映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「キングスマン ファースト・エージェント」

2021年12月27日 | バトル映画

国家に支配を受けない特殊諜報組織キングスマンを描いた
シリーズ3作目。今回は組織結成前のビギニング話。

従軍経験から非戦を主義としてきたオックスフォード公は
盟友の頼みもあって、英国の危機を救うべくロシアに飛ぶが…というあらすじ。

予告の、カリンカの歌に合わせて
皆が「ウワ~~!!!!」って叫んでいる編集映像が印象的で、
今回もハチャメチャ寄りの内容なんだな、と思っていたら、案外そうでもなかった。
SFガジェットがなく、スパイアクション映画というより、
歴史パロディアクション映画かな?
特訓シーンはあります。英国要素も(時代は違うけど)ある。

エンドロール中にワンシーンあります。

注意書きのための内容ばれ

動物虐待&マーライオンげろ注意!

ラストまでばれ

冒頭で大切なパートナーを失って
その遺児(自分の子でもあるけど)を育てるというのは1の意図的な繰り返しなんだろう。
マシュー・ヴォーン作品で
年長者の特訓を受けた若者は死なないという思い込みがあったので、
どちらかといえば父親が負傷し離脱するのだと思っていたが違った。
父親の勇敢さを受け継げと息子が言われる映画は何本もみたが、逆は初めてだ。
(英国の植民地主義に懐疑的で、反戦派だったオックスフォード公が、
従軍に積極的で愛国心の強い息子の勇敢さを見習うというのは
現代の価値観的には「それでいいの?」という気もするが)
まあ、血筋など関係ないというのがキングスマンのテーマなので、
ああならざるを得ないのだけど。

息子の死のシーン、救出したつもりで
実は兵士の体を盾代わりにして自分が助かっただけだったり、
自分の小細工が原因で味方の誤解を受け射殺されてしまうなど、
感動的な死からは程遠い皮肉の効いた演出は好きですね。

ましゅぼん監督の悪趣味部分はラスプーチン戦に集約されてた。
リス・エヴァンス怪演でした。
レイフ・ファインズがズボンを脱いで
ラスプーチンに舐め回されて声をあげているシーンに、
監督の、してやったり顔を幻視したし、
オックスフォード公の足が悪い設定は、あのシーンのためだけに作ったね?

我々は、ならず者(Rogue)ではなくオックスフォードだ。
どっちも靴の話ではなかった。ちょっと翻訳に苦悩が見えた。

ジョージ5世とヴィルヘルム2世とニコライ2世が
同じ役者さんって全然気付かなかった…。

マーリンは代々ガジェット担当なんだろうか。
いや、しかしこの映画のマーリンはどちらかといえば最強戦力だけども?

羊飼いがものすごくヴォルデモートっぽいのは英国ジョークなのか?
あの会議もデスイーター会議っぽかった。

威風堂々を聞くと自動的に花火が見えるようになりましたが、
今回は1812年(序曲)。いやでも1ほどは悪趣味ではなかったけど。




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「劇場版 呪術廻戦 0」

2021年12月26日 | アニメ映画

久しぶりのチケット争奪戦でした。女性客が7割という感じ。
ジャンプ連載中のオカルトアクション漫画「呪術廻戦」の
プロトタイプ的な漫画「呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校」
(呪術廻戦ゼロ巻)の映画化。

ごく普通の高校生、乙骨憂太には
子供の頃に事故死した幼馴染の里香の霊が憑いており、
その霊が憂太を攻撃する相手をことごとく傷つけるため
処分対象とされていた。
しかしある教師の反対意見により、彼は
東京都立呪術高等専門学校に編入することになるのだった、というあらすじ。

ジャンプ漫画なのでバトルメインなんですが、
体術に加えて怨霊を使った攻撃が有効なので変則的で面白いです。
あとみんな大好き学園ものに加えて
主義が食い違ったために敵同士となるかつての親友なども出てくるよ。
巻き込まれ型主人公の少年の声は緒方恵美さんで、
控えめなツッコミの演技がとくに良かった。

