米が宇宙兵器「神の杖」を研究開発 衛星の誘導で地上攻撃
米国は、「神の杖」を含む多種の宇宙兵器の研究・開発を始めている。宇宙プラットホームに小型推進ロケットを装着した直径30センチ、長さ6.1メートル、重さ100キロのタングステン、チタン或いはウランの金属棒を搭載するという計画で、衛星の誘導で地球上のすべてのターゲットを攻撃することができる。金属棒が地上から1000キロ離れた宇宙から急降下する際のスピードは時速1万1587キロに達し、ターゲットにぶつかる際の力は原子力兵器にも引けを取らない。(後略。中国網日本語版=チャイナネット=2月29日、JAPANSE.CHINA.ORG.CNより引用)
相当マユツバな気もするのですが、一応真に受けて一筆。
衛星の軌道速度を初速として利用し、単純に衝突の衝撃を主な破壊力として地上を攻撃する、いわば人工隕石ですね。誤解されがちですが、金属棒のスピードが「時速1万1587km」とあるのは、落下によって得るスピードではないはずです。金属棒を搭載するプラットフォーム衛星とやらは高度約1000kmですから、平均軌道速度は秒速7.35km=時速2万6460km。仮に無理くり大気中に突っ込ませるとして、棒が大気圏に突入するとブレーキがかかり、あるいは誘導のためにも速度が半減すると考えればいいのでしょうか?
この発想自体は大昔からありましたが、弾道軌道ではなく衛星軌道上からの物理的攻撃というのは、スピードが出すぎるゆえに迎撃困難な代わりに命中精度が低く、あまり現実的ではなかったと聞きます。そもそも衛星軌道上からモノを落とすのは大変なエネルギーが必要で、単純に落とせば地上に到達するというものではありません。レールガンのようなシステムで発射するとしたら、反動でプラットフォーム衛星本体の軌道も大きく変化してしまいます。
こういう問題をクリアできるのだとしたら、近年の材質や誘導技術の向上で可能性が高まったのかも知れませんね。
核兵器と違って放射能汚染もないし(ウラン製はちょっと気になりますが)、落下質量か速度を大きくすればそれだけ破壊力が増す。実用化すれば一種の最終兵器のような物になるかも知れません。ちなみに「宇宙条約に違反している」というのはお門違いです。何度も述べてきましたが、国際法のほとんどは罰則や強制力がないため、ほとんど抑止力にならない。だから「違反だから打ち上げはで"きない"」というのは空論です。中国の衛星撃墜実験などを見れば明らかなように、宇宙開発先進国(同時に軍事大国)は違反など屁とも思わず実行します。
とはいえ、こんな大量虐殺兵器を打ち上げたら(同盟国を除く)多くの国々の敵意を買い、武力行使の誘因になりかねません。ましてや本当に使えば、世界じゅうが捨て身になっても反撃し、湾岸戦争時のイラクのように袋叩きにされかねませんし、命令を出す権力者も歴史に汚名を残すことは確実で、正気ならビビッて使えないでしょう。
では、この情報が意味するところは何か? この神の杖とやらの本質は、情報そのものが武器ということですよね。「わが国はこれだけの能力を持っている」というハッタリです。本気なら極秘で造ってるでしょうし。
実際には核兵器と同じで、遅かれ早かれ他国も同じ技術を手にして撃ち合えなくなり、威嚇と駆け引きにしか使えない。本当に研究しているなら今後実験をやるかも知れませんが、実戦配備の手前(いつでも発射準備可能にしておく)くらいで寸止めしておくのではないでしょうか。まあNBC兵器の部類に入らないから、限定的だったら小国相手に使っちゃうかも? とかすかに思わないでもありませんが、あとは理性を喪失した狂信者が権力の座につかないことを祈るばかりです。
なお軌道エレベーターを、同じように利用するという発想を以前見たことがあるのですが、あまり現実的ではないと思われます。この「神の杖」が兵器として有効なのは、
(1)機動性があり、宇宙空間にいるので反撃が困難
(2)無人の使い捨てで、反撃されて壊れてもいい
(3)量産可能
──という点ゆえです。冷戦時代の核戦略の主役が、大陸間弾道弾(ICBM)から潜水艦発射型の中距離弾道弾(SLBM)に移ったのも、深海で隠密行動をとる潜水艦は発見・反撃が困難で、しかも広範囲に配備できるからです。これに比べ軌道エレベーターは、巨大過ぎてそう簡単に軌道変更できない上、地上から静止軌道を超えて伸びる構造物を隙なく防衛するなど事実上不可能でしょう。本気、または捨て身で攻略されれば勝ち目はなく、再建も大変です。軌道エレベーターは、兵器としてはあまり割に合う代物ではありません。
それにしても、宗教的背景(天から鉄槌が下るというのは文字通り「天誅」というか、特にキリスト教圏ではいかにも神の裁きみたいなイメージに結びつくと思われる)もあるのでしょうが、よくもまあこんな傲慢なネーミングができるものですな。『七都市物語』のオリンポスシステムを思い出しますが、神の杖じゃなくて悪魔の槍だろうこれは。
米国は、「神の杖」を含む多種の宇宙兵器の研究・開発を始めている。宇宙プラットホームに小型推進ロケットを装着した直径30センチ、長さ6.1メートル、重さ100キロのタングステン、チタン或いはウランの金属棒を搭載するという計画で、衛星の誘導で地球上のすべてのターゲットを攻撃することができる。金属棒が地上から1000キロ離れた宇宙から急降下する際のスピードは時速1万1587キロに達し、ターゲットにぶつかる際の力は原子力兵器にも引けを取らない。(後略。中国網日本語版=チャイナネット=2月29日、JAPANSE.CHINA.ORG.CNより引用)
相当マユツバな気もするのですが、一応真に受けて一筆。
衛星の軌道速度を初速として利用し、単純に衝突の衝撃を主な破壊力として地上を攻撃する、いわば人工隕石ですね。誤解されがちですが、金属棒のスピードが「時速1万1587km」とあるのは、落下によって得るスピードではないはずです。金属棒を搭載するプラットフォーム衛星とやらは高度約1000kmですから、平均軌道速度は秒速7.35km=時速2万6460km。仮に無理くり大気中に突っ込ませるとして、棒が大気圏に突入するとブレーキがかかり、あるいは誘導のためにも速度が半減すると考えればいいのでしょうか?
