白馬村には意外にも数多くの温泉浴場が存在していますが、今回取り上げる「みみずくの湯」は、白馬の共同浴場の中では最も駅に近い施設かと思われます。夏には登山客が、冬にはスキー・スノボー客が多く利用するので、他県民でも白馬をよく訪れる方だったらご存じのはず。表通りからちょっと入った路地沿いに位置していますが、付近には随所に案内看板が立っているので迷うことはないでしょう。駐車場も広いので、車での利用も便利です。
券売機で料金を支払って受付のおばちゃんに券を渡します。おばちゃんは明るくて愛想良いです。玄関ホールには飲料やハーゲンダッツ(アイス)の自販機が設置されていますが、スペースとしてはかなり狭く、無理やり自販機を置いたような感じ。玄関のすぐ左が男湯、右が女湯で、左手前の奥にはこじんまりした休憩スペースが確保されていました。
お風呂は内湯と露天に分かれています。まずは内湯から。洗い場にはシャワー付き混合栓が7基とスパウトのみのカランが3基用意されています。窓に面した明るい浴槽は石板貼りで、天井まで届きそうな大きな岩のオブジェからお湯が落とされ、浴槽へと注がれています。お湯は無色透明ですが、よく見ると微細な白い湯の花がたくさん湯の中で浮遊しているのがわかります。微かに軟式テニスボールのような硫黄臭が漂うものの、よく嗅がないとわからないかもしれません。また強アルカリ泉にありがちな、ちょっぴり口腔を収斂するような味も弱く感じられました。pH11.2という国内屈指のアルカリ性を誇るので、さすがにツルスベの明瞭な浴感が得られますが、そもそも成分がかなり薄く(成分総計は僅か128.2mg/kg)、アルカリ性温泉でのツルスベ浴感をもたらす鹸化という重要な現象の一翼を担うナトリウムイオンも少量(41.0mg/kg)、炭酸水素イオンに至っては検出ゼロという状態なので、pH値から想像したくなるようなもの凄いヌルヌルスベスベは期待できません。
とはいえ、当施設を含めた白馬八方温泉で立派なのは、湯使いを完全掛け流しにしていることです。館内には湯使いに関して、加水加温循環消毒を行っていない旨が明示され、実際にお風呂を見てもちゃんと使い捨てにしていました。尤もこの白馬八方温泉のように成分の薄い高アルカリ性温泉を循環なんてしようものなら、空気中の二酸化炭素を吸収してたちまち中性へと傾き、ごくふつうの水道水と何ら変わらなくなってしまうので、掛け流さないと温泉としての意味を失ってしまうわけですが…。
内湯のガラス窓の向こうには露天風呂が据えられています。内湯の湯船の浅くなった部分をジャブジャブ歩きながら屋外へと出ます。こちらも内湯同様しっかり掛け流しで、内湯ほどではないものの、その半分くらいの高さの岩のオブジェからお湯が注がれています。目の前には畑が広がり、その彼方には八方尾根が山裾を広げています。非常に長閑なよい雰囲気です。湯加減も絶妙な塩梅。爽やかな風が露天風呂を吹き抜けるので、お湯で火照った体をそのそよ風でクールダウンさせたら、何とも言えない爽快感を味わえました。
湯上りに辺りをうろうろしていると、「みみずくの湯」が面する路地の向かいにこんな建物とタンクを発見。入口には「八方温泉 八方口機械室」と記されています。おそらく温泉を引湯するための中継施設なんでしょう。
白馬八方温泉は猿倉の手前で営業している「小日向の湯」から西へ数キロ進んだ南股の沢沿いに源泉井を有し、そこから引湯管を用いて白馬村の八方地区までお湯を引き、八方尾根開発株式会社によって「みみずくの湯」をはじめとする共同浴場の他、100軒ちかい旅館・ホテルなどへ供給されています。いわば温泉の水道みたいなものですから、このような中継施設が設けられるわけですね。このため八方ではどの施設へ行っても同じお湯です。でも源泉に最も近い「小日向の湯」(入湯済ですが未レポート)は、同じ源泉でも感触がかなり違うので、麓と源泉付近で同じお湯がどのように異なるか、入り比べてみるのも面白いかもしれません。
なお源泉の開発については八方尾根観光協会のページに詳しく記されています。
白馬八方温泉第1号・第3号の混合泉
アルカリ性単純温泉 49.7℃ pH11.2 湧出量未測定(混合泉分析のため) 溶存物質128.2mg/kg 成分総計128.2mg/kg
Na:41.0mg(64.91mval%), Ca:16.3mg(29.54mval%), OH:36.1mg(72.28mval%), CO3:14.5mg(16.37mval%)
JR大糸線・白馬駅より徒歩10分
長野県北安曇郡白馬村北城5480-1 地図
0261-72-6542
ホームページ
10:00~21:30(最終受付21:00)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★