白馬岳登山記その1(前夜)のつづきです
2011年9月7日 快晴 単独行
栂池ヒュッテ→天狗平→白馬乗鞍岳→白馬大池→小蓮華山→三国境→白馬岳山頂→白馬山荘
距離:9.2km
標高差:1081m
獲得標高:上り1233m、下り222m
服装:速乾性下着(Tシャツ)、化繊の半袖、化繊の長袖、綿の長袖シャツ、フリース、レインコート兼ジャンパー、以上をレイヤーとして重ね着しながら、体温や気温に応じて脱ぎ着しました。
装備:念のため小アイゼン・非常食を用意。ライトや熊よけ鈴は携帯して当然。水は1Lも用意すれば十分。
【5:30 栂池ヒュッテ 起床】
残暑厳しい9月初旬だというのに、標高1860mの当地は日が暮れると急激に冷え込み、起床した時点での気温は7.5℃しかありませんでした。麓を見下ろすと、下界はすっかり雲海の下に隠れてしまっています。
【7:00 朝食】
栂池ヒュッテから白馬岳山頂まで標準タイムは約7時間。一方、当宿の朝食開始時間は7:00。のんきに朝食を摂ってから出発すると、白馬岳山頂に着くのは15:00頃になってしまう計算になります。山は天候が変わりやすく、特に午後は悪転する可能性が高いので、登山客によっては朝食をここでとらず、弁当にしてもらって、早々に出発するそうですが、朝から握り飯はイヤだなぁと思ってしまった私は、リスクを承知の上で、ここでしっかり朝ごはんを食べてから出発することにしました。
席は夕食のときと同じ場所。山には雲ひとつかかっていない絶好の日和です。これからあの山へ登るのか、そう思うと武者震いしてしまいます。ご飯を全て残さず平らげ、葉を歯を磨いて、いざ出発だ。
【7:20 栂池ヒュッテ 出発(1860m)】
空の青と山の緑のコントラストがあまりに鮮明すぎるほど、この上ない快晴です。
村営栂池山荘とビジターセンターの間にある登山口から登攀をスタートしました。
ネマガリダケの繁る泥道や、樹林帯の中のジグザグ坂をひたすら登ります。道はよく整備されているので、歩きやすく、危険箇所もありません。ウィーミングアップにはもってこい。上空ではヘリコプターが頻繁に飛び交っています。ここ数日は台風の影響で山小屋へ物資運搬できない日々が続いていましたから、待ってましたと言わんばかりに一斉にヘリ輸送が行われているのでしょう。
【7:53 銀嶺水】
地名からもわかるように、この付近には水場があります。小さなベンチが設けられていますが、まだ休憩するには早いので、ここはパス。樹林帯の間からは、麓はおろか南アルプスまではっきり展望できました。
左手にはこれから挑む連峰が山裾まではっきりと姿を現わしています。しばらく登ってゆくうちに勾配が緩やかになり…
【8:13 天狗平(2180m)】
木道が現れて平坦になると、まもなく高層湿原の天狗平に辿り着きました。清々しい風が吹き抜けています。池塘が点在していますが、水を失ってただの泥田と化しているところも多く、また花のシーズンでも紅葉シーズンでもない中途半端な時季なので、見るべきものも少なく、はたまた休憩するほど疲れてもいないので、ここも通過しちゃいました。
【8:20 風吹大池への分岐】
ここを右手に折れると風吹大池ですが、もちろん今回は左手へ進みます。平坦なのはここまで。
木道が終わると、岩場が続くようになります。はじめのうちは海岸のテトラポットの上を飛び渡るように、岩の上をヒョイヒョイと飛んでいけばよいのですが、やがて勾配が急になり、岩をよじ登らなければならない状態になりました。岩にペイントされた赤い丸を目印にして、先へと登ってゆきます。
【8:50 小さな雪田】
9月にもなれば多くの雪渓は消えてしまいますが、今回のルートで唯一雪上を歩いたのがここでした。とはいえ、長さはせいぜい20~30m程度。トラロープが張ってありますし、大した勾配ではないので、アイゼンは不要。そのまま歩いちゃいました。この雪田の後も急な岩場が続きます。
【9:05/10 白馬乗鞍岳(2436.7m)】
やがて勾配が緩やかになり、這松林の平坦な道を進んでゆくと、四角錐のモニュメントが立てられている白馬乗鞍岳山頂に到達です。ここで5分休憩。今から登る小蓮華山が正面にそびえ、なだらかな山裾を広げています。