エンドロール後に1シーンあります。

内容ばれ

百鬼夜行はオリジナルシーンがかなり加えられていて
あっ、やっぱりこの人たち人気なんだね!という感じだった。
パンダ夏油戦もなにげに長くなってた。
あと里香ちゃんと乙骨君の出会いと、2人が遊んでいる楽しいシーンが増えて、
メンタルやばい彼女を支配して酷使している印象はやや減った。
五条先生の「女は怖いねぇ」というセリフも改変された。
里香ちゃん怨霊化の事情が分かると的外れなセリフなので
変更されて良かったと思う。
あと細かい部分だが血がNGなのか、紫色になって
「赤好き」が「キレイなの好き」になってたし、
あとセクハラ霊のセクハラ仕草はなくなってた。

この話のテーマは壊れてしまった友情と現在進行形の友情なので
すごく爽やかに切なく終わるが、
その後真希さんの夢がどんなふうに叶ったかとか、
地獄展開を思うと暗雲垂れこめる。
(本編主人公は今回登場していない)

記念冊子はまだ余部があるようですが、
もし後になって見て、もう手に入らない!という人がいたら
描きおろし漫画はジャンプにも載ったので
バックナンバーをネットカフェなどで読むといいです。
ただし漫画以外の記事も多いですけど。
(野薔薇さんの好きな映画のジャンルを見て、ますます好感度が上がりました)
通常連載の漫画と特別描きおろし漫画が同時に載って、
芥見先生がちょっと心配になりました。



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「マトリックス レザレクションズ」

2021年12月19日 | SF映画
1999年に公開され、その後世界中のありとあらゆるオタクに影響を与えた
「マトリックス」の続編。
ガンバトルにスローモーション効果と東洋の格闘スタイルを融合させた
独特の効果を作り出したのはこの映画だし、
この世界は実はシミュレーションで、
本当の世界は人間が管理されているディストピア、
主人公は救世主というのを最初にやったのも(私の知る限り)この映画。
若い人は「どの設定もどっかで見たような」と思うかもしれないが
後続が影響を受けまくった結果が現在なのです。
監督は姉のラナ・ウォシャウスキー。
キアヌ・リーブスとキャリー=アン・モス主演。

トーマス・A・アンダーソンは高名なゲームクリエイター。
過去に世界的大ヒット作「マトリックス」を作り、今も熱狂的なファンが多いが
ストレス性の妄想障害により自死しかけた経験があり
精神科で投薬とセラピーによる治療を受けていた。
ある日勤務するビルに犯罪予告があり、全員で避難する途中で
トーマスはサングラスの男性と出会う…というあらすじ。

マトリックスを好きだった人は、できたら過去3作を復習していくのがよいです。
私はあらすじはだいたい記憶してるから大丈夫~って思って行ったけど
やっぱり登場人物の事よく覚えている状態のほうが感慨もひとしおだったかも…
と少し後悔したので。
でも内容が分からなくなるとかそういうのではない。
そしてマトリックスを知らない人は、別に見なくてもよい。
当時の若くて尖っていた作品の世界観や結末が優しく丸くなったのを見て、
ファンがこれはこれで良かったなとしみじみする内容なので。
私は今更ネオが苦しむのを見せられたくなかったのでこの結末に賛同する。
少なくともス……ォーズみたいな、玉突き追突事故続編ではなかった。

エンドロール後にワンシーンあります。

注意書きのためのネタバレ(反転)
ビルからの投身のイメージが繰り返されるので
(何度もあるし、潰れる人体も何十体と映ります)
やばい人はやめておいたほうがいいです。

ラストばれ

メタ的な発言が目立った。
ワーナーのごり押しで無理やり続編を作ることになり
マトリックスとは何かを会議するたびに
段々精神状態が悪くなっていくネオとか、
物語は終わらないってアナリストのセリフとか、
スピンオフで会おう!っていうメロビンジアンのセリフとか。

エンドロールを見て思ったのですが、外世界での出来事、
ナイオビとの再会や、新生モーフィアス、バックスに
あなたは救世主ですって迎えられ
憧れの人妻が家族を捨てて自分を選んでくれるっていうのは
ストレスで壊れたネオの妄想って路線もまだ残ってますね。
でもまああの年代の男性の妄想なら自分が救世主で自分が世界を救う!
ってなるでしょうから、
トリニティもまた救世主であった、という結末だったからには
あれは妄想じゃないと私は考えます。
トリニティもまた救世主であったラストは、
また一部がブーブーブーブーいいそうですけど(笑)
ネオが唯一の存在ではない、言い換えれば孤独でないというのは
彼にとっては良いことのような気がします。

