映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
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「シンデレラ」

2015年04月27日 | 古典名作

ケネス・ブラナー監督。
今回は奇をてらった改変等は無しの、直球勝負のシンデレラです。
(現代から見て、あれはちょっとなあ…という部分はきちんと変更されてます)
シンデレラのドレスと靴がともかく美しいです。

ラストばれ

まず原作王子にほぼ人格というものがなくて
猛烈なメンクイであるという個性しかない点、
これは事前にシンデレラと出会い、
彼女の心優しさや毅然とした態度に心惹かれるというシーンで補完されています。
またこの際に王子は身分を隠しており、
シンデレラは仲良くなった見習い士官に会いたい一心で
王子のパーティーへ参加するという改変もなかなかいい感じでした。

そして王子と王様がすごく愛し合っていて
互いを理解し合っているのがよかった。上手に育てられた子という感じ。
シンデレラも、いじめられているところを王子に助けられて
ふらふらと嫁に行って、お義母さまもお義姉さまも悪いひとじゃないんですー…
的なあたまのよわい感じの優しさではなく、
怒りや憎しみがあって、その感情を乗り越え、
また王子に平民を嫁にとる覚悟を問うたうえで結婚承諾するところなんかが良かった。
夢と現実の中間くらい。
あ、馬車や御者や侍従に白馬のあたりは夢全開で
よくよく知ってる話なのに、どきどきしましたね。
金髪にすると全然印象の違うヘレナ・ボナム=カーター、
コミカルな演技が上手いです。(ラストの唄も彼女かな?)
シンデレラと2人、まさかの変顔を披露してくれました。子供は変顔ねた大好きだからな…。
ケイト・ブランシェットのお義母はとても怖かった。こちらもよいお仕事でした。

ブランコに乗っていて落ちた靴を王子が履かせてあげるシーン
無駄にエロティックに演出されていて、ちょっと笑ってしまった。
あと最後の王子の水戸黄門シーン好きです。
あれ靴行脚のシーンをDVDで見直したら、ちゃんといらっしゃるのだろうか。

人種に関して配慮が感じられました。
ディズニーはこのあたりとても細やか。

「アナと雪の女王 エルサのサプライズ」(同時上映短編映画)

御存知モンスターヒット作品、待望の短編です。
内容ばれ
「ほら、誕生日ねたとか風邪ひきねたとかオタクは大好きだろう?たんとお食べー」
「グワー!!公式さんにそんなことされたらオタクのやる事がー!グワー!!」
みたいななんかそういう幻覚が見えた。
だってプロの中のそのまた世界トップレベルの集団が本気で同人ねたをやったら
そりゃ上手いに決まってる。幸福な続編でした。
最後のほうのピンポイント爆撃オチとかわりと本気で笑った。
アレンデール姉妹最強伝説…。



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「セッション」

2015年04月23日 | 精神系

デミアン・チャゼル監督
ドラマーを目指す主人公は、アメリカの名音楽学校の一年生。
ふとしたきっかけで、学園一の指揮者の目に留まり、
彼の率いるスタジオバンドの第二ドラマーとしてスカウトされる。
期待に胸を膨らませて練習に参加する主人公だが、
彼を待ち受けていたのは指揮者による苛烈な指導、執拗な侮辱、暴力だった。
というあらすじ。
ジャンルとしては音楽系サイコサスペンスになると思います。

胃の痛くなるようなシーンの連続です。
地獄の練習スタート以降、弛緩する場面がなく、
長時間の緊張を強いられます。
まさに主人公の叩くドラムのような2人のやりとり、
悪意と殺意と愛憎の混ざる2人の会話のようなドラムの音、
見せ方が上手いです。
デミアン・チャゼル監督は「グランドピアノ 狙われた黒鍵」の脚本の人で、
今回が初監督の若手。

オチばれ注意

サイコパス系映画を連続で見たので、
そろそろ必殺技で何かをぶっとばして3点着地する映画を見たいです。

人の努力が無に帰す瞬間を見るのって怖いですが、
今回のあの「肝心なコンペに向かう途中でバスのタイヤがパンク!」とか
「大事な音楽祭で自分だけ楽譜がない!」とか、悪夢の連続でした。
というかこの監督、楽譜がない!っていう状況がトラウマなのか。

