映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「ブレードランナー 2049」

2017年10月30日 | SF映画
監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ
レプリカントのKは、「ブレードランナー」として、
違法レプリカントを狩る毎日を送っていた。
ある男性型レプリカントを始末した後、
Kは現場の庭に箱が埋まっているのに気付く。
その箱の中には遺体が入っており、
彼はその遺体の持つ秘密に翻弄される…というあらすじ。

35年前のSF映画「ブレードランナー」の続編です。
その後、大量のSF作品に影響を与えた超有名作品です。
今回のこの映画はKの物語で、彼の悲哀が切々と描かれます。
淡々と命令に従い、口をつぐみ、都市を見る彼。
その表情と目。永久に降り続けるような雨、それから雪。
続編として遜色ない作品でした。
私向けではなかったけども。絶賛意見が多いので少数派です。

内容ばれ

前作も今作も人間でないものに恋をする男が出てきます。
前作のデッカードはレイチェルを得ますが、
今作のKはジョイを失い、全てを失います。

生身の肉体に立体映像を重ねたラブシーンと
立体映像で生身の人間が一瞬見えなくなるアクションシーンが良かった。
実体のない人工知能が、女の協力者を得て
愛する男と3者で、奇妙な性行為を試みるくだりは
「her/世界でひとつの彼女」を思い出しました。
あと所々共産圏のデザインっぽい建築物も良かった。

雪のシーンが美しかったです。
前作のレプリカントの踊り子のシーンでもショウウィンドウの中で
人工の雪が降っていました。

「自分だと思っていたのね?」っていうセリフのところで
共感性羞恥を起こしそうになりました。ひどい。
ゴズリングのHPはゼロよ!やめてあげてこの鬼!

音楽は当初、ヨハン・ヨハンソンの予定で、
彼も相当数作曲を進めていたらしいのですが
ヴァンゲリスっぽく、という製作会社と監督の要望と合致せず
土壇場でジマーに変わったそうです。
残念。たぶん私はヨハン・ヨハンソン版の音楽の方が好きだったと思う。

なんでまたこの人達は突然チーズの話とかしてるんだ、
なんで宝島なんだって思ったけど、
前作のボツカットで、生きてたホールデンが「宝島」を
読んでたねたからきてるんだな。たぶん

スピナ―にワイパーって付いてたっけ…?っていうのが気になって
旧作を見返したけど、私の持ってる版にはワイパー付いてなかった。

not for me理由(ねたばれ)
無印は、猥雑でなんかヤバイけど、
当時のエンタメ映画としては画期的に多くアジア人の老若男女が画面に映り、
人々は頻繁に飲み食いし、わいわいと喋って、生活して、
豊かでエネルギーがあるというか、ワクワクさせてくれる世界観だったけど、
今回は貧民窟みたいなところで最低生活をしている人々があり、
孤児院の児童が強制労働させられ、性的に売買され、
男女が淫売宿でまぐわって、陳腐で停滞した世界なのが息苦しかった。

もっとショックで動けなくなるような、模倣作品がガンガン出る、
斬新で唯一無二の未来世界が見たかった。
たとえば都市風景の広告、
全裸の女性の立体映像が先鋭的で扇情的っていうのは、
20世紀の感性だと思う。私は。

レプリカントの製造法って人工的なものだと思ってましたが、
この映画の設定だと貧困層の女を工場に並べて、
テロメアに細工した受精卵を移植して生ませてるんじゃないの?コスト的に…。
あんな倫理の破壊された世界でわざわざ培養器を使うメリットなさそう。

知能と意思を持つ生物を人間と区別する事の是非、
人工の意思とそうでない意思に区別がつけられるのか、
その存在への愛情は人間同士の愛に劣るのか、
というSF的なテーマを「子供産めるからにんげん!!本物の愛!!」
っていうマッスルチョップで粉砕してて笑ってしまいました。
あと意思があって、人間と交配可能となるとそれはもう完全に人間なので、
どっちかというと人権なく強制労働、性的虐待される生物の苦難という、
人種差別的なテーマにガタンとレールが切り替わった気がします。

