映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「CUBE 一度入ったら、最後」

2021年10月25日 | ホラー映画

1997年のカナダのソリッドホラー「CUBE」の正式リメイク。
私はこの映画がとても好きで、
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督作品をずっと追ってきました。
立方体のセットを一つ作って、連続する立方体の中に閉じ込められた男女の話を撮影すると、
実際は密室劇であるにもかかわらず場面転換ができるのと同時に、
セットの予算が大幅に削減できるという、画期的なアイディアです。
実在の刑務所を元に名付けられた登場人物たちは
生き残りと脱出のために協力するのだが…というあらすじですが、
結局どういうことなのか、今もまだ正しい解釈は明らかになっていません。
(CUBEを見ようと思った方は、監督ヴィンチェンゾ・ナタリと書いてあるのをご覧ください)
(続編が色々出たのですがそれらに監督は関わっていないので)

日本版は大筋が元のままで、
日本人受けしなさそうなところは改変してあります。
少しグロシーンあり。

ラストばれ

オリジナル版では発達障害の成人がいたのですが心を閉ざした子供に変更されました。
それとオリジナル版には女医や理数系女学生がいたがどっちも消えた。
数学の素養は主人公に引き継がれた。
濃い設定の人は引っ込んで、会社役員とかアルバイターとか
普通っぽいひとで揃えてあった。
それで家族の死とトラウマを菅田将暉さんが乗り越える的な話になって、
すごく邦画だなという感じだったんですが
元々のCUBEが不条理ものだしエゴむき出しだし、そもそも日本人向けじゃないんですよ。
やわらか改変するならなぜ癖の強いCUBEを日本でリメイクしようとしたのだ…?と思った。

主題歌の星野源さん「Cube」、すごく頑張って内容を歌詞に混ぜてくださっているが、
あまりチャカポコした音楽にマッチする内容ではないので、あー…という感じだった。
お仕事なので仕方ないのでしょうけども。

ところで「CUBE」ってサイコロステーキ元祖だろうか?とふと思ったが
北斗の拳が先かな?どうだろう。
それと最近閃いたんですが、オリジナル版「CUBE」って
空間と次元の話だったのかもって、ふと思いました。
同監督「NOTHING ナッシング」もそうで、連作なのかなって。




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「G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ」

2021年10月24日 | バトル映画
G.I.ジョーシリーズ3作目。というかリブート作品。
日本が舞台で、ヤクザと忍者がポン刀持って戦います。

日本を600年間陰から支えてきた嵐影一族のお家騒動のお話なのですが、
嵐影さんの家に行くと、どう見ても天守閣だし(姫路城?)
門番が忍者だしで笑ってしまった。
インチキジャパンが好きな人は見に行くといいでしょう。

世界を滅ぼす兵器を巡って云々にせずに
こぢんまりとまとめたのは正解だと思います。
あと忍者BLです(前作も忍者BLでしたが)。
不憫、不誠実萌えの人むけ。
主人公は「クレイジー・リッチ!」
「シンプル・フェイバー」「ラスト・クリスマス」など
ヒロインを支えるイケメン役が多かったヘンリー・ゴールディング。
師範役でイコ・ウワイスが出ています。アクション監督は谷垣健治さん。

内容ばれ

主人公が、お前の血は何色なの?って真顔で聞きたくなる悪男(わるお)なので
そんな男、やめときなよー、
ほかにいくらでもいるよー?って言いたいのを我慢してました。
ケンタの悪事のほかは、ほぼ主人公のせいですよね??
トミサブロウ、悪くないですよね??
(ストームシャドウ、毎回かわいそう)

バストイレ付きの離れと、刀と、バイクと居場所をくれて
兄弟になろうと言ってくれたひとを
よくあんなゴミのように裏切って捨てられるな??
再会したらまずスライディング土下座しろよな??

ところでこの映画のねたばれの範囲が分からないのですが
実は彼がストームシャドウだったのです!って体裁なのかどうなのか。
でもGIジョーを知っているひとなら主人公がスネークアイズを名乗った時点で
じゃあこっちがストームシャドウだなって思うだろうし、
GIジョーを知らない人は、ストームシャドウだって言われても
フーン…としか言いようがないと思うんですよね。

忍者ものにしては珍しく女性率が高い。そしてお色気くのいち衣装はなし。
族長の扇子で戦うスタイルかっこよかった。

アクションは、あまりこれ!というショットはなかった。


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「燃えよ剣」

2021年10月22日 | 時代劇
司馬遼太郎による同名小説の映画化。
1年に1回くらいは様々なメディアで目にする新選組ですが
これは真祖というか本家というか。
遠い昔に読んだ原作と比較すると、
土方さんが策を弄する非情な男というより、
思慮深く素朴でナイーブな面が強調されていてよかった。
お雪さんへの言葉遣いが丁寧なのとか。
話は土方さんの半生語りの体裁で、
多摩から始まり函館まで駆け足で描写します。
配役が良かったし、殺陣も、役者さんの頑張りと
カメラワークのアシストで、うまい具合に収まってました。
なにより主演の岡田さん、格闘の基礎は剣道にも通じるのか
(まあ足技も出るガラの悪い剣法という設定ですが)
ガチで強そうだった。

