映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「成功したオタク」

2024年04月07日 | ドキュメンタリー
様々な努力のうえ、推しに認知される存在だった監督は
「成功したオタク」だったが、
推しが集団性暴行、性行為相手の了承なく動画を拡散する、
などの罪に問われ実刑判決を受ける。
苦しんだうえに彼女は同じファンの心情をインタビューした
ドキュメンタリー映画を撮影するというあらすじ。

推しをかばう派閥と、社会倫理順守派の、
血みどろの殴り合い、心を抉るような内ゲバ世界を想像していましたが
そうでもなかった。
というのも意見を述べる女性のほとんどが
倫理優先派で、女性にひどいことをするのは許せない、
という立場だったからです。
それが韓国の女性の倫理観の高さによるものか、
監督の選別なのかは分からない。
とりあえずインタビューされた女性たちは
「死んでほしい」
「刑が軽い」
「当然ファンはやめる」
というひとばかりでした。

日本でも、組織ぐるみの問題行動、
ジャニーズや宝塚、
あるいは2.5次元俳優の暴力事件、
松本人志さんの性暴力事件、
似たような事例が起こっていますが、
芸能のかたは一般人とは違う、被害に遭ったひとに隙があった、
被害に遭ったというのは本当なのか、ファンが支えなければ、
という考え方の人が意外に多くて、
「きちんと捜査を受け、有罪となったら罪を償わなければならない」
という考えのひとは多数派ではないように見える。日本は。

内容ばれ

被害を告白した人が死を選ぶまで叩きまくったり、
あるいは松本さんの「一日も早くお笑いがしたいです」
というSNSのポストに対して
現時点で88万のいいねがついているのを見て
いまって日本の人権教育は
どんな感じなんだろうと不安になっていたところなので、
スターがちゃんと逮捕されて実刑判決を受ける韓国のほうが
健全ではないかと思う。

でも推しが犯罪者になっても、
推していた時間や仲間が無になるわけではないし、
お宝1つ1つの思い出は消えない。
財産が消えるのとはわけが違うと思う。
ただ作中でも言われていたように
最初からそういう人だったのか、
人気が出てそういう人になってしまったのか、
つまり自分の支払ったお金が犯罪者を作る元になったのか、
についてはやはり考えてしまうだろうな。
生身の人間は推さない、二次元を推すぞ!と思っても
作者が犯罪に走る可能性がある。
常日頃から、どこまでなら許せるか、どうなったら見放すか、
考える習慣をつけておくのはいいと思います。
あと「今、自分は正常な判断ができる状態か」、
問いかける癖も。

しらふで話せるかよ!のシーンには共感したし
ヨーグルトマッコリってこうやって作るんだ…という学びがありました。
笑ったけど、長いでしょう一連のあのシーン(笑)

結末部分は若干優等生的だと感じた。
もっと荒れ狂ってもいいぞ!



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「パトリシア・ハイスミスに恋して」

2023年11月06日 | ドキュメンタリー


著作の多くが映像化されている人気作家ハイスミスの
日記とインタビューをもとにしたドキュメンタリー。
彼女と恋愛関係にあった女性たちがハイスミスを語ります。

創作秘話もあるかなと思いましたが
やはり恋愛生活中心でしたね。
でも朝からオレンジジュースのジン割りをグイグイ飲んで
あの文章をお書きになってたのならすごいことです。
世間からサスペンス作家と認識されることにはご不満だったよう。

内容ばれ

でも見ていて腑に落ちたことが色々あって、
母が再婚するため祖母の元に預けられて育ったが
ハイスミスは美しい母のことが好きだった、
ただ、母から愛を返してもらえることはなかった、とか。

それとインタビューを見ていて
ややミソジニー思想をお持ちっぽいなと感じたのですが、
彼女がものすごい漁色家だったこと、
ノートにこれまで付き合った女のランキングを書いていた
(これは映画内には出てこないけど)らしいこと、
女の振り方が酷いこと、
異性装を好んだこと、等々も、あー…という感じ。

なんとか母の望むような娘になろうと、
精神科を受診し、男性との性行為を無理に行い、
最終的には母と絶縁、
きっとすごい苦しみがあったと思うので、
好きに生きなさったらよいのですが。
(それとお若い時の写真を見るとモテモテなのはとても理解できる/笑)