ここからは一転して緩やかな下りが続き、白馬大池の池畔へと向かいます。この下りも岩の上をピョンピョン飛んでゆくような、ちょっと面倒な感じでした。しかも黒いアブみたいな羽虫が大量発生していて、こいつらがかなり鬱陶しい。でも青い空を映した大池とその畔に赤い小屋が佇んでいる光景は、まるで美しい風景画を見ているようでした。
【9:33 白馬大池山荘(2380m)】
池の畔をぐるっと回って大池山荘に到着。小屋周辺のテント場では、まだ何基かテントが張られていましたが、山荘前から小蓮華へ進む道を見上げると、むしろ山の上から降りてくる登山者の方が多いようでした。行き違う人曰く「上は風が強くて寒いよ」とのこと。気を引き締め、小蓮華へと向かいます。
雷鳥坂と呼ばれる尾根の緩やかな坂を上がります。途中で振り返ると、大池や山荘はもちろんのこと、その彼方には日本海の海岸がはっきりと見えました。
進行方向には小蓮華、そしてそこから雪倉岳へと至る稜線が連なっています。綺麗だなぁ、なんて呟きながら歩いていると…
路傍の這松林の中にライチョウを発見!! しばらくその場で観察していたら…
なんと4羽も同時に登山道上へ出没してくれました。大きさから察するに1羽が親で他は幼鳥かと思われます。しばしば「ライチョウは(外敵に狙われにくい)ガスっている時に遭遇しやすい」と聞きますが、まさかこの日のような快晴という条件にもかかわらず、ひょこひょこと姿を現してくれるとは!! 感激して必死にカメラを握りしめ、何枚も撮影しちゃいました。さすが雷鳥坂と称する坂だけあって、本当に棲息しているんですね。
ライチョウたちが這松の中に姿を消したところで、登山再開。尾根の上の緩やかな勾配を上がってゆきます。見晴らしがよく天気も良好、とても爽快です。鞍部の眺望がきくところでは、麓の白馬村一帯や、その向こうの青木湖がはっきり見えます。
やや風が強く、雲の流れも速かったのですが、そのおかげで、雲に隠れていた白馬岳の山頂が、雲の切れ間から時折姿を見せてくれました。
また南の方角には八ヶ岳、そしてその奥に富士山の姿がはっきりと確認することができました。ひとつの場所から日本海の海岸と富士山が同時に見られるだなんて、ちょっと信じられません。日本って狭いんだなぁ。
【11:00/25 小蓮華山(2766m)・昼食休憩】
爽快な尾根の上を軽快に歩いているうちに、あっけなく小蓮華山の頂上に着いてしまいました。
頂上部分は陥没箇所があるらしく立ち入り禁止になっていますが、その手前にはこの山頂のシンボルとでも言うべき鉄の剱が突き刺さっていました。徐々に北西の冷たい風が強くなり始めたので、山頂から若干引き返して、風を避けられる場所で腰をおろし、お昼ご飯をとることに。山の上で食べる握り飯って美味いですね。
25分間のランチ休憩を終えて歩行再開。雲の勢いが徐々に弱まり、この頃には登山道の先に聳える白馬岳山頂がはっきりと目に入ってきました。右手(西)には雪倉岳に連なる稜線が一部雲に隠れながらも姿を見せています。
途中で振り返って小蓮華を撮ってみました。山裾の広がり方袴のようになだらかで美麗ですね。
標高が高いと空の青さが下界と全く違い、飛行機の窓から外を眺めている時と同じように、サファイアのような濃い青色の空が果てしなく広がっています。
【12:00 三国境(2751m)】
長野(信州)・新潟(越後)・富山(越中)の3県(国)が境を接する三国境。
さぁ山頂までもう少し。
【12:40/13:50 白馬岳山頂(2932.2m)】
栂池ヒュッテから休憩を含め5時間20分で到達してしまいました。標準タイムは7時間ですから、2時間近くも短縮してしまったことになります。ちょっと早すぎたかしら。もう少し途中でのんびりすればよかったかしら。登頂記念として、一等三角点にしっかりタッチ。
気温は9.5℃。北西から強い風が吹き付け、山頂へ登りつめたみなさんはウインドブレーカーやダウンを羽織りながら口々に「寒い寒い」と身を縮めていましたが、耐寒仕様の私の体はむしろ塩梅がよく、長袖シャツで十分でした。近くにいた方にお願いして記念撮影。
