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No866『山猫』(イタリア語・完全復元版)~老境にさしかかった男の悲哀~

いわずとしれたイタリアの巨匠ルキーノ・ヴィスコンティ監督の代表作(1963年)。冒頭、俯瞰で近づいていく貴族の屋敷のどの窓にも、白いレースのようなカーテンがかかっていて風にそよいでいるのが、印象的。シチリアの高台に建つそこは、きっと自然の風が気持ちよく通り抜けるところだったのだろう。バート・ランカスター演じるサリーナ公爵がアラン・ドロン演じるタンクレディの情熱、クラウディア・カルディナーレ演じるア . . . 本文を読む
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No865『むかしの歌』~風車、橋、雪と情緒あふれる映像に酔い、軽妙な会話に心ぬくもる~

去年の夏『花ちりぬ』を観て以来、石田民三監督ってすごいと思っていた。シネ・ヌーヴォの特集「浪花の映画ファイナル」の1本として上映が実現。予想どおりの傑作。1939年の白黒。フィルムもきれいで、白黒の陰影、構図といいすばらしい。冒頭、中年の女があたりをはばかるようにして、三味線の音にひかれるようにして路地に入っていく。暗くて狭い路地。女を手前に、奥に、人が行きかう道をとらえ若い男が通りかかり、ふと立 . . . 本文を読む
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映画の帰り道での出来事~みかん~

土曜の夜、『アントキノイノチ』という映画を観ての帰り道、温かい心と空腹のお腹を抱え自転車で夜道を急いでいた。自宅のそばまで近づいた頃、ちょうど自転車をひっぱって団地の下り坂から出てきた中年女性二人が大きな声で何か言っているのが聞こえた。よく見ると、足元にみかんがいっぱいころがっていた。自転車で二人乗りしようとしたが、みかんをポリ袋で2つもぶらさげていてその1つが、落ちてしまったようだった。 自転 . . . 本文を読む
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No863-2『アントキノイノチ』~遺品整理業という仕事~

今日、本屋で『アントキノイノチ』(幻冬舎文庫)の最後の部分を少し立ち読みした。瀬々敬久監督があとがきを書いていて、真摯に向き合う姿勢を感じた。 小説だと、ついくどくなりがちな二人が過去を打ち明ける会話部分も映画では、ナレーションでうまく省略。回想シーンとして、カットバックして描き、二人の会話は核心部分だけにしているところがうまい。遺品整理業という仕事が本当にあることにあらためて驚く。映画ではクー . . . 本文を読む
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No864『ミッション:8ミニッツ』~繰り返しの妙~

冒頭、シカゴの街の俯瞰撮影で始まり、カメラが湖の上を滑るように進むと列車の中。タイトルロールの間ずっと街を写すのは、その街で生きる一人ひとりの命がテーマにもつながるから。目覚めると、陸軍パイロットだったスティーヴンスはなぜか教師ショーンになっていて、目前には、ショーンの恋人らしき美人クリスティーナが座っている。 8分後には、その列車は爆破され乗客は全員死亡する運命にある。スティーヴンスは犠牲者の . . . 本文を読む
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No863『アントキノイノチ』~人と人との距離~

どうしようもない絶望の中で、それでも精いっぱいの思いで傷だらけになりながらも生きる姿を、二人の役者が見事に体言。思春期のときに心身ともに深く傷つくような出来事にぶつかり、何度も死に向き合い、心を閉ざしてしまった若い二人。そんな彼らが、黙々と手探りで自分の人生を見つけようとする姿が痛々しくもあり、じっと見守りたくなった。  彼らの仕事は、遺品整理業。亡くなった人の部屋、家を片付け . . . 本文を読む
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No862トルコ映画『卵』『ミルク』のこと~雨の音に思いを馳せる…~

観に行くことができなかった映画について語りたい。 木々が静かに立ち並ぶ森の中ひっそりと深い湖が広がっている。その縁にそっと立ち、水面に映った自分の姿をじっと眺めている。耳に聞こえるのは、鳥の音、あるいは、雨の音だろうか。そんな気分になる映画…。 トルコ映画の『卵』(2007年)。忘れられないのが冒頭のシーン。おばあさんが雨の中、田んぼか畑のような広い空間をとぼとぼ歩いていくのをロ . . . 本文を読む
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No861『Pina 3D/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』~躍動する人間の肉体と空間の変容~

