映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「猿の惑星 キングダム」

2024年05月27日 | SF映画

3部作の続編。
前作終了時から300年ほど経った世界での話。
人間たちは文明を失い野生動物として生きている一方で、
猿たちは豊かに暮らしていた。
猛禽使いの一族であるノアは、
顔を覆った異様な猿の一団に村を焼かれ、
復讐の旅に出る…というあらすじ。

今作のノヴァの性格造形がとてもいいです。
ヴィランがボノボで意外だった。
なんかボノボって争いを好まない…
みたいなそういうイメージだったので。
でもこの専制君主の猿が他の猿を奴隷労働させるヴィジュアル、
つい最近見たキングvsゴジラで…(笑)。

ラストまでばれ

プロキシマスがいることで柔らかくなっているが、
メイとノアは、
種族の命運をかけて戦う敵同士にして戦友という燃える関係。

他の動物と比較すると人間の邪悪さが際立つ。
でも私も人間なので理解できるし、
メイの有能さ、勇敢さには震えた。
(シャ、シャベッタァァァァ……!?の演出のところ笑ってしまった)
同族殺しは初めてではないし、二度目とかでもなさそうな手際の良さ。
彼女の親を殺したのはプロキシマスとしても、
彼女の部族が全滅したのは、果たして本当にプロキシマスのせい?

ゴマスリヒューマンがその場にいる一番強い存在に膝をついて安全を図るの、
人間らしい行動で、あれもまあ理解できる。

考えると、死んだ英雄の遺志を継ぐ、というのを利用し、
感情を隠して相手を誘導するプロキシマスは奇妙に人間ぽかった。
それと将来の野望のために現在努力するのって
時間の概念をちゃんと把握してないとできないことだなあと思う。
(人間でも時々、時間の概念がないのでは?現在しかないのでは?という人はいる)

しかし今回の新作、旧作に繋がらなくなった気がするがどうだろう。
科学、天文学や医学、文学、数学、芸術、なにも発展しておらず、
猿たちは一次産業にしか興味がないように見えた。
(いくらなんでも建築物は、もっと太い資材で作れるでしょ!と思った)
(人間の何倍もの腕力があるのだから、あんなの彼等にとっては割り箸ビルディングだよ)

続編匂わせはなかったが、続くんだろうか?





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「関心領域」

2024年05月26日 | 淡々と暗い系


アウシュヴィッツ強制収容所、初代所長
ルドルフ・フェルディナント・ヘスが
強制収容所に隣接する美しい邸宅で
妻子と仲睦まじく暮らす様子を描いた映画。
写真や証言から
かなり正確に当時の様子を再現しているとのこと。
ジョナサン・グレイザー監督。
念のための注意ですが
精神状態のあまりよくないときに見る映画ではありません。

親子そろってのピクニックから映画は始まります。
そこから彼らの暮らしぶりが描写され、
幼い子を抱いて、花や虫を見せてやる母親や
温室やプールのある庭、大きな犬、
裕福ではなかった夫婦が共に築き上げた豊かな生活、
まるで物語のような理想的な家族の映像が流れます。
しかし少しずつ違和感が現れ、徐々に増えていきます。
使用人が主人のブーツを洗うと血が流れたり、
遠くから人の大声が聞こえたり。
その音は常に聞こえるようになります。

ラストまでばれ
寝室で夫妻がむかし行ったイタリアの話をして、
夫が2人だけに分かる笑い話で妻を笑わせるシーンとかすごく…
「ナチスは悪」で「ユダヤ人はかわいそうな被害者」、
「戦争は恐ろしい」「繰り返される悲劇」
とかそういうことではないのが分かる。
たとえば職を失って、家族や友人を悲しませ、
たった一人で皆と違う意見を言える人はどのくらいいるだろう。
何千人、何万人が一丸となって動いているシステムに
「それはおかしい」と言える人がどれだけいるだろうか。

自分より裕福だった民族が危険な思想集団とされ、
その資産を自分のものにしてよいとなったら?
自分より優秀だった職業の人間が検挙され始め
密告すれば称賛されるとなったら?
たとえば片方の性別に財産を所有する権利がなくなり
自分がその資産を自由にしてよいとなったら?

