映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」

2016年06月30日 | コメディ
宮藤官九郎監督・脚本

クラスメイトに片想い中の高校生の主人公が、
修学旅行でバス転落事故に遭い、死んで地獄に落ちるが、
高校生のみが参加できるジゴロックという音楽の祭典で
閻魔大王に認められれば一発逆転で人間に転生、または天国に行けると知り、
転生して彼女に告白するために
地獄の鬼に猛特訓を受ける、という話。
いつものクドカン節の、バカ、エッチ、ギャグ、ドタバタです。
比較するとやっぱりドラマ作品は上品だなと感じる。
でもバス転落直前の出来事が、実はあらゆることのキーになっていて、
あのセリフの意味は実はこうでした!という種明かしも幾つかあり、
妙に繊細な所もある脚本なのでした。台詞のキレ味もいい。
うーんでも人を選ぶので、すべての人におすすめできる映画ではない。
クドカンファン、またはロック好きのかた向け。
ちなみに今年の2月に公開される予定でしたが、
バス事故のシーンが生々しいので公開延期になりました。

内容ばれ
神木くん演じる主人公が、
最初のうちは自分の片思いのことしか考えず
利己100%の行動しかとらなかったのですが、
長瀬さん演じる鬼のキラーKの過去を知るにつれ
段々彼のために行動するようになるところ、よかったです。
キラーKは泣き声も「マザファッカ!」なのが実にかわいい。
間違いなく大助×キラーKだなと確信しました(←?)。

みうらじゅんさん、片桐仁さんはすぐ分かったけど、
野村義男さん、ROLLYさん、中村獅童さんは全然分からなかったので、
帰ってから検索しました。
あと、歌を聴きながら「あー、これ冠徹弥さんで聞きたい!」って思ってたんですが
エンドロールに名前があった!でもどの部分かは分からず…。
葉加瀬太郎さんがジゴロックで一発人間転生キメたエリートとは知らなかった(笑)
閻魔大王の前での超絶技巧演奏聞きたかった!

じゅんこちゃん関連の、ブスに対する笑いは、ギャグとしてちょっと古く感じられる。
あと、女湯の覗きと盗撮は、もう「男の子はバカだねー」っていう
笑いで済む時代は終わったのよ…。
きっとクドカン忙しくて一般的な意見を見て回る時間がないのだな…。

今の高校生男子って、昭和の高校生男子ほど
性のエネルギーで頭がいっぱいで爆発しそうって感じじゃない気がするんですが、
どうでしょうね。

歌の大半はクドカン作詞なので、滲みる歌詞が多かった。


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「阿弖流為」

2016年06月26日 | 舞台

シネマ歌舞伎です。
劇団新感線「アテルイ」の脚本を歌舞伎にアレンジしたもの。
坂上田村麻呂の蝦夷討伐、阿弖流為との闘いを
大胆に脚色したお話です。

愛する女を守るため、神の使いを殺した部族長の息子阿弖流為は
名と記憶を封じられ、故郷を追われていた。
朝廷の蝦夷討伐を知り、故郷に帰る事を決意する。
坂上田村麻呂は太陽のような人柄で、都の多くの人に人気があった。
大臣より蝦夷討伐の任務を与えられ…というあらすじ。
阿弖流為と田村麻呂の出会いと友情、
阿弖流為の最愛の女性、鈴鹿との再会、
そして意外な真実が明らかになります。
燃えと愛と笑いと意外性のバランスいい話でした。
新感線バージョンよりかなり削ってあるようです。
剣戟あり、コメディあり、踊りのシーンありと、あまり歌舞伎という感じはしません。
でももちろん見え切りはありますし、アクションのスローモーションは、
みなさんさすが、ピタッと決まってた。
私はやっぱり染五郎さんのチャンバラが好きで、特に刀の取り回しと、
打ちこんで、相手の刀が重くて弾かれるときの、
振動まで再現したモーションがいいと思う。
意外な真実に関しては、伏線が少しあって、あって思ったんですが、
何か切ない話だし、役者さんの演技がそれを2倍3倍にしてました。

舞台装置に関してはアラハバキの神がすごかった!
少なくとも操者が15人以上いたと思うんですが、大迫力でした。
観客席の一番後ろとかだとどうか分からないので、
これはスクリーンで見て良かったという感じ。

阿弖流為が市川染五郎さん、坂上田村麻呂が中村勘九郎さん、
鈴鹿が中村七之助さん。
御霊御前が市村萬次郎さん、藤原稀継が坂東彌十郎さん。
観客は年配のかた多めだった。

