映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「インターステラー」

2014年11月26日 | SF映画

ノーラン監督の新作です。
寿命の尽きかけた地球から、移住可能な星を探すために
愛する家族を置いて旅立った1人の男性の物語です。
ノーラン監督は小説家で言えば
ネタ、文章力、共に最強というチートなエンタメ映画監督なのですが、
「インセプション」をネタに特化した作品とするなら
(4つの世界が独自の法則で相互に影響しながら同時進行するという類を見ない映画)
(ネタに特化した作品は前例がないので「~~みたいな映画」って言えない)
今回は文章力でガンガンきます。

ただし終盤のカタルシスのために、中盤までの圧迫がきつめなのと、
分かり易く説明してくれるけどSF用語が多めなのと、
あと上映時間が3時間あるので、普段あまり映画を見に行かない人が
じゃあちょっと行ってみようか、という感じの作品ではありません。
SF好きな人、面白ければ600Pでも800Pでも小説読むよ!というタイプの人、
そもそもノーラン好きな人、普段から映画をわりと見ている人におすすめ。
(というのも途中で寝息が複数聞こえたので、真顔になって考えたのです)

重要なねたばれ及び結末ばれ注意

SF用語に関しては親切にもすべて譬え話を付けてくれたので
文系の頭でも楽々理解でした。
ノーラン監督の映画は、特殊な状況下に人間をぶち込む話が多いですが、
今回も現実ではあり得ない時間の法則に翻弄される人間達の話でした。
SF部分が嘘っぽくなると全部が台無しなのできっちり作りこんではありますが、
(ノーラン弟はこの脚本のために工科大学で相対性理論を勉強したのだそう)
メインは主人公と、彼の家族の感情であると思います。
あとSFの皮をかぶった時間ものでもあると思う。
「ゼロ・グラビティ」+「コンタクト」+時間もの。
「コンタクト」に関しては「お父さんの中身が宇宙人、宇宙人(仮)の中身がお父さん。ふふ」って思った。

ちなみにブランド教授とマン博士を許すことが出来ないのですが、
父親と子供を騙して引き離して、しかも自分が楽になるために告白し、
結果、愛情を憎悪に変えるって、他人の魂にヒビを入れるレベルの非道じゃないですか。
というか私はプランAは分かるけど、プランBの理念が全然理解できない。
いま地球にいるすべての人間が苦しんで死んで、別の惑星で人類が存続したからどうなの?
人類はそこまでして残さないといけない素晴らしい生物?本当に?
探査船を何基も作るお金を、呼吸器を病んでいる多くの人を助けるのに使った方がいいのでは?
と私は思いますがたぶん意見は半々くらいに割れるでしょう。

ブランド教授に比べたらマン博士は仕方ないですが、
うーん、発狂が想定に入ってないとはどういうことよ。
信号発信を最低2名以上の秘密のパスコードによる承認制にしなさい、
宇宙兄弟とか読みなさいって思いました。

こうして書いていると1つ1つのエピソードの重さにくらくらします。
あの23年経ってた話とか、小説にしたら超大作になりそうですが
一瞬で終わりましたね。なんという贅沢。

映像表現は上げるときりがないですが、
やはり本棚の裏側の世界が、監督の本領発揮だな!というのと
あと、理屈をグダグダ述べるよりも、
テーブルの上の砂を、もはや人々が気にしないようになっているという1ショットで
状況の悪化を表現しているのとか地味に好きでした。

ブランド教授の暗唱していた詩はディラン・トマスのものですね。
「ソラリス」リメイク版で「死は支配をやめるだろう」が使われていました。
(自分のWEB日記検索をすると全文引用していてヒィ!となった訳ですが…)
(著作権死後50年+戦時加算10年と数箇月…今年そろそろOK?くらい…?)
ノーラン監督のリスペクトなのか、それとも宇宙に合うのかどっちかな。

予告で見た時は宇宙生物かなにかだと思ったTARSとCASEは
宇宙船専属アシストロボだったのですが、もう本当に性格がかわいくて…
あと結構あの形態変化が自由自在すぎて目が離せない感じでした。
あれ実際には絶対あんな風には動かないと思うけど特に水上、
すごい説得力があるのでデザイナーの人は天才だと思う。
松葉杖の人がヒントなのかな。それとも組木パズルかな。
最後のあたりで木材のポーチの上をドスドス歩いてきたときは
「重量は何キロくらいなのお前……」って思ったけど。

娘が、お父さん大好きっこだけで終わらずに、
父の助けを借りて彼の偉業をも超える成果を残すところが好きです。
でも愛情(そして受け継いだ知的好奇心)を打ち捨てなかったからこそのあの結末なので
愛情と血は時間も空間も越えたのだと思います。終盤泣きっぱなしでした。




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「小野寺の弟・小野寺の姉」

2014年11月14日 | 人情系

西田征史さんの舞台劇を元にした、同じく西田さんの初監督映画です。
中学生の頃に両親を亡くして、以来2人で暮らす変わり者の姉と弟の話。
僕がこれまでに姉を殺したいと思った事が人生で3度ある
というような弟の独白から始まります。
じわじわくるエピソードを淡々と重ねる系。

