今回からは私の第二の故郷である青森県津軽地方の温泉を連続して取り上げてまいります。
五所川原市の南端、国道339号線旧道沿いの、鶴田町との境界付近に位置する温泉公衆浴場「金太郎温泉」は、源泉温度低下に伴って一時的に休業していましたが、その後に新源泉を掘削して昨年(2013年)12月にリニューアルオープンしています。休業前には何度か利用したことがあり、営業再開の報も昨年の時点で既に知っていたのですが、リニューアル後はなかなか訪れることができず、先日ようやく生まれ変わった金太郎温泉を再訪する機会を得ました。
国道旧道には五能線が並行しており、私が駐車場に車を停めると、偶然にも、1日10往復しかない普通列車が川部方面へ向かって走り去ってゆきました。すぐそばに線路が敷設されているので、列車での便も良さそうに思われますが、ここは駅と駅のちょうど中間点であるため、残念ながら最も近い陸奥鶴田駅から3km以上離れており、鉄道でアクセスするのはあまり現実的ではありません。
番台前に設置されている券売機で料金を支払い、券を番台に差し出して館内へと進みます。さすがに改修されてまだ1年も経っていないからか、浴室前の広いホールは明るくて綺麗。ベンチもたくさん置かれています。また窓側には小上がりも用意されています。湯上がりにここでゆっくり横になるにもいいですね。
天井の高くて開放的な浴室は、中央に大きな浴槽が据えられ、その周りを多くの洗い場が取り囲むという、青森県の銭湯の標準的なレイアウトです。室内がタイル貼りであることは従前通りですが、リニューアルによって全体的に小奇麗になっており、特にカラン周りや浴槽には木材が用いられるようになって、優しくぬくもりのある優しい内装へと進化していました。
洗い場のカランは計26基並んでおり、改修されたとはいえ、カランだけは青森県の銭湯に共通して見られる古典的な押しバネ式水栓と壁直付の固定式シャワーという組み合わせが残されていました。
金太郎温泉のシンボルとでも言うべき、壁に描かれた金太郎及びクマさんのイラスト。以前はもう少し渋い画風だったように記憶しているのですが、リニューアルに伴い、この金太郎とくまさんのイラストもすっかり別物に塗り替えられたようで、金太郎は現代的なアニメっぽい顔つきに生まれ変わり、クマは以前より写実的になったようです。
カランから吐出されるお湯は源泉であり、桶に溜めるだけでここの温泉が薄い黄色を帯びていることがわかります。
アニメチックに生まれ変わった金太郎の壁絵と並ぶ大きな変化が、総木板張りになった浴槽でしょう。浴室の中には中央の主浴槽と副浴槽、そして隅っこに設けられた打たせ湯と水風呂の計4浴槽があるのですが、打たせ湯槽を除く3浴槽は、縁も槽内も全て木板張りとなって一新されました。
主浴槽は目測で3m×4.5m(おおよそ15~6人サイズ)で、丁度良い深さとなっており、湯加減は43℃くらいに設定されています。一方、後述する湯口を挟んだ奥側の副浴槽は約2m四方で、湯加減は主浴槽とほぼ同じなのですが、かなり浅く、寝湯向きの造りになっていました。いずれの浴槽においても、槽内に肌が触れると、木ならではの滑らかな感触が心地よく、お湯の良さも相俟って、十分にくつろげます。
主浴槽と副浴槽とを仕切るタイル張りの湯口。主副それぞれに対してお湯をドバドバ大量に落としています。その投入量はとても多く、浴槽縁より惜しげも無く溢れ出ています。この金太郎温泉は、弘前市の百沢温泉やあたご温泉などと同じく株式会社百沢温泉によって運営されていますが、同社の温泉浴場で共通して見られる金属製の平たい湯口は採用されていません。
新たに掘削された桜木2号源泉は、以前の源泉より湧出温度が高くなったばかりか、湯中に溶けている成分量もかなり増え、相当パワーアップされました。特徴を具体的に列挙してみますと、見た目は結構薄い黄色を帯びつつほぼ透明。口にふくむと明瞭な塩味と出汁味、そして弱重曹味が得られ、ほんのりと香る臭素臭と微かな金気臭、そしてアブラ臭に似て非なる独特の匂いが僅かに嗅ぎ取れました。特筆すべきは泡付きの多さであり、これは以前の源泉でも同様でしたが、新源泉でも湯船に浸かると、あっという間に全身が気泡に包まれました。この泡付きは源泉投入口に近づくほど顕著です。
いかにも食塩泉らしいツルスベ浴感はもちろんのこと、泡付きのおかげで滑らかさがより際立っており、もしかしたら界隈の他温泉よりツルスベ感が強いかもしれません。
浴室の奥に設置されている打たせ湯と水風呂。なぜか打たせ湯だけは従前のまま流用されているようです。一方、水風呂は主浴槽等と同様の改修を受けており、小さいながらも木板張りです。この水風呂には水道ではなく、井戸から汲み上げられた鉱泉が用いられおり、その浴感の良さに惹かれている隠れファンが結構いらっしゃるようです。私もこの水風呂に入ってみたところ、金気を含んで薄っすら黄色を帯びているこの鉱泉は20℃前後で、一般的な水風呂より遥かに入りやすいんです。こちらのお湯は塩気を含んでいるため、浴感は滑らかですが火照りやすく、迂闊に長湯すると体が参ってしまいますから、主浴槽でしっかり温まった後にこの水風呂へドボンと入ると、適度にクールダウンされ、汗も止まって、全身に爽快感が走りました。夏など暑い時期には、湯上がり直前の締めくくりに入ると最高でしょうね。
浴室奥には屋外に出る戸があり、その向こうには露天風呂らしきものがあるようですが、現時点では閉鎖されていました。
最後に小ネタをひとつ。
上画像は浴室内にある、従業員しか開けられない扉なのですが、そこに貼られたプレートには"STAFF ONRY"と記されていました。んん? R? 惜しいですね。
桜木2号泉
ナトリウム-塩化物温泉 64.7℃ pH7.9 222L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質7.618g/kg 成分総計7.633g/kg
Na+:2672mg(95.32mval%), Fe++&Fe+++:0.8mg,
Cl-:3872mg(91.06mval%), Br-:18.6mg, I-:1.3mg, HCO3-:613.8mg(8.39mval%),
H2SiO3:177.7mg, HBO2:49.2mg, CO2:14.6mg,
五所川原駅より弘南バスの弘前行で「三ツ屋」バス停下車、徒歩4分(350m)
青森県五所川原市大字姥萢字桜木299-1 地図
0173-34-7715
8:00~22:00
320円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤーあり、石鹸・シャンプーなど販売あり
私の好み:★★+0.5