予定より早く着きすぎたので、山頂では大の字になって寝そべって、のんびり昼寝しちゃいました。風は確かに冷たいのですが、ガレの石は直射日光で温められているので地面はポカポカしており、寝そべるとまるで岩盤浴のように気持ちいいんです。頭を空っぽにして、しばし夢心地の時間を過ごしました。
(※でも、これが後々悲劇をもたらしました。というのも高所は下界よりも紫外線が強く、しかもこの日は快晴だったため、露出していた皮膚が思いっきり日焼けしてしまい、特に顔面は酷い皮膚炎になってしまいました。こういう凡ミスをやらかすところが、いかにもド素人ですね)
快晴の山頂からは360度の大パノラマが得られました。まず画像左(上)は北西方向。重畳する稜線の彼方には日本海に面する黒部川扇状地(黒部や入善の市街)が広がっています。
画像右(下)は北東方向、この日登ってきた稜線やその麓の栂池方面が一望できます。画像では分かりにくいのですが、出発点である栂池ヒュッテが豆粒のように小さく写っています。
画像左(上)は白馬村の中心部、その奥に青木湖が写っています。いわゆるフォッサマグナのうちの、糸魚川静岡構造線ですね。また手前側には大雪渓も写っています。
画像右(下)は白馬山荘の向こうに杓子岳・白馬鑓ヶ岳、そして奥の方には立山連峰が連なっています。立山連峰は頂上部が雲に覆われてしまっていますね。この画像ではわかりにくいのですが、白馬三山と立山連峰の間には黒四ダム(黒部湖)、その奥に槍ヶ岳が肉眼ではっきりと確認できました。
山頂からちょっと下ったところに立てられている「松沢貞逸顕彰碑」を見ながら・・・
【14:00 白馬山荘】
本日のゴールである白馬山荘に到着です。山小屋としては日本最大の収容人数を誇るんだとか。山小屋と言うより要塞と表現したくなるような建物です。
厳密に言うとこの付近の県境は未確定らしいのですが、一応受付がある1号館は長野県、2号館と3号館は富山県に属しているんだそうです。受付を済ませて指定された部屋へ向かうと、そこには既に2人の先客がいらっしゃいました。その後、1人が追加で入室してきたので、私の部屋では計4人が寝泊まりしました。混雑時にはギュウギュウに詰め込まれるらしいのですが、4人なら室内空間には十分余裕があり、神経質な私も問題ありませんでした。
同室した愛知県のSさんと一緒に、レストラン棟「スカイプラザ白馬」にて生ビールで乾杯しました。
山で飲むビールって本当に美味い! 値段は下界の倍の900円ですが、それだけのお金を支払う価値は十分にあります。そもそも、こんな高い山のてっぺんでジョッキに注がれた生ビールを飲めること自体、奇跡みたいなもんです。文明の進歩に感謝感激雨霰。
夕食は17:00に一斉スタート。トンカツがメインですが、山荘の利用客の多くを占める中高年の胃袋は揚げ物を目にすると拒否反応を示すらしく、私は隣に座ったおばちゃんから「アタシ無理なのよ、お願いだから食べて頂戴」と依願され、カツを2切れも余計に食うはめになりました。私も揚げ物はそんなに好きではなかったのですが…。
夕食後に外へ出ると、黄昏時を迎えた上空の雲は夕焼けを映して茜色に染まり、周囲の山々を覆っていた低い雲は完全に消えていました。先ほどまでは山頂が隠れていた立山連峰も、雄山・剣岳をはじめとして毛勝山まではっきりと姿を現し、白馬鑓の右方には槍ヶ岳など穂高方面の山々も明瞭に望めました。
杓子岳の左側には南アルプス、さらに左には八ヶ岳が聳え、その奥には富士山がはっきり見えます。私の安物のデジカメですらちゃんと写せるのですから、どれだけ視界が良好だったか、容易にご理解いただけるかと思います。でもこの時はめちゃくちゃ寒かったんですよ。気温は5℃ですが、北風が非常に強く、体感温度としては氷点下ではなかったかと思います。ダウンジャケットを着ても寒いと嘆く人もたくさんいらっしゃいました。下界は熱帯夜で唸っているというのに、同じ日本でこうも違うとは…。
その3へつづく
2011年9月7日 快晴 単独行