テキサスで周囲の人からのミソジニーやレイシズムを浴びて育ち
晩年それがじわじわと沁みだすのは本当に怖いな…と思った。

リプリーがハイスミス自身だという発想はなかったので
その視点で再読したら、まるで違った風に感じられるかもしれない。

インタビューに彼女の猫が映っていますが
ドルルルルル…と鳴っていてかわいい。



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「クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち」

2022年05月31日 | ドキュメンタリー
20世紀末から21世紀初めにかけて特にご活躍なさった
映画に携わる有名造形職人とアーティストが
当時の話をするドキュメンタリー。
ホラー寄りの内容かと思っていたけど、そうでもなかった。
早口で喋りながら、 ろくろを回すポーズをなさるかたが多くて
ほっこりしました。

登場する映画は「エクソシスト」「ザ・フライ」「遊星からの物体X」
「グレムリン」、「アビス」、「ターミネーター2」
「ジュラシック・パーク」、「ヘルボーイ」
「スターシップ・トゥルーパーズ」、「スパイダーマン2」等々。

当たり前ですけど、モンスターデザインに興味のある人むけ。

ラストまでばれ

私はクリストフ・ガンズ監督が元気そうなのが見られて、
デル・トロ監督がいいこと言って、
「ヘルボーイ」の死の天使がバラバラのパーツになっているところを見られて満足です。
なんて美しいんだろう死の天使。

ジュラシックパークの頃が過渡期だったようで、
フィル・ティペット氏は関わっていたジュラシックパークの仕事を
CGが代行すると決定したショックで肺炎になられたらしい。

CGか、 実在物質造形か、というのは全体的なテーマとなっており、
現在は製作期間を短くして費用を絞る方針にCGが合致しているけども、
それは必ずしもCGのほうが優れているわけではなく、
両方によいところがあるので共に必要な技術である、
という結論に納得しました。
逆にCGが手抜きで貧しい技術だとも思わないが、
短納期で仕上げる場合、 作家性が出にくいな、とは思う (私は)。
既視感のあるテクスチャと動作、重力、等々。
それにしても昔のハリウッドはお金があった…。

「ターミネーター2」のT-1000の効果、
破壊されるところは実物で戻るところはCGだったのか、とか
「アビス」の特殊効果、72秒に1年かけたのか、とか
ヨーダのCGの動きはアーティストの皆さんには不評なのか、とか
知らないことが色々ありました。
気になったのは、
ゴムの作品の寿命が来て変形変質しているという発言です。
たかだか数十年前なのに、ゴムって耐久力が低いのか!
石油王のファンよ…作品の保存を…と思いました。

映画音楽作曲家のインタビュー集の時も思ったが、
有名造形アーティスト達も白人男性率9割以上だな。
現在はもう少し偏りがましになっているといいのですが。



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「オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-」

2022年02月26日 | ドキュメンタリー
第二次大戦下、大規模反撃の開始地点をナチスに誤認させるため、
偽の機密書類を持った死体を流した、英国のミンスミート作戦を描く。

彼等は架空の軍人にリアリティを持たせるために
軍人の設定を練り込み、恋人の写真や手紙などを用意します。

主演はコリン・ファース。
予告で見た印象よりは、恋愛パート多めだった。
作家のイアン・フレミングもかかわっていたとは知らなかった。

内容ばれ

架空の軍人とその恋人に仮託して
妻帯者の主人公と職場の女性がプラトニック不倫でドロドロしたり、
同僚の男性もその女性職員を想っておりドロドロしたり、
えっこのメロドラマパートは必要…!?って思ったけど、
恋愛ドラマも見たいって世代もある?のかな?
(三角関係同僚氏、190センチ越えの人だったので珍しくコリン・ファースが小柄に見えた)
(最後2人で並んで座ってるのかわいらしかった)

イアン・フレミングが時計のギミックを見て「ウヒョー」って顔しているのとか
目くばせが頻繁にあって、ちょっと笑ってしまった。
ジョン・ゴドフリーはボンドシリーズのMのモデルになった人ですね。

同性も異性もタラしこめるスパイたちが暗躍し、
敵組織のトップ争いに運よく乗っかる形になったりとか
ああいう攻防パートは面白かったです。


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「SNS-少女たちの10日間-」

2022年02月22日 | ドキュメンタリー

原題「V siti」(インターネットで)