大阪ヨーロッパ映画祭が始まっている。今日はじめてホテルエルセラーン大阪のホールに行ったが階段状になっていて、ゆったりとした豪華な空間。劇場という感じがあまりしなかった。映画祭ならでは、という空間。ピアノ伴奏つきの無声映画で、少年が木に登って、敵軍の状況を報告しているうちに銃弾が当たって、落っこちてしまう話は悲しかった。ピアノの鍵盤でなく、弦を直接叩くのがユニークで、こんな演奏があるんだとおもしろか . . . 本文を読む
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No860『ウィンターズ・ボーン』~辛い試練を黙々と乗り越える少女の姿に涙~

薄暗い空の下、湖にこぎだすボート。水を漕ぐ音が、こんなにも冷たく響き、チェーンソーの音が、こんなにも身を切るように痛々しく聞こえるとは思わなかった。青く冷たい夜空の下、17歳の少女リーが超えなければいけない試練のなんと過酷なこと。ボートに乗った強面の女たちが、時にみせる優しい表情にほっとする。 映画の冒頭もラストもリーと弟妹が暮らす、家の回りの光景。洗濯物が干され、弟や妹は無邪気に遊んでいる、寒 . . . 本文を読む
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No859『マネーボール』~自分の信じるところを貫き続ける強さと根性~

中日、頑張りましたが、残念、日本シリーズ優勝はなりませんでした。出かけるときに、録画をセットしたもののやはり生中継で応援したいと、映画講座をやめて早めに帰宅したのですが、惜しかったです。これだけ打が弱く、夏のセ・パ交流試合では、こてんぱんにやられていたチーム相手によくぞ踏ん張った、お疲れさまといわずにはいられません。 さて野球といえば、今、公開中の『マネーボール』私は結構好きな作品です。野球とい . . . 本文を読む
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No858『ブラックソーンーブッチ・キャシディ最期の決闘』~あのサム・シェパードが西部劇に帰ってきた~

歴史をテーマにした「京都ヒストリカ国際映画祭」が昨日から始まった。今年は第3回ということで、来週末には、韓国の『王の男』(2005)のイ・ジュンイク監督や三池崇史監督もシンポジウムに登壇するほかジャパン・プレミア上映も6本というそれなりに豪華な内容のわりに、PRが十分でないようで、今日初めて、リニューアルして階段状になった京都文化博物館を訪れたが、6割程度の入りに、少し残念な思いを抱いた。 本作 . . . 本文を読む
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まだ明日があるけど、とにかくドラゴンズお疲れさま。

阪神百貨店に魔のエレベータがある。夕刻、エレベーターガールのお姉さんがいなくなると自動的にすべての階に止まることになっているのだ。だから、乗る人、降りる人が誰もいなくても、1階ごとにまじめに止まっては開くドアに苛立ちながらもじっと我慢の子で、「閉」のボタンを繰り返し押すことになる。今日初めて8階から乗って、その存在を知り、すいている訳がわかった。たまたま乗り合わせたおばちゃんが「もう忍耐の世界なの . . . 本文を読む
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No857『クスクス粒の秘密』~体温がじわじわと伝わる~

上映前の主催者からのメッセージによれば、東京映画祭でこの映画を観て、とても興味をひかれまた観たいと思っていたのに、なかなか配給されないまま。ならば自ら上映したいと、上映実行委員会をたちあげ、横浜日仏学院、大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズの協力を得て大阪のプラネット・プラスワンとの共催でついに上映へとこぎつけたという。 大阪では11月12日からわずか3回の上映で続いて横浜で19日に横浜日 . . . 本文を読む
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No856爆音上映会in京都『憂鬱な楽園』ほか

映画の本編が始まり、黒味にスタッフ名が紹介されていくと同時にガタンゴトンと、電車が走る音が聞こえてくる。この電車の音のすごいこと。いきなり魂を奪われるほどに心をもっていかれた。それまでの落ち込みも疲れも、一瞬とはいえ、一気にふっとんでしまい何がどうすごいのか、うまく言葉で伝えられないがまさに電車に乗って揺られている心地よさ、このまま幽界に連れられていってもこんな音に包まれてなら、いいかもしれない、 . . . 本文を読む
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No855京都でワイズマン監督語る~その2~

続いて、会場から出た質問へのワイズマン監督の答の主なものです。 Q: 東日本大震災に関して、日本に滞在して感じたこと、アメリカにいて思うことは?A: 日本の文化や歴史について詳しくもなく意見を述べるのはおこがましいが東電の情報隠しについてニューヨーカーで読み、政府の情報隠しというのは日本に限られたことではないが、原子力発電に対し、擁護と反対と、意見が分かれ強い反発がある中で原子力発電が再開された . . . 本文を読む
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