栂池ヒュッテ→天狗平→白馬乗鞍岳→白馬大池→小蓮華山→三国境→白馬岳山頂→白馬山荘
距離:9.2km
標高差:1081m
獲得標高:上り1233m、下り222m
服装:速乾性下着(Tシャツ)、化繊の半袖、化繊の長袖、綿の長袖シャツ、フリース、レインコート兼ジャンパー、以上をレイヤーとして重ね着しながら、体温や気温に応じて脱ぎ着しました。
装備:念のため小アイゼン・非常食を用意。ライトや熊よけ鈴は携帯して当然。水は1Lも用意すれば十分。
【5:30 栂池ヒュッテ 起床】
残暑厳しい9月初旬だというのに、標高1860mの当地は日が暮れると急激に冷え込み、起床した時点での気温は7.5℃しかありませんでした。麓を見下ろすと、下界はすっかり雲海の下に隠れてしまっています。
【7:00 朝食】
栂池ヒュッテから白馬岳山頂まで標準タイムは約7時間。一方、当宿の朝食開始時間は7:00。のんきに朝食を摂ってから出発すると、白馬岳山頂に着くのは15:00頃になってしまう計算になります。山は天候が変わりやすく、特に午後は悪転する可能性が高いので、登山客によっては朝食をここでとらず、弁当にしてもらって、早々に出発するそうですが、朝から握り飯はイヤだなぁと思ってしまった私は、リスクを承知の上で、ここでしっかり朝ごはんを食べてから出発することにしました。
席は夕食のときと同じ場所。山には雲ひとつかかっていない絶好の日和です。これからあの山へ登るのか、そう思うと武者震いしてしまいます。ご飯を全て残さず平らげ、葉を歯を磨いて、いざ出発だ。
【7:20 栂池ヒュッテ 出発(1860m)】
空の青と山の緑のコントラストがあまりに鮮明すぎるほど、この上ない快晴です。
村営栂池山荘とビジターセンターの間にある登山口から登攀をスタートしました。
ネマガリダケの繁る泥道や、樹林帯の中のジグザグ坂をひたすら登ります。道はよく整備されているので、歩きやすく、危険箇所もありません。ウィーミングアップにはもってこい。上空ではヘリコプターが頻繁に飛び交っています。ここ数日は台風の影響で山小屋へ物資運搬できない日々が続いていましたから、待ってましたと言わんばかりに一斉にヘリ輸送が行われているのでしょう。
【7:53 銀嶺水】
地名からもわかるように、この付近には水場があります。小さなベンチが設けられていますが、まだ休憩するには早いので、ここはパス。樹林帯の間からは、麓はおろか南アルプスまではっきり展望できました。
左手にはこれから挑む連峰が山裾まではっきりと姿を現わしています。しばらく登ってゆくうちに勾配が緩やかになり…
【8:13 天狗平(2180m)】
木道が現れて平坦になると、まもなく高層湿原の天狗平に辿り着きました。清々しい風が吹き抜けています。池塘が点在していますが、水を失ってただの泥田と化しているところも多く、また花のシーズンでも紅葉シーズンでもない中途半端な時季なので、見るべきものも少なく、はたまた休憩するほど疲れてもいないので、ここも通過しちゃいました。
【8:20 風吹大池への分岐】
ここを右手に折れると風吹大池ですが、もちろん今回は左手へ進みます。平坦なのはここまで。
木道が終わると、岩場が続くようになります。はじめのうちは海岸のテトラポットの上を飛び渡るように、岩の上をヒョイヒョイと飛んでいけばよいのですが、やがて勾配が急になり、岩をよじ登らなければならない状態になりました。岩にペイントされた赤い丸を目印にして、先へと登ってゆきます。
【8:50 小さな雪田】
9月にもなれば多くの雪渓は消えてしまいますが、今回のルートで唯一雪上を歩いたのがここでした。とはいえ、長さはせいぜい20~30m程度。トラロープが張ってありますし、大した勾配ではないので、アイゼンは不要。そのまま歩いちゃいました。この雪田の後も急な岩場が続きます。
【9:05/10 白馬乗鞍岳(2436.7m)】
やがて勾配が緩やかになり、這松林の平坦な道を進んでゆくと、四角錐のモニュメントが立てられている白馬乗鞍岳山頂に到達です。ここで5分休憩。今から登る小蓮華山が正面にそびえ、なだらかな山裾を広げています。
