goo

「言葉と酒 『父 吉田健一』を読む」から~『生きている自分が過不足なくそこに在る』~

すごくすてきな文章を見つけた。ユリイカ26年6月号。 ウェス・アンダーソンの特集につられて映画を観る前に、つい買ってしまったが、映画自体は、期待値が高すぎたか、前作がよすぎたせいか、何かもの足りない気がして肝心の特集はまだ読んでいない。でも、この雑誌の中に、すばらしい随筆を見つけた。「言葉と酒 『父 吉田健一』を読む」と題した竹西寛子さんの文章。これは、吉田暁子著「父吉田健一」〈河出書房新社)を . . . 本文を読む
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

No1188-1『男の花道』前半~医者、役者ら主人を支える従者のありよう~

小國英雄脚本、マキノ雅弘監督の1941年作品。 眼医者(土生玄碩)(古川緑波)と下僕(従者)嘉助(渡辺篤)とのやりとりがいいし、歌舞伎役者、中村歌右衛門(長谷川一夫)と付人の三十郎(山本礼三郎)のやりとりもいい。主従の間柄において、従者たちの、主人の性分や考えるところをきちんとわきまえた上での、丁寧な心配りがすてきだ。主人が、医術の道、芸道をそれぞれに極めるのを、そっと陰で支える姿が、すばらしく . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1187『離婚』~主役はもちろん脇役が皆すてきで、ドラマが活きてる~

監督マキノ雅弘、脚本小國英雄の1952年の作品。メロドラマですが、これがまた脇役が皆すてきで、よかった。 映画は荒れる雪山で始まる。木暮実千代は、従兄の田崎潤と一緒に遭難し、なんとか山小屋にたどりつく。凍えていると、見知らぬスキーヤー(佐分利信)がやってきて、一緒に山小屋で避難する、仏頂面で、つっけんどんだけど、食べ物をくれたり、根は優しい。 木暮は、山小屋で、凍死寸前になるが、佐分利のアドバ . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

annさんへの「Real Letter For You」~私にとってのあんどりいらんど。~

大阪北堀江のclub vijonでライブがあって、あんどりいらんど。を聴きに行ってきた。 ライブはたいてい一人で行くから知らない人ばかりだし、かなり勇気が要る。でも、会場で、舞台にannちゃんが登場したら一人の寂しさが気にならなくなる。 club vijonは地下にある。入口を開けると、細長いバーカウンターがあって、その奥にライブホール。高校の大教室くらいの、そんなに広くもない空間に、立ってコ . . . 本文を読む
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

No1186『無宿人別帳』~凄味ある男たちの凄惨な闘い~

映画のタイトルが出て、大きな鳥かごに入れられた罪人の男たちが次々と連れられていく行列を観て、ああ、この映画、観たことがあると思い出した。 それぐらいに、この鳥かごに何十人もの荒っぽい男たちが入れられている光景は強烈。過去の罪ゆえに戸籍もなく、佐渡の鉱山でこきつかわれて、死んでいく。 伴淳三郎は、佐渡に着く前に、かごの中で病死する。死ぬ前に、俺は、とある大きな事件の下手人だとまわりの仲間に告げて . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1185『幽霊列車』~コミカルなミステリー~

脚本家小國英雄さんの特集がシネ・ヌーヴォであると知って、調べた時、『幽霊列車』(49年野淵昶監督)に、円谷英二の特撮がありこれがなかなかおもしろい、というのを読んで、観たいなあと思っていた。 昨晩、帰宅して、ツイッターを眺めていたら、なんと、シネ・ヌーヴォでは、この『幽霊列車』まで、間違ったフィルムが届いていたことが判明。岡本喜八監督の「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日)(78年)で放送された同名の . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1184『男の花道』~ハプニングはあったものの…~

6月21日(土曜)中島貞夫監督のお話が終わり、いよいよマキノ監督の『男の花道』の上映開始となる。その前に、シネ・ヌーヴォの景山さんが客席に出て来られて、今回の特集のリーフレットに掲載されている写真が、マキノ監督のではなく、リメイク版で、宝塚映画のスチール写真だとわかり、不手際を謝られた。 映画が始まると、スタッフロールのバックの映像で、歌舞伎の舞台の様子が流れる。いきなり「宝塚映画」と小さな文字 . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

