映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「羊の木」

2018年02月27日 | 淡々と暗い系

吉田大八 監督
過疎化対策として、仮釈放された模範的な囚人の身元を引き受ける制度の
モデルケースとなった魚深市。
市の職員である主人公は、その秘密のプロジェクトの担当となり、
6人の殺人者の衣食住や職のケアを行う。
最初は上手くいくかと思われた試みだが、土地の祭りをきっかけに
不穏な事件が起こり始め、やがて…というあらすじ。

誰かの思惑で事件が動いたりするわけではなく、
淡々と悪いほうへ、または良い方向に変化していきます。
「スリー・ビルボード」ほど苛烈で緻密ではないけど、
日本における受容と許しの話と言えるかも。

腐女子が「我々への挑戦かコルァ!」て言いたくなる、
なんかこう友情迷子みたいな2人が出てきますが、
吉田監督にはBLの素養はないのできっと偶然の産物でしょう。
(理髪店の店主が……らしいですけど)
吉田監督はNTR趣味があるな…って今回思いました。

原作では移住してくる元受刑者は11人だったらしいですが、
更に減らして4人くらいにしてもよかったのではと思いました。

内容ばれ

途中で「クトゥルフものか…!!!」って思ったんですけど違った。
のろろ祭にインパクトがありすぎて、本筋が頭に入らなくなりました。

松田龍平さんって、登場したら「この人が一番ヤバイ」ってすぐにわかる
サイコがパスの演技と、おっとりした善人の演じ分けがすごいですね。
主人公的な人にとっての運命のひとを演じる才能。
宮腰くんが「友達」って言うと、なんか切られるようなつらさがありました。

優香さんのシーンへの男性の食いつきがすごいんですけど、
うん、でもまあエロかったですね。
エロさって3種くらいあると思うんですが、
やっぱり判断能力が低いっぽいエロさというのは強い。
本筋に何ら絡まないので地上波放映があったとしたらカットされそうではあるけど。

そういえば、桐島のときに「主人公に脈あるよ!」っていう男性の意見が目立ったんですけど、
私は(原作主人公には脈あるけど)「脈とか一切ないよ…」って思ってました。
でも今回は、ちょっと脈あると思います(笑)



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「グレイテスト・ショーマン」

2018年02月23日 | ミュージカル映画

象やファンタジーの動物、異形の人々を見世物にした、
実在の興行師P・T・バーナムの半生を元にしたミュージカル。
監督はこの作品が初監督。
https://www.youtube.com/watch?v=wqGOKoXB3UA
予告がすごくワクワクさせてくれるやつだったので見に行きました。
評価は割れています。曲と歌と映像はどれも素晴らしいです。捨て曲がない。

貧しい仕立て屋の息子の主人公は、得意先の貴人の娘と恋に落ち、
極貧のなかで手紙を通じて愛を育み、駆け落ち同然に結婚するが、
彼女に最上の暮らしをさせるという約束はまだ果たされていなかった。
そんなある日、職を失った主人公は奇妙なアイディアを思いつく…というあらすじ。

評価が割れているのは、主人公の取る行動がわりとクズめなんですけど、
それをヒュー・ジャックマン氏の持つ聖人りょくでなんとかカバーしようとして
それなりにうまくいっているところだと思います。
そこのところは下記にまとめました。
それにしても曲が最高で映像が美しく、サーカス場面も、
バーでの男同士の猛烈な口説きの歌とか、オペラの歌も、ロープを駆使した動きも、
見たいと思った瞬間に俯瞰、回転、かゆいところに手が届くカメラワークで、眼福でした。