ここからは一転して緩やかな下りが続き、白馬大池の池畔へと向かいます。この下りも岩の上をピョンピョン飛んでゆくような、ちょっと面倒な感じでした。しかも黒いアブみたいな羽虫が大量発生していて、こいつらがかなり鬱陶しい。でも青い空を映した大池とその畔に赤い小屋が佇んでいる光景は、まるで美しい風景画を見ているようでした。
【9:33 白馬大池山荘(2380m)】
池の畔をぐるっと回って大池山荘に到着。小屋周辺のテント場では、まだ何基かテントが張られていましたが、山荘前から小蓮華へ進む道を見上げると、むしろ山の上から降りてくる登山者の方が多いようでした。行き違う人曰く「上は風が強くて寒いよ」とのこと。気を引き締め、小蓮華へと向かいます。
雷鳥坂と呼ばれる尾根の緩やかな坂を上がります。途中で振り返ると、大池や山荘はもちろんのこと、その彼方には日本海の海岸がはっきりと見えました。
進行方向には小蓮華、そしてそこから雪倉岳へと至る稜線が連なっています。綺麗だなぁ、なんて呟きながら歩いていると…
路傍の這松林の中にライチョウを発見!! しばらくその場で観察していたら…
なんと4羽も同時に登山道上へ出没してくれました。大きさから察するに1羽が親で他は幼鳥かと思われます。しばしば「ライチョウは(外敵に狙われにくい)ガスっている時に遭遇しやすい」と聞きますが、まさかこの日のような快晴という条件にもかかわらず、ひょこひょこと姿を現してくれるとは!! 感激して必死にカメラを握りしめ、何枚も撮影しちゃいました。さすが雷鳥坂と称する坂だけあって、本当に棲息しているんですね。
ライチョウたちが這松の中に姿を消したところで、登山再開。尾根の上の緩やかな勾配を上がってゆきます。見晴らしがよく天気も良好、とても爽快です。鞍部の眺望がきくところでは、麓の白馬村一帯や、その向こうの青木湖がはっきり見えます。
やや風が強く、雲の流れも速かったのですが、そのおかげで、雲に隠れていた白馬岳の山頂が、雲の切れ間から時折姿を見せてくれました。
また南の方角には八ヶ岳、そしてその奥に富士山の姿がはっきりと確認することができました。ひとつの場所から日本海の海岸と富士山が同時に見られるだなんて、ちょっと信じられません。日本って狭いんだなぁ。
【11:00/25 小蓮華山(2766m)・昼食休憩】
爽快な尾根の上を軽快に歩いているうちに、あっけなく小蓮華山の頂上に着いてしまいました。
頂上部分は陥没箇所があるらしく立ち入り禁止になっていますが、その手前にはこの山頂のシンボルとでも言うべき鉄の剱が突き刺さっていました。徐々に北西の冷たい風が強くなり始めたので、山頂から若干引き返して、風を避けられる場所で腰をおろし、お昼ご飯をとることに。山の上で食べる握り飯って美味いですね。
25分間のランチ休憩を終えて歩行再開。雲の勢いが徐々に弱まり、この頃には登山道の先に聳える白馬岳山頂がはっきりと目に入ってきました。右手(西)には雪倉岳に連なる稜線が一部雲に隠れながらも姿を見せています。
途中で振り返って小蓮華を撮ってみました。山裾の広がり方袴のようになだらかで美麗ですね。
標高が高いと空の青さが下界と全く違い、飛行機の窓から外を眺めている時と同じように、サファイアのような濃い青色の空が果てしなく広がっています。
【12:00 三国境(2751m)】
長野(信州)・新潟(越後)・富山(越中)の3県(国)が境を接する三国境。
さぁ山頂までもう少し。
【12:40/13:50 白馬岳山頂(2932.2m)】
栂池ヒュッテから休憩を含め5時間20分で到達してしまいました。標準タイムは7時間ですから、2時間近くも短縮してしまったことになります。ちょっと早すぎたかしら。もう少し途中でのんびりすればよかったかしら。登頂記念として、一等三角点にしっかりタッチ。
気温は9.5℃。北西から強い風が吹き付け、山頂へ登りつめたみなさんはウインドブレーカーやダウンを羽織りながら口々に「寒い寒い」と身を縮めていましたが、耐寒仕様の私の体はむしろ塩梅がよく、長袖シャツで十分でした。近くにいた方にお願いして記念撮影。