特筆すべきはロケ地のすごさ。
めちゃくちゃ顔の利く人がまとめたのだと思うが、
こんな豪華なロケ地を取り揃えた邦画は滅多にない。
見てて分かったのは渉成園、あと市川崑監督でおなじみ広兼邸、
最後の撮影協力で確認できたのは東寺、東本願寺、西本願寺(並んでいた)。
あとで調べたが、桜の美しかったのが奈良の長谷寺、
近藤さんが「土方くん」って言ってたのが吉備津神社、
どこも美しかった。

暴力表現は、時代劇としては強めでメッタ刺しあり、
血だまりでのたうちまわったりします。馬が好きな人は注意。
性暴行表現があります。

キャラクターとしては沖田さんがとてもよかった。
優しくてポリコレ剣士なのも勿論ですが、
人殺しを仕事と心得ている強いメンタルと、
懐いた人間の傍から離れない猫のようなところ、
あと自分の才能に対し謙遜も奢りもしないところも好ましかった。

内容ばれ

若い指導者と構成員が大勢、社会に対して強い変革を求め
常に行動を共にしているとそのうちに内ゲバが始まって
瓦解していくのは古今東西のお約束事で、
この身食いする獣のような苛烈さを何割入れるかで
新選組創作のカラーは随分変わります。
この映画は流血こそ多いものの、それほど地獄ではなかった。
最初に創造したのは司馬遼太郎先生なのかな?
土方歳三を「自分の思想や野望よりも、
推しをセンターに立たせたい思いが強いというP気質の人物」にして
彼を芯に据えると、お話から多少脂臭さが抜けるし、
昔から変わらぬ日本の副官・献身萌えにヒットする。

お雪さんは、歴史の転機のエンタテインメントに登場する
女性キャラクターにありがちな、
「泣く」「心配する」「愛情を吐露する」
しか行動コマンドのない不気味さはなくて、
心配のパッションを人命救助で発散するという行動力が良かったですね。
ちょっとその健脚と機動力はファンタジーぽかったけれど。
ファンタジーと言えば土方さんと共寝した
あの立派な庭のある家はどこという設定なのかとか(宿?)、
ご婦人方が天下を語るシーンの聞香、そんな吹きさらしの場所で?とか
少しだけ面白い感じの場面が幾つかあったが、不気味よりは全然いい。

時々真上からのショットが入るのは監督の癖なのか分かりませんが印象に残りました。
特に芹沢鴨絶命。
池田屋でビゼーのハバネラがかかったのにはびっくりしたが、
若い監督さんだと転調部分まで鳴らして極彩色にしてしまうだろうけど
そうしないのは上品だと思いました。

土方さん関連のアクションは岡田さんの指南が入っているようで
締め技が極まったりして、いつもの岡田さんだった(笑)

私のベスト新選組は三谷幸喜さんの「新選組!」で、
NHK大河ドラマのベスト作品でもあります。
見る機会がありましたらオススメです。
隊士1人1人に潤沢なエピソードが与えられた、大好きな群像劇です。



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「メインストリーム」

2021年10月20日 | サスペンス映画

コッポラ監督の孫娘さんのジア・コッポラ監督。
何かを作り出す人間になりたくて、youtuberをやりながら
場末のバーでアルバイトをしていたヒロインは
ある日モールの広場で不思議な青年と出会う。
モバイルも持たず、自由に生きている青年の姿に特別なものを感じた彼女は、
彼の姿や言葉を撮影し、ネットにアップする。
その動画はたちまち人気になって…というあらすじ。

そういえばyoutuberものサイコサスペンスって初めて見たかも…?
一応サイコサスペンスだと思うんだけど、
ヒロインが新しく出会った不思議な青年に夢中になる一方で、
もう1人からもゆるく矢印を向けられたりして、
そのラブロマンス匙加減で印象が柔らかくなっている。
一長一短だと思う。

排便をする描写とげろの出る描写があります。
現物は映らない。

内容ばれ

星の王子様だと思った人が、サイコパスだったという話。
予告で見た印象だと、元は純粋だった人が、
フォロワー稼ぎに夢中になっていくうちに狂ってしまう話に思えたけど、
見てみたら元からサイコパスだったので、胸が痛まなかったのはむしろよかった。