ラスト、「モンスターを音楽で見返したよ!やったね!」っていう解釈と
「新たなモンスター天才演奏者が誕生したよ!やったね!」っていう解釈ができますが、
私は後者だと考えます。
どうしてかというと、親類に侮辱されたシーン、あれは必要な場面でしたが
主人公が従弟たちを貶める発言をする必要はなかったなというのと、
あと自業自得とはいえ終盤で彼女にふられたから。

典型的なサイコパス&モラハラ加害者のやりくちだなーと思って見ていました。
威圧して怯えさせた後で安心させ、プライベートの話を聞きだし、
その話を元に相手の親など大切な人物を侮辱し、一転してまた持ち上げ、
別の人物を贔屓にして突き放す。

このまえに見た「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を思い出した(笑)。
社長室で転んだドジっ娘ヒロインはイケメンサディスト社長に見初められましたが
人と目を合わせないでオドオドがちに生きていると、
とんでもないのに目を付けられるみたいなので注意しようっと!
(あのバンド、技術枠とマゾ枠があって、新人が来るたびみんな「どっち!?」
ってドキドキしてるんじゃないか)

洗練された遊びであるSM(Mの人権は保障されており、
いつでも関係を解除することができる)では満足できず、
相手の尊厳を踏みにじり、弱点をえぐり、自尊心を破壊し、
それでも逃げられないような関係を構築しないと満たされない人は、
そういえばどうするんでしょうね。
教師や、音楽指導者、スポーツ指導者等になって、
法に触れるか触れないかぎりぎりのラインで欲求を満たしてらっしゃるのでしょうか。

表現者は別に人格者である必要はないと考えますが
指導者は少なくとも理性的な人間でなくてはまずいな…と思いました。

主人公のお父さんだけが唯一の癒しでした。


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「ソロモンの偽証 後篇・裁判」

2015年04月16日 | サスペンス映画

あらすじ
中学生が謎の転落死を遂げ、自殺と断定されるが
彼は同級生に殺されたという怪文章がマスコミに届けられる。
犯人と名指しされた少年の家は火災で失われ、
怪文章の差出人であると目されていた少女は事故死、校長と担当教師は辞職する。
すべてが曖昧なまま終わろうとする事件に主人公の少女は反発し、
学校内での裁判を提案し、実行する。
少女は検事となって犯人と名指しされた少年の罪を追求し、
墜落死した少年の旧友が弁護人を担当する事になった。
関係者全員が裁判に集まり、意外な事実が明らかになる。

暗黒エンドではなかったので、後篇見てよかったです。
えっとクズのひと
(中学生もいるのでクズって言ったら可哀そうかな…
性格に問題あるひと、くらいにしとこうかな)が後篇で新たに参入したりして、
性格に問題あるひとのラインダンスを見ているようでした。
でも大人も中学生も、真面目な良いひとも多いので、
それでバランスはとれています。

妖怪シリーズで京極堂がやっている憑き物落とし、
あれを中学生が、大人の助けを借りて
自分達で補い合いつつ成し遂げちゃった感じ。

オチばれ

学校裁判も大事だけど、
トラックに住宅街での徐行運転を徹底させるのが
先じゃなかろうかあの地域…。

あと住む場所と友達は慎重に選ばないと
最悪死ぬというのが重要な教訓だと私は思います。松子ちゃん…。
藤野さんと神原くんはセイント中学生、
松子ちゃんはエンジェル、井上くんは萌えキャラですね。

萌えキャラと言えば自動矢印吸引機の神原くんですが、
大出くんが終盤で別人のように従順になっていたのは、
ショックのせいだと思います。
あれだな?さては好きになりかけていたな?
演技で言えば、主演の藤野さんは達者な演技でしたし、
性格に問題のある3人、柏木くん樹里さん大出くんは
役者さんの素なのか?と思うようなリアルさでした。
小日向さん、佐々木さん、松重さん、子役をひき立てる演技なさってました。
あと津川さん、さすがの存在感。

