蒼井優が演じる雷はすごい。
馬に乗って野山を駆け回る野性味あふれる少女で、
感情をストレートに出し、泣きじゃくったり、
ぴったりな役柄だ。
ただ、それ以外は、私にはもの足りなかった。
ちょうど、京都映画祭で
どっぷり時代劇に浸った直後だったせいか、
「殿」と呼ぶ声一つとっても、軽く聞こえ、
柄本明演じる殿のお守り役が
殿に自戒を迫るため切腹するシーンにしても、
いきなり唐突すぎて、びっくりした。 . . . 本文を読む
テレビ放送が始まったばかりの昭和31年に
三國連太郎主演で、全編生放送のスタジオドラマとして撮影されたものを映画化。
ある炭坑で起きた落盤事故を軸に
4日間にわたる救出劇を描く。
橋本忍脚色、京都文化博物館での内由吐夢監督特集の1本。
みごたえのあるドラマで、上映後は、拍手が鳴り響いた。
梅雨時、縦坑から水漏れがしていたかと思うと、
一気に水が溢れ出し、
坑内の採掘場(切羽)に5人が生埋めになっ . . . 本文を読む
「三池監督の腕が落ちた」とか、
「同じ時間観るなら、旧作を観た方がいい」とか、
「前半はいいけど、後半はチャンバラじゃない」と
否定的な意見を聞いたり読んだりして
観るのはやめようとほぼ思っていたのが、
大好きな旧作を、三池監督がどう料理するか、
気になるところ。
この夏、旧作を観たばかりで、記憶も新しい中、
いちかばちか、賭けの気分で、レイトで観てきた。
帰りは最終電車にぎりぎりセーフという時間 . . . 本文を読む
Benda Bilili! とは、リンガラ語で、
「外側を剥ぎ取れ=内面を見よ!」という意味だそうだ。
すごく大胆な言葉だ。でも、なんだかとってもいい。
コンゴ民主共和国(アフリカ大陸の中央西寄り)の
首都キンシャサ。
日本の車椅子のように、車輪を手で直接回すのでなく、
自転車のようになっていて、
ハンドル部分に、手で回すペダルのようなのがあって、
それを回して進む。
障がい者という感じにはみえ . . . 本文を読む
農村から北京に出てきて、自転車宅配便の仕事を得たグイの
自転車への執着は、尋常じゃない。
生まじめで、頑固。
ほとんどしゃべらず、黙々と働く。
颯爽と自転車に乗って働くグイの姿を淡々と描く。
グイと
北京の高校生、同じ17歳の少年ジェンは、
同じ自転車をめぐって、出会い、激しくぶつかりあう。
グイは、目標を達成して自分のものになる寸前に
自転車を盗まれてしまう。
グイにとって、自転車は、都会で . . . 本文を読む
冒頭、星野さんが猫を追いかけて
商店街を蛇行しながら歩いていく。
その歩き方、テンポをみて
このテンポでつながれば、映画ができるなと安心した。
ラストも、猫が坂道を走っていく走り去り方をみて
ここで終われるなと思った。
人間の芝居の中に猫を登場させようとして
猫が出てくるのを待つと時間がかかる。
けれど、これは猫本位の出たとこ勝負の映画で
意外に撮影に時間はかからなかった。
現場には小さいモ . . . 本文を読む
いったい何匹の猫が登場しているのだろう。
すてきな音楽とイラストでメルヘンのようで、
谷中の町の空気が伝わり、一緒に歩いている気持ちになる。
主人公ハルがとってもすてきな作品。
去る9月に京都映画祭で上映され、
鈴木卓爾監督のトークがあったのでご紹介したい。
原作となった
浅生ハルミンの「私は猫ストーカー」は
生の猫にアプローチしていく、猫追っかけのエッセイ。
ハル役の星野真理さんが猫をスト . . . 本文を読む
日本海が好きで、山陰、北陸、上越、東北と
裏日本に心ひかれる。
就職したばかりの頃、あこがれの東北を旅した。
といっても、貧乏旅で
夜行で大阪から新潟へ出て、
その後は、ずっと鈍行列車で北上。
十和田湖のあたりで西に進み
ほとんど電車に乗っているだけの旅だった。
待ち時間の1時間余り
早朝の新潟駅周辺を歩きまわった。
きれいな街だった。
以来、新潟県を訪れる機会もなく、
いつかゆっくり行きたいと思 . . . 本文を読む
長いこと映画を観ていない。
といっても1週間とちょっとのことなのだけれど
ここ2、3年かなり精力的に映画を観始めてからは
めずらしいこと。
未見だったルノワール監督の旧作上映をみそこねて、
ルノワールを見落とすなんて、とんでもないことと
いいたいが、それもまた、時の縁で、しかたないと
忘れるしかない。
『南部の人』の蜂蜜入り珈琲は心の中に
温かな映像としてとどめておこう!