内容ばれ

上流階級や銀行や批評家などの権威に反抗する闘士かと思えば
一番その権威に弱いのは本人で、

異形の者たちの庇護者で味方かと思えば
彼等が用済みになったら冷淡に扱い、

自由なショーに誇りを持っているかと思えば
自分の耳より評判を信用すると言って高名なオペラ歌手を雇う、

せめて妻子を大切にする姿勢だけは守り通すかと思えば
娘たちが泣いて止めても去ってしまう。

妻が彼に言うセリフ
「誰の事も愛してない。愛してるのはショーだけ」
ですけど、彼は別にショーさえも愛している訳ではなくて
あるのはただ、子供の頃に自分を侮辱した
すべての人間、階級、社会への恨みで、それはおそらく永久に晴れない。
何を詰め込んでも、ぽっかり空いた穴に落ちていくだけで満たされないんですよね。
(まさにNever Enough)
でも彼がどんなにひどい事をしても周囲は許して彼を愛する。
演じたのがヒュー・ジャックマン氏じゃなかったら
私も6回くらいサイコパスサイコパス言ってたと思います。

彼の飢えにはエネルギーがあって、
高貴なものを見るとどうしても手に入れたくなり、
その熱病みたいな彼の夢に触れると、高貴な人々は彼の手に落ちてしまいます。
妻もそうだし、パートナーもそう。オペラ歌手も。
でも飢えが彼を病のように蝕んで、いずれは次が欲しくてたまらなくなる。
積み重ねられたエピソードから、あのラストに着地するのは(あの尺では)不可能な事が分かります。
でもそれは脚本が悪いのであって、曲に罪はない。

ヒュー・ジャックマン氏の足が長すぎて、何回か「CGでは…?」って思いました。
なんか現在の人間の居住環境より、水辺に立って水面下の魚を狙うのに適した体だと思う…。

「SING」の主人公のコアラも、P・T・バーナムをモデルにしているのでは?
という意見をネットで見掛けて、「あっ確かに!!」って思いました。
オペラ歌手も出てくるし!そしてどっちの映画にもパートナーの羊が出てくる。
どっちの羊にも「友達は選んだ方がいいヨ…」って思いますけどね。

余談ですが、綺麗ごとじゃなくてちゃんと当時の倫理観で
おぞましい部分と美しい部分の両方が見たい…と思った方には
近藤ようこさんが漫画化された「五色の舟」をおすすめします。


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「アウトサイダーズ」

2018年02月15日 | 人情系

英国コッツウォルドで、様々な理由によりまともな職に就けない者たちが
トレーラーハウスを並べて生活し、ヤギや犬を飼い、
裕福な家に強盗に入ることで生計を立てていた。
彼等の手口は巧妙で毎回起訴には至らず、彼等は独自のルールと、
キリスト教を改変した宗教を持ち、それなりに楽しく暮らしていた。
集団のリーダーの息子マイケル・ファスベンダーさんは、しかし
自分の子供には普通の人生を歩んでほしいと望み、
グループから脱退しようと考えていた…というあらすじ。

犬が死ぬシーンがあります。
野ウサギを車で追いかけ回して狩り、犬のエサにするシーンがあります。

マイケル・ファスベンダーさんを見に行きました。
意外にも今回ファスベンダーさんはあまりボロボロにされず、
懊悩はするのですがあくまで前向きなもので、
ファスベンダーさんを巡って火花を散らす幾人かの監督が声を揃えて
「「「「分かってないな」」」」っていう幻聴が聞こえました。
むしろ他の監督ならショーン・ハリスさんの役を
ファスベンダーさんに振ったのではないかという気がします。

内容ばれ

学校行ってないせいで読み書きも出来ないファスベンダーさんですが
テーマは最貧困層の末路とか、国家権力への抵抗とかそういうのではなく
父から息子へ、受け継がれる思い…とかいうふんわりと甘いものなので、
ラストもふんわりふんわりしてた。子犬は大丈夫なのかコラ。

ファスベンダーさんがショーン・ハリスさんにつらく当たるのは、
もちろん犬を殺されたとか理由は色々ありますが、
愛される弟への嫉妬てきなものもあると思う(別に血は繋がってないけど)。
だからこれ本当に父と息子の話です。

法治国家は、弱者が自分よりはるかに腕力の強いものを縛り首にできる(こともある)場なので、
原始時代だったらあのグループは完全に強者だったろうに残念だったな(感想)。



