軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

重力波観測のニュースに思う

2016-02-14 13:22:16 | 気になる記事
「重力波を初観測」米中心の国際研究チーム 発表
 アメリカを中心とした国際研究チームは、11日、宇宙空間にできた「ゆがみ」が波となって伝わる現象、いわゆる「重力波」を初めて直接観測することに成功したと発表しました。重力波の観測は、ノーベル賞に値する成果とも言われ、日本の専門家も「天文学の飛躍的な発展につながる」と述べて高く評価しています。
(後略。NHK NEWS WEB 2月12日)



 軌道エレベーター関連のことを書こうと思いつつ、なかなか時間をつくれずにいたら、大ニュースが入ってきました。日本のKAGRA、本格稼働前に先越されちゃいましたね。
 重力波は理屈自体はシンプルでありながら、あまりにも微弱なためいままで検出できずにいたわけですね。何しろ自然界の四つの力のうちでも、重力は無限遠に到達するものの力は最弱で、次に小さい「弱い相互作用」の1/10^32というものですから、それにかかわる重力波も検出が困難なのは当然で、ブラックホールの合体で生じたものを観測して、やっとこさその存在を証明できた。SFの世界でも、たとえばワープの航跡をトレースするのに理屈が用いられることもあるし、生きているうちにこういう発見があるのは個人的にも非常に嬉しいです。

 しかし、今回は特に話題が消えていくのも早いような気がしています。ニュース番組とかで「私にはよくわからないんですが……」と前置きする人の多いこと。ヒッグス粒子やらニュートリノの質量やら、ここ最近宇宙論にかかわる成果が目白押しですが、その中でも重力波はかなりイメージしやすいと思うのは私だけでしょうか? 重力イコール時空のゆがみであり、質量が存在すれば周囲の時空がゆがむ。動けばその歪みがズレて波となり伝わる。プールの中で立っていたとして、動けば波が起きて伝わるのと同じですが、興味のない人は想像すらしようとしないんじゃなかと思えます。
 
 実生活に関係なければ、ほとんどの人はどうでもいいのでしょうねえ。その一例が、ネットでも話題になっている四国新聞。

 さすがうどん県 
 「四国新聞」朝刊トップが重力波でも円急騰でもなく
 「うどんの価格上昇」でTwitter民うなずく

 ノーベル賞級の功績よりも日本経済よりも、うどんが大事
 (2月12日 Yahooニュース)

 私も親の実家が坂出市なので、このニュースの重要性よくわかりますよ。関東の人がいかに讃岐うどんを誤解しているかとかイライラすることありますし、そりゃあ四国ではうどんの方が大事だよな! 真面目に言うと、こうでければ地方紙の意味もないし。だからそれはいいとしても、今回の重力波に限らず、科学の話題、とりわけ宇宙論やら素粒子物理学やらのディープな話題というのは、少し経つと、ほぼ完全に話題にのぼらなくなるものです。それは、ニュースに世間が熱狂することの目的や本質が、内容よりも一時の興奮の共有にあるからなのだと思われ、毎回少しさびしくも感じます。


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9番目の惑星の名前

2016-01-29 19:46:37 | 気になる記事
 米カリフォルニア工科大のマイク・ブラウン博士らの研究チームは20日、海王星の外側に新たな惑星が存在する可能性があると発表した。太陽系外縁部にある天体の軌道を分析した結果、分かったという。実際に観測によって見つかると、準惑星に「格下げ」となった冥王星に代わり太陽系の第9惑星になると期待される。
 チームは米メディアに対し「5年以内には望遠鏡で発見されるのではないか」と予測を示している。(後略。東京新聞1月21日夕刊)


 ふむ。。。「5年以内に発見」って大きく出たなあ。いわゆる「プラネット・ナイン」の話ですかね。既知の惑星の外側に、未発見の巨大な惑星があるのではという話は昔からありますし、ヘリオスフィアまでを太陽系とみなすなら、山ほどあってもよさそうな気もします。
 それに状況証拠とでもいうべき観測や計算の結果から存在が予想され、実際に惑星が発見された例があるので、不思議なことではないですよね。たとえば海王星は19世紀、諸惑星の軌道の計算から「影響を与える重力源があるはず」と存在が示唆され、その後発見されており、今回と同じような展開です。

