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No890『J・エドガー』~限りなく優しく温かい監督の眼差し~

イーストウッド監督は反骨の人というイメージがあったから、FBI長官の座を50年近くにもわたって務め、アメリカの大統領でさえ及ばない強大な権力を手中にした、いわば難物ともいえる男、J・エドガー・フーバーをどんなふうに掘り下げて描くのか、とても興味深かった。圧巻は、最後の数十分。フーバーの公私にわたるパートナー、クライド・トルソンとの食事、そして帰宅。ヘレン・ガンディ秘書の下に電話がかかり、トルソンが . . . 本文を読む
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No889『婉という女』~凛とした岩下志麻の美しさ、潔さ~

今井正監督、1971年の作品。観終わってすぐは、女性の性の描き方がなんとも生々しすぎる気がして、前半、一家全員が、40年も幽閉され近親相姦も起こりかねない、悶々とした場面は、少ししつこいように思え、違和感を覚えた。しかし、男子が皆息絶え、一家断絶の命が果たされたとして、女たちが、自由に解き放たれてからがいい。婉を演じる岩下志麻の、凛とした美しさ、父の弟子、秦山を一途に想う姿の清清しさは忘れがたく、 . . . 本文を読む
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No888『ヤンヤン 夏の想い出』、それから…~新しい毎日との出会い…喜びもあれば悲しみも…~

「この映画を見終わった観客が、まるでただの友だちと一緒にいたかのような気分を味わってほしいと思う。もし彼らが、『一人の映画監督』に出会ったような印象を持って映画を見終わったとしたら、私はこの映画は失敗作であったと思う」とエドワード・ヤン監督の言葉がDVDの解説に書かれていた。私にとって、映画のつくり手の監督が、こんなにも身近に、親近感をもって感じられるなんて、意外な発見だった。「エドワード・ヤン監 . . . 本文を読む
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テオ・アンゲロプロス監督逝く…。

昨日の夕刊で見てびっくりしてああ、もう監督の新作を観ることができなくなってしまったのだと思った。今日になって、あれこれ、観たことのある作品を思い出したりしていた。学生時代、祇園会館の2本立てで、当時評判の外国映画の名作上映をやっていてその中に『霧の中の風景』が入っていた。ポスターが印象的で、当時、まだ映画なんてほとんど観たことがなかったくせに割引券に印刷された一連の映画のタイトルを眺めて、なぜか、 . . . 本文を読む
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886-2『テトロ 過去を殺した男』~明滅する光と音…~

ラスト、本当に美しい。こちらに向かってくる車の群れの中で立ち尽くすベニー。ヘッドライトの光が、ベニーの目を射る。こおりつくベニー。テトロが駆け寄ってきて、ベニーの目を手で覆う。「光をみすぎるな」テトロがベニーに向き合い、優しくさとす。ヘッドライトの光が点滅し、ギターが優しいメロディを奏でる。その柔らかい音と、美しい光に、緊張で凍りつきかけた心がゆっくりと溶け出すかのように、涙が出た。 この点滅と . . . 本文を読む
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No887『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』~重力から限りなく自由に…~

DOOM!のサイトで、劇場分子を主宰されている知人が本作をベスト10に入れておられて、『ナイト&デイ』を観た時のおもしろさを思い出し、日曜日、布施のレイト上映に行ってみた。年末からの公開で、日曜の晩というのに男性一人客がぽつぽつにアベックと、意外にお客さんも多かった。 すごいアクションの連続で、冒頭から、いきなり後ろ向きに背中から階下へと落っこちる。落ちる、上る、飛び降りる、と重力との戦いに彩ら . . . 本文を読む
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No886『テトロ 過去を殺した男』~あふれるほどの光と闇、閉ざされた心の深い傷~

ランナーズハイ、という言葉がある。長時間走っていると、気分が高揚してきて、一時的に疲れがふっとんでしまうらしい。映画でいえば、シネマズハイ…?長時間とか、たくさん観たからというわけでは決してなく、いい作品に出会ったとき、映画館を出ると、やたら街の光景がきれいに見えたりする。空気が澄んだように感じられて雨に濡れた路面、外灯に照らされた家族の後ろ姿、恋人たちの影、車のヘッドライト、御堂筋 . . . 本文を読む
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No885『宇宙人ポール』~そばにいたら、きっと楽しく賑やかなくりくり頭の憎めない奴~