予定より早く着きすぎたので、山頂では大の字になって寝そべって、のんびり昼寝しちゃいました。風は確かに冷たいのですが、ガレの石は直射日光で温められているので地面はポカポカしており、寝そべるとまるで岩盤浴のように気持ちいいんです。頭を空っぽにして、しばし夢心地の時間を過ごしました。
(※でも、これが後々悲劇をもたらしました。というのも高所は下界よりも紫外線が強く、しかもこの日は快晴だったため、露出していた皮膚が思いっきり日焼けしてしまい、特に顔面は酷い皮膚炎になってしまいました。こういう凡ミスをやらかすところが、いかにもド素人ですね)
快晴の山頂からは360度の大パノラマが得られました。まず画像左(上)は北西方向。重畳する稜線の彼方には日本海に面する黒部川扇状地(黒部や入善の市街)が広がっています。
画像右(下)は北東方向、この日登ってきた稜線やその麓の栂池方面が一望できます。画像では分かりにくいのですが、出発点である栂池ヒュッテが豆粒のように小さく写っています。
画像左(上)は白馬村の中心部、その奥に青木湖が写っています。いわゆるフォッサマグナのうちの、糸魚川静岡構造線ですね。また手前側には大雪渓も写っています。
画像右(下)は白馬山荘の向こうに杓子岳・白馬鑓ヶ岳、そして奥の方には立山連峰が連なっています。立山連峰は頂上部が雲に覆われてしまっていますね。この画像ではわかりにくいのですが、白馬三山と立山連峰の間には黒四ダム(黒部湖)、その奥に槍ヶ岳が肉眼ではっきりと確認できました。
山頂からちょっと下ったところに立てられている「松沢貞逸顕彰碑」を見ながら・・・
【14:00 白馬山荘】
本日のゴールである白馬山荘に到着です。山小屋としては日本最大の収容人数を誇るんだとか。山小屋と言うより要塞と表現したくなるような建物です。
厳密に言うとこの付近の県境は未確定らしいのですが、一応受付がある1号館は長野県、2号館と3号館は富山県に属しているんだそうです。受付を済ませて指定された部屋へ向かうと、そこには既に2人の先客がいらっしゃいました。その後、1人が追加で入室してきたので、私の部屋では計4人が寝泊まりしました。混雑時にはギュウギュウに詰め込まれるらしいのですが、4人なら室内空間には十分余裕があり、神経質な私も問題ありませんでした。
同室した愛知県のSさんと一緒に、レストラン棟「スカイプラザ白馬」にて生ビールで乾杯しました。
山で飲むビールって本当に美味い! 値段は下界の倍の900円ですが、それだけのお金を支払う価値は十分にあります。そもそも、こんな高い山のてっぺんでジョッキに注がれた生ビールを飲めること自体、奇跡みたいなもんです。文明の進歩に感謝感激雨霰。
夕食は17:00に一斉スタート。トンカツがメインですが、山荘の利用客の多くを占める中高年の胃袋は揚げ物を目にすると拒否反応を示すらしく、私は隣に座ったおばちゃんから「アタシ無理なのよ、お願いだから食べて頂戴」と依願され、カツを2切れも余計に食うはめになりました。私も揚げ物はそんなに好きではなかったのですが…。
夕食後に外へ出ると、黄昏時を迎えた上空の雲は夕焼けを映して茜色に染まり、周囲の山々を覆っていた低い雲は完全に消えていました。先ほどまでは山頂が隠れていた立山連峰も、雄山・剣岳をはじめとして毛勝山まではっきりと姿を現し、白馬鑓の右方には槍ヶ岳など穂高方面の山々も明瞭に望めました。
杓子岳の左側には南アルプス、さらに左には八ヶ岳が聳え、その奥には富士山がはっきり見えます。私の安物のデジカメですらちゃんと写せるのですから、どれだけ視界が良好だったか、容易にご理解いただけるかと思います。でもこの時はめちゃくちゃ寒かったんですよ。気温は5℃ですが、北風が非常に強く、体感温度としては氷点下ではなかったかと思います。ダウンジャケットを着ても寒いと嘆く人もたくさんいらっしゃいました。下界は熱帯夜で唸っているというのに、同じ日本でこうも違うとは…。
その3へつづく
こういう天気の中歩きたいものだと思います。
自然はやはり気まぐれなので運が良かったんだなあと感じます。
昼寝場所も贅沢ですね~こんな寝方を一度でもしてみたいです。