この発想自体は大昔からありましたが、弾道軌道ではなく衛星軌道上からの物理的攻撃というのは、スピードが出すぎるゆえに迎撃困難な代わりに命中精度が低く、あまり現実的ではなかったと聞きます。そもそも衛星軌道上からモノを落とすのは大変なエネルギーが必要で、単純に落とせば地上に到達するというものではありません。レールガンのようなシステムで発射するとしたら、反動でプラットフォーム衛星本体の軌道も大きく変化してしまいます。
こういう問題をクリアできるのだとしたら、近年の材質や誘導技術の向上で可能性が高まったのかも知れませんね。
核兵器と違って放射能汚染もないし(ウラン製はちょっと気になりますが)、落下質量か速度を大きくすればそれだけ破壊力が増す。実用化すれば一種の最終兵器のような物になるかも知れません。ちなみに「宇宙条約に違反している」というのはお門違いです。何度も述べてきましたが、国際法のほとんどは罰則や強制力がないため、ほとんど抑止力にならない。だから「違反だから打ち上げはで"きない"」というのは空論です。中国の衛星撃墜実験などを見れば明らかなように、宇宙開発先進国(同時に軍事大国)は違反など屁とも思わず実行します。
とはいえ、こんな大量虐殺兵器を打ち上げたら(同盟国を除く)多くの国々の敵意を買い、武力行使の誘因になりかねません。ましてや本当に使えば、世界じゅうが捨て身になっても反撃し、湾岸戦争時のイラクのように袋叩きにされかねませんし、命令を出す権力者も歴史に汚名を残すことは確実で、正気ならビビッて使えないでしょう。
では、この情報が意味するところは何か? この神の杖とやらの本質は、情報そのものが武器ということですよね。「わが国はこれだけの能力を持っている」というハッタリです。本気なら極秘で造ってるでしょうし。
実際には核兵器と同じで、遅かれ早かれ他国も同じ技術を手にして撃ち合えなくなり、威嚇と駆け引きにしか使えない。本当に研究しているなら今後実験をやるかも知れませんが、実戦配備の手前(いつでも発射準備可能にしておく)くらいで寸止めしておくのではないでしょうか。まあNBC兵器の部類に入らないから、限定的だったら小国相手に使っちゃうかも? とかすかに思わないでもありませんが、あとは理性を喪失した狂信者が権力の座につかないことを祈るばかりです。
なお軌道エレベーターを、同じように利用するという発想を以前見たことがあるのですが、あまり現実的ではないと思われます。この「神の杖」が兵器として有効なのは、
(1)機動性があり、宇宙空間にいるので反撃が困難
(2)無人の使い捨てで、反撃されて壊れてもいい
(3)量産可能
──という点ゆえです。冷戦時代の核戦略の主役が、大陸間弾道弾(ICBM)から潜水艦発射型の中距離弾道弾(SLBM)に移ったのも、深海で隠密行動をとる潜水艦は発見・反撃が困難で、しかも広範囲に配備できるからです。これに比べ軌道エレベーターは、巨大過ぎてそう簡単に軌道変更できない上、地上から静止軌道を超えて伸びる構造物を隙なく防衛するなど事実上不可能でしょう。本気、または捨て身で攻略されれば勝ち目はなく、再建も大変です。軌道エレベーターは、兵器としてはあまり割に合う代物ではありません。
それにしても、宗教的背景(天から鉄槌が下るというのは文字通り「天誅」というか、特にキリスト教圏ではいかにも神の裁きみたいなイメージに結びつくと思われる)もあるのでしょうが、よくもまあこんな傲慢なネーミングができるものですな。『七都市物語』のオリンポスシステムを思い出しますが、神の杖じゃなくて悪魔の槍だろうこれは。