温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

長湯温泉 郷の湯旅館

2014年11月01日 | 大分県
 
温泉ファンにはお馴染みの有名旅館「郷の湯旅館」で立ち寄り入浴してまいりました。当記事のタイトルでは長湯温泉の一部として扱わせていただきましたが、温泉街から西へ外れた場所にあり、実質的には一軒宿と見なしても差し支えないような立地です。まずは県道沿いに立つ看板から路地へ入り、川へ向かって坂を下りてゆきます。


 
路地が川を渡るところで、郷の湯を象徴する光景に出くわします。浴室などから排出されたお湯によって石灰華のドームがいくつも出来上がっているのです。温泉ファンをはじめとして当地を訪れた多くの方が、このフォトジェニックな奇景に目を奪われて、画像をネットにアップなさっていますが、各地で石灰華を何度も見ている私も、さすがにこの不思議な光景を目にすると、衝動的にその場で立ち止まってしまい、気づけばカメラを構えていました。


 
民芸調というか何というか、伝統的な日本建築のまわりには、メッセージ性の強い看板などがあちこちに設けられており、一種独特の雰囲気が漂っています。敷地内には大小いくつもの棟が建っていますが、本館は上画像の建物です。本館の玄関で声を掛けて入浴をお願いしますと、ご主人がわざわざ雨の中を外まで出てきて、対応してくださいました。


 
湯治棟と浴場棟は屋根付きの通路でつながっていますので、こちらで湯治すれば雨を気にせずお風呂へ移動できるのでしょうね。私は日帰り入浴ですので湯治棟には用が無く、嵩をさしながら敷地内を移動します。


 
案内して下さるご主人の後を追って浴室棟へ。廊下にそって男女別の内湯や貸切風呂などが並んでおり、男湯は一番手前側でした。なおこの浴場棟の他、別棟の家族湯や露天風呂など、たくさんのお風呂があるそうですが、ちょっとした胸騒ぎを覚えたので、敢えて他のお風呂は見学せず、お主人の案内に従って男湯のみの利用に留めました。



浴室自体はシンプルな造りで、木造の湯屋に浴槽がひとつ据えられているだけなのですが、この浴槽がとんでもないことになっており、その突飛さが温泉ファンを惹きつける要素にもなっているわけです。既にご存知の方も多いかと思いますが、ご存知無い方のために、敢えて何が凄いのかを説明させていただきますと…


 
とにかく炭酸カルシウムを主体とする成分付着が尋常ではないのであります。浴槽の縁なんて元々の形状はすっかりわからず、まるで貯水湖のダムサイトみたいにベージュ色の成分析出が分厚くこびりつき、そしてお湯が溢れ出る方向はスロープ状になっていました。圧巻です。


 
もちろん分厚い縁の表面は、鱗状やトゲトゲの造形で覆われています。トゲトゲしている様は、まるでサンゴ礁、あるいは内視鏡で覗く小腸のよう。


 
浴室の床が濡れていたので、おそらく私が訪れる前にもどなたかがここで入浴していたはずなのですが、にもかかわらず早くも湯面には膜が発生し、細かな破片同士がつながって大きな膜へと変貌していました。炭酸やカルシウムを多く含むこの手の温泉は、数時間放っておくと湯面に膜が張ることは珍しくないのですが、ほとんどは湯面が波立たなくなってから数時間を経てようやく張り始めるものであり、こんな短時間ですぐに張っちゃう温泉なんて、滅多に見られません。私が浴室にいるその瞬間にも、浴槽は着実に厚みを増していたわけですね。お宿の方は、温泉の管理に相当ご苦労なさっているものとお察しします。


 

こちらのお宿のポリシーは「沸かさず薄めず循環せず」。屋外と同様、浴室内にもたくさんのメッセージが掲示されており、その文言もしっかり記されていました。


 
湯口のホースは短期間で交換されるのか、ここだけ素材の色がはっきりと現れていました。管から吐出されたお湯は、一旦湯溜まりに注がれてから浴槽へ滴り落ちており、あまり波立てること無く浴槽へ供給されているため、膜の張り方が早いのだろうと想像されます。
浴槽は元々7~8人は入れそうな容量があったものと思われますが、容赦なく付着する石灰華によって全体的に埋められて狭まっており、今では4~5人サイズといったところ。お湯は薄い黄土色を帯びており、粉状に舞う湯華によって微濁しています。明瞭な土気と弱い金気の味&匂い、石灰のような粉っぽい感覚、そしてちょっと焦げたようなアブラ的匂いが感じられました。分析表によれば相当量の遊離炭酸が含まれているものの、お湯が熱くて飛んでしまうのか、炭酸らしい味はかなり弱く、独特のエグミだけは残っていました。

入浴中はギッシギシに引っかかる浴感があり、湯船から上がろうとすると、自分の肌に薄氷のような膜がこびりついて、それがパリパリと砕ける感触を肌で体感することができます。浴槽だけでなく、まさか自分の体まで短時間のうちに析出で覆われてしまうとは、恐るべし郷の湯温泉!


マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素温泉 51.0℃ pH8.5 127.0L/min(自噴・掘削200m) 溶存物質4781mg/kg 成分総計5573mg/kg
Na+:486.0mg(35.87mval%), Mg++:310.0mg(43.28mval%), Ca++:197.0mg, Fe++:3.7mg,
Cl-:240.0mg(11.01mval%), SO4--:453.2mg(15.35mval%), HCO3-:2760.0mg(73.58mval%),
H2SiO3:235.0mg, CO2:792.0mg,
加水加温循環消毒なし

豊後竹田駅より大野竹田バスの直入支所(長湯温泉)行で「新田」バス停下車
(時刻等は大分バスのホームページでご確認を)
大分県竹田市直入町大字長湯3538-2
0974-75-2912
ホームページ

日帰り入浴に関してはお宿へ直接お問い合わせください
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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