
でも、後味は限りなく優しく、深く、さわやかだ。
ムクシンがオーキッドと会うために
そわそわ、うきうきと身づくろいしているのを、
同居のおばさんがからかったりするシーンがいい。
このシーンも、最初、おばさんは、画面外で声だけ聞こえてくる。
ムクシンがオーキ . . . 本文を読む