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「最後の決闘裁判」

2021年10月19日 | 実話系

リドリー・スコット監督

14世紀末に実際に行われた、決闘による罪人の決定、決闘裁判を元にした映画。
ノルマンディーに領地を持つ家柄のマット・デイモンは実直な男だったが
その武骨さゆえに近隣を統治する伯爵ベン・アフレックに敬遠されていた。
友人のアダム・ドライバーは伯爵に気に入られどんどん台頭することに
苛立ちつつも美しい妻を迎え、地方で満足していた彼だが
ある日、戦地から戻ると妻が、暴行を受けたと訴え…というあらすじ。

夫から見た1章、妻を襲った男の視点の2章、妻の視点の3章、3パートに分れます。

リドリー・スコット監督の時代物を撮る手腕衰えず、
構図も色調もおろそかになる瞬間が全くない。
本当にそこで生きて生活している人を撮っている現実感。
人物描写も的確でくどすぎず、いつの間にか理解できている。
しかも「ハウス・オブ・グッチ」の撮影もなさっているので
それほど製作時間に余裕があったわけでもないと思う。
80歳を越えておられるのに、どういうことなの…。

大変優れた作品ですが、でももう見たくはないし
妻と、マット・デイモンの親友の人、王妃、伯爵の妻、メイド以外の登場人物を
全員一か所に集めて焼き払いたい……。

2章と3章に性暴行シーンがあります。
「藪の中」のようにまったく内容が食い違うかと予想していたが
そうではなく、多少自分に都合のいいように認識してしまう程度だった。
それと馬が何回か酷い目に遭うので馬好きの人ちゅうい。

ラストまでバレ(内容下品)

いつも同じことを言っていますが、
結局アダム・ドライバー演じる彼がやりたかったのは
自分にない家柄を持ち、自分より劣っているくせに
先に騎士になって公然と自分を侮辱したマット・デイモンへの攻撃であり、
領地と同じように妻をも奪って彼に勝つことだ。恋などというのは後付けで、
もっと言えばマット・デイモンの尻を掘って征服してやりたいが、
それだけはできないので代わりに他のあらゆることをやっているのだ。

マルグリットに対しては両名とも
下手くそなセックスの見本のような雑ックス描写だったけど
それに対して決闘シーンの描写の丁寧さはすごかったですね。
ランスでの突撃合戦から始まって落馬、至近距離の剣戟、急所を傷つけ、
ねっとりと舐めるようなカメラワーク、最高潮に盛り上がったところで
ブッスリとね、うん。

馬のエピソードが秀逸だったと思う。
あの黒い馬はアダム・ドライバーであり、
妻もマット・デイモンにとっては高額な白い馬と同じ。
愛し合う夫婦を引き裂く悪魔のような暴行魔の話にしなかったのはさすがのセンス。
(夫との性行為は妻にとって苦痛であるとか、夫のパートにはなかった
妻の服装を叱責するシーンや、暴行を告白されてまず妻に怒りを向ける夫、
そのあと自分との性行為を強要する夫のシーンなどを認識できないと
もしかすると夫妻が愛し合っているように見えるかもだが)
人物描写もよかった。夫の自己認識では
その厳しさゆえに近寄りがたいが周囲に一目置かれている勇敢な戦士だが
章が変われば彼は浮いているし何なら少し馬鹿にされている。
アダム・ドライバーは身分はないが教養があり、ある程度の倫理もあるが
下衆な相手に合わせてやんちゃもやれるし、それを楽しめる男。
ああいう状況で出世するのも分かるし、2人はいずれ全面戦争になるのも分かる。
どちらかが相手を立てていればあるいは上手くいったのかもしれない。
妻の章のタイトル部分で「真実」の文字が消えずに残ったので、
まあそういう事なんだろうけど、
強いジョディ・カマーが幸せになる所が見たい人は「フリー・ガイ」を見よう。

私が一番グエーって思ったのは、
おそらく妻に不利な証言をした友達が、ニヤッって笑ったところでした。
味方だと思ってた人に背中から刺されるとこたえる。
あ、あとお義母さまが「私も手籠めにされたけど私は我慢した!」
って説教始めたところと、
女が男に対して偽証した罪は全裸火あぶりの刑に処されると知った主人公、
そして「知ってたら私もほかの女性のように黙ってたのに…」と言うところ、
地獄の見どころがいっぱい!


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