私はあらすじのない動画にはあまり惹かれなくて
配信系のサイトは見ないので、
あの画面に点滅するハートや星や炎や水や文字などは邪魔に感じられたが、
逆に動画配信がメインの世代にはあのエフェクトのない画面は
平板で退屈に見えるのだろうか?
終盤あのエフェクトが現実世界にも侵食し、
げろがキラキラ効果で隠れるのとかは面白かった。

アンドリュー・ガーフィールドが大便を握ったとき
「食べたらどうしよう!?吐くかも!?」
と思ったが、おもちゃでよかったです(よくない)。



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「最後の決闘裁判」

2021年10月19日 | 実話系

リドリー・スコット監督

14世紀末に実際に行われた、決闘による罪人の決定、決闘裁判を元にした映画。
ノルマンディーに領地を持つ家柄のマット・デイモンは実直な男だったが
その武骨さゆえに近隣を統治する伯爵ベン・アフレックに敬遠されていた。
友人のアダム・ドライバーは伯爵に気に入られどんどん台頭することに
苛立ちつつも美しい妻を迎え、地方で満足していた彼だが
ある日、戦地から戻ると妻が、暴行を受けたと訴え…というあらすじ。

夫から見た1章、妻を襲った男の視点の2章、妻の視点の3章、3パートに分れます。

リドリー・スコット監督の時代物を撮る手腕衰えず、
構図も色調もおろそかになる瞬間が全くない。
本当にそこで生きて生活している人を撮っている現実感。
人物描写も的確でくどすぎず、いつの間にか理解できている。
しかも「ハウス・オブ・グッチ」の撮影もなさっているので
それほど製作時間に余裕があったわけでもないと思う。
80歳を越えておられるのに、どういうことなの…。

大変優れた作品ですが、でももう見たくはないし
妻と、マット・デイモンの親友の人、王妃、伯爵の妻、メイド以外の登場人物を
全員一か所に集めて焼き払いたい……。

2章と3章に性暴行シーンがあります。
「藪の中」のようにまったく内容が食い違うかと予想していたが
そうではなく、多少自分に都合のいいように認識してしまう程度だった。
それと馬が何回か酷い目に遭うので馬好きの人ちゅうい。

ラストまでバレ(内容下品)

いつも同じことを言っていますが、
結局アダム・ドライバー演じる彼がやりたかったのは
自分にない家柄を持ち、自分より劣っているくせに
先に騎士になって公然と自分を侮辱したマット・デイモンへの攻撃であり、
領地と同じように妻をも奪って彼に勝つことだ。恋などというのは後付けで、
もっと言えばマット・デイモンの尻を掘って征服してやりたいが、
それだけはできないので代わりに他のあらゆることをやっているのだ。

マルグリットに対しては両名とも
下手くそなセックスの見本のような雑ックス描写だったけど
それに対して決闘シーンの描写の丁寧さはすごかったですね。
ランスでの突撃合戦から始まって落馬、至近距離の剣戟、急所を傷つけ、
ねっとりと舐めるようなカメラワーク、最高潮に盛り上がったところで
ブッスリとね、うん。

馬のエピソードが秀逸だったと思う。
あの黒い馬はアダム・ドライバーであり、
妻もマット・デイモンにとっては高額な白い馬と同じ。
愛し合う夫婦を引き裂く悪魔のような暴行魔の話にしなかったのはさすがのセンス。
(夫との性行為は妻にとって苦痛であるとか、夫のパートにはなかった
妻の服装を叱責するシーンや、暴行を告白されてまず妻に怒りを向ける夫、
そのあと自分との性行為を強要する夫のシーンなどを認識できないと
もしかすると夫妻が愛し合っているように見えるかもだが)
人物描写もよかった。夫の自己認識では
その厳しさゆえに近寄りがたいが周囲に一目置かれている勇敢な戦士だが
章が変われば彼は浮いているし何なら少し馬鹿にされている。
アダム・ドライバーは身分はないが教養があり、ある程度の倫理もあるが
下衆な相手に合わせてやんちゃもやれるし、それを楽しめる男。
ああいう状況で出世するのも分かるし、2人はいずれ全面戦争になるのも分かる。
どちらかが相手を立てていればあるいは上手くいったのかもしれない。
妻の章のタイトル部分で「真実」の文字が消えずに残ったので、
まあそういう事なんだろうけど、
強いジョディ・カマーが幸せになる所が見たい人は「フリー・ガイ」を見よう。

私が一番グエーって思ったのは、
おそらく妻に不利な証言をした友達が、ニヤッって笑ったところでした。
味方だと思ってた人に背中から刺されるとこたえる。
あ、あとお義母さまが「私も手籠めにされたけど私は我慢した!」
って説教始めたところと、
女が男に対して偽証した罪は全裸火あぶりの刑に処されると知った主人公、
そして「知ってたら私もほかの女性のように黙ってたのに…」と言うところ、
地獄の見どころがいっぱい!



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