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No1123『ベニシアさんの四季の庭』~含蓄のある言葉に心ひかれ~

「私たちは年をとりますが、
庭にいるときの心はいつも変わりません。
真の贈り物は『心の庭』にあるのです。
それぞれの心の深いところに
一瞬一瞬のなかに」

学生時代、運動音痴のくせに
予備校で仲良くなった友達から
運動部のよさを聞いて、
体育会のバドミントン部に入った。

案の定、肝心のバドミントンは
運動神経の悪さで、
高校生みたいに、学業よりも熱心に練習しても、
肩や腰が入らず、板を振ってるみたいで上手くなれなかった。

わずかに練習の成果が出たのが、根性勝負のランニング。
毎週、土曜の昼、練習前に、
川までランニングの競争があった。
橋3本目まで5キロ。

7、8人の弱小女子部だったが、競争となると皆真剣になる。
夏の暑いさなかでも、
へろへろになりながら、走る。
日焼けなんて全く気にせず、くしゃくしゃの顔で走る。
目標の橋まで行って、また戻る。
川べりから、街の道路に戻る頃が、一番の疲労のピーク。
そういう時、励みになったのが、店の看板。
喫茶店や、道端のお店のいろんな看板を見ては
あとちょっととか、気合を入れる。
なぜか目についたのが
ベニシアの英会話教室みたいな名前で、
かわいい文字だったと覚えている。
先輩が通ったことがあると聞いたせいもあってか、
小さな看板だったけれど、なぜか覚えている。

すっかり前振りが長くなったけれど、
ベニシアさんは、
イギリスの貴族の家に生まれながら、
そのまま豪勢な人生を送ることに疑問を抱き、19歳で世界放浪の旅に出る。
インドやあちこちを訪ね、たどりついたのが日本。

今は、京都大原の、築百年以上の古民家に、家族とともに暮らす。
庭は100種類ものハーブでいっぱい。
なんでも手づくりの、自然と共生した生活。

花に囲まれ、さぞのんびりした奥様かと思いきや、
この映画では、ベニシアさん本人の口から
波乱に満ちた人生が語られる。

結婚、離婚、3人の子どもをシングルマザーとして育て、
娘の病気、再婚した夫の事故…、
いろんな不幸に見舞われる。
ベニシアさんだけでなく、
夫や子どもたちそれぞれが、家族が危機に瀕したときのことについて語るのがよかった。
飾らない家族の絆みたいなものを感じた。
統合失調症の娘もちゃんと出演していてすばらしい。

そのときのベニシアさんの言葉がすてきで、
ぜひ紹介したくて、なかなか機会がなかった。
このところ背中が痛かったり、しんどかったりで(わるいのは睡眠不足のあたし自身)
自分を元気づけようと思う。

「庭は神様に一番近い場所。
私の心にも発芽を待っている種がつまっているようでした」

花を育てるのが大好きな友だちの心が
少しわかったような気がした。
庭というか、土、草、自然なんだと思う。
この「庭」という言葉を、自分の好きな場所、事柄に、置き換えてもいいような気がする。
「音楽」「映画」「書くこと」なんでもいい、
自分の好きなことをやっている時、人は無心になれる、
きっと、それが、一番、すてきな場所、時間なんだと思う。

「人生の道が険しい上り坂になっても
心を平坦に保つことを学びました。
許しとは過去を手放すことと知りました」

ベニシアさんの再婚した夫が、ほかの女性に恋をして
家族を捨てようとひそかに決心していた時期があったそうだ。
事故で瀕死の重傷を負い、結果的に家族の元に戻ってきたそうだが、
これは、そのときを回想しての、言葉。
最後の「過去を手放す」という言葉に、いろんな思いが込められているようで、深い。

「人生は40歳から」

賛成!というか、今このときからって思わきゃ、生きていけないぐらいに
年をとってしまいました。

「修理するたびに誇りを感じた」

ベニシアさんが住む築100年以上の古い家についての言葉ですが、
なんだか自分自身のありようについてもあてはまりそう。
欠点があらわになって、落ち込んでは、つくろう(修繕する)。
つくろうことに誇りを感じられたらいいけど、難しい。

でも、自分という人間を「古い家」と想像してみて、
修繕が必要だという意識のありようは
案外、前向きになれるかもしれない。
年とって、達観するはずなのに、むしろ雨漏りだらけデス。私。

「純粋なものをやると、心が軽くなる」
「生き方 暮らし方はひとりひとりがつくりだす芸術作品」

部屋を片付けよう。このままでは恥ずかしくて死ねません。
そのとき、何を大切にするか、何を残すか、なんでしょうね。

「困難は私たちを成長させるための神様からのメッセージかもしれない」

いろんな人がいろんな言葉で語り継いできた教え。
「艱難、汝を玉にす」って言葉を、小説で初めて見つけて、
中学か高校の頃、抜き書きノートに写して、自分を鼓舞した記憶はあるけれど、
未だ達観できず。

監督は菅原和彦さんです。

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