そういえば、ジャック . . . 本文を読む
監督の水俣第1作『水俣 患者さんとその世界』(71年)は、
患者さんたちの遺影から始まる。
遺族が故人の写真を前に、発病から死までの経過を
証言する。
撮る前に、何をどう撮るのかについて、
監督と大津キャメラマンとで打ち合わせするのか、
との山根さんの問いに、大津さんは、
前夜、飲みながら、どの家に行こうという程度は決めておくが、
細かい打ち合わせはしていないと答えた。
とにかく、訴訟している . . . 本文を読む
今年9月に神戸映画資料館で開催された
「水俣」シリーズの土本典昭監督の特集上映のゲストとして
大津幸四郎さん(監督、撮影監督)、
小林茂さん(監督、撮影監督)が来られて、
映画評論家の山根貞男さんを聞き手にトークがありました。
ドキュメンタリー映画の真髄に迫る
とても興味深いお話でしたので、ご紹介します。
土本監督は、担当していたテレビ「ノンフィクション劇場」で
たまたま水俣病をとりあげることに . . . 本文を読む
ずっと観たかった作品。
神戸映画資料館での特集でやっと観ることができ、感慨もひとしお。
ずっと書きたかった。やっと書けるのが嬉しい。
こういう映画が私は好きだなあと心底思う。
出てくるのは、新潟のおじいちゃん、おばあちゃん。
阿賀野川流域で
お米を育てたり、餅をつくったり、川舟をつくったりする
夫婦3組の日常を丁寧に撮っていく。
スタッフたちは、この映画を撮るために
近くの家に住み込んで、田んぼ . . . 本文を読む
今年9月に神戸映画資料館で
「水俣」シリーズの土本典昭監督の特集上映が行われた際、
『ひろしまを見たひと 原爆の図 丸木美術館』では
丸木位里、丸木俊夫妻の「原爆の図」が
『はじけ鳳仙花 わが筑豊わが朝鮮』では
富山妙子さんのリトグラフの絵が
アップになり、その細部が映像にとらえられていた。
映画は、監督、カメラマンの思考の跡をたどるように
絵の上を進んでいく。
まるで時間軸にそって並べられたコラ . . . 本文を読む
タイトルが風変わりで、なんのことかと思ったが
日米安保条約のアンポのこと。
在日のアメリカ人女性が監督したことで、こんなタイトルになった。
反戦映画であり、安保条約締結以降の日本とアメリカのありようについて
疑問を呈する。
と硬いことを書いたが、
反戦、安保にかかわる絵画や、映画の断片を集めたコラージュ。
NYで日本からのアーティストの通訳をやっていただけあって
豊富な人脈に支えられ、各界の作 . . . 本文を読む
10月8日、池部良さんが亡くなられた。
池部さんといえば、『青い山脈』とかでの
甘いマスクの二枚目俳優と思っていた。
その印象をくるっと変えたのが、
マキノ雅弘監督『昭和残侠伝 死んで貰います』1970年。
池部さんは50歳過ぎ。
演じるのは、
高倉健が出所して住み込む料亭「喜楽」の板前の風間重吉。
料亭の権利書をめぐるいざこざの中で
恩人の命をだましうちで奪われ、
最後は、刀を片手に、健さん . . . 本文を読む