中島貞夫監督が語る~脚本家小國英雄さんの作品について~

「劇映画でも、ちゃんと“残るもの”があって、それは、キャラと結びついている。」「脚本家小國英雄特集」(大阪九条のシネ・ヌーヴォ)に映画監督の中島貞夫さんが来場され、小國さんについて語ってくれた。そのトークの中で一番心に残った言葉です。(写真は中島監督~京都映画祭のパンフレットから~) 私、不肖ながら、ついぼんやりしていて家を出るのが遅れ、劇場に着いた時には、トーク開始後5 . . . 本文を読む
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「ルビッチの『反復』と『反転』」はたのこうぼうのアメリカ映画研究会

笑顔のすてきな野原位(ただし)さんが「はたのこうぼうのアメリカ映画研究会#4」でとりあげた映画は、エルンスト・ルビッチ監督の『生きるべきか死ぬべきか』To Be or Not to Be(1942年) タイトルのハムレットのセリフは深刻だが、この映画は、みごたえのあるすばらしいコメディ映画。わかりやすく、おもしろくて、くすりと笑いながらも、シリアスで、ハラハラドキドキもあって、誰が見ても文句のな . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1183『サード・パーソン』~さりげない優しさと精一杯の誠意~

人の誠意が届く映画を観たいと思う。せめて映画の中では、微かでいいから、希望の灯りがともるような作品。人の懸命な思いが届くような…。 人は誰もさみしがりだから、誰かを守りたいし、誰かに守られたいと願う。届かない思い。だから、せめて映画に希望を託す。映画の中で、ささやかな誠意が、わずかな善意が、きちんと人の心に届くのを見たいし、その可能性を感じたいと思う。 現実の壁の厚さにはばまれ、 . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1182『弥次喜多道中記』~歌って歩く道中の楽しさ・・オペレッタ時代劇~

調子に乗って、大好きなマキノ雅弘(正博)監督の作品をもう一本。同じく、小國英雄脚本で、1938年の作品。「若き日の遠山金四郎、侠盗鼠小僧次郎吉がお互いの正体を知らないまま、一緒に東海道の旅を始めることになる。道中の茶屋で、「東海道中膝栗毛」の弥次さん、喜多さんの名前入りの笠と、取り違えたことから、金さんが弥次さんに、次郎吉が喜多さんと間違えられて道中を共にすることになる。金さんを演じるのが片岡千恵 . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1181『続清水港』~タイムスリップして森の石松になった男の運命…~

現在、大阪九条のシネ・ヌーヴォで上映中の脚本家小國英雄の生誕110年記念特集の1本。1940年、マキノ雅弘監督の作品。これがめっぽうおもしろい。時代劇のタイムスリップもの。舞台の演出家(片岡千恵蔵)が、「森の石松」の劇の練習をみているが、大根役者たちに悩まされ、秘書の女性(轟夕起子)とも大ゲンカ。会社の自室のドアを思い切り閉めたら、あまりの衝撃で、扉のガラスが割れてしまうというかんしゃくぶり。 . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1180『忠治活殺剱』~切れ切れの無声映像の中の忘れられない顔~

忘れられない顔がある。冒頭、フィルムの状態も悪く、とぎれとぎれの上、ぼんやりとした断片的な映像の中で、その顔は、旅装束かで、川の葦が茂った中に立ち、道中をともにした男の子を人に預け、見送っている。心の中で、たくましく生きろと言っているように、見守るたたずまいが、心に残っている。映画自体は、4月の終わりに神戸映画資料館で観た監督マキノ雅弘(共同監督久保爲義)脚本伊藤大輔の1936年の映画。なんとなく . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1179『ホドロフスキーのDUNE』~ホドロフスキーという“活性化剤”~

「人生の目的とは、自分を魂として昇華させること。私にとって映画は芸術だ、ビジネスである前に。」by ホドロフスキー 見た目はただのおじさんである。でも語り出したらすごい。80を超えてなお、あんなに熱く、“志”を持ち続けることが大切だと語れる人を私は知らない。 「私は300歳まで生きたい。最高に芸術的な映画を作りたいなら、作ればいい。失敗しても構わない。挑戦するんだ。」 . . . 本文を読む
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

No1178『闇のあとの光』~不可解で不思議な世界~

この週末、久しぶりに新作から時代劇、旧作と何本も映画を観た。暑がりなので、夜、半袖を着ていて風邪をひいた。暑いような寒いような、でもやっぱり寒いのに、汗だくとくるから、夏風邪は扱いにくい。 土曜日、十三の七芸に『闇のあとの光』を観に行った。公開初日に行くのは、どきどきする。メキシコのカルロス・レイガダス監督。一言でいうと、こんな風変わりな映画をよく公開できたなあと思った。カンヌ映画祭で監督賞を受 . . . 本文を読む
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