この映画の凄いのは、時代を感じさせること。
昭和22年、戦後の混乱期で、ひもじくて仕方がなかった時代。
そして、その10年後。
人物造形の凄さとともに、まるっと時代のようなものを考えさせられる。
元刑事の伴淳三郎が、牢の中の三國連太郎と話をした後、
「ある砂」を置いていく。
これまで虚勢をはってきた三國は
その砂を目前にして、自分のしでかしたことの愚かさをつきつけられる。
やおら、ありったけの力で、床を掌で何度もたたきつけ、嗚咽する。
その音のなんと悲しいこと。はらわたまでしみるようだった。
とりかえしのつかないことをしてしまった後悔と腹立たしさが、
彼の心をかきむしる。 . . . 本文を読む
パソコンおたくで、てんでばらばらな性格の5人が、
ネットの自由を守るために奮闘。
成宮寛貴、山田優、忍成修吾、荒川良々、三浦春馬と、
若手俳優が皆、個性豊かで生き生きしていて、魅力的。
それぞれが過去のトラウマを乗りこえて、
息を合わせて、最後まであきらめずに戦う姿に
思わず胸が熱くなった。
とりわけ、クライマックスの
成宮と荒川が、拉致され、拷問されるシーン。
. . . 本文を読む
シーンが変わると、
いきなり父を殺した後の
血糊のついた順(水谷豊)の顔のアップ。
え?・・・何が起きたの?
そこに帰ってくる母(市川悦子)。
順は、入って来るなと止めることもできず、母は父の死体を目にする。
え?・・・一体どうして? . . . 本文を読む
「おいら岬の灯台守(とうだいもり)は 妻と二人で沖行く船の
無事を祈って 灯(ひ)をかざす」
「星を数えて波の音きいて 共に過ごした 幾歳月(いくとしつき)の
よろこび悲しみ 目に浮かぶ」
北海道の雪深い石狩から
九州の五島列島の、水も十分にない無人島まで、
「日本の端っこ」を転々とする燈台守の家族の物語。
1967年、木下恵介監督。 . . . 本文を読む
頭、
逃げまどう人たちを追いかけて、漢江の河原を走っていくグエムルの全姿が
映し出される。
正直言って、怖いというよりは、少しつくりものっぽくて、その形はユニークにさえ思えた。
むしろグエムルに驚き、脅える人たちの姿。
写真にもあるように、少女の、脅える暇もない、あっというまのできごとが
見事に映像になって、とらえられていた。 . . . 本文を読む
父を亡くしたヒーローは多い。
スーパーマンも赤ん坊の時に父を喪う。
孤独で寡黙なヒーロー。
父親のわが子への熱い思いがテーマ。
父の子に対する思いが、このシリーズの要。
スーパーマンのすごいところは、
派手な、青と赤のコスチュームに真っ赤なマントを着れば、
すぐそのまま飛べるところ。
鉄腕アトムのようにジェット噴射をつかうわけでもなく、
ただ、もう何もなくても、ふわりと上昇する感じ、
腕を前に伸ばして空を超高速で飛んでいく姿。
それがおかしく見えない。
普通なら、とってもありえないし、虚構極まりない世界だが、
嘘っぽく見えないし、
むしろすがすがしくて、爽快。 . . . 本文を読む
うちのめされた。
侍の美学たる武士道、武家社会を、これほど痛烈に批判した作品があったとは。
時代劇ベスト20には確実に入るだろう傑作。
浪人、津雲半四郎を演じる仲代達也の気迫のこもった演技が凄い。
井伊家に一人乗り込み、何十人もの家来を前に、
「待たれぃ」と片手をあげて、相手の動きを制する堂堂たる声。
落ち着き払った佇まい、腹のすわった声、威圧する威厳・・・。
当時、30歳という若さで、これほどの悲哀、覚悟を感じさせるとは。 . . . 本文を読む
元華族の令嬢恭子役の原節子がとても美しい。
大きな目を伏せがちにして、まばたきされたりしたら、
佐野周二でなくても、一目ぼれしてしまうだろう。
自動車の修理工場を営んでいる圭三(佐野周二)は恭子とお見合いする。
「僕は、学歴も肩書きもないけど、働き者で金儲けだけは得意なんですよ、
あなたの家の借金も、きっとなんとかしてみます」と、圭三が明るく言い切る姿が、なんとも伸びやかで、まっすぐな心持ちを感じさせる。
. . . 本文を読む
映画館を出た時、前にいる学生っぽい男の子4人連れが、
いきなり「行くぞ」と言って、階段を元気よく駆け上がり、
上に着いて、笑いあっていた。
その気持ちがとってもよくわかった。
主人公の高校生、真琴が思い切り笑ったり、泣いたり、怒ったり、
感情表現が豊かで、これこそアニメの醍醐味。あちこちで「駆ける」姿は躍動的だし、「こける」姿はユニーク。 . . . 本文を読む
前回、ご紹介したシンポジウムの最後で、パネリストの方々が、溝口作品で最もお薦めの作品をあげておられたので、ご紹介します。
. . . 本文を読む