疲れた時、マッチに火をつけ、ろうそくに火を灯し、
ぼんやりと眺めることがある。
火事が怖いので、ほんの数十秒で、すぐ消してしまうとはいえ、
ゆらゆら揺れる火の光に、なにかいやされるものがある。
アンデルセンの童話をもとに、ジャン・ルノワール監督が1928年に脚本監督。
花びらが雪へと変わるラストが悲しい。
マッチが売れず、せめてマッチの灯で暖まろうとした少女が
雪の中でみた幻想世界はおもちゃや . . . 本文を読む
汽笛の音。スコップで機関車の釜に投げ入れられる石炭。
すごいスピードで疾走する機関車。
映画が始まった途端、いきなり私は1938年の白黒映画、
フランスの汽車の中に入り込んだ。
力強く回る車輪、
窓から前方を眺めた車窓、
次々と過ぎ去る柱。
近づいてくるトンネル、
カメラがぶつかりそうで怖い。
トンネルの中の闇、変わらぬ轟音。
出口がみえた。
白く明るい光がどんどん大きくなる。
外に出る。機関車の . . . 本文を読む
80年代初め、家庭内暴力、金属バットでの両親殺人事件、登校拒否と荒れた時代。
愛知県の戸塚ヨットスクール合宿所に泊り込んで取材、
スクールの実態と登校拒否児などが立ち直っていく様子を描いた
ノンフィクション「スパルタの海」の映画化。
西河克己監督、1983年作品。
映画完成後、主人公のモデルの戸塚宏校長が逮捕され、急遽公開中止。
やっと、作品の権利が委譲され、今年、東京で特集上映され大ヒット。
2 . . . 本文を読む
さて、娯楽作品が続きましたが、
ここで気骨の入ったドキュメンタリーをご紹介。
ぜひとも多くの人に観てほしい、みごたえのある作品です。
1971年『三里塚 第二砦の人々』
1967年から三里塚に入り、新東京国際空港建設反対闘争を始めた農民たちの姿を
7作にわたり「三里塚」シリーズとしてつくった小川紳介監督。
空港をつくるため、地元農民に説明したり同意を求めるという手続きもなく、
急遽、決定、強制 . . . 本文を読む
ついにディズニーが自らをパロディに。
パロディといえば、
ディズニーを辞めたジェフリー・カッツェンバーグが
ドリームワークスで製作した『シュレック』が印象的。
魔女の魔法が解け、お姫様はもとのきれいな姿を取り戻しました・・のはずが、
あれ??
意外な結末に驚いたのは数年前のこと。
今度は、ディズニー自身が
自ら築き上げてきたおとぎ話の世界をパロディにし、
実写とアニメを混ぜ
(といっても、現実世 . . . 本文を読む
なぜかあまり評判のよくない本作。
新刊のキネマ旬報での映画評をみると、星も少なく、
酷評している人が多かった。
結構、楽しめたのに…。why?
かくいう私も、
尊敬する映画評論家の山田宏一さんが
「映画Walker」というサイトで薦めていたのと、
実際に観にいった映画友達の薦めで観にいったのだが、
その薦めがなければ、観に行っていないと思う。
(みどころは、豪華な舞台装置とアクションだけと勘違い . . . 本文を読む
同じ市川雷蔵でも、前回ご紹介した『大殺陣 雄呂血』とは打って変わって、
陽気で楽しく、うっとりしそうに粋な雷蔵さんの
魅力全開なのが『濡れ髪牡丹』(61年)。
田中徳三監督、痛快娯楽時代劇。
雷蔵演じる「八八の瓢太郎」は、
剣や弓だけでなく、そろばん、お花、書道、俳諧、料理まで、何でもこなし、
その腕前を披露しては、
「拙者、剣術は柳生新影流免許皆伝の腕前でござる」というふうに、
どれも免許皆伝 . . . 本文を読む
ラスト十分以上にわたる立ち回りのすごいこと。
観ているこちらがへとへとになった。
まじめで腕のたつ師範代の青年が
信じていた相手から裏切られ、
窮地を助けてもらった女は殺され、
どんどん追いつめられ、虚無的にニヒルになっていく。
生を疎む感じが、雷蔵の雰囲気にぴったりで、
なんともつらい。
縄、はしご、戸板、大八車と、次から次へと
百人以上の追手が、市川雷蔵に襲い掛かる。
この世に嫌気がさし、 . . . 本文を読む
昨日は映画仲間たちとつくる冊子の原稿を書き上げなければと
早く帰ったものの、なかなかアイデアが浮かばず、
なんとなくテレビをつけてしまった。
NHK『スポーツ大陸』というドキュメンタリー番組で
楽天イーグルスの19歳、田中将大(マーくん)投手が
密着取材されており、おもしろくて、
つい最後まで観た。
スポーツ選手は、身体が資本。
勝負の中で、自分の身体との戦いになる。
勝つためには、
相手の癖 . . . 本文を読む
とってもおもしろかった。
冒頭から、固定カメラの長回し。
坂道の途中、曲がり角。何が起こるのやらと思っていると
酔っ払ったふうの女の子がふらりと坂道を降りてきて、去って行く。
その後を続いて、軽トラが降りてきて、トンネルに入っていく。
軽トラはトンネルを出るなり急停車。
そのはずみで前の座席に三人座りの真ん中の小柄な子が
頭をぶつけて、バックミラーが取れてしまう。
なんか、とぼけた男の子がいるなあ . . . 本文を読む
途方もない映画。
吐きそうにはならないまでも、何度も目をそむけたくなる。
思わず目をそらせながらも、こっそり観ているのだけど。
のぞきが好きな祖父、大食い競争の選手の息子、剥製師の孫と
性欲、食欲、死の魅惑にとりつかれた男たち、三代にわたる歴史。
液状の、どろっとしたものに人間は弱いと思う。
なんだか得体がしれないから。
人が吐いてる光景は、つくりものとわかっていても
生理的に受け入れられない。 . . . 本文を読む