チャンバラにも、2つある。
リアリティを追求したものと
様式美を追求したもの。
リアリティ派は、満身の力で刀を振り、立ち回り、切りかかる側も、痛さ覚悟。
様式美派は、踊るように、刀を振る。
歌舞伎出身で踊りに覚えのある市川歌右衛門、大川橋蔵は、様式美。
大河内伝次郎、片岡千恵蔵らは、リアリティ派。
様式美のみにこだわりすぎたとき、
ちゃんばらは、「見せるために斬る」つまらないものになる。
中島 . . . 本文を読む
1926年。サイレント。
現存するのは、全体の6分の1で、最終巻の13分のみ。
しかし、よくぞ、この最終巻だけでも残ってくれたと
感謝したい。
ここに展開するのは、
撮る側、撮られる側の、汗と努力の結晶のような映像。
主人公、大河内伝次郎が、
弟と恋人を逃がし
その幸せを祈りつつ、
多勢に無勢の中で、
斬りあい、最期は死んでいく。
画面から、
主人公の思いが、情念がにじみでて
涙なしでは観ら . . . 本文を読む
1920年の無声映画。
ダグラス・フェア・バンクス主演の剣劇映画。
今年の京都映画祭は
「ちゃんばら」に注目。
無声映画とはいえ、生のピアノの伴奏がついて
迫力満点。
舞台はカリフォルニア。
圧政にあえぐ民衆を助ける
謎の黒マスクの男「ゾロ」が現れる。
マスクといっても、
目と頭だけを布で覆って、
鼻、口は露出したまま。
ゾロが、逃げる。
走って、走って、ひょいと柵をとびこえる。
追っ手は、 . . . 本文を読む
ソ連グルジア共和国生まれの監督の1970年の作品。
もちろん白黒。
オーケストラの若き奏者ギアは、
職場でも、遅刻の常習犯。
遅刻したけど、間一髪で、演奏に間に合う
タイミングが、なんともユニーク。
フィリップ・ジェラールと
ヒュー・グラントを足して2で割ったような
男前のギア。
彼は、いつも街をすたすたと歩いている。
街中が彼の知り合いみたいに
彼が歩くそばから、何かが起こる。
ある時は、 . . . 本文を読む
やっと手に入れた中古のテナーサックスを
鈴木(上野樹里)が川辺で吹いて、練習していると、
風に乗って、どこかから
ピアノの同じメロディが聞こえてくる。
サックスを吹きつつ、茂みをかきわけて
音のする方へ進んでいくと、
川岸の向こうで
同じ仲間の男子中村(平岡祐太)が電子ピアノを弾いているのを
発見する。
目があう二人。
川をはさんで、二人のスイングが始まる。
なんと映画的な光景だろう。
スイング . . . 本文を読む
宮沢りえ様
あなたがこんなに演技が上手にならはって
本当に、びっくりしました。
あなたの広島弁は、そりゃあ流暢で、
すっかり見惚れてしまいました。
細腕で、しっかりと
つつましく、ひとりで生活されてきた様子が
あなたの物腰からうかがわれ、
ほんにすばらしかったです。
井上ひさしさんの戯曲を映画にされたそうで
登場人物は、あなたと原田芳雄さん、浅野忠信さんの3人だけでした。
あなたと原田さんの畳 . . . 本文を読む
小泉首相が「政治的な立場が偏った映画は僕は観ない」とコメントし、
日本でも賛否論を呼んだ「華氏911」は、マイケル・ムーア監督の長編第2作で、
カンヌ映画祭パルムドール賞受賞作品。
監督は、前作「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアメリカの銃社会を鋭く批判し、
アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー作品賞に輝いている。
ドキュメンタリーといいつつも、
反ブッシュ、反イラク戦争という強烈なメッセ . . . 本文を読む
小津といえば、
家族を静かに描いた、淡々とした作品、という
イメージがあるが、
本作品は、小津監督が宝塚映画に出向して撮ったせいか、
どことなく、おおらかな作品に仕上がっている。
番頭2人の会話の妙や、
父、中村雁治郎と長女、新珠三千代の口けんかなど
何度も場内から笑いが起こった。
昔の女とばったり会って、足繁く通う中村がかわいらしい。
新珠が、あてつけに、箪笥から父の外出用の着物を出すシーンや . . . 本文を読む
前評判が高いのと、
事前に物語の大筋を知ってしまったこともあって、
観ている間は、その淡々とした語り口に
物語を綴っている、という印象を受けた。
しかし、
ラスト近く、
太陽の光をあびて、
きらきら光る柳楽優弥くんのうなじのショットに
どきりとした。ハートをぐいと摑まれたような気がした。
つんざくような飛行機の轟音。
柳楽くんの袖をひっぱる手。
はっと目を落とすと弟の顔。
このシー . . . 本文を読む
16歳の少年リーランドが恋人ベッキーの弟の知的障害者を殺してしまう。
「なぜ?」
少年院で彼の担任となった教師パールとリーランドとの交流を主軸に、
彼を取り囲む家族らの姿を、
事件の前と後と、時間軸を交差させながら描く。
少年の心の奥底はわからない。
しかし、家族をはじめ、
誰もが事件の理由を知ろうとする。
作家をめざしているパールも、事件のことを作品にしたいと
リーランドと面接を始める。
パ . . . 本文を読む
映画の魅力満載。歌、踊り、アクション。
アニメでありながら、いつのまにか、実写映画以上に、登場人物たちの心に寄り添っている。
クライマックスは見事
お姫様は、「かっこいい」王子様と「キスをして」、「美しく」幸せになりました、という
おとぎ話を、痛快に裏切る。
その裏切り方が、見事で、
人間、自分らしく、自分自身であれば、それでいいのだ、という
ごく当たり前のことだが、なかなか思い続けることが大変な . . . 本文を読む
春野家の人々の風景。
好きな子ができた高校生のハジメ
もう一人の自分が、自分を見ているのがみえる小学生のサチコ
何かいつもしきりに書いている母
あんまりしゃべらない父
かなり「とんでる」はちゃめちゃな存在の祖父。
あまり会話のない食卓。
いつもの風景が淡々と綴られていく。
ばらばらのようで、そうでもないらしい。
なにかのんびりした空気が流れていて
その感じがすばらしい。
たとえば、
サチコが縁側 . . . 本文を読む
嫁に行く娘アヤの女友達百合子(岡田満莉子)の茶目っ気が魅力いっぱい。
佐分利信、中村伸郎、北竜二といった、老年にさしかかった男たちを相手に、思ったことをずばずば言い、ドライで、やさしい性格が楽しい。ウイットに富んだ会話は、思い出してみても、笑いがこみあげてくる。
小津さんはよく人間を観ていたのだろう。
家族をめぐる感情というのは、人間にとって
共通のものだ。
小津さんが、父と子、母と子など、
. . . 本文を読む