いよいよ受験生にとっては大切な時期が始まったようだ。 なかでも首都圏や関西を中心に都市部で
中学受験熱が高まっているという。 受験にはつきものの「偏差値」だが、平均である偏差値50
には固有の特徴がいくつかあるようだ。 実像に迫ってみた。
「パパは偏差値70台だったぞ」「偏差値がまだ低いからもっと勉強を頑張って」‥‥。
中学受験が熱を帯びるなか、ついこんなセリフが子どもに言う保護者もいるのではないだろうか。
偏差値はテストの全受験者の中で自分が平均からどれくらいの学力にあるのかを確認できる。 あ
るテスト結果について平均点を50に変換し、点数のバラツキ度合いを加味して算出する。 平
均点付近の人数が最多で0点や100点に近づくほど少なくなり、グラフで表すと左右対称の釣
り鐘型になる「正規分布」になると想定する。
高校受験では、一部を除いて中学3年生のほぼ全員が模試を受ける。 このため、高校受験で初め
て偏差値を意識する人は多いかもしれない。
一方、中学受験は特殊だ。 首都圏模試センター(東京・千代田)の“北さん”は「偏差値が同じ50で
も、中学受験と高校受験では全く意味が違う」と指摘。 中学を受験する小学生は首都圏では約
2割で、母数が限られるためだ。
塾大手SAPIXの“広野さん”によると、「(受験をするのは)教育熱心な家庭の子どもが多く、学力
レベルは一般の小学生の真ん中より上が多い」。 そのため、偏差値は高校より中学の方が低く
なりやすい。 中学受験カウンセラーの“安浪さん”は「中学受験の偏差値は40は高校受験の偏
差値60くらい」と話す。 保護者の高校受験時の偏差値と、目の前の中学受験性の偏差値を比
べるのは不適切との声は多い。 中学受験は様々な模試があるため、同じ子どもでも偏差値はバ
ラツキガある。 首都圏では四谷大塚、日能研、SAPIX、首都圏模試センターの模試が「四
大模試」と呼ばれ、関西だと浜学園や馬淵教室などの模試がある。 受験生の学力レベルが違う
ため、各模試の偏差値も50も水準が異なる。 同じ子どもが受けた場合の偏差値は「首都圏模
試と比べ四谷大塚や日能研の模試は4~5㌽低く出て、SAPIXはさらに低くなる」(北さん)
学校の偏差値も一つではない。 中学受験では首都圏・関西とも、子どもが複数校を受験するのが
一般的。 入試を2回以上設ける学校が増えており、その場合は同じ学校でも入試日によって偏
差値が違うことが多い。 大半は初回入試が最も低い。 2回目以降は学校が定員を絞り込む半
面、受験者数は増える傾向にあるためだ。 「志望校の入試が複数回あるなら、初回がお薦め」
(安浪さん)という。
少子化の時代、優秀な生徒集めとブランド力の向上のため、「高偏差値」を意識する学校は少なく
ない。 一部では偏差値をあの手この手で高めようとする動きもある。 例えば、入試日程の調
整だ。 開成中など都内の多くの難関校は解禁日の2月1日午前に入試を実施しており、これら
と重ならないようにする学校も目立つ。 難関校を受けた子どもたちを呼び込むことで、自校の
偏差値の上昇が見込めるためだ。 関西でも同様の傾向がある。 コースを細分化する学校も。
同じ学校に「特進」や「特別奨学生」といったコースを設け、定員数を絞り込む。 合格のハー
ドルを上げることで、偏差値は高まる。 しかし、23年春の入試では「合格者ゼロ」の事例も
報告され、インターネット上では受験生の保護者からと見られる悲痛な投稿も相次いだようだ。
偏差値は学力レベルとは関係のない要素も反映されている。 日能研の"井上さん"は「交通アクセ
スや学校の広報次第でも偏差値は大きく変わる」と強調する。
偏差値一辺倒の入試とは一線を画す中学校も少しずつ増えてきた。 聖和学院中は発表と討論、振
り返りの作文から成る「ビブリオバトル入試」を実施している。 三重中はあるイラストを示し
文章でどのように説明するかを問う。 いずれも知識の量ではなく、思考力や表現力をみている。
学校選びでは偏差値以外にも教育内容や理念、環境など、色々な軸がある。 3人の子どもを育て
た神奈川県鎌倉市在住の母親は「偏差値にとらわれず、3人とも自由な校風で生徒の主体性を大
事にする中学校に通わせた」と語る。 保護者はつい偏差値をみて子どもを説教したり、学校を
見定めたりしがちだ。 子どもの成長のために、どのような教育が望ましいのか。 いったん立
ち止まって親子で考えてみてもいいのかもしれない。 とりあえず子どもさんとの話し合いを日
