京都映画祭報告は休憩し、久々に新作紹介を。
あまり人を寄せ付けないような堅いタイトルのうえに
「盲目の馬と少女の実話」なんて副題まであって
余計に引いてしまいそうな…?
しかし、本作は、安っぽい“感動の物語”なんかでは決してなく、
3年間、馬術部で、朝も夜も一生懸命、馬の世話をしてきた女の子の姿を
四季の変化が豊かな青森の風景の中で、
部の仲間たちや、先生とのやりとりを中心に、
まるでドキュメ . . . 本文を読む
今回、見つけた大好きな作品の一つ。
股旅ものの傑作。
股旅やくざのりゃんこ(二本差し)の弥太郎が草鞋を脱いだ松田一家には、
親分に、美しい娘、お雪がいた。
二人は相思相愛でありながら、互いに言い出せない。
映画の冒頭、祭りの準備で、一家の子分たちが
それぞれにぼんぼり(川に流す灯篭)に、
自分の思いのたけを川柳にして書く。
これが粋ですばらしい。
喋らなくとも、この川柳をさらっと読むだけで、
情景 . . . 本文を読む
京都映画祭が幕を閉じて、早や一週間。
このごろは、楽しみを待つ時間の長さよりも、過ぎ行く時の早さの方が
身にしみる年頃になりました。
運動会が終わってしまった子どものように寂しさを感じつつも、
マキノの世界にどっぷり浸り、
一言ではとても語りえない、いろんな作品に触れることができ、
あらためて、底知れぬ魅力を感じています。
今回特に感じたのは、マキノ監督作品の美。
今まで、楽しく、おもしろい面ば . . . 本文を読む
東映マキノ組で助監督をつとめたベテラン監督3人、
「トラック野郎」シリーズの鈴木則文監督(東映京都撮影所入社)、
「日本の首領《ドン》」シリーズの中島貞夫監督(東映京都撮影所入社)
「Wの悲劇」「早春物語」の澤井信一郎監督(東映東京撮影所入社)
が勢揃い。
山根貞男さんの司会で座談会が行われました。
これは、山根さんが一番企画したかったプログラム。
マキノ監督の撮影現場に迫る、おもしろい話が続出。 . . . 本文を読む
風変わりなラブロマンス。
雪女の娘で、男を不幸にするの、と自ら語る美女、雪を
山口淑子が演じる。
かつて雪崩で亡くした恋人にそっくりの男性(三船敏郎)と出くわす。
1年後に、再会。
ギャングで追われているという男と雪が
ダンスパーティを抜け出て、
夜の街をうろうろ歩き、
そして思い出多き、あの雪山の山小屋へ。
二人が並んでスキーをして・・
夜。
追手たちが、山すそから何十人も松明を持って上がってく . . . 本文を読む
冒頭、チャンバラシーン。
竹薮の中、森の石松が追い込まれ…、
と思いきや、「だめだめだめ」と大きな怒鳴り声。
なんと、スーツ姿の片岡千恵蔵が髪振り乱して登場。
なんと現代劇?
演出家の千恵蔵が舞台「森の石松」の稽古中というわけ。
あまりの役者たちの大根ぶりに
ふて寝した千恵蔵が、目を覚ますと
自分自身が森の石松になっていて、
時代劇にタイムスリップという
奇想天外なお話。
これが、とってもおもしろ . . . 本文を読む
伯父の決闘を知り、
泥酔した阪東妻三郎が、水をがぶ飲みし、
加勢すべく、高田の馬場に向かって、
走る、走る、走る……
志村喬、原駒子ら同じ長屋に住む連中も、
わっしょい、わっしょいと
何十人もが追っかけて走っていく、
この走るシーンを畳み掛けるように繰り返す。
この躍動感。
時代劇のおもしろさは、
ちゃんばらだけではない。
仲間や恩人を助けるべく、ひた走る主人公。
その思いを伝えるべく、
走るシ . . . 本文を読む
ファーストシーン、
轟夕起子の花嫁支度といっても悲しそうな顔。
祖父を前に、いくらお金があるといっても、
嫌いな相手のところに嫁ぐなんてと、しょげる。
次のシーン
雪深い村、雪の積もった木々、屋根の上の雪、つららと
点描し、きれいな景色だと思っていると、
その屋根の雪がどさっと落ち、
つららがぼきぼきと落ち、
あららと思っていると、
結婚式場と思われる家でも、大勢がばたばたと慌てている。
よもや . . . 本文を読む
本日夜の京都映画祭オープニングセレモニーに行ってきました。
マキノ雅弘監督の甥の長門裕之さんと、
監督の長女のマキノ佐代子さんがゲストとして登場。
山根貞男さんが司会。
ますますマキノ映画が観たくなるような、
笑いあふれる楽しいトークでした。
少し箇条書きっぽくなりますが、一部をご紹介します。
長門さんは『続清水港』('40)で沢村アキオという芸名で6歳位でデビュー。
撮影現場で、監督は決して「 . . . 本文を読む
私の大好きなマキノ雅弘監督を含め、
マキノ映画の大特集が
明日から、京都映画祭で始まります。
マキノ監督の作品、特に時代劇なぞは
今まで滅多に上映もなく、
十年待ったか、二十年待ったか、というぐらいに、
本で監督の名前や、作品の名前を知ってから、
ずっと待ち遠しく思っており、
期待でわくわくです。
上映作品の中には
かの有名な「次郎長三国志シリーズ」(東宝版)もあります。
他のマキノ監督作品と . . . 本文を読む
こういうワイルドさを、私はすっかり忘れてしまった。
ここまで純粋にはなれないし、
自分を追いつめる勇気も思い切りのよさもない。
べったり今の現実にお尻をつけてしまって、
なかなか腰をあげる勇気もない。
現状の中で心だけ、ばたばたとあがいているだけ。
アラスカの大自然の中で、たった一人で生活することを望み
実行に移した主人公の青年の姿は、
純粋で、潔くも、未熟で、無謀で、
でも、新鮮で、憎めなくて . . . 本文を読む
とても静かなイメージが残っている。
死者を前にした本木くんの厳粛なたたずまい、
死者を尊び、心を尽くして丁寧に棺に納めるまでの
堂に入った、あざやかな手つき。
それでいて、
死者を前に、謙虚の二字しかありえない、
遠慮とさりげなさ。
就職先を探し、旅行業者と思って訪ねていくと、
あの世への案内人で、
よくわからぬまま、戸惑いながらも、
納棺師としての仕事に向き合っていこうとする
本木くんの一途さ . . . 本文を読む