6.日本での動き
日本では1997年、作家の石原藤夫・金子隆一両氏が『軌道エレベータ ─宇宙へ架ける橋─』(裳華房刊)を発表。おそらくは、これが世界初の軌道エレベーター専門書です(2009年に早川書房から復刊)。
2005年、東京大学と民間企業の共同プロジェクトが、50年後に実現が予想される技術の一つに軌道エレベーターを加えて発表。2007年には日本科学未来館(東京都江東区)などが幅広い年齢層向けにアニメーション作品を制作し、各地の科学館や海外で上映しました。
技術面では、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)や民間企業などでCNTやグラフェンの研究・開発が進んでいるほか、経済産業省が日本の繊維技術の将来の応用例に「宇宙エレベーター」を挙げました。
07年10月には、米国で開かれた軌道エレベーターの技術競技大会に日本人が初挑戦。そしてこのチームのメンバーをはじめとする有志8人が集まり、08年4月、「日本宇宙エレベーター協会」(JSEA)が発足しました(翌年「一般社団法人 宇宙エレベーター協会」に移行)。
6月に初のワークショップを開催し、翌月米国で開かれた国際会議にはJSEAから5人が参加。軌道エレベーターに応用できる日本の技術や運用計画、日本文化での位置づけや核廃棄物投棄を目的とした活用策などを発表しました。米国会議への日本人参加は初めてのことです。
JSEAは11月、この国際会議の日本版「第1回日本宇宙エレベーター会議」(JpSEC'08)を東京で開催し、翌年には150mの高さから吊るしたベルトを昇降する技術を競う競技会を実施しました。JpSECは毎年開催しているほか、JSETECはその後高度1kmを超え、「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC)と名称を変えて継続。さらなる高さを目指し、米国に会場を移して大会を開くことを目指し、準備を進めています。
2012年には東京スカイツリーを施工した大林組が「宇宙エレベーター建設構想」を発表。2050年の実現を想定し、建設のプロの見地で全体構造や建造方法を緻密にまとめ、独自の発想も盛り込んだ構想として国内外で話題を呼びました。
そして宇宙空間での軌道エレベーターの実験が、政府諮問機関の日本学術会議による「学術の大型研究計画に関するマスタープラン」に採択されました。静岡大学や日本大学などは、小型衛星を使った実験「STARSプロジェクト」を進めています。これまでに「STARS-C」「STARS-EC」などの衛星が国際宇宙ステーションから放出され、軌道上でケーブルを伸ばす実験を行いました。軌道エレベーターの技術検証を目的とした宇宙空間での実験は、世界で初めての試みであり、さらに伸ばしたケーブルの間で昇降機を走行させる衛星の開発も進められています。
このほか、航空宇宙関連の学会「宇宙科学技術連合講演会」などで、毎年軌道エレベーター関連の発表が行われ、軌道エレベーターを学ぶカリキュラムを設ける大学や技術専門学校などが増えています。研究は多様化して専門書も増えました。日本における軌道エレベーターへの関心は着実に高まり続けており、研究のすそ野が広がって、一つの学術分野として確立しようとしています。
コラム「軌道エレベーター」と「宇宙エレベーター」
軌道エレベーターの話題が紹介される場合、その時々で「軌道エレベーター」だったり「宇宙エレベーター」だったりします。欧米では"Space Elevator"という呼称がほぼ定着しましたが、かつて日本では『軌道エレベータ』(1997年)のように、「軌道」が主流でした。その後いったん関心が薄れ、近年米国で再び研究が活発化してきた影響から、日本でも直訳の「宇宙エレベーター」が一般的になってきました。どちらも同じもので、実態に区別はありません。当サイトでは、「軌道エレベーター派」を自称する著者の愛着とこだわりから「軌道」の呼称を優先しています。
「7. 建造プランの一例」へ
日本では1997年、作家の石原藤夫・金子隆一両氏が『軌道エレベータ ─宇宙へ架ける橋─』(裳華房刊)を発表。おそらくは、これが世界初の軌道エレベーター専門書です(2009年に早川書房から復刊)。
2005年、東京大学と民間企業の共同プロジェクトが、50年後に実現が予想される技術の一つに軌道エレベーターを加えて発表。2007年には日本科学未来館(東京都江東区)などが幅広い年齢層向けにアニメーション作品を制作し、各地の科学館や海外で上映しました。
技術面では、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)や民間企業などでCNTやグラフェンの研究・開発が進んでいるほか、経済産業省が日本の繊維技術の将来の応用例に「宇宙エレベーター」を挙げました。
07年10月には、米国で開かれた軌道エレベーターの技術競技大会に日本人が初挑戦。そしてこのチームのメンバーをはじめとする有志8人が集まり、08年4月、「日本宇宙エレベーター協会」(JSEA)が発足しました(翌年「一般社団法人 宇宙エレベーター協会」に移行)。
6月に初のワークショップを開催し、翌月米国で開かれた国際会議にはJSEAから5人が参加。軌道エレベーターに応用できる日本の技術や運用計画、日本文化での位置づけや核廃棄物投棄を目的とした活用策などを発表しました。米国会議への日本人参加は初めてのことです。


そして宇宙空間での軌道エレベーターの実験が、政府諮問機関の日本学術会議による「学術の大型研究計画に関するマスタープラン」に採択されました。静岡大学や日本大学などは、小型衛星を使った実験「STARSプロジェクト」を進めています。これまでに「STARS-C」「STARS-EC」などの衛星が国際宇宙ステーションから放出され、軌道上でケーブルを伸ばす実験を行いました。軌道エレベーターの技術検証を目的とした宇宙空間での実験は、世界で初めての試みであり、さらに伸ばしたケーブルの間で昇降機を走行させる衛星の開発も進められています。
このほか、航空宇宙関連の学会「宇宙科学技術連合講演会」などで、毎年軌道エレベーター関連の発表が行われ、軌道エレベーターを学ぶカリキュラムを設ける大学や技術専門学校などが増えています。研究は多様化して専門書も増えました。日本における軌道エレベーターへの関心は着実に高まり続けており、研究のすそ野が広がって、一つの学術分野として確立しようとしています。
コラム「軌道エレベーター」と「宇宙エレベーター」
軌道エレベーターの話題が紹介される場合、その時々で「軌道エレベーター」だったり「宇宙エレベーター」だったりします。欧米では"Space Elevator"という呼称がほぼ定着しましたが、かつて日本では『軌道エレベータ』(1997年)のように、「軌道」が主流でした。その後いったん関心が薄れ、近年米国で再び研究が活発化してきた影響から、日本でも直訳の「宇宙エレベーター」が一般的になってきました。どちらも同じもので、実態に区別はありません。当サイトでは、「軌道エレベーター派」を自称する著者の愛着とこだわりから「軌道」の呼称を優先しています。
「7. 建造プランの一例」へ