 それにしても、今まで光学的(可視領域外も含む)に観測されてカタログに記載されてなかったんでしょうか? 天球上でほかの恒星などとは異なる動きをするわけだから、不思議な感じがしますね。天王星は天文学の歴史でも有名なウィリアム・ハーシェルが1781年に発見したのですが、当初は彗星の一つだと考えられていたそうです。同じように様々な観測活動のどこかに引っかかってて、別個の天体だと受け止められ、その後放置されていたとしても不思議じゃない気がします。

 しかしもっと気になるのは名前です。特に和名。皆さんご存知の通り、たとえば"Neptune"はお笑い芸人。。。じゃなくて海王星、"Uranus"が天王星と呼ばれています。ちなみに土星の "saturn" は「悪魔」のサタンとは関係ないです。ゴヤの猟奇的な絵で有名な、ギリシア神話のサトゥルヌスね。
 で、準惑星に格上げされる可能性を秘め、今回の9番目の惑星の影響を受けているらしい「セドナ」とか、空想レベルでは公転周期2600万年といわれる巨大惑星(もしくは太陽の伴星)「ネメシス」とか、外惑星天体に神話の名前が付けられることはよくあります。今回の天体が実際に発見され、9番目の惑星に認定されたとして、発見されれば神話にちんだ名前が付く可能性は大いにありそうです。しかしどういう名前にせよ、カタカナ表記のままではなく、我々の太陽系の惑星には「○王星」とか和風な名前が付いている方が、親しみやすい気がします。昭和生まれの古風な考え方でしょうかねえ?

 実在については今後の研究、観測を待つしかありませんが、準惑星に格下げされた冥王星にとって代わる以上、王様レベルでないとね。和名のセンスに期待しています。

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帝国軍が新兵器を実戦投入

2015-11-26 20:14:47 | 気になる記事
警官の写真自粛要請でネコ投稿
厳戒下のベルギー

 
 ベルギーでは21日にテロ警戒度を最高レベルに引き上げた直後から、捜査に当たる警官の画像などがツイッター上に次々と登場。活動に支障が出かねないと、警察が自粛を求めた。すると、なぜか猫の写真を投稿する動きが広がり、数千人が怪しげな猫、おびえた表情の猫、SF映画『スター・ウォーズ』に登場するストーム・トルーパーが猫に乗って移動する合成画像などを投稿した。市民の「協力」に、警察も(略)猫の餌の画像を投稿し、謝意を伝えた。(東京新聞11月25日付朝刊 画像はこちらから拝借しました)


とうとう帝国がこの恐怖の新兵器を…って何をやっとるんだベルギーの皆さん (=^・ω・^=)  
 当初、先日無事打ち上げられた改良型H2Aについて書こうかと思っていたのですが、記事を見つけて思わず一筆。より細かく言うとスカウト・トルーパーかバイカー・スカウトですが、最高にカッケー!(゜∀゜) 猫スピーダーで反乱軍を叩きのめせ! ちなみに『スター・ウォーズ』はSFじゃなくて、どちらかというとスペースオペラですよね。

 もともと、ベルギーは国境に近いイーペルという都市で「猫祭り」というのが3年に1回開かれ、世界中から猫好きが集まるんだそうです。魔女狩りに端を発した猫供養のようなものが起源らしいですが、歴史的に猫好きな国民になっていったという背景もあるんでしょうね。フランスやロシアが揉めに揉めているのに、同じヨーロッパの出来事とは思えんな。緊張の中でもユーモアは大事ですね。

 この画像の猫の、向かって右頬に見えるのはブラスターの発射口か何かでしょうか? だとしたら凝ってますね。先日プレイステーション4用の『スター・ウォーズ バトルフロント』を無事購入しまして、惑星エンドアを舞台にスピーダーバイクを操って反乱軍を追跡するミッションもあるのですが、この猫スピーダーの方を操縦してみたいですね。

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毎日新聞のジョーク記事

2015-10-23 20:46:55 | 気になる記事
「宇宙エレベーター」着工
静止衛星の軌道と地上を往復──

 高度3万6000kmの静止衛星の軌道と地上を結ぶ「宇宙エレベーター」建設に向け、最初の資材を載せた日本の補給機「こうのとり2」が19日、赤道に近い仏領ギアナのギアナ宇宙センターから欧州宇宙機関(ESA)のアリアン10ロケットで打ち上げられた。(中略)昨年各国が国連宇宙局の会議でエレベーターの建設と、衛星軌道の調整に合意。日本はこうのとり2を使って静止衛星まで建設資材を運ぶ役割を担うことになった。(毎日新聞10月20日朝刊)


