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「 i アイ」西加奈子~“自分”という存在~

「絶対、世界にアイはある」とこの小説で叫びたい。―西加奈子

と文庫本のオビに書いてあった。

アイとは、
愛、「Ⅰ」(私)、虚数の「i」、
主人公の名前の「アイ」、
どれのことだろうと
思いながら、読み進んだ。

アイと仲良しのミナ。
アイの夫のユウ。

1988年にシリアで生まれて、
日本人の女性とアメリカ人の男性の夫婦に養子にもらわれたアイの
子どもの頃から、結婚して、妊娠して‥の
前半の人生をたどっていく。
東日本大震災が起きたり、
同じ時代を共有し、親近感がわく。

アイとミナの
お互いに思ったことを率直に言い合える
友情がいい。

最後の海のシーン。
全然シチュエーションは違うけれど、
映画『ROMA/ローマ』のラストで
浜辺で抱き合って泣く家族の姿を思い出した。

お互いがお互いの存在を受け入れ、認め合い、
自分という存在を確かめる。
ああ私は存在していいんだと、
親愛なる他者を通して思う。

自分にこだわって、こだわって、
孤独をかみしめて生きてきたアイ。
ミナという他者との心の交流に
ときめく気持ちはよくわかる。

でも、最後の最後に気付く。
ミナに愛されて、
両親に愛されて
自分が存在するのではなく、
その前から自分はあったのだと。

自分は存在していた、
誰に否定されても、自分までもが否定しても、
わたし(自分)は絶対に存在する。
そこから出発。

「唯我独尊」という言葉を
学生時代に初めて聞いた時、
すごい言葉があるのだと、
ずいぶん救われた気がした。

自分のわがままではない。
自分という存在を大切に生きること。

久しぶりにこの言葉に出会い、新鮮な気持ちがする。

年をとるにつれ、ふてぶてしくなって、
自己嫌悪だとか、自分を否定する感情とは
随分縁遠くなった気がするが、
自己嫌悪の渦は、油断したら、
いつでも足をすくわれそうで、危なっかしい。

どんな大地の上に立つのか。。。

本はいろいろなことを教えてくれる。

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
自然数の本性([1]の存在量化(∃))  (三文字(i e π)寄れば文殊のヒフミヨ)
2024-07-30 15:54:05
 ≪…「絶対、世界にアイはある」とこの小説で叫びたい。―西加奈子…≫を、「愛のさざなみ」の本歌取り[i(アイ)のさざなみ]に。

この世にヒフミヨが本当にいるなら
〇に抱かれて△は点になる
ああ〇に△がただ一つ
ひとしくひとしくくちずけしてね
くり返すくり返すさざ波のように

〇が△をきらいになったら
静かに静かに点になってほしい
ああ〇に△がただ一つ
別れを思うと曲線ができる
くり返すくり返すさざ波のように

どのように点が離れていても
点のふるさとは〇 一つなの
ああ〇に△がただ一つ
いつでもいつでもヒフミヨしてね 
くり返すくり返すさざ波のように
さざ波のように
 
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