やや納得がいかなかったのは樹里さんのこと。
親切にしてくれてた友達を騙して事件に巻き込んで、
ほぼ自分のせいで死なせたのに、
自分のやらかした罪をその死んだ友達になすりつけて、
お澄まし顔をしていた子が、最後本気で謝るかな…?
やつは将来、洋猫でも膝に置いて葉巻をふかす
マフィアの首領ぐらいしか就職先がないような気がします。
(たぶん原作では最後の涙に至る経過が違和感なく書かれているのでしょう)

並み居る強豪揃いの中のチャンピオン、
クズの中のクズ(大人)はとりあえず逮捕されたので安心しました。
あと先生の隣の家の人もな。先生が旦那をぶったのですっきりした。
この話の中で誰が一番不幸かって、先生だと思うんですよ。
担当クラスの子が自殺して、マスコミに事実無根の噂を流され周囲に責められ、
隣人の気が狂って危害を加えられるって、
通常人生で一度あるかないかの不幸がダブルできたよ!

エンドロールのあと、その後のみんなの様子が映ると思ったら
そんなことはなかったぜ!


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「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

2015年04月13日 | 精神系
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督

アカデミー賞監督賞、作品賞、撮影賞、脚本賞を受賞。

主人公は俳優で、20年以上昔「バードマン」という
人気スーパーヒーロー映画で主人公を演じるスターだったが
今は落ちぶれ、妻にも去られ、世間から忘れられようとしていた。
しかしカーヴァーの舞台劇に私財をつぎこみ、
ブロードウェイでアーティストとしての再起を目論む。
というあらすじ。

最初からラスト付近までほぼワンカット風に撮影してあって、
それはまあCGや様々な技術が駆使してあるのでしょうけど、
でもワンシーンは確実に普通の映画より長かっただろうので、
綿密な打ち合わせとリハが必要だったろうなと思います。
演技もセリフも顔の向きすらもアドリブ厳禁だったらしい。
そりゃ移動が数秒遅れたら後ろのパートの人の段取りが狂うものね。

落ちぶれて精神を病み始めている主人公が見る、
異形のバードマンの幻覚や声、
こちらの精神まで削られる気のするドラムの音、
互いを食らい合うようなマイケル・キートンとエドワード・ノートンの演技。
逃げ場のない迷路みたいな舞台裏の通路をひたすら歩く姿が
ノーカット風に撮り続けてある閉塞感、
控室を移動するたび青に赤に白に変わっていくライトの色彩。
すごい技術の高さと完成度でした。
ただしエンタメ映画とは違うので、行楽には向かない。

カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を
読んでいなくても平気だけど、読んでいると考える選択肢が増えます。
あと1989年のバットマン2作を見ていると悲壮感が増す。
見なくても、マイケル・キートンがバットマンの主役を2作務めて、
そのあと降板して他の人に引き継いだ事を知ってればOK。

オチばれ
(といってもハッピーエンドか悲劇エンドか?ですら意見の割れる映画なのであくまで私の意見です)

最後のシーンは現実だよ!派と、あそこは現実じゃないよ!派がいます。
現実だよ!派でも、ラストカットは死だよ!派と、メタファだよ!派がいます。
たぶん真面目に調べたらさらにもっと細かく分かれる(笑)。

主人公の超能力が、中盤で妄想によるものと判明するのですが、
あの空中浮遊が終わった後でタクシー運転手が料金払えって追いかけてくるのとか
視点がプロデューサーに変った途端、主人公が手を使って物を壊しているのとか、
すごくスマートな演出だったので、
(共演者の怪我も、ああ超能力(物理)かーって類推させる。うまい)
なので私はこの映画の映像に映っているものはすべてリアルか妄想のどちらかだと思うんですね。
でも主人公は愛されゆるふわ欲求と承認欲求から解脱できたんだと思う。