機械との闘争に終始したザイオンが滅び、
人間との共存を望む一部の機械と協力して作ったアイオが栄えているのは
今風だなあ…と思った。
争いを好まない気質の子がどんどん増えてるのは日本だけではないのかも。

アクションシーンは、20年前は唯一にして最高峰だったが、
当然ほかの映画のレベルがどんどん上がり、
それらをゴボウ抜きにするほどの斬新なアイディアと手法はなかった。
予告でもあったヘリからのミサイルの軌道を捻じ曲げるシーン等は、
相変わらずリズムと動きが良いな!と思ったけども。

アナリスト怪演だったな。彼の言う通り、
戦って自由を勝ち取りたいひとばかりではなく
従って楽に行きたい人もきっと多いだろう。
私はネコチャンが本体だと思ってたけど、そんなことはなかった。


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「ラストナイト・イン・ソーホー」

2021年12月12日 | ホラー映画
エドガー・ライト監督の新作。
今回は本格サスペンスホラーです。
ロンドンの大学の服飾課に合格した主人公は
都会に出てきて下宿生活を始めるが、
1960年代の美しい歌手の夢を夜ごとに見るようになる。
やがて彼女はそれが夢ではなく現実にあった出来事であると気付く…というあらすじ。

曲のリズムに合わせて主人公と歌手が入れ替わる、
幻覚のような演出が良かった。
鏡像と本体の表現は「パーフェクトブルー」の進化系だった。
テーマは女性への加害とシスターフッドだと思う。
「ハロウィン(2019)」「透明人間」「アンテベラム」「マリグナント」
と、その2つあるいは片方をテーマにするホラー界の流れが確実にあって、
そこのところを論じている評論が読みたいがどこかにあるだろうか。
(「マリグナント」は、彼の描きたかったことは別にあるんだけど、
男性からの加害とシスターフッドの2点をしっかりと盛り込んでいる
ジェームズ・ワン監督の嗅覚はすごい)
見終わったあと、嫌な気分にはならないよう撮られています。
1960年代の再現、音楽、ファッション等々センスよかった。
今回はお得意のユーモアが完全封印だったのは少々残念。

下記は苦手要素注意のため内容に少し触れます。
「身体を褒められたら女性は嬉しいでしょ。
モーションかけられたら悪い気しないでしょ」
と思っているタイプの男性は
序盤から加害者扱いされて不快になるかもしれない。
それと女性は性加害表現がありますのでご注意。
腕力による強制的な性行為ではなく、権力勾配による性行為の強制です。
といっても「最後の決闘裁判」のように挿入・抽挿がはっきり分かるような撮り方ではなく
行為の直前直後の仕草で表現してある。
決闘裁判>>>>>アンテベラム>>>>ラストナイトくらい。
それと統合失調症について差別的な態度のモブが出ます。
女性グループからの陰湿ないじめ描写あり、軽い嘔吐あり。

ラストまでバレ

こういう話、いつも「全員並べて焼き払いたい」って書くんですが
「ヘイ!並べて焼き払っておきやしたぜ!」って差し出されて
話の速さに笑ってしまいました。
彼女の正体については小間使いの話が出たときに察しましたが
サンディが過度に虐待されるミスディレクションに引っかかって
まさか並べてお出しされるとは思わなかった。
全員同じ傷跡があって、サンディのご登場で怯えて
「キャァァァァァァ!」って全員同じポーズになるところは
この映画唯一のブラックジョークでした。
あんな部屋そりゃ霊も出るよ。たぶん私が寝ても見るよ。
まさか隣のフランス料理屋が伏線とは思わなかったな…
でもそんな強烈なニンニクの臭いって本当にフレンチ?餃子屋じゃなくて?