ラストばれ
神の通じない片想いが切ない…。
北の神と、都の神の闘いでもあったと思うんですが、
力も弱まり、愛した男には拒絶され、殺されてしまうという…。

坂上田村麻呂が助命嘆願するが、朝廷にはねのけられ処刑されるという記述が
平安時代の文献にあるんですね。それは色々創作もしたくなる。

えみし、というのは完全に蔑称だったんじゃなかったっけ…?って調べたんですが
勇敢と言う意味じゃないの?とか諸説あるんですね。

クマコかわいかった。
蛮甲がバンクォーに聞こえて、他の人の名前もシェイクスピアネタかな?って思いましたが
調べても出てこず。阿毛斗とか、なにかであったような気がするんですが。



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「貞子vs伽椰子」

2016年06月23日 | ホラー映画

白石晃士監督。
Jホラーのシリーズものが、ここ最近低調だったので
たぶんこれも駄目だろう…と思って行ったら案外よかったです。
祟るものを2つ出さないといけないのは、難易度高いですが、
それなりに怖く演出してあったし、
ネット怪談の文法を思わせる教授や有名な霊能者、
ちょっと漫画キャラっぽい俺様霊能者と相棒の盲目の少女。
呪われた女の子たちの微百合もあるのでサービス満点です。

両親の結婚式のビデオ映像をDVDにダビングするために
古いビデオデッキを購入した女子大生は、
その中に入っていた不気味なテープの映像を見てしまう。
それは都市伝説の授業で習った貞子の呪いのテープだった。
変わり者の霊能者の男は、女子大生を伽椰子の家に連れて行き、
彼女を2つの呪いにかけることによって、
貞子と伽椰子を争わせ、対消滅させようとする。というあらすじ。
最後の方、ちょっと面白いですね。なんで対消滅すると思ったの。

目の前にギャーン!って出てしまうと怖くないのですが、
よく見えないブレた姿で隅の方にいるのは怖いです。
白石さんの作品は、戦慄怪奇ファイル コワすぎ!を2まで見てますが、
なるほど、POVっぽい作風なんだな、と思って途中でやめてました。
でも全部見てみようかな?と思いました。
エンドクレジット後に1シーンあります。

ラストばれ?

貞子の呪いのビデオ、ラインのメッセージに返信していて、
目をそらしていた人がセーフでびっくりした。
そして呪いのビデオの中身が変わってた。
(たぶんラストの井戸と混同されないよう省いたのだと思う)

貞子と伽椰子が合体して、サヤ子が爆誕しました。
ゴジータみたいなものですね。

空前の「VSもの」流行りです。
まあ単純に2つのシリーズのファンを呼び込めるので
集客が固い所が魅力なのでしょう。
でも貞子のファンと伽椰子のファンって高い率でかぶってる気がするので、
もっと異なるジャンルから対戦相手を引いてくるべきなのかもしれません。
「貞子vs杉下右京」とか「伽椰子vs仮面ライダーゴースト」とか。



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「レジェンド 狂気の美学」

2016年06月20日 | 暴力orハードボイルド系

監督脚本ブライアン・ヘルゲランド

1960年代、ロンドン東部を支配した実在の双子のギャング
レジー・クレイとロニー・クレイ。
兄のレジーは度胸があって頭も切れるが、
弟のロニーは精神を病んでおり、暴力衝動を抑えられない。
2人が互いを愛し憎みながら共に成功し、
やがて転落していく様を描いた映画。

トム・ハーディさんが1人2役でギャングを演じます。
撮影技術もすごいですが、トム・ハーディさんの頑張りもすごくて、
表情の皺の入り方も微妙に違ったりして、2人の人間がいるように見えます。
そして弟のロニーの同性の愛人を演じるのが
「キングスマン」で主役を務めたタロン・エジャトン。
躁病的に陽気でクールで、怪演でした。
レジーに懇願されて彼の妻となるヒロインを演じるのは
「エンジェル・ウォーズ」のヒロインだったエミリー・ブラウニング。
60年代の女性らしくセンシティブで、綺麗だった。
ギャング団の会計士的な役割の男性をシューリス先生が演じます。
比較的黒シューリスなのですが、双子がマッドネス過ぎて
何か気の毒な感じだった。

ロンドン東部訛り?がすごくて、
最初「どこの言語だろう…?彼等は移民でお国の言葉を話してるのか?」
って思いました。
ロンドンのギャングだけあって、集まると紅茶を飲むのですが(笑)
ギャングの人達はカップの取っ手の持ち方が間違っていて、
刑事さんは正しい持ち方だった。あれは演技プランなのかな?

ラストばれ?