歯磨きチューブの中に宝石を隠すユダヤ人を
「かしこい」と評した女性の褒め方は、
犬や猫に対するそれだった。
この映画を見るのにはほんの少しだけ知識が要る。
子供が夜にベッドで眺めていた小さな銀色のものはなにか、
兄が温室に弟を閉じ込めたのは何の遊びか、
川遊びのときに流れてきた灰をどうしてあんなに必死に洗ったのか、
(あとご主人が夜中にこっそり何かを洗って拭いてたり)
かくいう私も、自転車で来てりんごを隠している少女のシーンは分からなかった。
レジスタンス活動をしていた実在のポーランドの少女なのか。
(ルドルフ・フェルディナント・ヘスは終戦後に絞首刑になったとのこと)

人間は妬み深く、金が好き。
金儲けをしたい頭のよい人が、常にどの国にもいる。
男は格好いい武器を持って同性と共闘するのが好き。
女は男が命がけで自分を守ってくれるのが好き。
なので人間はうっすらと戦争が好き。
本気の本気で戦争を恥じて根絶したいなら
もうとっくにそういうシステムが出来上がっている筈。
とりあえず球技に点差コールドゲームがあるように、
全人口割合において戦死者数に
規定以上の差が発生したら強制停止にしなよ…。

監督が意図したわけではないだろうけど、
まさに今私たちは虐殺をインターネット上で見せつけられながら
無関心に生活を続けている。
監督はアカデミー賞授賞式のスピーチでガザ侵攻に言及したが、
そのスピーチを非難する書簡に、著名人450名以上の署名が集まった。




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「恋するプリテンダー」

2024年05月12日 | 恋愛映画

過去に1度こじれたことのあるビーとベンは出席した結婚式で偶然再会する。
お互いをよく思っていなかった2人だが、それぞれの事情から、
カップルを装わなければならなくなり…というあらすじ。
久しぶりのロマンチックコメディでしたが楽しかったです。

主人公カップル以外の扱いが丁寧で、
当て馬のかたも筋の通った好感が持てる描写でよかった。
主人公のお姉さんカップルが、
真面目系スピリチュアル女性&おもろ系自由人女性で、
めちゃ愛に溢れていて、そっちの経緯も気になった。
その父母も、犬も、男性側の友達も皆良い人たち。

つらくないハッピーな映画を見たい人むけ。
あと最近にしては珍しく女優さんのお胸が見えます。
男子の全裸もあるぞ。
ポルノではなくあくまで自然なポロリンヌが見たい!という人は劇場に。
エンディングがとてもホンワカする仕様。

内容ばれ

最初の招待動画とか、もー!って感じで笑ってしまった。
「異人たち」とかを思うと、やはり良い時代になった。

1点、沿岸救助隊をタクシーの代わりにするんじゃねえ、とは思った。
あとタイタニックごっこで死んだ人がいるので気を付けなよね。
どっちも真似するヤンチャカップルがでませんように。

ヒロインを演じたシドニー・スウィーニー、
「リアリティ」の国家反逆女史、「マダムウェブ」の真面目っ子、
どの役も全然違う。カメレオン女優だ。





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「無名」

2024年05月05日 | サスペンス映画


日中戦争から二次大戦開戦後の中国で、
国民党、共産党、日本の諜報戦を
暴力、サスペンスで描いた作品。
湿度と美が高めの「裏切りのサーカス」というか。

トニー・レオン、王一博主演。
私は「おっ?陳情令の子が大抜擢か!応援に行こう!」
と思って見に行きました。

当たり前ですが日本はヴィランなので、そこのところ許容できない人は注意。
(でもトゲ肩パッドモヒカンバイクではなく知能のある描き方)
犬への暴力と死あり注意。

美美美ー美・美ー美美。
いやー、美しかったですね。
むしろ美しく撮りたいから、裏切りと暴力がテーマなのかも?

時系列がチャカチャカするので、
意識と記憶がしっかりした状態での鑑賞を推奨します。

ねたばれ

でも事実誤認させるための時系列シャッフルで
なかなか良かった。
死んだと思ったら死んでなかったり、
死んでないと思ったら死んでたり、
死んだと思ったら死んでたり。

王一博さんは日本語の堪能な役だったのでちょっとハラハラしたが、
なかなか流暢に喋っておられた。努力家なんだな。
トニー・レオンさんは全然お変わりなくて少し怖い。吸血鬼なのか。




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