映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「ゴジラ -1.0」

2023年11月05日 | 特撮映画
監督脚本 山崎貴さん

特攻隊の生き残り敷島は、
焼け野原になった東京で、子供を連れた女性と知り合い、
身を寄せ合うようになるが、
そこへかつて戦場で目撃した巨大生物が襲来する…というあらすじ。

戦後すぐの世界設定とのことで
またこう…妻子を守るためにこの命を…未来のために云々…
あなた必ず帰ってきて…おとうちゃーんエーン…
敬礼スローモーション音楽ゥ~みたいなのかな…と思って見に行きました。

や、でも違った。
右と左、リベラルと旧価値観の中間を、
うまいことシュシュシュっと駆けた。

ラストまでばれ

(もしかして日本人って特攻隊エンタメが好きなの?とは思いますが)
(難病ものみたいな分類なのかな?)
でもみんなで敬礼はあった。
特攻隊批判、政府の情報統制批判、命が大事、黒い雨、
みたいなのやりつつ、
誰かが貧乏くじを引かなくちゃいけない、からの
海軍美化、男たちの連帯、頑張り、技術者は命がけで職務を全う、
みたいなの、作り手に思想があったらできないことで、
たぶん監督は心底どっちでもいいんだと思います。
(いい意味でも悪い意味でも)
そういえば放射能の表現もフワッ…としてた。

妻子のために命を捨てるドラマは昨今風でないという判断か、
血のつながりのない家族の話になったのは良かった。
ゴジラとの戦いはあくまで敷島の人生の復讐・戦いで、
金を置いて消えるやり方や、
典子との再会シーンの子供の扱いでも分かるように、
彼自身がまだ子供なので、子供の保護者には到底なれないのも。
その一方で典子が経産婦の未亡人ではないこともジワジワとくる。
そのほうが受けるのは感覚的に分かる。
最大公約数への嗅覚に特化した才能だ。

低予算のジュラシックパークだった最初のゴジラとの邂逅で
どーんとハードルが下がったが、あれは意図的だったのかも。
銀座の破壊と、わだつみ作戦は迫力がありました。
フロンガスって昭和の終わりくらいから現れたイメージだったが
戦前からあったのか。(あとフロンという呼称は日本独自のものなのか)
他の船が集結するシーンもベタベタながら盛り上がった。
(推進力が足りないのとクレーンの強度がもたないのは別問題だと思うけどね)

野田博士、金田一耕助の要素もある温厚さの中に
きらりと光る狂気があり好きなキャラクターです。
ベタベタなセリフと、安藤サクラさんの演技力が殴り合って
安藤サクラさんの演技力が辛勝したような気がする。
典子さんの肩の黒ずみ、
ハッピーエンドの中のサッド要素かと思ったが
G細胞説もあるのか…なるほど。

(この感想全文は「べ、べつに監督のこと認めたわけじゃないんだからね!」
みたいなイメージで読んでください)




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「シン・仮面ライダー」

2023年03月21日 | 特撮映画
庵野秀明監督。
秘密組織に改造手術を受けた青年が、
恩師の科学者の手引きで洗脳を逃れ、
歪んだ価値観で人類を幸福にしようとする組織を止めるというあらすじ。
基本は昭和ライダーに忠実だが、
いい感じに現代風の設定が足されているリブートです。
わりと血がビシャッ…と出るので、こわがりのお子さん向けではないです。

ふだん特撮を見ない、ライダーにも興味のない人が見るべき映画なのかはよく分からないが、
孤独で純粋な男女の共闘が好きな人にはいいかも。
ルリ子さんが最上級に美しく撮られており
またクーデレの老舗だけあって、気色悪い過剰なデレもなく安定した品質だった。
黒の上下にレザーのロングコートのファッションもよかった。
池松さんは、抑え気味の演技だったと思うのですが、
髪型のせいか所々金田一耕助に見えました。

内容ばれ

本郷さんの足が折れたシーンとか、 玉座のネオ皇帝とか、
監督の生い立ちや過去作品を連想させるところが幾つかあり、
素人批評に優しい作りになってるのかしら?などと思った。
監督、魂の状態で分かり合える世界に魅力を感じるけど、
そっちに行ってはいけない、でも惹かれる…みたいなのが永遠のテーマなのかな。
森山さんは全体的に劇団新感線っぽい…と思っていたら、
本当に天魔王を意識したビジュアルイメージだったらしい。

予算の少なさは、巻き気味のアクションとキッチュ路線のデザインと
尖った台詞でカバーできるっぽいのは、
現行ニチアサが見習うべき所のような気がした。

エンドロールに松坂桃李さんの名前を見て、自分の相貌失認が悪化したのかと思ったが
ケイなら仕方ない。
長澤まさみさんは「これで長澤まさみさんの脚の長さが確認できましたね。では次へ行きましょう」
という使い方が勿体なかった。もうちょっと話に絡んでほしかったというか…。
本郷さんと一文字さんの独特の会話センスが面白かったので、
メフィラス君と神永さんも加えて4人でトークしてみてほしい。
百合わっしょいわっしょいして去っていったヒロミさん、地味にオリジナルにもいる。