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「悪女」

2018年02月14日 | アクション映画

この予告で度肝を抜かれて、「どうやって撮ってるんだ!?」
って思って見に行きました。ドローン撮影だそうですが、
バイクの車輪に巻き込まれて事故になったりしないんだろうか…。
そして貼っておいてなんですけど、
この予告、終盤に明らかになる黒幕の正体を明かしちゃってるので
知りたくない人は1分30秒あたりで止めておいたほうがいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=d3nLniWI6kA

父を殺され、闇組織に拾われて暗殺者としての訓練を受けたヒロインは
教官であった男と恋に落ち、幸福な結婚をするが
夫を殺されて復讐に身を投じる…というあらすじ。

うーん、すごかったです。
バイクチェイス+日本刀のアクションと、肉薄するカメラワーク、
自分も並走しているかのような視点。
アクション映画がまた一歩進化したなって思いました。

冒頭のFPSゲーム視点が、
鏡に自分の姿が映ることで外部カメラ視点に切り替わるところ、
韓国映画の定番、斧アクションシーン、
ボンネットに乗ってハンドル操作するところ、どれも好きです。

ただ、ヒロインが戦闘マシーンではなく
愛した男に一途で、その子供を守り育てる、か弱い母親でもある…
みたいなパートは好みにもよると思いますが私はないほうがよかった。
「アトミック・ブロンド」や「女神の見えざる手」など
湿度の全くないスーパーヒロインものが快適だったので。

オチばれ

男に騙されて愛してしまうパターンが2回続いたら、
ヒロインがあほみたいじゃないです…?
(まあ2回目は男もほだされてしまうのですが)

ていうか
父殺される→闇組織に拾われて暗殺マシーンにされる
夫殺される→政府組織に捕獲されてスーパー暗殺マシーンにされる
って流れはちょっと首をかしげた。
別にあのヒゲが意図してた訳じゃないんですよね…?

あとヒゲがヒゲを剃ったので、私は顔認識できなくなって、
ヒロインが驚いたシーン、「えっ誰!?」ってなった。
ウェディングドレスの狙撃シーンは美しかったです。

ラストは6分息を止めていられる特技を活かして
相手を殺すんだろうなと思ってたら違った。




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「殺人者の記憶法」

2018年02月13日 | サスペンス映画


かつて虐待を受けていた少年が親を殺し、
そのまま連続殺人鬼となったが、
娘を育てるために人殺しをやめて生活をしていた。
しかし彼の暮らす街に若い殺人鬼が現れ、
娘に接近を始める。
年老いた殺人鬼は娘を守るため、若い殺人鬼と戦う決意をする。
しかし彼はアルツハイマーを患い、
その記憶は長くはもたないのだった…。というあらすじ。

認知症サスペンスは
エゴヤン監督の「手紙は憶えている」が記憶に新しいですが、
この映画は殺人鬼vs殺人鬼という刺激的な内容に加え、
本当に相手は殺人鬼なのか、実は連続殺人は自分の仕業で
娘を殺そうとしているのも自分ではないのか…?という
嫌なドキドキ感があります。

家庭での性虐待、ミソジニー要素、飲尿シーンあり、
あと、それほど残酷な表現ではないですが猫が死にます。

ラストばれ
殺人鬼相手に戦うと決意したとき、
主人公が腕立て伏せとか逆立ちを始めたのはスポ根ものみたいでした。
殺人は体力勝負なんだなあ…。

でも主人公が何度も相手のこと忘れちゃって
おじいちゃん、ごはんはさっき食べたでしょう…状態になるの、
色々な意味でつらかった。記憶が曖昧になるのは本当どうしようもないですね。

私は娘さんの存在がおじいさんの妄想かと思ってたのですが違った。
若い殺人鬼の人は、邦画だったら岡田将生さんだな。
最後、主人公は現実世界だと思っているけど
私は2人が地獄にいるのだと思います。これからずっとあそこで殺し合いをする。

「殺人者の記憶法:新しい記憶」という別バージョンがあり、
こちらは結末が違うようです。


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