 『宇宙未来新聞』と題した、毎日さんのジョーク紙面の中の一記事です。軌道エレベーターの基礎を誤解しているような、ちょっと不正確な記述も散見されるのですが、そもそも記事自体がホラ話なんだからご愛嬌。こういうのは好きです。記事中の「こうのとり2」は静止軌道まで到達できるらしい。「アリアン10」の側のモータのお陰かも知れませんがすごいね。本当にこうなるといいです。ギアナには確かに発射場あるし、微妙にリアルっぽい文章になっているのが、いやいや憎い。

 ちなみにトップ記事は「人類 火星に立つ」。来年上映の映画『オデッセイ』とタイアップしているらしく、一番下には映画の広告が載ってます(これは本物の広告)。このほかに気になるのが、同じ宇宙未来新聞に掲載されている「宇宙旅行1万人突破」という記事。清水建設の提供の宇宙ステーションのイラストを載せているのですが、随分古いのを引っ張り出してきたもんだなあ。これは1991年発行の『宇宙建築』(彰国社刊)という本のカバーにも使われているイラストですが、CG全盛期の今見ると、なんか古臭く見えてしまいます。
 そもそも、バブル時代末期に、建設大手のゼネコンは話題作りで超巨大建築やジオフロントなどの構想を競うようにぶち上げてました。そこには理由も目的もないので、具体性のない、「なんか楽しそうな景気のいい話」でしかなかったのですが。その中に軌道エレベーターはまったくなかったことが、現状の認知度との差を感じもして、隔世の感ありです。

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カナダ企業が "Space Elevator" の米国のパテントを取得

2015-08-19 01:21:14 | 気になる記事
カナダ企業が "Space Elevator" の米国のパテントを取得
カナダの宇宙関連企業 Thoth Technology Inc.,は、Space Elevator の米国での特許を認められた。(略)現在最も高い建築物の20倍以上に相当する地上20kmの高さで、風力発電や通信、観光などにも利用される。完全な再利用型の乗り物を運用することで、新たな宇宙到達の手段を得ることができ、現行のロケットよりも30%の燃料削減となる。


 考案者の Dr. Brendan Quineは「宇宙飛行士はエレベーターで高度20kmまで昇り、タワーの頂部からスペースプレインが発進して直接軌道に乗り、補給や再利用のため再びタワー頂部に帰還する」と話す。
(後略。Thoth Technology Current Releases より抜粋し拙訳)


 これ、ただの高い建物であって、軌道エレベーターでも宇宙エレベーターでもないのでは? 見出しで "Space Elevator" とうたってますが、本文中では "Space Tower" とも書いてある。PRのために少し誇張して Space Elevator という惹句を使っているのでしょう。パテントを認めた米国の役人も、よくわからないまま Space Elevatorとして認可しちゃったんじゃなかろうか? これを「宇宙エレベーター」と呼びたい人は呼べばいい。でも決して軌道エレベーターではありません。

 なぜ「軌道エレベーター」なのか? SF作家の野尻抱介先生も言われてますが、大きな理由の一つが「エレベーターシステム全体が軌道運動をしている」からです。だからこそ、やはり「軌道」の方がより適切なのです。「宇宙」の方が正しいと思ってる人はそこがわかってない。で、このタワーは地上から立てた建築物にエレベーターを備えてるのであって、既存の建物と同じ。軌道エレベーターとは呼べませんね。このほかに、The Japan Times の英文記事はクラークの著作にも触れてますが、『楽園の泉』で描かれているのはこういうものじゃない。このモデルに宇宙エレベーターを名乗られたら、「宇宙」派の人たちもコレジャナイ感というか、釈然としないんじゃないでしょうか。

 この企業の計画しているのは、ようは地上から建てた成層圏プラットフォームですね。元記事を読む限り、ようは静的に自力帰還できるロケットや、STOLのような短距離型のスペースプレインの離発着場にしようというものらしく、最近研究中のドラゴンのやつなどの運用を想定してるのではないかと思われます。

 軽量型高層タワーの構想というのは結構前からあって、2009年のルクセンブルク学会などでも発表されていて、特許関連の話も出ていました。日本の大手ゼネコンなどもバブル期に超高層建築打ち出してましたし。もちろん、エレベーターではなくタワーであっても、こうした構想がより現実的に発展して特許まで認められるようになってきたことは喜ぶべきことです。こういう技術もどんどん発展していってほしいものですが、やっぱりこれを Space Elevator というのはちょっと違うというか、引っ掛けのように感じました。

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