2008年03月23日10時34分朝日COM
原油高で燃料費が高騰し、自家発電を取りやめる事業所が相次いでいる。中部電力など10電力によると、04年4月以降に自家発電から電力購入への切り替えは約3800件。出力は計約370万キロワットで、日本最大級の浜岡原発5号機の2.9基分に相当する。電気代を払うより、重油を調達して自家発電をする方が安上がりなため広まったが、今では逆に割高になるためだという。
自家発電の消費電力量
自家発電で館内の電力の7割をまかない、発電の廃熱で浴室の湯を沸かす。一石二鳥のコージェネレーション(熱電併給)システムが売り物だった三重県鳥羽市の老舗(しにせ)旅館「戸田家」が自家発電を断念したのは昨年11月。廃天ぷら油で走る送迎バスを導入するなど環境への配慮に力を入れていたが、業務副支配人の宍倉秀明さん(48)は「経費節減のためにやめるしかなかった」と苦渋の表情を見せる。
180の客室に年間約17万人が宿泊する戸田家は93年7月、総工費2億1000万円をかけて自家発電設備を造った。最大出力740キロワット。年間発電量は一般家庭約830軒分の300万キロワット時強だった。
建設資材の価格を調べている財団法人経済調査会によると、燃料のA重油の価格(津市)は、最も安かった95年7月にタンクローリー1台(約30キロリットル)で2万3500円。戸田家によると、自家発電導入で、電気代は中電からの購入に比べて最大で年3000万円節減できた。
ところが、04年ごろから原油が値上がりし始め、昨年11月のA重油価格はタンクローリー1台で6万6500円に高騰。戸田家がこのまま自家発電を続けると、年間4000万~5000万円の赤字が出かねなかった。
停止する前の自家発電コストは1キロワット時当たり16.2円だったが、買電に切り替えたら2.7円安い13.5円になった。宍倉さんは「お湯も沸かせる旅館に適した設備だったが、運転を続けても赤字が膨らむばかりだった」と話す。
スーパー大手のイトーヨーカ堂(東京都千代田区)も、全国の9店舗で重油を燃料にしたコージェネによる自家発電を導入。しかし、燃料費が高騰したため、06年に関東地方の1店舗で自家発電をやめ、東京電力からの買電に切り替えた。
北海道のスーパーチェーンでも、8店舗でA重油を用いた自家発電をしていたが、07年までに全店で発電を停止。現在は北海道電力から電力を購入している。
10電力によると、04~07年度(07年度は12月まで、関西は10月まで)の4年間で、自家発電から買電への切り替えが最も多かったのは06年度で、2032件、約191万キロワット。原油高で自家発電代行大手のエネサーブ(本社・大阪市)が同事業から撤退した影響が大きいという。
自家発電の発電量も年々減っている。資源エネルギー庁によると、04年度の自家発電の消費電力量は1億3105万キロワット時だったのが、06年度には1億2120万キロワット時に減少。07年度の上半期も5914万キロワット時でとどまっており、通年でも06年度を下回る見通しだ。