あとデッカードが、寿命の知れぬ人間じゃない美しいものと
逃避行に出たというラストが大変夢のあるものだったので、
その後レイチェルが出産で死亡したとか、邦ドラっぽい後日譚は望んでなかった。
まあそれこそが人間の証で彼女は幸せだったという設定なんでしょうけど、
「ブレードランナー2049、男はつらいよ 旅と女とデッカード」
という感じ。(旧約聖書~めたふぁ~云々は、うん…まあ、そうなの…)

「ブレードランナー」という言葉の元ネタになったアラン・E・ナースの小説、
違法な医療器具の運び人を書いた「The Bladerunner」を読んでみたかったんだけど、
さすがに翻訳されてないっぽい残念。
でも本職が医師のナースが、医療知識をこれでもかと詰め込んだため、
あまり面白い小説ではなかったそうです…。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アトミック・ブロンド」

2017年10月23日 | アクション映画

007世界とル・カレ世界を悪魔合体して、
そして主人公も敵も血まみれのボロボロになるまで殺し合う
アジアン・ノワールの暴力性をミックスし、
冷酷な駆け引き、なぞの美女とのラブアフェアもこなす
無敵の主人公を女性にしたという尖った作品です。
そんな難しい役柄を圧倒的説得力で演じるのはシャーリーズ・セロン。

ドイツ東西の壁崩壊寸前のベルリンで、
全スパイの素性を明らかにするデータを奪うために
MI6から派遣されたエージェント・ロレーンは
到着早々KGBの刺客に殺されかける…というあらすじ。

ロレーンのお着替え回数が多くて、
キメキメのファッションが毎回楽しめます。
そして指が美しいので煙草やウォッカがばっちり決まるし、
足が長いのでキックが綺麗です。

終盤に階段を使った、ものすごい長回しの格闘シーンがあります。
(いやたぶんカットは入ってるだろうけど、
都度カメラポジションを変えて設置したとしたら面倒そうだ)

内容ばれ

アクションシーンを作るために話が遠回りして、
ちょっともったりした感じになってしまったけど、
画がスタイリッシュなので十分ごまかされる。

ル・カレ世界は頭使ってしんどいし、
007世界はちょっとファンタジーすぎる…という人には
ちょうどいい塩梅なのではないかと思います。
思えばスパイものの戦闘シーンで、大抵銃によって勝負がつくのは
スーツや顔が汚れて醜くなるからだな。
でもこの映画では血まみれ痣まみれの顔や体の美学に挑戦してました。

ジェームズ・マカヴォイさんが出てるって知らなかったので驚いた。
背中に刺さったナイフが抜けない、体の固い演技が絶妙で笑った。

クラブのシーンで突然デビッド・ハッセルホフの名前があがって
「なんぞ!?」と思ったけども、
1989年にベルリンで新曲発表したんですね。
「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー2」でも彼の名があがってたし、
最近妙にネタにされている。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「レジェンダリー」

2017年10月18日 | 淡々と暗い系

13世紀初頭のアイルランド、鬱宗教剣劇アクションものという
変ったジャンルの映画でした。
夏の「スパイダーマン」で主役だったトム・ホランドくん主演。
あと「ザ・コンサルタント」でおいしい役を演じたジョン・バーンサルさんが助演。

アイルランドの僻地にある修道院にヴァチカンから使者が訪れる。
権威の弱まった教会は、聖遺物の力で聖地奪還を成し遂げ
神の栄光を取り戻そうとしていた。
この修道院に隠された聖遺物「マティアの石」をヴァチカンに供出せよ、
という命令が下され、
修道士たちは巡礼の旅に出るが、彼等の旅路は侵略者の跋扈する
危険極まりないものだった…というあらすじ。

今のところ東京と大阪でしか上映されていません。(現在は大阪のみ)
いや、一般向けのエンタメ映画ではないけど、
もうちょっと拡大してもいいのではないか。せめて5館くらい。

ラストばれ
十字軍遠征でおそらく重大な罪を犯し、
贖罪のために言葉を捨て、修道院で労役をする「沈黙の男」
が出てくるのですが、彼がその場にある武器を使って
必要最小限の動きで殺してゆくアクションシーンが凄かったです。
盾で人を殺すのって大変そうですが、できなくはないんですね…。
メイスって一撃食らったら色々砕けて、
もう立ち上がれないものだと思ってましたが、そうでもない…?

