温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

宮野原温泉 宝山荘

2011年09月15日 | 新潟県
2011年9月16日夕刻に(16:31長野発越後川口行から)、飯山線が全面復旧します。震災による路盤流出から見事に蘇った飯山線にエールを送るべく、今回はその沿線の温泉を取り上げてみます。なお、私が訪問したのは震災発生前ですので、もしかしたら泉質などに微妙な変化が顕れているかもしれません。あしからず。

 
長野県最北端の駅である森宮野原駅は1945年2月12日に7.85mのとんでもない積雪を記録し、JR日本最高積雪地点の駅としても知られていますが、この駅から国道117号に出て東へ歩き、千曲川(信濃川)の橋を渡って対岸の新潟県側へ出ると、河岸の崖にしがみつくように一軒の宿「宝山荘」が立っています。ここはお湯が良いと温泉ファンからの評判が頗る良いので、是非行ってみたかったのです。

 
こちらのお宿は蕎麦処も兼ねているようですが、訪問時はお昼時を過ぎた中途半端な時間帯だったためか、玄関に入ってみると館内は真っ暗で妙に静まり返っており、「ごめんください」と声をかけても誰も出てこないので、どうしたものかと思って建物の裏手へまわってみると、宿のご夫婦は裏庭で野良仕事の真っ最中でした。お仕事の邪魔をしちゃったので恐縮しながら入浴料金を支払うと、ご夫婦は「気付かなくてごめんなさいねぇ」と実に明るくにこやかにお返事してくれ、仕事の手を休めてお風呂へと案内してくださいました。建物の外観はやや草臥れた印象が拭えませんが、館内はとてもよく手入れされています。

 
お風呂は男女別の内湯のみ。民宿のようなこじんまりとしたお風呂です。浴槽はひとつで、総タイル貼り。宿の建物は古びていますが、このお風呂だけはリニューアルしたのか、明るい造りで綺麗です。洗い場にはシャワー付き混合栓が4基用意されています。
信濃川の河岸の崖上にせり出すように建てられているので、窓からは信濃川の奔流が間近に見下ろせます(ただし木が茂っているため、あまり視界は開けていませんが…)。また視線を川面から水平方向へ上げると国道の橋が目の前で横切っているのがわかります。
源泉温度から察するにお湯は加温されているはずですが、にもかかわらず浴槽の縁から絶え間なく贅沢にオーバーフローしています。お客さんがいないときぐらいはボイラーを止めちゃえばいいのに、と余計な世話を焼きたくなってしまいました。でも、いつ行ってもいい湯加減で掛け流しのお湯に入れるわけですから、とってもありがたいですね。


お湯はごく薄い黄色を帯びた透明。浴室に入った途端香ってくるタマゴの匂いが芳しく、口にしてみるとタマゴ味の他に微かな金気のような味も感じられました。黒い溶岩のような材質の湯口には、硫黄分による白い析出が薄く膜のように付着しているため、黒の上に白のベールが被さることによって、お湯の流路がちょっと青っぽく見えました。
お湯に体を沈めると、気泡がびっしりと肌に付着し、全身泡だらけになりました。特にお湯が上から落ちてくる湯口付近は泡でお湯が白く濁っているようにも見え、アワアワなお湯が大好きな私は思わず狂喜乱舞。脱衣室内の分析表にはpH値が記されていませんでしたが、かなりアルカリ性に傾いているのか、あるいは単純泉とはいえ重曹型の泉質であるためか、ヌルヌルツルツルスベスベ、とっても気持ち良い浴感で、思わず肌を何度もさすってしまいたくなる程でした。加温しないと浴用には適さないのかと思いますが、夏の暑い時期なら加温せずとも大丈夫な温度でしょうから、ぜひ非加熱の源泉で一度入浴してみたいものです。きっとこの上なく爽快な浴感とさっぱりした湯上りを楽しめることでしょう。お風呂自体はごくごく普通ですが、評判通り、お湯は本当にすばらしいものでした。再訪必至です。


アルカリ性単純温泉 33.6℃ pH不明 溶存物質542.1mg/kg 成分総計542.5mg/kg
Na:125.7mg(91.50mval%), Cl:84.8mg(40.08mval%), HCO3:179.3mg(49.21mval%)

JR飯山線・森宮野原駅より徒歩10分弱(1.3km)
新潟県中魚沼郡津南町上郷宮野原65-1  地図
TEL:025-766-2600
津南町観光協会サイト内の案内ページ

平日15:00~20:00、土日祝12:00~20:00
500円
ドライヤー・シャンプー類あり(ドライヤーは共用洗面台にあり)

私の好み:★★★
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(松之山温泉郷)兎口温泉 露天風呂 翠の湯

