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No878-2「ニックス・ムービー、善悪の彼岸」藤井仁子さんの講演②at神戸映画資料館

【『孤独な場所で』(1950)】 ファーストシーン、 最初に観客が見つめ、向き合うのは、 バックミラーに映ったハンフリー・ボガート(ボギー)の顔。 交差点で隣に止まった車と暴力沙汰を起こそうとする粗暴で、 紳士としては失格の、だめな男。 いきなり共感できない人物として描く。 でも、全く悪というわけでもなく、 時々、いいこともするが、善人ともいえず、複雑な人間として提示される。 や . . . 本文を読む
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No878-1「ニックス・ムービー、善悪の彼岸」藤井仁子さん講演①at神戸映画資料館

年末押し迫った神戸、新長田にある神戸映画資料館で今年、生誕100年を迎えるニコラス・レイ監督の『孤独な場所で』の上映と映画評論家、藤井仁子さんの講演が行われた。とてもおもしろいものだったので、簡単に概要をご紹介したい。東京フィルメックスや京都でも、ニコラス・レイ監督の生誕百年として『ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』が上映されたがそういう企画がされる以前から、藤井さんは、自身で、神戸映画資料 . . . 本文を読む
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No877『タクシー・ドライバー』~夜のNY、ヘッドライトの灯、狂った男が一人…~

2007年動物園前にあったシネフェスタの閉館のときに観て以来で、西宮に午前十時の映画祭へと追いかけた。 冒頭、水蒸気のもやの中から、スローモーションのように現れるタクシーのボディライン。バーナード・ハーマンの音楽が、なんとも不穏な空気をかもし出しなんとも不安な気持ちになる、見事な導入。夜のニューヨーク。ネオンのきらめき、たむろする人びと、何重にもにじむヘッドライト…、バックミラーに . . . 本文を読む
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No876『ロンゲスト・ヤード』~闘志漲る男達の躍動感、これぞ最高のクリスマスプレゼント!~

午前十時の映画祭の1本。男たちのプライド、信念、権力に屈しない勇気と根性がフットボールの試合のクライマックス、ボールを投げる、受け取る、走る、タックルする、といった“動き”そのものに凝縮する。“思い”が“アクション”となって、スクリーンからあふれだし涙がこみあげてきた。映画3本分くらいの情熱と充実感が、ここにはある。ロバート・ . . . 本文を読む
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No875『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』~“音”を求め、探し続けた人生に迫る~

グレン・グールド初心者にとっては、格好の入門篇。彼についての映画は過去にも何本かあったが、私はどれも見逃してしまい、『バッハ:ゴールドベルク変奏曲』で有名なピアニストとしか知らず、本作は、彼の演奏だけでなく、生き様にも迫っていてとても興味深いものだった。母親が40歳を過ぎてから生まれた一人息子で母が音楽家に育てたいと、10歳頃までつきっきりでピアノを教えたこと、ピアノを弾きながら歌うのは母の影響、 . . . 本文を読む
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No874『夜の大捜査線』~差別と偏見を乗りこえ、変わっていく署長の人間くささ~

殺人の遺体発見現場に駆けつけたロッド・スタイガー演じるギレスピー署長がものすごい早さで、ガムをくちゃくちゃ噛んでおり、冒頭から、いきなり強烈な印象を残す。クレージーといえば、最初に登場する、食堂のボーイも蝿を殺すそうと輪ゴムで狙ったり、始終にやついていて、得体が知れない。 遺体の第一発見者のサム警察官は、といえばパトロールの途中で、エンジンを切り、カーテンも引かず裸で窓辺に立つクレージーな娘の美 . . . 本文を読む
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No873『CUT』~殴られ屋秀二の身体を貫く、映画への限りない愛~

あまりに痛々しく映画への限りない愛と、映画を信じる心にあふれている。 秀二の覚悟は、あまりにすごく、言葉が出ないほど圧倒された。殴られても殴られても、映画のタイトルを叫んでは立ち上がる秀二。どうしてこんなにも殴られなきゃいけないのか、涙が出そうになった。彼が叫ぶ映画のタイトルが、心につきささってくる。映画の代わりに彼が殴られているのか、映画が殴られているのか…。 映画監督の秀二は . . . 本文を読む
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No872『リアル・スティール』~父と子の熱い絆と果敢な挑戦に喝采~