ヴァチカンからの使者のトンスラやろうが物凄いドクズで、
なにかといえば他人に殉教を強いるのですが、
自分は何もしない、むしろ状況を悪化させるばかりの
ホラー映画に出てくる典型的なドクズでした。
というか音楽も妙にホラーぽかった。

トム・ホランドくんは、緊張が高まる場面の演技になると
頬がぷくーっと膨らむのがかわいかった。
ファンに「彼の頬にはカエルが入ってるみたい」って言われたの分かる。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「猿の惑星: 聖戦記」

2017年10月17日 | SF映画

3部作、堂々の完結です。
1作目から段々と人間の占める割合が減っていき、
今回はほぼ猿、猿、猿!
それでも製作費の3倍の成績を上げているのだから大したものです。
(3倍で、なんとか黒字が出ると言われている)
1作目から脚本に携わっていた
リック・ジャッファとアマンダ・シルヴァー夫妻が抜けた。

群れを率いて静かに隠れ住んでいたシーザーだが、
ある日人間の襲撃を受け、妻子を殺されてしまう。
復讐を誓うシーザーは武装した人間たちを追うが…というあらすじ。
なんとなく人間がこれまで辿ってきた歴史、あるいは創造した物語を
ふんわり暗喩する感じでした。
南北戦争、ホロコースト、あと「出エジプト記」や「闇の奥」。

ラストばれ

旧作に繋がります。
猿たちの文明が急激に発展して、ノヴァはあのノヴァになるのか、
コーネリアスはあのコーネリアスなのかは不明だけど。

ウディ・ハレルソンが敵役を怪演。
「グランド・イリュージョン」や「ハンガー・ゲーム」などの善人役もいいですが、
この映画の大佐のような、気の違ったヴィラン役が似合いますね。
でもこの大佐は、自分の手を汚し自ら前線に出る覚悟があるので、
クズという感じはしない。
知性が無くなったら人間ではなくなってしまうという恐怖は理解できる。
たぶん言語による思考と記憶の蓄積ができなくなって、
情動のみの状態になるんだろうけれど、
あの感染スピードからして完全に詰んでるし、
絶対に人間を滅ぼして猿にチェンジしたい!という断固たる意志を感じる。

3作で技術が蓄積されたのか、
理知的な猿たちの表情が大変良かった。
憎しみを理解し、義務を果たし、約束の地で生きることなく去ったシーザーは
実際には存在しないキャラクターだけど、ものすごくリアルでした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アナベル 死霊人形の誕生」

2017年10月16日 | ホラー映画

「アナベル 死霊館の人形」の続編です。
監督と脚本が替わりました。今回は「ライト/オフ」の監督。
タイトルの示す通り、悪魔の人形アナベルは
如何にして誕生したかという話です。

人形職人の夫とその妻は、不慮の事故で5歳の娘を亡くす。
それから十数年後、夫妻は自宅を身寄りのない少女たちのために
開放する事に決め、シスターと6人の少女がやってくる。
しかし少女の1人、足の不自由なジャニスは、
屋敷にただならぬ気配を感じとる、というあらすじ。
前作より話がしゅっと集中している感じがします。

ラストばれ
恐怖シーンがグイグイあるわりに、
最初に事故死したビー(アナベル)以外、
少女は誰も死なないのは結構すごい。大人は死にます。

美少女盛りだくさんでお屋敷も素敵だし、目の保養ホラーです。
ところでシスターがルーマニアで撮った写真に写っていた
得体のしれないひとが女装悪魔ヴァラクということでいいんですよね?
ルーマニアからシスターにくっついてきて、
アナベル人形の中の悪魔と仲良くなった?
それともこのシリーズに登場する悪魔は場所も時間も無視して
全部ヴァラクなんだろうか…。

前作につながるラストで夫妻がプレゼントした人形、
本物の呪いの人形アナベルのレプリカです。
そう、本物はファンシーで全然怖くないんですよ少なくともデザインは…。
弘法、筆を選ばずみたいな感じで、
実力派の悪魔は器をえり好みしたりしないんだろうか。

時間があるなら前作は見ておいた方がいいです。
エンドロール後に1シーンあります。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする