温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

内牧温泉 内牧荘

2014年11月22日 | 熊本県
 
内牧温泉では「内牧荘」で一泊お世話になりました。阿蘇温泉病院に隣接した比較的わかりやすい立地にあり、まるで昭和40年代から時が止まってしまったかのような、古風で渋い佇まいのお宿です。



お宿の周りにはニャンコが数匹ウロウロしていました。周囲の状況から察するに、厨房から出るおこぼれに与ろうとしているようです。


 
臙脂のカーペットが敷かれたロビーには、「天然温泉かけ流し湯」の幟が立てられていました。こちらのお宿では日帰り入浴も可能で(10:00~16:00)、しかもその料金はわずか200円。自家源泉を有するお宿ならではの有り難い料金設定です。お宿のおばちゃんの案内に導かれて2階の客室へと向かいました。


 
今回通された客室は、2階の角部屋で、8畳の和室です。画像はありませんが、お部屋にはバス・トイレが付帯されており、冷蔵庫こそ無いものの、テレビやエアコンなどひと通りの備品は備え付けられています。なおお風呂に関しては温泉の大浴場で十分でしたので、お部屋のバスは使いませんでした。


 
さてお部屋でひと休みしたところで、早速お宿自慢の大浴場へと向かいましょう。お風呂には女湯1室と男湯2室があり、浴室へ向かう廊下の途中には、ドライヤーが備え付けられている洗面台が設置されています。女湯は1室しかないのに男湯が2室もあるのは、いかにも昭和的な発想ですが、ここで屁理屈を捏ねても仕方ありませんし、せっかくですから、男である私は2室とも入ってみることにしました。


●内湯その1
 
まずは廊下最奥の突き当たりにある浴室から。後述するもう一つの男湯には露天風呂があるのですが、こちらは内湯のみです。脱衣室は上画像のような感じで至ってシンプル。


 
湯気の篭った浴室は見るからに年季あ入っており、モルタル塗りの壁は黒ずみが目立ち、床や浴槽などに用いられている鉄平石は、長年にわたる温泉成分の付着によって赤く染まっていました。このお風呂は何十年間使われ続けているのでしょうか。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設けられています。



入室時、ちょこっと開けられていた窓サッシには、なぜか石鹸が置かれていました。何の目的なんでしょう…。


 
浴槽は所謂岩風呂であり、大凡4人サイズ。硫酸塩の析出がサンゴのようなトゲトゲ状になってビッシリこびりついている湯口から、お湯が音を立てて投入され、浴槽縁よりオーバーフローしています。浴室全体の老朽化が激しく、全体的にくすんでいるので、浴槽のお湯が呈する濁りも、もしかしたら鈍りによるものではないかと誤解を招きそうですが、投入量はしっかりしており、実際に湯船に入っても鮮度感は得られましたので、お湯の濁りは単なる酸化によるものと思われます。


●内湯その2と露天風呂
 
続いて、露天風呂があるもう一つの浴室へ。
こちらは露天風呂というおまけ施設を伴っている分、脱衣室や浴室が若干小ぢんまりしているような感を受けます。また脱衣室には内湯と露天風呂へつながる2つの扉があるのですが、内湯から露天風呂へ向かうには、一旦脱衣室を経由しなければならないため、私の利用時、脱衣室の足拭きマットは残念ながらビショビショ状態でした。
室内には張り紙が掲示されており、曰く「浴槽内がヌルヌルしますが、汚れやコケ類ではなく温泉成分が付着したものです」とのこと。


 
こちらの浴室もモルタル塗りの壁と鉄平石敷きの床という組み合わせで構成されており、壁の黒ずみなどが目立つ室内は、相当草臥れているようです。浴室の窓はいまどき珍しい鉄のサッシで、室内に篭もる湯気を追い出すべく窓を開けようとしたのですが、固くて重いこの窓を動かすのは結構な力仕事でした。なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基並んでいます。


 