箇条書き内容ばれ

・舞台劇→小説→映画みたいなんだけど、
 遊園地のシーンとかは舞台劇ではどうなってたんだろう。
・西田さん作品に絵本が出てくると、蟹…という気がする。
・疲れていても、ちゃんと野菜を食べて鰹節を削って
 いただきますを言って、食事は必ず汁物から食べる姉弟は、ぐうたらしているけど
 躾けのきちんとしたお家で育ったんだなあという感じ。
・ミッチーの役は、「イン・ザ・ヒーロー」の彼に比べたら
 良い人で本人に全然悪気はないんだけど、
 殴らねばならぬような気がしてくる不思議。
 良い人だが女を見る目がねぇ。
・小野寺弟の相手の人は、その女子力の高さに震えあがったが
 ところで犬どうするの?と思った。
・元カノのひとも別に悪い人ではない。仕方ない。
・涙を抑え込んだけど、ワイルドストロベリーが咲いているのを見ちゃったらもうだめ
 というの何となく分かる。

お遊びとして、桂正和先生が一瞬出ておられます。
(私は見つけられなかった。片桐仁さんは分かった)
ブルーローズの声優さんが小野寺姉のライバル役として出てきます。


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「マダム・マロリーと魔法のスパイス」

2014年11月07日 | 成長モノ

ムンバイでレストランを経営していたインド人の一家が火事で店を失い、
南フランスでインド料理のレストランを開業し、
向かいにある1ツ星のフランス料理店と激しい抗争を繰り広げ、
やがて天才シェフである次男の才能が花開いていくという料理映画です。
お腹が空いている時に見てはならない。

大きな陰謀が渦巻いたりはもちろんないのですが、
一家の父であるインドおっさんと、
フランス料理店を経営するフランス女の、
強烈な個性と個性のぶつかり合いが見ものです。
それとインド人家族の仲良しぶりとか、
ミシュランの星にかける料理店の悲喜こもごもとか、
あと次男の天才無双ぶりとか。
ハッピーエンドなので安心して見られるのもよいです。

内容ばれ

あんなにいがみあっていたインドおっさんとマダムマロリーが、
次男の才能にほれ込んで、次第に両方保護者化していくのがよかったです。

どさくさにまぎれてインドおっさんは「星はあなただ!」って叫んでるんですけど
スルーのされっぷりがあまりに酷くて噴いてしまった。
ヘレン・ミレンがとても素敵です。
銃を乱射してない姿もいいものですね。

それにしてもおいしそうだった。
鳩肉はあまり好きじゃないんですが
次男の作ったあのお皿は食べてみたかった。
それと5種のソースと、オムレツと、タンドリーチキンと、もちろんカレーと。
ウニをカレーに入れるとか(もったいなくて)絶叫ものなんですけど
おいしいのかな…どうかな…。
冒頭で「イギリスの野菜には生命も魂もない」ってすごいdis入ったけど
なんでだろう。土壌のせい?それとも気候?国民の気質が農業に向いてない?


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「ニンフォマニアック VOL1」

2014年11月06日 | R18

初老の男性が路地裏で怪我をして倒れている女性を見つける。
救急車を呼んでほしくないという彼女を自宅に連れ帰り介抱をすると、
彼女は自分自身を色情狂と言い、その奇妙な人生を語りはじめる。

少女時代から50代までの性の遍歴が前編後編で語られます。今回は前編。
彼女の語る性遍歴を、初老の男性が釣りや、音楽や、数学の知識に譬えるのが面白かった。
当然ながら性行為のシーンがやたらめったら多いので、モザイク乱舞でした。
あんなに多いと笑ってしまう。
(私は「ぼくのエリ」みたいに話の根幹にかかわる場合以外は
モザイクはべつにどっちでもいい派)

この監督の作品は毎回、嫌いだけど上手いなーと思って見てます。
(お好きな方はごめんなさいね)
H夫人の章とか(他の章もだけど)あの奇妙さ、あのユーモア、あの怖さ、
うーん、本当上手いな!と感心しました。
でも監督の作品の影からいつもじわじわ滲み出ているように感じる、
あの呪いめいた何かが、この作品はかなり薄まったように思えたのですが
気が済まれたのか後半から本気だされるのか、どうなんだろう。

あと素朴な疑問なんですが
一晩で7、8人の相手をして昼間はフルタイムで働いていた、
っていう設定、それは体力的に、時間的に可能なんだろうか…。
真面目に「ひとりあたり40分で睡眠時間6時間…」とか計算しましたよ…。

VOL2のほうが内容きつそうだなあ…と予告を見て思いました。


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「美女と野獣」

2014年11月05日 | 恋愛映画

製作がフランスの会社なので、めっちゃフランステイストです。
あまりクリストフ・ガンズ監督らしさはない。
「青髭」と「秘密の花園」と「進撃の巨人」を適当に足した感じ…。

植物に浸食された廃城の美術は良かった。

ベルの父親の持つ商船が沈没して没落したうえ、
長男が博打か何かで多額の借金をこしらえるのですが、
なんだかそのパートがやたら長い。
金銭トラブルはどちらか片方でよくないか。

内容ばれ

なんと野獣がバツイチです。
贅沢をいうならもう少し、あと20歳ほど若い人が良かった。
ヴァンサン・カッセル47歳やないですか。
いや、胸毛は大変ご立派ですよ…でも…。
あと野獣とベルがどこで惹かれあったのか全然わからない。

そして自分の過失で(忠告無視系)前妻を手にかけたにもかかわらず
ベルに「俺を愛してくれるか?」と問うのは
随分ムシがいい話だなおい…と思わざるを得ない。
そこは頭を丸めて仏門に入るところではないのか。
フランスの森の神は優しいんだな。

ところで、庭をウロウロしていた巨人の皆さんは
王子のお友達だと思うんですが、
あの方たちは別になにも悪いことしてないんですけど
最後どうなったんでしょう。



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