映画を見てびっくりしたのは、
舞台人は本当に映画人をあんなに見下し憎んでいるものなの…?
ということと、
あと「愛について語るときに我々の語ること」の舞台劇、
テディの拳銃のシーンがラストみたいなんだけど、一体どういう話になったの!?
ということです。

カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」の
上っ面を撫でて言語化すると、
人それぞれ愛情というものは違うが、人はそれを追わずにはいられない
という感じになりますが、
この映画のテーマに、小説が絡むか絡まないかによっても
かなり解釈が変わってきます。
(最後で主人公がまさに顔をガーゼで覆われているし、どうだろうか)
でも愛情がほしいのと承認欲求は違うし、
そもそも手をつけた年下の女優は愛としてはノーカンなのかとか、
だいたいこの主人公、自分の話をするばかりで
自分の受け皿の役目以外の元妻や娘に興味があったようには見えなかったけど、
家庭は一方的な愛情供給装置ではないし、
娘の財産になる予定の不動産を自分の夢のために抵当に入れて借金やら
結婚記念日の浮気やら色々あるので、
とうとう最後には家族から愛情を得て満足できた、とは思いたくない。

ダブルおちばれを防ぐためタイトルは書きませんが
ダーレン・アロノフスキー監督の例の映画と重なる部分があります。
あっちの方が悲壮度1.5倍ほどですが、
それは主人公がうんと若いのと、あと真面目な気性の女性だからだろう。
至高の演技を目指すのと世間に認められるのを目指すのは違うので
その点はバードマンの方が人物が不純。
でも「バードマン」は表現者たちの外側の
批評家や観客やインターネットユーザーも映画内に取り込んでいるので、
一層ぶん世界が広い。

あと余談ですが、X-MENとアベンジャーズの準備期間がかぶってるって、いつだ(笑)



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「ジュピター」

2015年04月07日 | SF映画

ウォシャウスキー姉弟のオリジナルSFです。
ズバリ言うとコケちゃった映画なのですが、
おたくはこの映画を悪く言いにくい感じの、なんかそんな作品です。
なぜなら、「これが!自分の考えた!最高のかっこよさなの!」
ていう拘りと愛情が伝わってくるから。

ロシアからの移民でハウスキーピングをして生計をたてている
ジュピターという女性は、本人も知らないある秘密があり、
それが原因で命を狙われることになるのだった…というあらすじ。
ただ、女さらわれるピンチ→男たすけにくる!っていう流れが
3回?4回?繰り返されるので、途中ちょっと忍耐が必要です。

重力操作ブーツと電磁盾のアクションは本当に格好良かった。
(スターロードとキャプテン・アメリカのアクションが合体したみたいな)
(電磁盾を最初に見たのは「エリジウム」だったけど、
なるほど今回みたいな戦闘スタイルの場合、空気抵抗を受けないのが最大のメリットだな)
(グローブ内部に仮想コンソールが出てくるのとか、ああいうギミックは大好き)
あれがこの映画のメインだと思う。

内容ばれ

チャニング・テイタム演じるケインは、やりすぎ!漫画かよ!ってくらい格好良かった。
狼と人間のハイブリッドで、しかもアルビノでそれが原因で幼少時に軍に売られて、
群れでしか生きられない狼の性質を克服して独りで生き抜いてきたが、
王族の喉笛を噛んだ罪で翼を切られたとか…。二次創作の過去捏造でもそこまではやらない。

そしてどちらかと言えば子ダヌキ系イケメンのテイタムが、
とんがり耳とつり目メイクで、いい具合にワイルドなイケメンに!?
(残念ながらミラ・クニスのメイクはいまひとつで、TEDの時の方が美人でした)

人類は資源のために飼われている家畜ねたは、腹いっぱいなのでそろそろ遠慮したいです。
ラストのロシアファミリーは良かった。

何気にペ・ドゥナが出ている(教えてもらうまで全然分からなかった)。
あとジェームズ・ダーシーも(配役を調べていて気付いた)。
ショーン・ビーンはなかなかおいしい役でした。
ラスボスのエディ・レッドメイン、アンニュイなヴィランだった。



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