評判のSFコメディ、布施のレイトショーでやっと観ることができた。根が単純な私は、最後のシーン、思わず涙が出てしまった。 原題が『PAUL』とあるとおり、宇宙人にちゃんとポールという名前があるところがいい。大きな頭に大きな眼、髪はなく、つるっとした頭で手足は細く、体はやせっぽち。見慣れたエイリアンの姿をしていながら、中味は、人間そのもので、いわば、年をとったクレヨンしんちゃんみたいに風変わりな奴。 . . . 本文を読む
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No884『極楽特急』~いかに楽しくおもしろく描くか?ルビッチ監督のセンスが随所に光る~

エルンスト・ルビッチ監督の洗練されたラブ・コメディ。冒頭の歌にあるとおり、まさに、あちこちで起こる男女のもめごとを楽しく、すてきに描いている。 ルビッチがどうおもしろいのかというと、同じ話を描くにしても、映像として、いかに流れるように描くか、いかに微笑ましく、美しく、しなやかに、うっとりするように描くか、存分に工夫が凝らされていて、その語り口が楽しい。監督自身も楽しんで、映画をつくっているように . . . 本文を読む
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No883『サイボーグ009 怪獣戦争』~0010ヘレナの美しさだけはなぜか格別~

知人がこのビデオテープ誰か観たい人いますかと尋ねた時、思わず一番に手を挙げてしまった。009といえば、あしたのジョーと並んで私の暗い高校時代の受験勉強の励みとなり、心の支えとなったアニメ。無理やりサイボーグにされてしまい、人知れず、人類の平和を守るため闘う9人の戦士たち。国籍も能力も違い、個性も違って恋人を殺されたドイツ人の004といい、どこか皆、影のあるキャラが多く、無性に魅かれた。特に、片目を . . . 本文を読む
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No882ダグラス・サーク劇場その2at home~窓、雪、人生…~

この週末、残念ながら、仕事がたまって連日出勤。映画は1本も観れずで、せめて、家でダグラス・サーク劇場の続きを。 『心のともしび』原題Magnificent Obsession(53年)のロック・ハドソンにしびれた。 「他人に尽くすというのは容易なことじゃないぞ。甘くはない…一度決めたら最後だ。途中でやめられん。とことんはまって、虜になるぞ。それは―すばらしい気分(Magnific . . . 本文を読む
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No881ダグラス・サーク劇場at home~幸せをめぐる物語の数々~

二十年以上も前、J・ルノワールやE・ロメールの名前とともに、映画館に映画を観に行くという楽しみを初めて教えてくれた知人に近々久しぶりに会うことになり、借りていたDVDを返そうと平日の晩、なかなか映画を観に行けないのも手伝って毎晩、1本ずつ、楽しみに観ている。 結構おもしろい。というか、はまってしまう。描かれるのは、男女の愛。ふとしたことで出会った二人が、すぐ恋に落ちる。片思いはすぐ相思相愛となる . . . 本文を読む
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No880『ストリート・オブ・ファイヤー』~80年代ロックの世界へタイムスリップ、見事な舞台セット~

愛する女性を救うためなら、たとえ火の中、水の中、というわけで「ロックンロールの寓話」というサブタイトルのとおり話自体は単純明快。ロック界のスター、エレンが故郷でのコンサートの最中ストリートギャングどもに連れ去られる。エレンのかつての恋人コーディが街に呼び戻され彼女を救い出し、悪漢の頭領との一騎打ちにも勝って街を去っていくという筋立て。語りつくされたような、この物語を、いかにおもしろく描くか。ひとつ . . . 本文を読む
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No879『エル・ブリの秘密ー予約のとれないレストラン」~調理場…料理を創り出す熱い空間~

この連休、いま一つ調子が出ず、毎日昼近くまで寝て、一日目は一歩も出ず、二日目は映画に行ったものの、あれだけ寝ておいて睡魔に襲われたり。『無言歌』は、あまりにつらく、過酷な状況に、何を言えばいいのか言葉を失った、というのが正直な感想。アルゼンチン映画『瞳は静かに』は、デジタル映像と知らず、肌の色やらなんだかてらっとした感じで折角の作品なのにもったいないと想った。少年が主人公で、軍事政権の影響を直接的 . . . 本文を読む
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2011年マイベストテン(日本映画)

遅くなりましたが、 続いて、2011年に鑑賞した日本映画で心に残ったものをご紹介します。   1『大鹿村騒動記』(阪本順治監督)  原田芳雄、岸辺一徳、大楠道代と、いい年をした大人たちがはしゃいでいる姿がいい。自分の感情にまっすぐな大人たち。素朴に親しめる人情ドラマで、劇中劇の生かし方もうまく、舞台の下で働く若者のときめきもいい。いつか大鹿村に行って、山の空気を吸いながら、村歌舞 . . . 本文を読む
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