監督:バーラ・ハルポヴァー ヴィート・クルサーク
2021年のチェコのドキュメンタリー映画。
童顔の女優3名を12歳の少女という設定で、
SNSに登録すると何が起きるかという実験映画。
相当きつい内容だけども、女児男児どちらも、お子さんのいらっしゃるご家庭で、
父母子、そろって鑑賞なさるべきなのでは?と思いました。
本当はどの世代どの性別でも見ておくべきと思ったのですが、
女児に手を出すなどあり得ないという感覚の独身男女からすると
こんな一部の異常者の行動を大げさに扱う映画は、
見るに値しないという結論に至りそうだなと考えました。

誤解を受けそうなのですが、
SNSで少女たちを狙うのは、所謂ペドフィリアだけではありません。
12歳というプロフィールの彼女たちにコンタクトを取ってきた人物は10日間で2458人、
全世界が対象とはいえ人数が多すぎます。
おそらくストレス発散の加虐目的の人間も相当数いると思われます。

内容ばれ

ともかく女児とコンタクトをとれた瞬間に性器を開陳する男性が多すぎる。
私は「清らかな女児に醜いものを見せてやるぜ!」という意識だと思っていたが
もしかして男性は自分の性器を素晴らしいものだと考える人が多いのだろうか。
おともだちにカブトムシを見せている感じだろうか。

でも劣等感と承認欲求で精神状態が毎日乱気流の少女たちにとって
大人の男性に称賛され必要とされる体験は、
(例えどんなに家庭内で愛されていようとも)何物にも代えがたい麻薬だというのも少し分かる。
なので理想としては親御さんと、このドキュメンタリーを一緒に見て、
その承認がどんな恐ろしい代償を必要とするものか説明を受けるのが一番だが
そういう家庭ばかりでもないだろう。

12歳だと言っている女の子相手にセックスの話しかしない、
どう見ても中高年、もしくは初老の男たちが無数に登場して
その表情や喋り方や視線には共通するものがあります。
女優さんやスタッフや私たち観客の心が段々無になってきたところで
1人だけ紳士が、というか単なる普通の人間が登場するのですが
対比で神のように感じられて、女優さんもスタッフも感激して泣きます。
(この男性もヤバいのではないかという意見も散見されますが)

途中、少女に対して性的なコンタクトをとってくる男性のうちの1人が
(仕込みでなければ)偶然にスタッフの知人で、しかも彼の仕事が
子供にかかわるものだったのですが、ラストで彼の自宅に
女優とスタッフと監督全員でカチコミを掛け、対話(糾弾)しようとします。
そのときに男性が、アニメの悪役のようにすごい長セリフを吐くのですが、
「そんな動画は送ってない。間違って送ったことはあるかも。お前たちはもっと有意義なことをしろ。
もっと解決すべき問題がある。ジプシーは全員売春婦だ。彼等を救え。
ネットで人と会う子供は育ちが悪い。俺の子ではないから俺は関係ない。親の責任だ」
詭弁の教科書のようなものですね。
唐突にロマの話が出てくるのはWhataboutism、
日本語だと「そっちこそどうなんだ主義」(ウイグル話法)と訳されているようです。

このドキュメンタリーも少々「?」という部分はあって、
カウンセラーやボディガードを付けた万全の態勢で女優さんを守るのはいいんだけど
ボディダブルを使用した少女のヌード写真を送って反応を見るというのはどうかと思うし
(いくらフェイクとはいえ当然その写真はネットで回覧されるだろう)
実際会わせてみるというのも、盛り上がりを期待したバラエティ番組のようだ。
(リアルに会いにやってくるのはどう見ても老人、そして中高年、果ては3P希望の男女まで、
人間というよりも、言葉が話せてモバイルが使える、交尾前の馬みたいな生物たちです。
少女を前にして、大はしゃぎでセックス!セックス!セックス!セックスの話をしまくります。
女優さんたちに危害が及ばなくて何よりでしたが)

しかしこのドキュメンタリーの意義は、世界各国のその種の男性に、
「これはもしかして記録されているかもしれない。
自分の映像やテキストが全世界に公開されるかもしれない」という怖れを生んだ所にあります。
各国で類似作品が作られ、話題になりますように。

これまで送ったエッチなメッセージを、カフェで女児(を演じる女優さん)に
音読されてペドフィリア大慌てのシーンはちょっと面白かったです。ちょっとだけね。




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