ガールフレンドのお母さんが怖くて玄関のチャイムが鳴らせないレジーや、
兄弟喧嘩の時に瓶を掴んだら「反則だ」って言われて戻すところとか、
とっても可愛かったので結末には結構暗い気持ちになります。

スーパー正論タイム
アル中もそうですが、自分が何とかしてやれるって思って
家族が患者を専門機関につれていかない、又は退院させてしまうっていうのは、
悪い結果しか生まない(らしい)。
これ弟を病院から出さなければ、なんか各方面ハッピーエンドになってた気がする。
弟が側にいないと、兄がおかしくなったのかもしれないけど。
あとヒロインのお母さんがもうちょっと柔らかければヒロインの悲劇だけは防げたかも。
考えてみればヒロインのお母さんは正しいけどきつすぎる、
兄弟のお母さんは柔らかいけど間違ってる、
どっちの母親も子供を悲劇の方向に進ませてる。

あっ関係ないけど英国では紅茶の淹れ方が嫁いびりの種になるんですね。
「紅茶も満足に淹れられないなんて……」とかって怖い。
あの注ぎ方の何が悪かったのか私には分からなかった。

監督は過去に「ROCK YOU!」を撮ってます。
あの映画、理由は分からないですがなんか好き。



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「エクス・マキナ」

2016年06月12日 | SF映画

作家、脚本家のアレックス・ガーランドさん初監督作品。
SFですが、ややホラーっぽい表現の箇所もあります。

大手検索エンジンを提供するIT企業の社員であるケイレブは、
社内の企画抽選に当選し、社長の別荘に滞在する権利を得る。
広大な土地に建つ豪邸に招かれた彼は、しかし社長から
彼が趣味で開発している人工知能に本当の意識があるのかどうか、
テストをしてほしいという秘密の仕事を依頼される。

引き合わされたのは骨格と内蔵メカニズムが露出されたデザインの、
女性型アンドロイド、エイヴァだった。
彼女と対話を重ねて行くうちにケイレブは、
次第に彼女に惹かれる自分を自覚するようになる、というあらすじ。

内容ばれ(ラストにも触れます)

人工知能に意識があるかないか、っていうテーマがとってもとっても好きなので、
そこのところが追及されるかな?って思ったんですが、
どっちかといえばエイヴァは人間よりも高次の存在ぽかったですね。
(暗示するような、進化の話を社長がしてた)
そういう点で
「her/世界でひとつの彼女」に出てくる思考型OSサマンサ
を思い出しました。

しかしこれ主人公の性別に合わせて造られた設定とはいえ、
社長本人は明らかな性差別主義者で、過去作品も全員色っぽい若い女性で、
虐げられた女性が解放される話と混同されてしまいそうなので、
アンドロイドは男性型かもしくは非人間型がよかったなーとちょっと思いました。
あとアンドロイドがテーマのあらゆるフィクションに言えるのですが、
なんで性器をつけちゃうの…。
セクサロイドに、人間に等しい知能とかあったらまずいでしょう。
そんなのしかるべき団体が黙っちゃいないでしょう。
開発費はかさむ、販売は無理、所持しているだけで社会的に爆弾抱えてるも同然、
デメリットだらけでしょう…。

最後、他のアンドロイドの体からパーツを取るエイヴァは、
「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」オマージュかな?って思いました。
たしか社長の話の中にプロメテウスの名前が出てたような…。
それにしても社長、どうして三原則を条件付けておかなかったのか、
理系は小説など読まないのか、アル中だからうっかりしてたのか、何なんだろう。
あのおうちの、急病と大怪我に対する備えのなさも気になる。
私はあんな環境で泥酔とかできないよ恐くて…。

余談ですが、作中に出てくるキョウコという日本人らしきキャラクターが、
デル・トロ監督が以前語った
「普通、若い日本人女性が出ると聞くと、超色っぽいすらりとした露出の多い女の子が
5分おきに濡れたTシャツで登場するようなことを想像すると思うけど(略)」
って言葉全くそのままだったのでちょっと笑いました。
(すらりとした体に下着なしの短い衣装で、英語が話せなくて、
給仕とダンスと性交渉の相手しかできない)

主人公はビル・ウィーズリーを演じたドーナル・グリーソン、
IT会社社長はオスカー・アイザック(SW出演コンビですね)、
アンドロイドのエイヴァはアリシア・ヴィキャンデルです。
アリシア・ヴィキャンデルの、人間への擬態が必要なくなった時に見せる
人間ともロボットとも違う異質な表情の動きが良かった。

社長の邸宅の撮影はノルウェーの「ジュヴェ・ランドスケープ・ホテル」で行われたようです。
なんかすごいところ。



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