引き続き阿蘇・内牧温泉を湯めぐりします。今回訪れたのは、内牧の中心部、東西に伸びる商店街の通りに面する、比較的大きな規模の旅館「大観荘」です。今回は宿泊ではなく日帰り入浴で利用させていただきました。いかにも昭和の温泉旅館らしい、鉄筋3階建ての古い建物であり、近年に大規模改修された形跡も見当たりませんので、これまで古い状態のまま、メンテナンスや清掃によって何とか乗り切ってきたのだと思われます。
私が訪問したお昼時、フロントで入浴をお願いすべく声を掛けたのですが全く応答なく、仕方なく携帯電話で連絡を入れたところ、フロントのすぐ奥の部屋からおばちゃんが現れたのでした。シエスタの真っ最中だったのかな…。
浴室はロビーから右手へ伸びる廊下を進んだ突き当たりにあり、男女別の内湯が1室ずつで、露天風呂は無いようです。廊下には昭和33年の古い温泉分析表が掲示されているのですが、そこに記されている泉質名を見てビックリ。「含石骨」と書かれているではありませんか。石化した骨が温泉に溶け込んでいる、オカルトな温泉なのでしょうか。ま、そんな重箱の隅を突くようなツッコミはどうでも良いのですけどね(言わずもがな、正しくは石膏ですね)。
館内の他箇所と同様に脱衣室も草臥れていますが、清掃は行き届いていますので、問題なく利用できました。室内には籐の籠が積まれている他、貴重品を保管するロッカーも設置されていますが、このロッカーは有料(100円)です。洗面台は室内の左右に分かれて計2台設けられています。窓外のすぐ目の前には、ブロック塀に囲まれた大きなタンクが立っており、やや殺風景かも。
ガタピシの古い木戸をスライドさせて浴室へ。この浴室も昭和の面影を強く残しているのですが、窓から入り込む陽光のおかげで、古臭さや湿っぽさはそんなに気になりません。洗い場は室内の左右に分かれて配置されており、計6基のシャワー付き混合水栓が設置されています。また、鉄平石敷きの床は真ん中が盛り上がっており、後述する浴槽のお湯のオーバーフローが、左右の洗い場へ分かれて流下するようになっています。
石板の蓋が半開き状態で被せられている湯口から、お湯が大量に供給されています。この湯口における吐出時点で、お湯の温度は約43℃でした。上述の古い分析表では、湧出状況として「自然湧出(鑿泉)」と記されており、現在もなお自然湧出のままであるかは不明ですが、少なくとも鑿泉、つまり掘削した井戸から温泉が湧出していることは間違いなさそうです。この源泉井の問題なのでしょうか、お湯に混じって上がってくる砂で底がジャリジャリしており、特に湯口付近は目視できるほどたくさん溜まっていました。源泉のままお湯を湯船に供給することは結構なのですが、砂は決して有り難いものではありませんので、湯船へ注ぐ手前の段階でストレーナー等を設けたほうが宜しいかと思われます(さもないと「清掃不行届」と誤解するお客さんもいらっしゃるでしょう)。
浴槽は10人近く入れそうな容量を有しており、底面は洗い場と同じく鉄平石敷きで、縁には御影石が用いられていますが、長年に及んで金気を含むお湯が流れているためか、浴槽縁の石材は赤く染まっています。なお湯口で43℃あったお湯は、湯船では40℃まで下がっていました。私の訪問時、お湯は加温されていなかったようですが、もし通年加温無しですと、夏場でしたらぬるめで気持ち良いのですが、冬だとちょっと肌寒く感じてしまうかもしれません。
湯使いは完全掛け流しと推測されます。お湯の投入量が多いため、湯船からふんだんに溢れ出ており、波立ちながら床を流れ去ってゆくお湯を見ていると、こちらの気持ちまで爽快になります。
お湯は薄い黄色と若干の赤みを帯びながら笹濁りを呈し、芒硝と金気の味と匂いが感じられます。ビジュアル的には金気の強そうなお湯ですが、私の体感としては金気よりも芒硝感の方が優っていたように思われました。湯中ではスベスベ浴感とキシキシ浴感がせめぎ合っていますが、スベスベの方がやや勝っており、投入量の多さのお陰で良好な鮮度感も得られました。
容赦なくお宿を蝕む老朽化にマンパワーが追い付いていないような印象を受けますが、昭和の香りが漂うお風呂で、掛け流しのぬる湯にじっくり長湯するのも、なかなか乙な時間の過ごし方ではないかと思います。
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-硫酸塩温泉 47.2℃ pH7.2
Na+:268.8mg(38.65mval%), Ca++:168.8mg(27.85mval%), Mg++:94.6mg(25.72mval%), Fe++:14.5mg(1.72mval%),
Cl-:159.8mg(14.90mval%), SO4--:986.4mg(67.91mval%), HCO3-:317.2mg(17.19mval%),
H2SiO3:130.6mg,
(昭和33年4月11日)
JR豊肥本線・阿蘇駅より産交バスの内牧温泉方面行で「内牧」下車、徒歩1~2分(150m)
熊本県阿蘇市内牧246 地図
0967-32-0999
ホームページ
日帰り入浴時間9:00~20:00
400円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★