アジア版「E.T.」というには、
ちゃちで小さなゴム人形。いったいこれは何?
おそるおそる観始めたが、
さすが『少林サッカー』のチャウ・シンチー監督。
少年と、ミラクル7号こと愛称7(ナナ)ちゃんの、
不思議な友情の物語を、コミカルに、
笑いを満載して、届けてくれた。
父親は建設工事の現場労働者で、
靴もゴミ捨て場から拾ってくるという、貧乏な父子家庭。
勉強が大切という父の信条で無理して入った私 . . . 本文を読む
ほんの少し、一つのヒントを教えられて、
数ヶ月ぶりに、あらためて観てみると、
発見に満ちていて、より深みをもって、迫ってきた。
山根貞男さんいわく、
この作品はいわば「見せ場」集である。
といってもダイジェストでは決してない。
一人の男女の数十年もの人生を描く時、
どこを省略し、どこを丁寧に描きこむかで、
加藤泰監督のねらいが伝わり、
「監督の考える見せ場」が綴られてゆく。
冒頭の電車の線路のシ . . . 本文を読む
つい先日、本ブログでもご紹介したばかりの、
水俣病患者さんのドキュメンタリーを多数、撮ってきた
土本典昭監督が昨日、6月24日にご逝去されました。
享年79才。
ドキュメンタリーの監督は、
インタビュアーやカメラマンとして、
声や姿が映像で伝わるせいもあるが、
たとえ写っていなくても、
作品に、自身の姿が現われるような気がする。
人間対人間の中で、
自分をさらけ出さないと、
相手から何かを引き . . . 本文を読む
5分の休憩をはさみ、4時間近くと、とっても長い作品。
しかし、最初の方、一日の疲れで、少し眠気に襲われたものの、
描く側と描かれる側の緊張感が伝わり、
特に、後半、おもしろくて、一気に観終わった。
絵のモデルのエマニュエル・ベアールが
窮屈な格好を続ける苦痛の中で、
絵に対していつしか真剣になり、
画家のミシェル・ピコリを鼓舞するほどに勝気になってゆく姿が
とてもすてきだ。
木炭やペンや筆でカ . . . 本文を読む
国鉄の急行寝台列車さくら号の車掌を務める渥美清のモノローグで始まる。
朝の東京駅、発車までの任務に就く車掌たち。
1967年公開当時、新幹線は開通しているものの、
東京から九州までは、急行寝台列車が運行していた。
食堂車もあるし、車掌も5、6人以上。
今回、渥美は、専務車掌として、部下の車掌たちを指導。
その責任感、職業意識に暖かい気持ちになる。
列車とは、出会いの場。
旧知の人に出会うこともあ . . . 本文を読む
未だ独身の駅員さんの渥美清と、
母親役のミヤコ蝶々さんとが、
ちゃぶ台で朝ご飯を食べている。
この二人が並んで、喋っているのを観るだけで
なんだか嬉しい気持ちになるのは、なぜだろう。
最後に残った1匹のめざしのとりあい。
蝶々さん、口も達者だが、箸も強い。
めざしは蝶々さんの茶碗に。
渥美清は歩が悪く、ぶつぶつ独り言で愚痴を言っている。
この掛け合いの絶妙なタイミング。
なんか、とても楽しい感じ . . . 本文を読む
一家三人を強盗殺人した死刑囚に、
家族や同僚、社会から疎外された自分と同じ親近感を覚える主人公、京子。
獄中結婚へ。
ラスト数分の展開には、ただもう圧倒され、
小池栄子が演じる、京子の放つ狂気と、思い余った行為に、
「凄い」という以外の言葉が出てこなかった。
いつしか京子のことが心配になり、
目を醒まさせようとする、死刑囚の国選弁護士長谷川。
冷静なはずの長谷川が、いつしか京子に必死になっている . . . 本文を読む
新世界での上映。これまたすごい傑作。
おっちゃんたちからも、画面に見入っている熱気が伝わってきた。
『七人の侍』に設定が似ている。
多勢に無勢の主人公たちが立ち向かう構図。
でも、こちらのほうがニヒル。
戦いの虚しさ、13人の哀しさがより迫ってくる。
黒澤作品には、百姓対侍、というヒューマニズムの要素が入る。
本作は、ひたすら、侍対侍の真剣勝負、知恵比べ、意地の勝負。
権力者たる藩主を相手に、一 . . . 本文を読む
「あ!」思わず声が出ていた。
ここは新世界。おっちゃんたちの世界で、私は異分子だということも忘れていた。
それぐらい、唐突だった。
刺客に刺され、瀕死の重症を負い、絶対安静の嵐寛寿郎が横たわっている姿を
シネスコの画面いっぱいにとらえる。
布団の向こうに並んでいる息子(津川雅彦)や子分たちの会話を長回しで撮る。
そこへ、警察が犯人を捕まえ連れてきたから、確認のため玄関まで出てきてほしい、と子分が告 . . . 本文を読む
土本監督が、40年前に撮影した地を訪れ、
水俣病の患者さんや地域の懐かしい人たちに会ってゆくドキュメンタリー。
監督の作品も紹介される。
あの声が聞こえた時、とても懐かしい気がした。
つい数日前に、映画館で聞いたばかり。
『水俣ー患者さんとその世界ー』に登場する胎児性水俣病の少年の声だ。
監督と少年が、家の縁側に向かい合って、しゃべっている。
東京の海はきれいなの?。
少年が、とぎれとぎれだけど、 . . . 本文を読む