そういえば、初代ライダーはベルトに風を受ける必要があって、
それでバイクで変身するという必然があったのだった。
それ以降代々ずっとバイクに乗っているが、バイクでなく電車に乗っているライダーもいたりする。
さすがに仮面のほうはずっと踏襲されていて、全面素顔のライダーはいないな。




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「シン・ウルトラマン」

2022年05月15日 | 特撮映画


監督樋口真嗣さん、脚本庵野秀明さんのシンゴジコンビ。
約55年前に地上波で放送されていた特撮番組
「ウルトラマン」をリブートした映画。

日本にのみ出現する謎の巨大生物「禍威獣」を撃退するために立ち上げられた
「禍特対」は、かろうじて巨大生物を駆除していたが
電気をエネルギー源とするネロンガの攻略に苦戦していた。
そこへ謎の生命体が天から現れて……というあらすじ。

最初からギャンギャンに詰め込まれる表示テキストと
全員が聞き取れる前提ではない早口の文語体の会話、
「へい、おまち!いつものやつね!」と、お通しが出てきた感じでした。

半世紀後のリメイクだけあって、エネルギー表現は新しいし
カメラワークが凝っていて、怪獣のデザインもランクが上がり、
リブートした意味はあったな!と思った。

最後までばれ

ウルトラマンについては大して詳しくないが、
ネロンガ、地味に歯が増えていたのが好きだし、
スペシウム光線のモーションを左手先からの視点で撮ったのは
考え付いたひと天才だなって思ったし
飛行するウルトラマンにベイパーコーンが出てて、おっ!てなったし、
あとシン・ゴジラより3~4割予算を削られたという噂を聞いたので
それが本当なら、お金のかかる戦闘を極力避けて、
上位種SFに比重を置いたのは正解だなという気がしました。

「幼年期の終り」と「三体」を思い出したのですが、
宇宙人を出すと、設定を作った人の価値観がモロに出るな…と思います。
この映画に出てくる宇宙人は皆理詰めでものを考え、損得で行動する者が多い。
(交渉の余地がある)
でもザラブ星人とメフィラス星人、キャラがかぶってるので
もう少し離したほうがよかったのではないか。
この映画で最も優れた点はメフィラス星人のキャラクターとキャスティングで、
山本耕史さんは予告の時から宇宙人にしか見えなかったし
名刺を差し出した時点でもう勝ってた。
(好きな言葉を挙げていくのかわいいし、
捲土重来も「嫌いな言葉」って言わないところが細やかだし怖い)

宇宙人も法的なものに縛られていて言動を制限されるの面白いし、
資源的価値を独占したい、というのは経済あるいはそれに近い概念があるのだな。
光の国のひとたちの価値観はまた違うようだが、
ゾーフィ(さすがにゾフィーではないようだ)の言動から考えると
宗教に近い倫理なのかな?と思う。
(でも好意による自己犠牲的な献身への理解はある)
リピア、78億人全員のび太くんの星、みたいなところに赴任して
何しろのび太くんなのでアホのくせにすぐ調子に乗って
すぐ騙されて、また騙されて、ジャイアンにぶちのめされて
ウェェェン!ドラえもーん!って泣かれて目が離せない…でも好き…
みたいな経緯で気の毒だった。
捨てて帰っていいんだよ?君も星に家族や友達がおるだろう。

1点のみdisるが、
長澤まさみさんのスカートの中をローアングルで撮ったりするやつは、
もう本当にださいのでやめてほしい。
えっちだからやめてほしいんじゃなくて、ださくて恥ずかしいんです。
ヅラが飛んで禿頭になるコメディを
いまだに面白いと思って延々やっている感じって言えば通じますかね…。

庵野さんは、巨大生物が地面と平行になって
空に浮かんでいる絵面がお好きだな…と思ってました。
しかしゼットンガチ勢とかがもしおられたら、
推しが1兆度火の玉製造機となった気持ちはどんなものか聞いてみたい。
やっぱりつらいんだろうか。

あのめちゃくちゃおいしそうな居酒屋は、
浅草一文本店というお店だとSNSで知りました。
メフィラス星人、いい店をいっぱい知ってそう。
インスタアカウントを教えてほしい。

「大怪獣のあとしまつ」と比較すると、さすが本家だけあって
格の違いがよく分かりました。


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「仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル」