学校に来た繊細な美少女が、恐ろしい目に遭い、
犯人は実は……という流れは、過去にも「フェノミナ」「サスペリア」などがある、
古典的なパターンですが、今どきのホラーが怯える美しい女性を鑑賞して終わらないのは
主人公が真相を知ってもサンディへのシンパシィを持ち続け
抱擁するシスターフッドがあるからだと思う。
主人公をハナからバカにして取り合わない男性警官と
親身なってくれて、心配して訪問してくれる女性警官の対比、
何もされなかったかと尋ねる大家、
自分のシフトの心配しかしないバイト先の男性先輩と
女性店主の対比なども意識的に盛り込まれている。
(学校の友達はいじめっ子だけどね。母の自殺の話をマウントだと感じる感性はすごいね)
結末も主人公が彼氏くんに守られ、救われるものではなく自分の能力で勝ち取っている。
彼氏くんは今風の、とってもいひとでした。

風俗取り締まりの警官さんだけは気がかりです。
常に何かをにおわせるような喋り方するから…。
生還したらもっと要点を言いなよね。

でもあの内容で警官2人が話を聞いてくれるって、
ロンドンは警官が減らされて犯罪増加しているって聞いたけどそうでもないのか?
私の話になりますが、被害相談に行ったら「あなたに原因があるんじゃ?」
って言われて、巡回も普通に断られて終わりましたよJAPAN…。

追記:
権力勾配による性行為の強制って書きましたが
要するに何かというと歌手として就職したのに、売春を強要される話なんですよね。
(枕元のお金がアップになる)それをずるずると続けさせられてしまう。
暴力による性加害シーンは平気で、売春の強制を見たくないという人も
いるかもしれないと思ってどう書いたものか悩みました。この映画は後者なので…。

監督が今回参考にした60年代の英国映画25作をリストアップされているけど
1本しか見てないな…映画を見始めたのって1990年前後くらいだからな。




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「パーフェクト・ケア」

2021年12月06日 | サスペンス映画

面白かったです!
登場人物全員が清々しく悪役なんだけども
全員タフでエネルギーがあって、なんか元気になるような。

医師と共謀して資産家の老人を認知症と診断させ、
成人後見人におさまり 肉親は接見禁止にして排除、
その資産をゆっくりと奪いつくす、法の裏をくぐるやり手の女マーラは、
身寄りのない独り暮らしのキャリア女性に目を付ける。
しかし上等の獲物かと思われたその女性は、
なぜかロシアマフィアとつながりがあり、
マーラはマフィアの攻撃を受けることになるというあらすじ。

マーラが、ガッツと闘志と怒りを隠さない、
パワーに満ちた新時代の女性ヴィラン。
ロザムンド・パイクが怪演されてます。
でも恋人の女性にはすごく優しい描写が何度もあるので、
彼女を魅力的にも描こうとしているのが伝わってきました。
対するロシアマフィアのディンクレイジさんも、妙に憎めない。
やたらこだわりスイーツが何度も出てきて甘いもの好きなのかーという感じ。
お母さんも過去がすごく気になる。確実に人を殺したことがある動き。
全員覚悟完了した悪人ばかりなので貞子VS伽耶子的に楽しめました。
暴力シーンはあります。

J・ブレイクソン監督は「アリス・クリードの失踪」を撮られているが、
両作品の登場人物造形に共通するものがあるので、すごく納得する。
アリス・クリードもとても好きな作品です。(わりと寡作でいらっしゃるのか?)

ラストまでばれ

後見人制度ビジネスについては、頭のいい人がいるもんだなー、と思いました。
こういうカモリストに名前がのぼらないよう、
なるべく名前も顔も既往症も資産もデジタルデータに残らないように、
貧しい格好をして生きます…こわい…。
早く法の修正パッチが当てられるとよいですね。

車ごと沈められたあと奇跡的に生還できて、
すぐにコンビニで牛乳を買って抜け落ちた奥歯を保存したところ、
超人並みのタフネスさにしびれました。

介護施設で銃撃戦をやるようなロシアマフィアが、
なんでマーラたちを狙うときだけ妙に殺害方法に凝るんだよ、
とか微妙なつっこみ所はありますが、ややコメディ寄りの作品なのでそれは別によい。
私の唯一の不満はラストですね。
意図は分かるけど、それまでいい感じの湿度だったのに
急に湿っぽくなるのはどうなのか。
トラックではね飛ばされて、全身バキバキになって、
どう見ても元には戻りそうもない怪我なのに不敵に笑って
「まだやれる!」エンドでよいのではないか…。

日本版を作るなら、マーラは確実に天海祐希さんなんだけど、
悲しい過去がついたり、恋人が消されて息子に換えられたりしそうなので
やっぱりいいです。

2021年12月現在、AmazonprimeとU-NEXTは特別料金で見られるようです。


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