ごろから行っていくことが大事です。 今更ですが、「子は親が育てたように育ちます」。
中学受験熱が高まっているという。 受験にはつきものの「偏差値」だが、平均である偏差値50
には固有の特徴がいくつかあるようだ。 実像に迫ってみた。
「パパは偏差値70台だったぞ」「偏差値がまだ低いからもっと勉強を頑張って」‥‥。
中学受験が熱を帯びるなか、ついこんなセリフが子どもに言う保護者もいるのではないだろうか。
偏差値はテストの全受験者の中で自分が平均からどれくらいの学力にあるのかを確認できる。 あ
るテスト結果について平均点を50に変換し、点数のバラツキ度合いを加味して算出する。 平
均点付近の人数が最多で0点や100点に近づくほど少なくなり、グラフで表すと左右対称の釣
り鐘型になる「正規分布」になると想定する。
高校受験では、一部を除いて中学3年生のほぼ全員が模試を受ける。 このため、高校受験で初め
て偏差値を意識する人は多いかもしれない。
一方、中学受験は特殊だ。 首都圏模試センター(東京・千代田)の“北さん”は「偏差値が同じ50で
も、中学受験と高校受験では全く意味が違う」と指摘。 中学を受験する小学生は首都圏では約
2割で、母数が限られるためだ。
塾大手SAPIXの“広野さん”によると、「(受験をするのは)教育熱心な家庭の子どもが多く、学力
レベルは一般の小学生の真ん中より上が多い」。 そのため、偏差値は高校より中学の方が低く
なりやすい。 中学受験カウンセラーの“安浪さん”は「中学受験の偏差値は40は高校受験の偏
差値60くらい」と話す。 保護者の高校受験時の偏差値と、目の前の中学受験性の偏差値を比
べるのは不適切との声は多い。 中学受験は様々な模試があるため、同じ子どもでも偏差値はバ
ラツキガある。 首都圏では四谷大塚、日能研、SAPIX、首都圏模試センターの模試が「四
大模試」と呼ばれ、関西だと浜学園や馬淵教室などの模試がある。 受験生の学力レベルが違う
ため、各模試の偏差値も50も水準が異なる。 同じ子どもが受けた場合の偏差値は「首都圏模
試と比べ四谷大塚や日能研の模試は4~5㌽低く出て、SAPIXはさらに低くなる」(北さん)
学校の偏差値も一つではない。 中学受験では首都圏・関西とも、子どもが複数校を受験するのが
一般的。 入試を2回以上設ける学校が増えており、その場合は同じ学校でも入試日によって偏
差値が違うことが多い。 大半は初回入試が最も低い。 2回目以降は学校が定員を絞り込む半
面、受験者数は増える傾向にあるためだ。 「志望校の入試が複数回あるなら、初回がお薦め」
(安浪さん)という。
少子化の時代、優秀な生徒集めとブランド力の向上のため、「高偏差値」を意識する学校は少なく
ない。 一部では偏差値をあの手この手で高めようとする動きもある。 例えば、入試日程の調
整だ。 開成中など都内の多くの難関校は解禁日の2月1日午前に入試を実施しており、これら
と重ならないようにする学校も目立つ。 難関校を受けた子どもたちを呼び込むことで、自校の
偏差値の上昇が見込めるためだ。 関西でも同様の傾向がある。 コースを細分化する学校も。
同じ学校に「特進」や「特別奨学生」といったコースを設け、定員数を絞り込む。 合格のハー
ドルを上げることで、偏差値は高まる。 しかし、23年春の入試では「合格者ゼロ」の事例も
報告され、インターネット上では受験生の保護者からと見られる悲痛な投稿も相次いだようだ。
偏差値は学力レベルとは関係のない要素も反映されている。 日能研の"井上さん"は「交通アクセ
スや学校の広報次第でも偏差値は大きく変わる」と強調する。
偏差値一辺倒の入試とは一線を画す中学校も少しずつ増えてきた。 聖和学院中は発表と討論、振
り返りの作文から成る「ビブリオバトル入試」を実施している。 三重中はあるイラストを示し
文章でどのように説明するかを問う。 いずれも知識の量ではなく、思考力や表現力をみている。
学校選びでは偏差値以外にも教育内容や理念、環境など、色々な軸がある。 3人の子どもを育て
た神奈川県鎌倉市在住の母親は「偏差値にとらわれず、3人とも自由な校風で生徒の主体性を大
事にする中学校に通わせた」と語る。 保護者はつい偏差値をみて子どもを説教したり、学校を
見定めたりしがちだ。 子どもの成長のために、どのような教育が望ましいのか。 いったん立
ち止まって親子で考えてみてもいいのかもしれない。 とりあえず子どもさんとの話し合いを日
ごろから行っていくことが大事です。 今更ですが、「子は親が育てたように育ちます」。