浴槽は3人サイズで、床同様に槽内も鉄平石貼りです。硫酸塩のトゲトゲ析出がこびりついている湯口より絶え間なくお湯が浴槽へ注がれ、縁の切り欠けより惜しげも無く溢れ出ています。浴槽はまわりは長年に及ぶ温泉成分の付着により赤茶色に染まっています。湯使いは文句なしの掛け流しでしょう。
湯加減は実に入りやすい42℃前後で、湯船に見合った量のお湯が常時投入されているため、シャキとした鮮度感が実に爽快です。お湯はほんのり赤みを帯びて笹濁っており、湯口に置かれたコップでお湯を口に含んでみますと、金気と芒硝の味および匂いが明瞭に感じられ、石膏的な感覚や重曹的苦味も伝わってきました。


 
浴室の壁にはトロン温泉云々の説明とともに「ラドン温泉による治効」と題する数値が掲示されていました。昭和30~40の温泉業界では、わけもわからず放射能のパワーを喧伝する風潮が流行ったことがあり、一部の入浴施設ではいまだに「ラドン風呂」とか「ラジウム温泉」などという文言が残っていたりしますが、この説明プレートも当時の流行に乗って掲示されたものと推測されます。いわば昭和の名残であります。今となっては、この手のものがかなりの眉唾ものであることは自明なのですが、信じる者は救われると申しましょうか、プラセボ効果による「効能」も期待できるのでしょうから、あまり深くツッコむのは寧ろ野暮かもしれませんね。


 
一旦脱衣室を経てから露天風呂にも入ってみました。露天風呂は岩風呂で、奥に細長い造りになっており、左に浴室の壁が、右に化成品の模造竹垣が、それぞれ高く聳えて視界を塞いでいるため、湯浴みしながら景色を楽しむことはできませんが、空を見上げて月や星を眺めることなら可能です。
お湯は手前側より供給され、最奥が湯尻となっています。お湯の投入量は目測で内湯と同程度なのですが、容積・表面積ともに内湯より大きく、しかも外気に熱を奪われるため、湯加減はややぬるく(40℃前後)、しかも少々鈍り気味でした。お湯は内湯の方が遥かに良好です。また、脱衣室の張り紙には、ヌルヌルは温泉成分の付着によるものと説明されていましたが、内湯ではさほどヌルヌルしていなかったものの、露天ではかなりはっきり感じられたので、このヌルヌルは屋外ゆえの事情も影響しているのではないかと想像されます。

せっかく宿泊したので、この露天風呂に翌朝再び入ろうと、朝7:30頃に向かったのですが、豈図らんや、絶好の朝風呂時間にもかかわらず、お湯を抜いて清掃の真っ最中だったので、残念ながら朝風呂は内湯のみに留めました。お風呂のみならずお宿全体としても、そしてマンパワー面でも老朽化が進んでおり、宿泊中にはそのことを実感せざるを得ない場面に何度も遭遇してしまうため、お客さんによっては好き嫌いが分かれるかもしれません。
でも掛け流しの温泉は正真正銘の本物であり、お風呂から上がっても、しばらくは火照りが取れず、体の芯から温まっていつまでも湯冷めしませんでした。200円で日帰り入浴できますから、銭湯代わりにこちらのお風呂を利用するもよし、リーズナブルに宿代を上げたい場合に泊まるもよし、旅人のお財布に優しい、昭和の薫りが漂う味わい深いお宿でした。


ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-硫酸塩温泉 42.6℃ pH7.2 161L/min(動力揚湯) 溶存物質2.01g/kg 成分総計2.02g/kg
Na+:315.9mg(49.19mval%), Mg++:87.3mg(25.74mval%), Ca++:117.5mg(20.98mval%), Fe++:0.3mg,
Cl-:150.6mg(15.11mval%), Br-:0.3mg, HS-:0.3mg, S2O3--:0.2mg, SO4--:965.4mg(71.48mval%), HCO3-:219.6mg(12.80mval%),
H2SiO3:98.4mg, CO2:12.1mg, H2S:0.2mg,

JR豊肥本線・阿蘇駅より産交バスの内牧温泉方面行で「阿蘇温泉病院前」下車徒歩1分
熊本県阿蘇市大字内牧1159-2  地図
0967-32-0252
ホームページ

日帰り入浴時間10:00~16:00
200円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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