2011年09月15日 | 新潟県
※兎口温泉露天風呂「翠の湯」は2013年に廃止されました。

新潟県には油臭のする温泉が点在しますが、それらのなかでも、東頸城丘陵の山中に湧く松之山温泉は、新津温泉や月岡温泉・瀬波温泉のように石油を掘削しようとして温泉が湧いた新参者とは異なり、800年以上の歴史を有する古湯であり、上杉謙信の隠し湯としても知られている名湯であります。この松之山温泉からちょっと離れたところで同じような泉質を湧出させているのが兎口温泉でして、一応独立した温泉地ですが、立地的にも泉質的にも便宜上松之山温泉に含めてしまうことがほとんどです。兎口温泉には植木屋という一軒宿があるのみですが、その裏手には公営の素朴な露天風呂があるので、油臭が無性に恋しくなった初夏の暑い日、車を飛ばして行ってみました。

 
植木屋旅館下の指定駐車場に車をとめます。辺りには丘陵の傾斜地に開かれた棚田が広がっています。

 
露天風呂は一応公営ですが、受付管理業務は植木屋旅館に委託されており、料金も植木屋さんで支払います。


旅館の妻面には翠の湯専用の小窓があり、ここで料金を支払う仕組みです。


受付から100mほど歩くと右手に小屋がありました。ここが脱衣所ですね。この小屋を目にする前から、露天風呂から漂ってくる独特の油臭が鼻をくすぐってきます。


内部は棚があるだけの至ってシンプルなもの。出入口は常時開けっぱなしにされているため、室内の隅っこには蜘蛛の巣が張っていたり蛾が這い蹲っていたりします。神経質な人や潔癖症な人にはちょっと厳しいかな。

 
露天風呂しかないお風呂。カランもありません。でもこの質素さが公営施設とは思えない野趣を醸し出しているようでした。5~6人サイズの浴槽の上にはテントが掛かっているので、少々の雨なら大丈夫。


パイプから少々熱めの源泉が投入されています。加温加水循環消毒なしの純然たる掛け流し。熱いお湯に慣れている私は平気でお湯に浸かれましたが、後客の方は「これじゃ熱くて入れないよぉ」と嘆きながら、水道のホースで薄めていました。ということは、普通の感覚では熱いってことなのかしら。
当浴場の名前の由来と思しき深緑色を帯びた黄土色に濁るお湯の中で、微細な黄褐色の浮遊物が無数に舞っており、この浮遊物が濁りの正体かと思われ、桶でお湯を掬っただけでもその濁りの様子がよくわかります。成分総計14340mg/kgという数字はさすがに伊達じゃなく、苦み+しょっぱさ+ゴムを焦がしたような味が強く舌の載り、外を歩いているだけでもわかる強い油臭が湯面から立ち上っています。一口に油臭と言ってもいろいろな種類がありますが、ここの場合は揮発油的な匂い+クレゾールのような匂い+ゴムが焦げたような匂いがミックスされているように感じられました。とくかく苦しょっぱさと油っぽい知覚が特徴的です。また熱めの湯加減で且つ食塩などが濃く溶けているため、とてもパンチのある浴感で、入浴中こそスベスベ感が得られますが、たちまち体力が奪われてヘロヘロになり、湯上りはベトつきとチクチクとした刺激感が残り、なかなかほとぼり冷めず汗も引かずにクラクラしてしまうような、凶暴なお湯でありました。さらにはお湯から上がってしばらくは体からクレゾールのような匂いが取れませんでした。津々浦々で温泉巡りをしていると、たまに「のんびり湯あみ」というより「個性的なお湯との格闘」を求められるような攻撃的な泉質のお湯に巡り合いますが、ここはその代表格かもしれません。お湯との格闘が大好きな私はこのお湯にすっかりはまってしまいました。夏には疲労を覚えるでしょうが、肌寒い時期にはむしろその強烈なパワーがプラスに転じること必至でしょう。


この露天風呂は木々と田んぼに囲まれた野趣あふれる環境ゆえ、夏はとにかく羽虫が夥しくて鬱陶しいのですが、刺してくるような虫は(少なくとも私の訪問時には)いませんでしたのでご安心を。そんな虫たちを胃袋に収めるべく、湯船脇でトノサマガエル君が虎視眈々と狙っていました。


兎口1号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 72.1℃ pH7.6 35L/min(動力揚湯) 溶存物質14340mg/kg 成分総計14340mg/kg
 Na:3391mg(59.21mval%), Ca:1989mg(38.02mval%), Cl:8079mg(97.23mval%)

新潟県十日町市松之山兎口756  地図
025-596-2040(植木屋旅館)

※2013年に廃止されました
8:00~20:00 4月下旬~11月営業、毎月15日および月末定休、冬季休業、
400円
備品類なし、窓口でタオル販売(200円)

私の好み:★★★
コメント (2)
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