2022年03月15日 | 特撮映画
「仮面ライダー オーズ」10周年記念作品。
全国40館という絞った公開で、ものすごい混みっぷりでした。

グリードという異形の存在でありながら人間に味方し、
戦いの末に消滅したアンクは突然意識を取り戻す。
彼は古代オーズによって世界が滅びかけているのを知り、
共に戦った映司と再会するが…というあらすじ。

副題を「-なんでも許せる人向け-」にしたほうがよかった気がする。
脚本は毛利亘宏さん。

ラストまでバレ

キャストのみなさん10年前とお変わりなく、お元気そうで何よりです。
懐かしい彼等を、再び肉体を使って表現してくださってありがとう。

映司がなぜか死んでいて、アンクと映司の別離エンドな訳ですが、
邦画では最強の集客力を誇る病死別離ねたっぽいやつで特オタを泣かせてやるぜ…
という目論見だったんだろうか?でも前者を好む層と後者はあまりカブらない気がするし、
そうするには映司の解像度があまりにも荒くて、「誰?」という感じだった。
火野映司というひとはかなり変わった人で、
悪意が抜け落ちて神になりかけの人間というか、チャンネルが開きっぱなしというか、
そういう精神状態にある人なんだろうなと私は本編放映時に解釈してました。
でもこの映画の火野さんは、読み切り少年漫画の主人公みたいに普通の善人だった。
上手い書き手の作った、テンプレでない架空の人物、特に頭の良い人、極端な悪人善人、変人は、
作者の手を離れると途端に動かなくなる。
脚本が靖子さんではないので、靖子さんだったらなあという感想です。

せめて映司の死体を映したりせずに、割れたメダルとかふんわりした状態になって、
アンクがそれを持って旅に出るとかだと良かったですね。






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「大怪獣のあとしまつ」

2022年02月06日 | 特撮映画

松竹と東映の大型共同プロジェクト。
日本で破壊の限りを尽くした大怪獣が突如死んで、
その死体をどう処理するのかというプロットの映画です。
予告が面白そうだったので見に行きました。
監督脚本は三木聡さん。

シンゴジラてきなもののパロディを出されると思っていましたが、
少し違って、風変わりな深夜ドラマみたいな痒いギャグと
へんてこな人間関係を延々と見せられて終わりました。
一応起承転結があります。
早くも「令和のデビルマン」の称号が授けられそうですが、
デビルマンほどではないです。
あ、嘔吐シーンがありますのでご注意。

ラストまでバレ

みなさんdisりつつもオチに言及している人は見かけない。
マナーがよい。

シンゴジラてきなもののパロディですが、
ユーモアのセンスが独特というかなんというかで、
陰毛で石鹸を泡立てるとよく泡立つとか、別れた彼女にかかった金額をセックスした回数で割るとか、
怪獣から発生するガスのにおいがウンコなのかゲロなのか国民の皆様にはっきり伝えないととか、
あきらかに蓮舫議員がモデルの女性がひっくり返ってパンツが丸見えになるとか(止める人はおらんかったのか)
北朝鮮がモデルと思しき国が怪獣の起源を主張したりとか(止め)
なんかそういう昭和の中高生ノリの冗談がゆるゆる繰り出されます。
それと若者が赤紙で招集されて、多数の死者が出ているらしく、
怪獣が死んで、第二次大戦の頃のアメリカのパロディもありますが
なんか低俗ジョークとの相性悪く、もぞもぞした。
あと唐突な、ヒロインの旦那の意味のない不倫とかが入って謎だった。

「怪獣の名は希望であります」は予告で見たときは面白かったし
客席でも笑っている人がいたけど、本編はそこへ行くまでに客席が冷えきってしまって
私の見た回は、上映中1度も笑いが起きませんでした……他人事ながらつらい………。
なにかと批判もでているが、福田雄一さんや堤幸彦さんは
小さい笑いで堅実に客席を温めてからのドーン、は案外基本に忠実だし、
ジョークの種類も幾つか用意してある。
しかし三木聡さんは、本当に独特なのだ。
「時効警察」とかでも、今回の窓の向こうのヒロインみたいに三日月さんの奇妙な動きのギャグがあったが
劇場でやると、客が音速で引いて行く気配が私にも感じ取れた。

そういえば「時効警察」主人公の霧山さんは謎多き男で、三日月さんは1回他の男と結婚するが離婚、
霧山さんにベタ惚れで、ずっと押しまくっている。一方的に霧山さんをライバル視する男も出てくる。
監督のサビなのだろう。この映画が「劇場版 時効警察」だったら誰も怒らなかったのに。
この映画は売り方を間違った、もしくは監督の人選を間違った。

粟根まことさんが出ておられた。
それと最高にもったいない使い方で染谷将太さんも出ておられた。

あと東映と松竹の偉い人は「シン・ゴジラみたいなものは、まあ誰でも撮れるだろう」と
思ってるかもしれないが、誰でもは撮れないからね。




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