跳ぶ、かわす、後退する、耐える、ジャブ、アッパー、強敵を前に叩かれても叩かれても立ち上がるアトムというロボットへの、父子の熱い思いが客席まで伝播する。思わず身を乗り出して、応援していた。廃品捨て場で拾われた無名の旧式ロボット・アトムが王者たる無敵のロボットと闘う。見た目もおんぼろで単純なつくりのアトムがピカピカのボディに派手なデザイン、最新コンピュータ制御のロボットに、戦いを挑む。どん底から這い上 . . . 本文を読む
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No871『ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』~挑発し、鼓舞するエネルギー~

ニコラス・レイ監督最後の長編劇映画。ニューヨークの大学の映画学科の講師に招かれ、生徒たちがキャストやスタッフとなり、ニコラス・レイ自ら監督として、生徒たちとともにつくりあげた作品。いきなり画面が4分割になり、それぞれ集会っぽい光景や、生徒の姿が展開しどの画面もよく動き、にぎやかでうち一つに映った監督の顔が、現代アートのように、ぼやっとにじんで輪郭がなくなり、色彩だけになったり4つのうちどの画面を見 . . . 本文を読む
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No870『コンテイジョン』~怖くないけど怖い映画~

観終わって家に帰る途中、近くで咳の音がすると思わず、反応して、身体がこわばった。 正体不明の新型ウィルスが、ある日突然現れ世界中で猛威をふるい、次々と人の命が奪われていくとしたら、一体、あなたはどうするのか、街はどうなるのか。映画は、私たちの生活にどんな影響が出るのかを淡々と描いていく。心に残るのは、ワクチンや治療法を見つけるために、危険を覚悟で、奮闘する医師たちの勇敢さと真摯さ。いわゆるパニッ . . . 本文を読む
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No867-2『なみのおと』~夫婦ー“よき相棒”同士ーの姿に明日をみる~

日曜日、もう一度神戸映画資料館に観に行ってきた。いろんな会話があって、どれもそれぞれに魅力的なのだけど私にとっては、やはり、あの夫婦の会話がダントツで彼らの会話をみて、聞くだけで、すごく元気がでるし、生きててよかったと思えるぐらい。二人は、地震で家ごと流され、家も途中で屋根が落ちて、床だけになってしまう。途中で、土手にはいあがって助かった。彼らが助かったこと自体、奇跡的なのだが、その奇跡の背景には . . . 本文を読む
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夢二とともに「川西英コレクション収蔵記念展」in Kyoto

竹久夢二より10歳年下の川西英。夢二が大好きで、彼の書いた雑誌や新聞挿絵と切り抜いては、スクラップ帳にセンスよく貼り付け保存を続ける。いつしか自分も同じ道を追いかけ、創作版画会の第一人者にまでなる。青年時代に受けた感動を持続させるエネルギーには驚かされた。川西自身、最初は夢二の模写から始まり、模写の絵も展示されていた。本人は、サーカスが大好きで、大きな紙に、お客ひとりひとりや、サーカスの団員、動物 . . . 本文を読む
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TV特集「3 11~映画監督62人が見つめた大震災」~『明日』を撮った監督たちの思い

「生きること」と「逝くこと」は地続きで、亡くなっても、生きている者達とはつながっている。つないでいくものがある、ということを伝えるのが使命、というような話を先日NHKで放映された本特集番組で河瀬直美監督が語っていた。昨日書いたことに通じるものがあるなと思った。私は、10月の放映時には、この番組の後半、『3.11 A Sense of Home Films』という、世界中のさまざまな作家21名に、東 . . . 本文を読む
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No869『ラビット・ホール』~キッドマンのくしゃくしゃの素の表情~

「こどもが亡くなっても、全くいなくなるわけじゃなく、ずっと両親のそばにいるのだ」という、小児科医の細谷亮太さんの話を新聞か何かで読んだ。細谷さんは、小児がんで、早くにこどもを亡くした親御さん達の深い悲しみに寄り添ってきた人だ。本作で、ダイアン・ウィーストが悲しみを石にたとえ、歳月とともに重みは変わっても、ずっとポケットの中に、小石のようにあり続け、消えることはない、と娘に語る。その言葉、表現がすば . . . 本文を読む
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No868『明日』~一つひとつに込められた思いの豊かさ~

本作にも参加している『なみのおと』の濱口竜介監督が「一人ひとりの思いが詰まった映画です」と言われた言葉どおり、まさに3分11秒の1本、1本が、こんなに違って、こんなにいろいろ豊かでそれぞれに込められた思いがあって、堪能した。仙台短篇映画祭実行委員会の呼びかけで41人の監督が『明日』というテーマで映画をつくり、これをつないだオムニバス映画。どの作品が描きだす「明日」もそれぞれにおもしろく、刺激された . . . 本文を読む
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